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#117 コミューン株式会社 代表取締役CEO 高田優哉氏(全5記事)

ビジネスは経済性の部分で社会を良くする役割を持っている 働く上で重要な「自己価値の実感」の重要性 [1/2]

【3行要約】
・国際機関を目指して農業経済を学んだエリートが、なぜビジネスの世界へ転身したのか——その原点には「自己価値の実感」という視点がありました。
・高田優哉氏は「経済的インセンティブが社会を動かす力」に着目し、BCGでの4年間を経て起業を決意。
・企業とユーザーの断絶を解消するコミュニティプラットフォーム「Commune」を通じて、ビジネスの新たな可能性を切り拓いています。

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東大で農業経済を専攻した理由

稲荷田和也氏(以下、稲荷田):選ばれた学科も農業関係の学科だったと思うんですけど。これはどんな理由で?

高田優哉氏(以下、高田):そうですね。東大に行きたかったのは、国際機関で働く日本人の方のサンプル数が多いのはどういうところかといった時に、国家公務員から国際機関に出向する方が非常に多いんですね。それは日本の場合、国連の拠出金が多かったり、世界経済の中で今少しプレゼンスが下がっているとはいえ、世界の中で5本の指に入る規模でプレゼンスが大きいので、国家公務員の方が非常によく出向される。

そこから例えば上司に認められてとか、実績を積むことができて、国際機関のキャリアが開けていく。これがある種、目指しやすいものかなと思った時に、国家公務員に一番なる人が多いというか、「なりやすいのってどこだろう?」って考えたら「まぁ、東大かな?」と(笑)。それで東大を選んだというのが理由で。大学に入ってから、最初は国際関係論とか……。

稲荷田:そうですよね。そういうイメージが強かったです。

高田:英語とか、そういうのを勉強しようと思ったんですけど、実際に大学に入った後に、国際機関で働いている方とか、元(国際機関)の方とかにいろいろ話を聞いていったら、「国際関係論を知っています」とか「英語が話せます」っていうのは、日本で仕事をする人が「日本文化を知っています」「日本語話せます」というのと一緒で「それはそうでしょ」みたいな(笑)。

必須要件だけれども差別化要素にはならないということを自分の中で感じて。そういったところにすごく強みがあって国際機関で働かれている方も、実際にはたくさんいらっしゃるんですけど、その方々とはやはり出発点というか、土俵が違いすぎて。日本だけではなく、いろいろなところで生活をしてこられた、多様なカルチャーに触れて来られた方だったりとか。言語的なところでも、日・米どころか「4ヶ国語、5ヶ国語しゃべれます」っていう人だったりとか。

農業は世界的に見るとすごく大きな産業

高田:いろいろな方がいらっしゃる中で「その方面では絶対に勝てないな」と思って。そうだとすると、自分が選ばれるドメインを見つけなきゃいけないと考えて、ポジションがどれぐらいオープンかを調べたんですよ。

そしたら農業って、世界的に見るとすごく大きな産業で。そんなの当たり前なことなんですけど、日本にいると見落としがちですよね。

稲荷田:そうですね。もう根付きすぎてて、当たり前になっちゃってますよね。

高田:そうなんですけど、世界的に見ると、特に途上国の発展をどうやってより強化していくかみたいな時に、農業って非常に重要な産業で。国際機関で農業についてのポジションもたくさんあるんですね。私自身、農業や漁業は、おばあちゃんがやっていたというのもあって、すごく身近な環境で。(自分にとっては)めちゃくちゃ解像度が高いんですけど、大学の同級生とかで、そんなでもない人もいるじゃないですか。

稲荷田:そうですね。どっちかというとぜんぜんわからない。

高田:「作物を育てたことないです」とか、「(作物を育てたことは)ある!」って言ってるけど、夏休みの(宿題で)プチトマト(を育てるだけ)みたいな人とかがいたりとか(笑)。「ジャガイモは芽が出たら食べちゃいけない」と思っている人とか。いろいろな人がいる中で「自分にとってこの領域は、実は有利なのかもしれない」と思って。

ポジションもたくさんあって、自分もがんばれそうなところだということで、ある種、打算的にっていうのが、農業経済を選んだ理由です。

小学生から目指していた国際機関を「違う」と感じた理由

稲荷田:本当に着実に国際機関に行くためのルートを選定されて邁進されてたと思います。そこまでいくと、そのまま突き抜けていきそうですけど、「違った」というのは、何が違ったんですか?

高田:そうですね。国際機関は、その当時、非常に限られた経験から私が「自分には合わない」と思っただけですので。ちょっとディスクレーマーっぽくなっちゃいますけど(笑)。国際機関で活躍している先輩とか、当時一緒にインターンしていた方とかで実際に活躍している人とかもいて、すごく尊敬していますし、意味のある仕事をやっているなと思うんですけど、何によって自分の仕事の価値を感じるかという点で、自分に合わないなと思って。

今、ビジネスの世界にいて、ビジネスの世界って、自分のやっていることの価値をすごく定量的に感じやすい、測りやすい領域だなって思うんですね。我々はソフトウェアとサービスを提供していて、それに対価をいただいているわけじゃないですか。

その対価が1万円だとしたら、それって我々が1万円分の価値を提供しているから1万円をもらえているわけじゃないですか。それで、もっとより良くするために例えば機能を強化してとか、サポートのチームをレベルアップしてとかして(対価が)2万円になりましたってなったら、2倍の価値を感じていただいているということになるじゃないですか。

こういったかたちで、自分たちの価値実感の計算式がすごくわかりやすいし、1万円を2万円に、2万円を3万円にというふうに、どうやったらもっと自分たちの価値を上げられるかが、(わかりやすいほうが)がんばりやすいと私は思っていて。

ただ、国際機関の仕事って、お金によって測りづらいものをより良くするとか、あるいは短期的にはちょっと難しいところで社会を良くしていくとか。そういった側面で価値がある仕事、役割だと思うんですね。グローバルな視点で動きますけど、職種としては公務員ですので。日本の地方公務員の方とか、国家公務員の方とかがやっている仕事をイメージすると、まさにそうかなと。別にお金になるから偉いわけでもぜんぜんないですし。

稲荷田:そうですね。

高田:そういうところじゃなくて、だけど社会を良くするために絶対に必要なものというのに取り組むのが公務員だとなった時に、仕事として意義はあるんだが、自分は……。がんばれない。どれだけがんばったら「これだけの価値が自分にはあったんだ!」っていうことが自分にはわかりづらいので。「自分の中での価値をもっと上げていこう」ということのPDCAがうまく回せる感覚が持てなくて。

それで公務員の道っていうのは自分には合わないのかなと思いました。ちなみに私は3人兄弟で、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいるんですけど。お兄ちゃんとお姉ちゃんは両方、地方の公務員をやっていて。

稲荷田:えぇ! そうなんですね。

高田:わりとその公務員側に行きそうな感じはあったんですけど(笑)。私だけなぜかビジネス側に来ちゃったという感じです。

お金が絡んでくると人の動きはすごく変わる

稲荷田:国際機関のほうだと、本当に環境要因が大きすぎるというか、変数が多いというか。自己責任だけじゃ語れない領域が多すぎてというところなのかなと。

高田:そうですね。あとは、お金が絡まないというのは言い過ぎですけど、お金が絡んだ時の社会の動き方って、すごく大きいなと思ってしまったというのもあって。

例えば温室効果ガスとか、我々が子どもの頃から理科の教室とかに「地球温暖化がヤバい」みたいな(ことが書かれていて)。ホッキョクグマの写真が載っていたりとか。あとは環境破壊でいうと、酸性雨の話とかってよく出てたと思うんですよ。

ずっと「改善しない」って言われていて、それで排出量取引が行われるようになったりとか。場合によっては、そこにペナルティがかかったりするようになったり。

あと、日本だったら、例えばエコな車だったらエコカー減税というものがあったりとか。

稲荷田:ありますね。

高田:お金が絡んでくると、人の動きってやはりすごく変わるんですよね。となった時に、自分の関わらせていただいていたプロジェクトに立ち返ると、食料廃棄をなくそう、減らそうというプロジェクトをやっていて。各国、例えばアメリカでいうと、1人あたり170キロとか180キロぐらい食べられるものを捨てているんですよ。日本は80キロぐらい。

もうちょっと少ないところで、フィンランドとかだと40キロとかなんですが、それって「1人あたり、だいたいいくらぐらいの損失」(という指標)になっていて。

「アメリカだと3億人いるから、これぐらいの損なんです!」「しかも環境も良くなくて、最悪です!」みたいなレポートを作るんですけど。でも、イチ個人として考えたら、自分が別に何万円も捨てているっていう気持ちはなくて。

自分にとっての最適な行動を積み重ねた結果、たまたま捨てることになってるわけじゃないですか。

ビジネスは経済性の部分で社会を良くする役割を持っている

高田:例えばたらこスパゲッティを作る時に「大葉をかけたいな」となっても、大葉って1枚で売ってなくて。

稲荷田:確かに。

高田:バルクで、10枚で売っているじゃないですか。しかも大葉ってすぐに悪くなるじゃないですか。

稲荷田:あれはもったいないですよね。

高田:使うかわからないなって思いながら、たらこスパゲッティの効用を上げるために買うじゃないですか。そのあとの大葉って、結果的に残念ながら捨てることになるかもしれないじゃないですか。でも、自分にとっては、たらこスパゲッティのレベルを上げるっていう高揚のほうが上回っているので、私の中で合理的な意思決定をした結果でしかないんですよね。

稲荷田:そうですね。

高田:なのに、「その大葉は良くない!」「もともと買うべきじゃなかった!」と言われても、イチ個人として考えたら、自分の行動は変えられないかなって思って。でも、「大葉を1枚捨てることに100円の罰金です」って言われてたら、たぶん思い留まっていたと思うんですよ。ということは、経済性がそこに絡むことによって、人の行動って大きく変わる。

私はビジネスって、その経済性の部分で社会を良くする役割を持っていると思っているので、だとすると、自分にとってはビジネスのほうが向いているかなと思ったって感じです。

稲荷田:その点でいくと、BCG(ボストンコンサルティンググループ)はどうでしたか?

高田:BCGは、もう最高の4年間でしたね。

稲荷田:本当ですか(笑)!?

高田:はい。私は新卒から丸4年働かせていただいて。レベルアップというか、自分のビジネスパーソンとして素地を作っていただいた期間でした。本当にすばらしいメンターの方とか、パートナーの方、上司にめぐり合って、感謝しかないっていう感じですね。

いろいろなチャンスもいただきましたし、たくさん怒られましたけど。でも自分の中では総じて本当に人生のターニングポイントになるような期間をいただいて、感謝しているという感じです。

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