【3行要約】 ・ポッドキャスト番組『Startup Now』が特別編として、ベンチャーキャピタル「ALPHA」にインタビューを行いました。
・ベンチャー投資では有名企業への投資が注目されがちですが、「知る人ぞ知る優良企業」の発掘という異なるアプローチも存在します。
・田中正人氏は自身の投資経験から「構造的強みがあり長期的に伸びる企業」を見極める姿勢を貫いています。
前回の記事はこちら ANYCOLOR、BASEなどに投資した経験
稲荷田和也氏(以下、稲荷田):(立岡氏のキャリアの話を踏まえて)ありがとうございます。じゃあ、田中さんにも聞きたいんですけれども。
田中正人氏(以下、田中):ありがとうございます。
稲荷田:よかったら投資家歴、強み的なところも併せて教えてほしいんですが。どうでしょう?
田中:SBIにいた16年、オリックスにいた2年で40社弱ぐらい投資をさせてもらってきたんですけども。その中でうまくいった会社だなと思っているのがビジョナルさんとか、ANYCOLORさんとか、BASEさんとか。これから楽しめるところとしては五常・アンド・カンパニーさんとか、Sales Markerさんとか、そういうところが有名ですかね。
ただ自分として、自分らしい投資だなと思っているのは、2年前ぐらいに上場したギックスさんというDXコンサルをやっている会社さん。あとスペースマーケットさんの競合なんですけど、「インスタベース」というスペースのシェアリング事業をやっているRebaseさんとかは知る人ぞ知る優良企業。外部投資家としては私だけ入っている、みたいな上場案件は自分らしいなぁと思っています。
稲荷田:どのあたりがですか?
田中:やっぱり構造的に強みがあって、長期的に伸び続ける。VC業界ではあんまり有名じゃないんだけど(笑)、ピリリといいものを持っている会社を人知れず発掘して投資するのが自分の強みかなと思っているので。
もちろんメルカリさんとか、ああいう本当にすごい会社に投資するのは目指しつつも、“いぶし銀”じゃないんですけど、(そういった)企業を発掘するところを、ALPHAでもよりやっていきたいなと思っています。
企業ではなく“伸びる領域”から探す
稲荷田:いぶし銀企業を発掘するコツって何ですか?
田中:そうですね、私は比較的、投資仮説というんですかね。こういった事業・領域・テーマ・技術が5年~10年で伸びるんじゃないかみたいなものを、ある程度の仮説を立てて起業家を見つけにいくスタイルを重視しています。そこが1つのポイントなんじゃないかなと思っていますね。
稲荷田:もうこの会社に投資するから、そのマーケット観とかをリサーチして仮説を作るというか、その前の段階からこの業界でこういう領域があるんじゃないかというのを張った上で探しに行くということですか?
田中:そうですね。比較的そういうスタイルをとっています。やっぱり本当に優秀な起業家は投資家を選べるので。本当に優秀な業界に投資するのは、VC業界のヒエラルキーのもっと最上位層にいないとなかなかできない。やっぱり自分は若手の中でそういう立ち位置にはいなかったんです。
そういうゲームというか土俵の中で戦っていたら勝てないんだろうなと思ったので、多くのキャピタリストがまだ注目していない領域とか、関心がない領域に投資をしていて、リターンをコツコツ稼いでいましたね。
投資におけるリターンとリスクのバランス
稲荷田:そのスタイルはALPHAさんでもやっていきたいみたいな話も先ほどいただきました。逆に言えば、今のお二人の状況だったら、いわゆる超人気案件をいいポジションで取りにいくこともできるんじゃないかなと思っちゃったりするんですが。それだけじゃなくて、そういった案件もやり続けたいのはどうしてですか?
田中:僕のもう1つ大事な投資の考え方として、やっぱりリスク・リターンのバランスを考えるというものがあります。みなさん大きなリターンを出した案件が成功案件だとおっしゃっていると思うんです。
それは別に間違いないんですけど、僕の中ではどれだけリスクを取ったかも、運用事業者としてはけっこう重要なんじゃないかなと思っていて。本当に大博打で(リターンが)100倍の案件と、ほぼリスクを取っていないのに5倍~10倍狙える案件だったら、どっちが優れた投資なのかというと、判断はなかなか難しいんじゃないかなとは思っています。
だから単純にリターンを出すだけじゃなくて、どれだけリスクを取るか。総合的に考えて投資をしているのが1つあるんじゃないかなと思っていますね。
“独立するんだったら日本一のVCを作りたい”
稲荷田:ありがとうございます。お二人のお付き合いはもう10年以上前から、みたいなことをうかがっています。(出会った)きっかけは、もはや覚えていないかもしれないですけど、どういう感じでご一緒してきたかとか、そういう思い出とか。なんで合流したのかみたいなところも教えていただきたいんですけど、どうでしょう?
田中:具体的な案件としては、10年前ぐらいに一緒にシード案件に投資をして、立岡さんが、たぶんまだ創業者と従業員が1名いるかいないかぐらいのタイミングで先に投資をされていて。少し経って私が投資をさせていただいた案件があったんです。
その案件は結果としてあんまりうまくいかなかったんですけど、かなり密にハードシングスをくぐり抜けたり、最後M&Aでイグジットしていくんですけれども、いろんな難しい判断を迫られていて。
本当に土日も時間を惜しまずミーティングをしていた中で、人となりというか、すばらしいキャピタリストだなと思っていました。どこかで独立するんだったら立岡さんとやりたいなという思いがずっとありましたね。
あとグローバル・ブレインとSBIの、大手ファームのすごい投資をやっているので。立岡さんはどんなことを言っていたとか、どんな投資をされているかとか、この案件に対してどう評価をしたとかは、部下からレポートが来るんですよね。そういったいろんなさまざまな案件で(立岡さんのことを聞いていた)。
あとは起業家のいろんな人から「断られたんだけど、立岡さんはすごく尊敬しています」みたいなことを聞いたりしていて。僕がもし独立するんだったら日本一のVCを作りたいなと思っていたので、それであれば立岡さんと一緒にやりたいなという思いは、ずっとありましたね。
稲荷田:熱いですね。
田中:はい(笑)。