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#117 コミューン株式会社 代表取締役CEO 高田優哉氏(全5記事)

プロダクトの進化はしなければいけないが、キメラになってはいけない 「信頼起点経営」を軸にした、コミューンのマルチプロダクト戦略

【3行要約】
・「Commune」のような多様な用途に対応するプロダクト戦略には課題も多くあります。
・コミューン代表の高田氏は「可視化・理解・育成・創造」のサイクルで信頼を構築し、事業成長につなげる思想を展開。
・マルチプロダクト戦略の本質は、市場と共進化しながら一貫した思想のもとで課題解決を提供することにあります。

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いろいろな用途に合わせるための壁をどう乗り越えたか

稲荷田和也氏(以下、稲荷田):プロダクトの話でいくと、最初はBtoC向けに作っていて、それがBtoBにも需要があるって気づかれて。かつ、それがパートナーアライアンス系だったり、従業員向けだったり、いろいろな用途があって。だけど本来はそれらって、それぞれにプロダクトがあっていいぐらい仕様が違ったりとか、あとは海外版とかも、またガラッと変わるんじゃないかなと思うんですけど。

(すべてに適用するようなかたちにするとなると)かなり大きな壁があるんじゃないかなと思っています。そこはどういうふうに乗り越えていらっしゃるんですか?

高田優哉氏(以下、高田):そこについては「そんなことないかな」っていうのが私が思っていることで。なぜかというと、人と組織の間の信頼とか、人と人の間の信頼っていうものを培う、育む。そしてそれが事業になんらかのかたちで貢献するようにする、お金にするっていう、そのプロセスは必ずしも「お客さま向けだから、従業員向けとはぜんぜん違う」というものでもないかなと思ったんですよね。

さらに言うと、「お客さま向け」と言っても、BtoCの企業、例えばベースフードさんのファンコミュニティと、(Communeは)SanSanさん(SanSan株式会社)でも活用いただいていますが、SanSanのユーザーコミュニティで、そこに関わっていらっしゃるSanSanユーザーの方、法人に所属している方が、それぞれ「同じユーザーコミュニティだから」「ファンコミュニティだから」って括りで(プロセスが)一緒かっていうと、たぶんそんなことないと思うんですよね。

他にご支援しているところでいうと、場合によってはSanSanのコミュニティが、例えばトリドールホールディングスさん(株式会社トリドールホールディングス)の「丸亀製麵の従業員の方のコミュニティのほうにちょっと近いところがあるかもしれない」みたいに、あまりパキッと分けられないんじゃないかなというふうに、(コミュニティユーザーは)あくまで個人なので思っていて。今は分けるということよりも、1個の場所であることによるメリットのほうが大きいなと考えてます。

データが共通化されていることのメリット

高田:特に創業当初はというか、拡販し始めた当初は仮説でしかなかったんですけど、直近はデータが見えるようになってきているので、「こうなったらうまくいく」とか「こうなったら微妙だな」とか、このぐらい信頼度が上がるとそのあとの行動変容、例えばもう1個買っていただけるようになる、LTVが上がるみたいな。顧客コミュニティでいうとそうなります(そういう貢献行動がうまれています)。

従業員コミュニティでいうと、NPS、eNPSの結果が上がるとか。結果指標とのつながりも割と共通性があるので、データが共通化されて、体験のレベルアップも共通でできるっていう観点でも、今はメリットのほうが大きいかなと思っています。

コミュニティを育成して信頼を積み重ねるための流れ

稲荷田:今のところに加えて、コミュニティを育成して信頼を積み重ねていくところの、いわゆるファネルというか段階みたいなものは、今回の新プロダクトリリースも含めて、言語化され直した部分もあると思うんですけど、新しいプロダクトとなぞられながら、どんな感じに今は捉えていらっしゃるのかも教えてもらえますか?

高田:ありがとうございます。信頼は大事、その信頼が事業の成長につながるというのも、そのとおり。そのためにコミュニティが果たす役割が非常に大きいっていうことを我々は信じていて。毎日お客さまのコミュニティを見たり、その中での動きを見たりする中で、「やはりコミュニティの価値ってすごくあるなぁ」って毎日実感しているんですね。

ただ、別にコミュニティがすべてではないということも、リアリティとして向き合わなきゃいけないものかなって思っています。我々は信頼起点経営のサイクルというかたちの定義をしているんですけれども、可視化、理解、育成、創造というサイクルを一つひとつのフェーズとして定義しているんですね。

可視化、理解のステップ

高田:それは例えばお客さまでいえば、お客さまの可視化がされていないと、(そもそも)信頼うんぬんの話じゃないじゃないですか。例えば高田商店みたいな路面店をやっているとして、1日で100人来ているのはなんとなくわかるけど、どこの誰かわかっていなかったら、それは可視化できていないことなので。その可視化をしましょうよっていうのがまずはあって。

その上で、どうやったら高田商店に来ている100人の方々が信頼してくれるんだろう、もっと我々のことを好きになってくれるんだろうっていうことを理解するというのが、理解のステップ。

育成、創造のステップ

高田:それがなんとなく「あ、そういうことか」「その時の接客は、こんな感じだったらよかったんだ」とか、「これを買ってくれた人の満足度は高いな。だったらこれはもうちょっと店舗の前のほうで推そう」とかを踏まえて、信頼を上げるというのが育成のステップ。

育成のステップでロイヤルティが上がって信頼が高まった方々がハッピーになるのは、もちろんそれはそれでいいんですけど、そこから高田商店にとっての次のチャンスがほしいじゃないですか。

例えば友だち紹介してくださるとか、その方が(高田商店の人に対して)「すごくいいよ!」って言ってくれたとしても、(高田商店の人からしたら)「いや、私に言ってくれてもいいんだけど、(そのことを)商店街で他の人にしゃべってくれないかな」みたいな。「そうじゃないと、うちにお客さん来ないんだから」というのがあると思うので、いわゆるデジタルな話でいうとUGCと言われたりしますが、それをどうやって外にしっかり出すかみたいな。

そこの面で工夫をするというのが、創造。このサイクルをすると、新たにお客さまが増えて、可視化の必要性が出るっていう。こういったサイクルを今は定義しています。コミュニティは、その中でも特に育成の部分ですね。(育成)に対して非常に大きく貢献するものかなと思っています。

稲荷田:ありがとうございます。

マルチプロダクト思考について

稲荷田:信頼起点経営に昇華された部分と、それぞれのプロダクトの話もいただきましたけれども。とはいえ新プロダクトを一気に同時多発的に提供していくって、かなり大変なのかなと思っていまして。

このあたりを、今度は投資家目線でいくと、岩澤さんはどんなふうに捉えていらっしゃるのかとか、教えてもらえますか?

岩澤脩氏(以下、岩澤):最近、以前のようなマルチプロダクト思考が全否定されてますよね。

稲荷田:うん。1回ガッと広がって(今は)収まってきた感じがしますよね。

岩澤:「AI時代はシングルプロダクトだ」みたいな論調にたぶんなっていると思うんですけど。高田さんのご説明にもあったように、これは「マルチプロダクトをやるべき」みたいなところからの発想にはなっていないと思うんですよね。信頼起点経営っていう、その実現に向けてやらなきゃいけないことなので。

全部がつながって、1つのソリューションとか、プロダクトであるという、そういう位置づけじゃないかなと私は思っているんですけど、間違ってますか?

高田:おっしゃるとおりです。

プロダクトの進化はしなければいけないが、キメラになってはいけない

高田:創業期にあるエンジェル投資家の方にフィードバックいただいたものですごい印象に残っているのが、プロダクトの進化は絶対にしていきたいし、していくんだけれども、「キメラになっちゃいけない」って言われたことがあって。

稲荷田:どういうことですか?

高田:キメラって、まぁ怪物というか。想像上の生き物ですけど、いろいろな動物の強い部分が組み合わさった架空の生物なんですよね。例えば虎のように速いのに、鷲のような大きい翼を持っているみたいな。

プロダクトを作っていると、「いろいろな人のいろんなニーズに応えたい」と思って、気づいたら自分たちがそうなっていく方向にいきそうになるんですよ。

それは自然なことだし、欲求としてはそうあるべきだと思うんですけど。ただ、じゃあそれを1つのソフトウェアで全部やるべきかっていうと、答えはそうじゃない。お客さんは課題解決を求めているのであって、1つのソフトウェアであることを求めているわけじゃなかったりするので。

究極的には、自分たちにとって解決しようとしている課題は1つなんだけれども、それをうまくデリバリーするために区切ると、(結果として)複数のプロダクトになっているというのが、我々の中での整理です。

岩澤:創業してから6年、7年かけて、市場も大きく変わっていると思っていて。コミューンと、そのコミュニティサクセスとか信頼起点経営みたいなのって、実は会社の成長と市場の成長が同時に起こっているんですよね。なので、まさにSanSanもそうだと思いますけど、一番始めにSaaS企業がコミュニティを始めたじゃないですか。

稲荷田:はい。

岩澤:BtoB SaaSはマーケティングをするためにコミュニティが必要であるというのが、たぶんいろいろな産業の中で先行して起こったと思うんですよね。それがtoCにも派生をして、今はEX、従業員の領域にも派生をしてというので、進化をしていて、その市場の変化に伴ってコミューンが提供するものも必然に変わってきたという、そういうことかなと私は捉えていますけどね。

信頼起点経営という思想

稲荷田:今度はSaaSでいくと、プラットフォーム戦略的に、1つのプロダクトでいろいろな機能を搭載していくというよりかは、他社のサービスとうまく組み合わせて使えるようにしていく方向性もある気がしていて。

そういうやり方もあるんじゃないかなと思うんですけど、コミューンさんの場合だと、どちらかというとコミューンさんの機能というか、どんどん別のプロダクトをくっつけていってという話なのかなと思っていて。このあたりって、どういうふうに理解をしたらいいでしょうか?

高田:そうですね。やはり思想かなと思っていまして。そのピースとして、例えばコミュニティを捉えた時に、うまくフィットするような他の役割を持っているソリューションって、世の中にいろいろあるかなと思うんですけど、なんのためにそれをやるのかという最終指標の部分が、信頼起点経営という。(最終指標として)まったく同じ言葉を使っている会社さんはいないので。

まったく同じ言葉でなくてもいいんですけど、同じような方向性であるところもそんなにいなくて。もちろんコミュニティの中で、例えば価値をより提供、価値をレベルアップするためのパートナー企業さまは、営業・販売パートナーさんじゃなくて、ソリューションのほうのパートナーさんは何十社も今いらっしゃって。

ポイントの部分で、例えばそのコミュニティの中でグッズがほしいとなったとしても、別にうちは服屋さんじゃないので、グッズを作っていないじゃないですか。というところで、グッズを作っていただけるような会社さんと連携していたりとか、そういう意味合いでのパートナーシップはあるんですけれども。

ことソフトウェアっていう部分でいうと、ある種、何のために作っているかという点で、自分たちががんばったほうがいいかなと思っているという感じですね。

稲荷田:ありがとうございます。

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