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#116 株式会社GROWTH VERSE 代表取締役会長 兼 CTO 南野 充則 氏(全4記事)

あえて「老舗企業」を買収する「AIロールアップ」戦略 M&AもAIも強い「最強の会社」を目指して [1/2]

【3行要約】
・マーケティングの効果測定が曖昧な中、AIが明確なROIをもたらす――GROWTH VERSEのAIツールが顧客データを分析し売上20%アップを実現しました。
・オンライン・オフラインデータの科学化により、実店舗マーケティングも最適化できる時代が到来しています。
・南野充則氏は「ビジネスモデルと人材が経営の核」と語り、老舗企業のM&Aを通じてAI活用領域を拡大しました。

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AIのユースケースを作りまくった

稲荷田和也氏(以下、稲荷田):2021年からAIMSTARさんの中でAIをどんどん実装していったというので、3年間でけっこう軌道に乗っていったような感じですか?

南野充則氏(以下、南野):僕が来てからAIのユースケースをめちゃくちゃ作りまくったので。なので、たぶんAIMSTARはCDPとかマーケティングオートメーションで最初は売っていたんですけど、今は「AIMSTARって、マーケティングをAIでサポートするツールだよね」みたいな認識にどんどん変わってきているんじゃないかなとは思います。

稲荷田:顧客体験としては具体的に、どう変わっていったんですか?

南野:簡単に言うと「CDPとマーケティングオートメーションを入れましょう」という営業は、「じゃあ結局これは、ROIがいくら出るんですか?」と言われた時に答えにくいんですよね。データ基盤を作りましょう、分析しましょう。でも分析した結果、どんなことが出るかわからない。その中で売っていくのは、みんなやろうと思うからやるんですけど。実際ROIは稟議にあげにくいし、売りにくいというのがけっこうありました。

一方で、AIでやっていくと、AIは何かしらのユースケースにひもづいてソリューションになるんですよ。例えばマーケティングにおいては、カタログを送るというマーケティングのアクションがあるんですけど。

例えば、お客さんでいうと月10万通ぐらいカタログを送っています。それは人が選んで10万人に送っているんですよね。僕らのAIを使うと、その10万人をAIが選んでくれるんですよ。すると何が起こるかというと、20パーセントぐらい売上が変わるんですよ。

稲荷田:おぉ。それは、売上が変わるんですか?

南野:売上が変わります。

稲荷田:工数が下がるとかじゃなくて。

南野:AIと人では、10万人の選び方がもうあからさまに違うので。

稲荷田:へー。AIのほうが圧倒的に良いんですね。

南野:20パーセントぐらい上がります。だから「今、人が選んでいますよね?」「AIがやるとだいたい15パーセントから20パーセント上がります」という営業に変わるんです。すると、だいたい月に10万通ぐらい送っている会社とかだと、売上が2,000万円ぐらい上がるんですよね。

稲荷田:めちゃくちゃ違いますね。

南野:はい。という売り方に変わるんですよ。なのでROI訴求で売れるようになるのが、たぶんAIの売り方で。もともとは「CDPでマーケティングオートメーションをしていくべきですよね?」「人がやっていますよね?」みたいな営業なんですよ。だから響きがぜんぜん違うんですよ。というようなことに変えていっているのが、やっていることですかね。

稲荷田:入れてやっている感が出るとかじゃなくて、明確に変わるということですよね。

南野:明確に。社長に「これを入れてどうなった?」「出ました! 粗利が1億円です」みたいな。パッと答えられるので。そういう売り方もしますし、入れたあとの成果が出た時にPRもそれでやっていくみたいな。するとみんなわかりやすいので「じゃあ、これを使いたいな」と。

でもマーケティングアクションはDMだけじゃなくて、メールを送ったり、LINEを送ったり、電話したり、いろんなアクションがあるんですけど。それぞれにAIが付いてくるので、「DMがうまくいったら、次はLINEをやりましょう」「じゃあ、サイトにレコメンドエンジンを入れましょう」とか。しかも、使うデータは一緒なので、1回基盤を入れちゃうと、もう簡単に展開できるんですよね。なので、どんどん横展開できるみたいなところも1個おもしろいなと思っています。

自動音声応答サービスの会社を買収した理由

稲荷田:なるほど。AIMSTARさんは引き続き主力事業であり続ける感じですか?

南野:AIMSTARはまだまだ伸びる余地があると思っているので、どんどんやっていきたいなと思っています。AIMSTARはどちらかというと、マーケティング領域でどんどん伸ばしていければいいなと。

それで新しく今回電話の会社を買ったので、カスタマーサポート領域や音声領域はDHK、電話放送局でやっていくといったところで、いろんなセグメントでいろいろ伸ばしていきながら、また新しいセグメントが増えるかもしれないです。あとはマーケティングでも1回違う会社を買うかもしれない。そういったことを今、模索しながら進めています。

稲荷田:その電話の買収の話もありましたけど、ちょうど3社目になるんですかね? そこを先に聞いてしまうと、これは自動音声応答のサービスだと思うんですけど、これを買収された理由を聞いてもいいですか?

南野:僕たちのM&Aの方針としては、対お客さん業務というのを中心に買っていっています。なので、マーケティングは対お客さんじゃないですか。あとはカスタマーサポートも対お客さんだったりとか。そうやってお客さんの接している業務を中心にAI化していこうと考えているので、そういったメールとか、LINEとか、お客さんが接するいろんな場所をどんどん開拓していこうと思っています。

その中で電話は「お客さんがもう明らかに電話してきますよね」であったり、「こちらが電話をかけますよね」というところで、すごくいいチャネルなんですよね。しかもこの音声は、AIによってより進化していく1個のセクターでもあるので。「この音声領域は絶対にやりたいな」と思っていたんですよ。その時に、いろいろ探した中で電話放送局さんとご縁があったといったところですかね。

あえて老舗会社を買う

稲荷田:最近、その自動音声応答系のAIスタートアップは増えてきた気がしますけど。あえてこの老舗会社さんを買った理由は、どんなところになるんですか?

南野:僕たちと相性が良いのは、老舗の会社なんですよ。AIMSTARもそうなんですけど、老舗からやっていて、いろんないいお客さんを持っています。一方で、これからAIをやっていかなきゃいけないのに、そのAI人材を集めるノウハウや余力、あとはマネジメントができなくて困っている人たち。

というのが僕たちと一番相性が良いと思っています。なぜならば、買ってきたあとに一緒にグループに入ってもらったら、そのお客さんにAIを提案すれば、すぐにAIが搭載されるんですよね。なので、そういうAIができないけどお客さんをけっこう持っていて、ドメイン知識が強いところのセクターが一番相性が良いと思っています。

そういったところで、進行形の音声AIスタートアップもけっこう出てきているんですけど、まだお客さんが、これからついていくようなところなので。今買っちゃってもお客さんがそんなにいないですし、プラスAIもすでにやっちゃっているので、僕らの介入余地も少ないし、バリューもそんなに出せないというところで。AIができなくて、お客さんをいっぱい持っていて、それでちょっと困っているみたいな人たちと一緒にやるのが一番効率が良いなとは思っています。

稲荷田:自分たちでゼロから立ち上げるのもすごく時間がかかっちゃいますし、開発工数も上がるので、その開発力と技術力を新規事業で使うというよりは、買ってきた会社に全力で注ぎ込んだほうが、当然最短だよなというところですよね。

南野:はい。AI事業を新規で作るのは、この2つの探索が必要なんですね。1つは事業モデルが正しいのかという探索です。このドメインの、この事業はこれから伸びるのかみたいなのを探索しながら作っていくわけなんですよね。それでドメイン知識もここから得ていきましょうと。

2つ目の探索は、そのドメインにAIが刺さるのか、AIと相性がいいドメインなのか。実装できるのか、技術的に可能なのかみたいな検証も必要じゃないですか。すると2回探索が必要で、例えば失敗確率が80パーセントとした時に、成功する確率はめちゃくちゃ少ないんですよ。一方で、M&Aしてくるというビジネス自体はあります。それでノウハウも持っている状態でうちのグループに入ってきてもらうと、AIの探索をすればいいだけなんですよ。すると圧倒的に成功確率が上がる。

稲荷田:確かに。

南野:といったところで、僕たちがけっこうM&Aを主体としているのは、そういうロジックでやっているからです。

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