【3行要約】
・mento社CTOの松山氏が語るのは、労働集約型のコーチング事業でシリーズBの「スケールの壁」にぶつかり、事業構造を変える必要に迫られた背景。
・強いエンジニア採用と開発プロセスの刷新、AI×人×プロダクトの三位一体設計によって「マネジメントAI」を立ち上げ、10兆円企業での検証まで一気に進めたプロセスを紹介しています。
・CTOとしての「技術力」を、トレンドを事業に落とし込むセンスと定義し、フェーズに応じた役割シフトや「対話しか勝たん」を軸にした組織づくりの考え方を共有しました。
シリーズBで突きつけられた「労働集約ビジネス」の限界
司会者:松山さま、準備はよろしいでしょうか。持ち時間は6分間です。それではよろしくお願いします。
松山勇輝氏(以下、松山):こんにちは、mentoの松山です。みなさん、本気で働いていますか?
今、日本は「働く熱」を失っています。エンゲージメント高く働いている人は、全体の6パーセントしかいないらしいんですね。これはもう社会課題だと僕らは思っています。

僕らは、この国の総労働熱量を上げるために、管理職を中心にコーチングやマネジメント支援のプロダクトを提供しているスタートアップです。

2019年、コーチングのプロダクトをローンチしてからシリーズAの資金調達を経て、順調に売上が伸びていきました。ただ、2024年に壁にぶち当たります。

シリーズBの調達で投資家の方にいろいろなフィードバックをいただきます。「労働集約だよね?」って、労働集約ばかり言われるんですね。そうなんです。僕らは労働集約ビジネスをやっていたんです。

僕らはずっとこのままでもいけると思っていたんですが、やはりシリーズB、GoToMarketのフェーズに入ってくると、事業のスケーラビリティというところが明確に課題になってくる。ここが僕らの経営課題でした。
労働集約の何が悪いのかという構造をひもといていくと、1個はやはり原価が重すぎて粗利が取れないというところと、ビジネスのスケールに対してどうしても供給がボトルネックになってしまうという構造上の問題だと思っています。
強いエンジニア採用と「全部変える」開発プロセス
松山:この構造を見ていった時に、僕はこれに対してどう向き合うのかとあらためて考えました。技術投資によって構造にレバレッジをかけていく……つまり自分たちがやっているゲームのルールを変えていくのが自分の役割だなとあらためて思いました。

経営チームで「このタイミングでテックオリエンテッドなプロダクト構想を立ち上げようぜ」と決めます。これを決めてからめちゃめちゃなスピード感で、とにかくUSのマーケットをリサーチしました。

顧客基盤があったので、お客さんのところにヒアリングに行きまくって、実際の管理職にもコンセプトをぶつけまくって、3ヶ月ぐらいで大きな構想を作りました。
プロダクトとAIと人による三位一体で、マネージャーのマネジメント業務を包括的に支援する、マネジメントサクセスプラットフォームという新しい構想を作り上げました。

この構想には、顧客や投資家のみなさんから大きな賛同をいただき、シリーズBで16億円を調達し、無事にラウンドを完了しました。

ここからです。これで終わりじゃぜんぜんないんです。作ってモノを出さなきゃいけないので、ここから経営課題がプロダクトデリバリーに移ってきます。

まず組織を作らなきゃいけません。このゼロイチのプロダクトを作るための僕らの採用戦略は、シンプルに「強いエンジニアを採用する」です。もう小細工不要、優秀な人に会いまくって口説きまくるしかないと僕は思っています。
結果としてスタートアップでCTOをやっていた2名と、強力なMLエンジニアに入っていただき、このAIプロダクトを作れる基盤が出来上がっています。

さらに、開発プロセスにもメスを入れていきます。私たちの顧客は明確で、大手企業の人事部です。期ごとの予算で動き、意思決定も期単位で進みます。
そのタイムラインに僕らのデリバリーを明確にミートさせる必要があったので、従来のボトムアップ型の開発を大きくアンラーンする必要がありました。

ここに関しては、トップダウンで全体を刷新します。働き方、目標管理、プロジェクトマネジメントまで「全部変える」を掲げ、特にプロジェクトマネジメントはデリバリー最優先(納期厳守)に切り替えました。
詳細見積もりして、細かいスケジュール引くというのを1回全部僕がやりにいって、まさかの令和スタートアップでウォーターフォールを始めるということをやっていきました。