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#111 株式会社穴熊 代表取締役 西村成城氏(全4記事)

電話は“文字で同時進行”へ NTTドコモ・ベンチャーズが見た「Jiffcy」の必然と伸びしろ

【3行要約】
・「声を出せない瞬間」という普遍的な課題に対し、リアルタイムテキスト通話 「Jiffcy」が新たな解決策を提供。
・NTTドコモ・ベンチャーズの三好氏はコミュニケーションの進化形として、自社サービスのカニバリを恐れず投資を決断しました。
・三好氏は「電話の代替」としてだけでなく、世代間の橋渡しとなる可能性に期待を寄せています。

前回の記事はこちら

NTTドコモ・ベンチャーズとは

稲荷田和也氏(以下、稲荷田):声で届ける起業家の物語『Startup Now』。株式会社穴熊(※取材当時 2025年9月1日より株式会社Jiffcyに社名変更) 代表取締役の西村成城さんへのインタビューの続きをお送りします。後編では、投資家である、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Managing Directorの三好大介さんを交えて、「Jiffcy」の魅力に迫っていきたいと思います。

それでは三好さん、まずは1、2分程度でファンドおよびご自身の自己紹介をお願いできますか。

三好大介氏(以下、三好):NTTドコモ・ベンチャーズの三好と申します。よろしくお願いします。

私たちはNTTドコモだけではなく、NTTグループ全体のCVC(Corporate Venture Capital)としての機能を持っています。NTTの持ち株会社のファンドと、NTTドコモのファンド、この2種類を併せて運用する、コーポレートベンチャーキャピタルです。

三好氏の自己紹介とCVCの歩み

三好:経歴を簡潔にお話しすると、私は前身のドコモ・ドットコムに2007年に合流し、2013年にNTTドコモ・ベンチャーズという名前で活動開始してからも在籍して、2017年まで勤務しました。NTTドコモのCVCとして約10年間、投資業務を担当しています。その後はいったん退職し、約6年間は別事業に従事していました。

稲荷田:え? そうなんですか。

三好:2年前に帰ってきたので、合わせて12年ですね。NTTドコモだけでなく、途中からはNTTグループ全体を含めたCVCとしての投資をやっています。よろしくお願いいたします。

稲荷田:よろしくお願いします。

西村成城氏(以下、西村):よろしくお願いします。

起業家・西村成城氏への第一印象

稲荷田:かなりいろいろな起業家さんに、投資をしたり出会われてきたりしたと思うので、その方々との西村さんの違いなんかも、後で聞きたいなとは思います。実は前編もご同席をしていただいていたので、まずは聞かれてみてのご感想とか、「こんなことを感じた」とかありましたら、教えてください。

三好:そうですね。初めてうかがうエピソードもありましたが、話しぶりからも「昔からこのスタイルでやってこられたのだな」と感じます。自分のやりたいことをやり続ける姿勢は本当にすばらしい。だからこそ、「Jiffcy」は「西村さん、がんばって」で終わらせず、私たちも一緒に形にして、大きなビジネスへ育てていきたいと思っています。

稲荷田:いいですね、西村さん。ニコニコしながら聞いていただいて。

西村:ありがとうございます。

出会いと投資検討のきっかけ

稲荷田:ちなみにお二人、ないしは西村さんとNTTドコモ・ベンチャーズさんはいつぐらいからご一緒しているんですか?

西村:出会いはどうでしょう……今年(2025年)になって、既存の投資していただいているベンチャーキャピタルの方からご紹介いただきました。オンラインでお話しして、「なんかおもしろそうじゃない?」みたいな、雰囲気でした。

稲荷田:いいですね。「おもしろそうじゃない?」というのは、NTTドコモ・ベンチャーズさんから見て、「Jiffcy」のことですよね。

西村:そうですね。「『おもしろそうじゃない?』って思われているんじゃない?」という感じでした。

Jiffcyの核心「同期×文字化が拓く体験」

稲荷田:そのメタ認知の感じ、おもしろいですね。実際三好さんはどう思われていたんですか?

三好:我々はコミュニケーションの会社なので、新しいコミュニケーションのかたちをやはり作っていきたいし、そういうことにチャレンジしたいなと、ふだんから考えています。そういう意味では、ものすごくおもしろいサービスだと思いました。

リアルタイムとバッチ処理、同期・非同期の世界でいうと、例えばニコニコ動画さんは、非同期なのに同期っぽく見えるというフォーマットを作った画期的なサービスだと思っていますが、「Jiffcy」は「それっぽく見える」ではなく、本当に同期で、リアルタイム処理をしています。我々は電話がもともとメインの会社で「音」ですが、これを「文字」にする。なるほどなと(思いました)。

かつ、先ほど西村さんが言われていましたが、LINEなど、世には同じことができるサービス自体はあるけれども、そういうかたちでみんなは使っていないので、新しくフォーマットを切り直したほうが、使いやすいんじゃないかという点で、すばらしくおもしろいサービスだなと思っています。

感覚ではなくデータで判断する

稲荷田:確かに。投資する中で、実際に体験したりとか触ってみたりすることが、けっこう大事だと聞くことがあるんですが、逆に言えば、「Jiffcy」を使っているのは若い方が多いのかなという気もしています。その点だと、肌感がつかみにくかったんじゃないかなとかも思うのですが、そのあたりは実際どうでしたか?

三好:そうですね。西村さんから見た時に、(私は)倍ぐらい上の年齢なので、同じ感覚を持つのはもう無理なんだと割り切っています。NTTドコモ・ベンチャーズの人間も、やはり30代・40代がメインになっているので、「Jiffcy」のユーザーよりさらにちょっと上の世代です。我々の身の回りだけでは、たぶんわからなかっただろうと思っています。

ただ、数字が伸びている。使っているユーザーがいるのは絶対の事実なので、そこを信じています。我々の感覚だけで判断するんじゃなくて、数字を見ながら判断しています。あとは世の流れとして、電話(音声通話)の利用が減っているのもおそらく事実なので、電話が減っている分チャットに行ったり、文字に流れているというのもあるので、そういう意味で言うと、ものすごくわかりやすいトレンドなのかなと思っています。

「Jiffcy」が解く“声を出せない瞬間”

稲荷田:ありがとうございます。西村さんに聞いてみたいのですが、いわゆるビジネスでやっていくとなると、「じゃあ何の課題を解決しているの?」みたいな話が多いと思います。そういうフレームでも回答ができるのか、あるいは「そういう話じゃないんです」みたいな角度なのかでいうと、どうでしょうか。

西村:そういうフレームでも回答はできます。と言うのも、いろいろなサービスをやる中で、従来の行動みたいなものがあった時に、新しいサービスが使われるかどうかは、新しい行動を促すことではなく、既存の行動の置き換えとして優位性があるかみたいなところが、きっかけとして重要だと思っていて、そこはけっこう重視しています。

「Jiffcy」の場合は、「電話をしたいけれども声を出せない」というシーンが誰しもあるというのがポイントです。頻度が多いわけではありませんが、電車の中で電話かかってきて嫌な思いをしたり、わざわざ、よくわからない駅で降りて電話したりなど、したことがある人がたくさんいると思います。

稲荷田:確かに。ありますね。

西村:そういったシーンに「Jiffcy」が入っていたら、もう「Jiffcy」しか選択肢がなくなるというので、そこのニーズはがっちり捉えています。

ただ、そこで「Jiffcy」を体験すると、そういったシチュエーションじゃなくても、「別に音声通話じゃなくて、テキスト通話でよくない?」という、「なんで今まで音声通話していたんだろう?」みたいな感じで、「Jiffcy」ばかり使っていくようになります。

カニバリを恐れない、コミュニケーション進化論

稲荷田:まさに先ほど三好さんが、「電話が使われなくなってきている」とお話ししていましたが、まさに電話に打って変わるのが、「Jiffcy」なんじゃないかとも、思われたということですか?

三好:今はそうではないけれども、将来その方向に動いていくんだろうなというのを期待していますね。

稲荷田:電話の代替になるようなサービスに加担するじゃないですが、そうやって自社のサービスをある意味破壊していくというか……場合によってはそういう捉え方もあると思いますが、そこに対する躊躇する感覚はなかったんですか?

三好:そうですね。私たちはコミュニケーションの会社だと考えています。コミュニケーションの形には、電話があり、メールがあり、メッセンジャーがあります。その進化形の一つとして一本道かどうかはわかりませんが、「Jiffcy」が位置づけられるのではないかと考えています。

音声世代とテキスト世代、その橋渡しとしての「Jiffcy」

稲荷田:なるほど、ありがとうございます。「コミュニケーションの可能性を解放する」というところも、西村さんは掲げていらっしゃると思いますが、コミュニケーションの可能性として、今こういうところが閉じられているとか、逆にこういうふうにやっていけばコミュニケーションはもっと解放されるとか。

あと、昔のメッセージは「人類の可能性」みたいなところもあったと思うんですが、このあたりに込めている想いも、あらためて教えていただけますか。

西村:「コミュニケーションの可能性を解放する」というのを「Jiffcy」のミッションとして掲げていて、その先にあるビジョンを、「人類の可能性を解放する」に帰結させています。

「コミュニケーションの可能性を解放する」の、可能性が何なのかというと、私は、自分の思っていることを相手に誤解なく伝えることができて、かつ、伝えること自体のハードルがほぼないような状態が理想だと思っています。

だから、「伝えるべきだ」と思った時に適切に伝えられることが、コミュニケーションの最終形態だと思っています。それを私たちは「テレパシー」と呼んでいるのですが、その理想のコミュニケーションから考えると、今のコミュニケーションは、テキストを指で打ったり、声を発することによって周りにも聞かれたりなど、いろいろな制約があります。

コミュニケーション全体の理想形が1平方メートルぐらいだとすると、まだ10平方センチメートルぐらいのコミュニケーションのニーズしか満たせていないと思っているんですね。

「Jiffcy」は、その面積を多少広げるものではありますが、音声通話をテキストでできるようになったところで、テレパシーには程遠いと思っているんですね。ここをいかに誤解なく相手に伝えられて、しかもコミュニケーション自体のハードルを下げられるかというチャレンジをしていきたいと思っています。

おじいちゃん・おばあちゃんになってくると、スワイプ入力も厳しいと思うので、音声通話をする感じになります。でも、Z世代やα世代からすると、音声通話はけっこう心理的ハードルも高い。

おじいちゃん・おばあちゃんは音声通話をしているけど、Z世代・α世代はテキスト通話をしているみたいな感じを、自然に実現できると思っていて、そういうことを達成していった結果、コミュニケーションの可能性は解放されると思っています。

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