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#111 株式会社穴熊 代表取締役 西村成城氏(全4記事)

電話はためらう、LINEは返事を待つのがもどかしい… 声を出さずにリアルタイムで“話せる”第3の選択肢

【3行要約】
・テキスト×リアルタイムの新しいコミュニケーション「Jiffcy」は、既存の連絡手段では満たせない隙間のニーズを埋める新サービスとして注目されています。
・西村成城氏は「コロナ禍で深い会話がしたいのに電話は相手に負担をかける」という課題から、お互いがその場にいる前提のテキストチャットを考案。
・「Jiffcy」は音声通話より心理的ハードルが低く、既存メッセージより深いつながりが生まれるため、ビジネスからプライベートまで幅広い場面で活用できます。

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情熱の矛先は“作ること”

稲荷田和也氏(以下、稲荷田):もう1個その件で聞きたいのは、たぶん20、30ぐらいサービスやられて、今2、3個ぐらいおっしゃっていただいたんですけど、ビジネス的に成功したかどうかはちょっといったん置いておいて、西村さん的にあの挑戦ができて一番おもしろかったなとか、あれはみんなに評価されたわけじゃないけど、自分的にはすごいワクワクしたなとか、そういうものってありますか?

西村成城氏(以下、西村):自分的にすごくワクワクしたもの。いや、ワクワクしていないからサービス終了したというのがあって。

稲荷田:全部?

西村:はい。なので、今思えばワクワクしたものはないです。

稲荷田:へえ〜。最終的には続けられなかったということになるんですかね。

西村:そうですね。モチベが続かないとか、これに人生を賭けられるほどじゃないなという。

稲荷田:とはいえ、その一歩を踏み出してやってみるというのは、実験的な感じなんですか。やる気なかったら、そもそもやれもしないんじゃないかなと、僕なんかは思ったりもしちゃうんですけど。

西村:そこは一種の実験みたいな感じですね。このビジネスモデルがこの業界にないから持って来てみようとか。あとは自分の周りの人がこういうのを欲しがっていたから作ってみようという感じでやっていて、もう作ることに対してのモチベがすごいんですよね。その作ったもので世界をどうするかというモチベーションがあるわけじゃないんです。

コロナ禍の手触りから生まれた「Jiffcy」

稲荷田:なるほど。そこから今の「Jiffcy」に着想して、他の事業も閉じつつ専念されたということですが、着想自体はコロナ禍ぐらいに出てきたんでしたっけ? そのあたりのエピソードも少しいただけますか。

西村:はい。着想は2021年末ぐらいです。いろいろなサービスをやって、サービスを終了してなにもなくなったタイミングの時でしたね。

稲荷田:どこからアイデアが降って来たんですか。

西村:それまでは新ビジネスのアイデアは、アメリカのスタートアップとかアメリカで大きくなったけど日本にないものとか、ビジネスモデルの類型みたいなものからいろいろ考えたりしていたんですけど、「Jiffcy」の場合はぜんぜん違って、自分がこういうものが欲しいと思ったものなんですよね。

いろいろなサービスを失敗して終了して何もない中で、仲が良い人とけっこう深く話したいという中で、コロナで会うこともできない。電話しても相手は家にいる。家にいる時に電話がかかってきたら嫌だなという、その相手の気持ちとかも考えたんです。

かと言ってテキストで「今話せる?」っていう感じで、話すような感じじゃないし、返事も遅いし、ちょうどいいのがないと思ったんですね。じゃあテキストで絶対にそこにいなきゃいけないというルールで会話したらどうなんだろうと思ったんです。

だからきりがいいところまで話すまで、このルームを出ちゃダメというルールで会話してみようよというのを、まずLINEでやったんですね。

稲荷田:へえ、そういうスタートだったんですね。

西村:はい。そうすると、いつもと同じLINEなのにぜんぜん違う感覚がすごくあったんです。すごく盛り上がったんですよ。

しかも1回トークすると、1時間ぐらいひたすらやっていて、これってLINEであってLINEじゃないねみたいなところで。もうその時は、ビジネス目線はなにも考えずに、新しいコミュニケーションの存在を見つけた、じゃあそれを作ってみようという感じで、Jiffcyプロジェクトがスタートしました。

稲荷田:LINEの中でそういうルールでやるだけじゃやっぱり違うというか、やっぱり専用のサービス・アプリが必要だとなったんですね。

西村:LINEの中で、普通のユーザーがルールを強要することはできないじゃないですか。今からきりがいいとこまで話そうぜ、みたいな。

稲荷田:ふふふふっ(笑)。

西村:そういう文化を作るのは無理だと思ったんですけど、その先にある体験は絶対価値があると思ったので、それを前提としたものを作りたいなと思ったんです。

テキスト×リアルタイムがもたらす“対面感”

稲荷田:価値があるというのは、本当に人と人とのつながりとか、この状況でしか起き得ないコミュニケーションがあるんじゃなかろうかとか、そういう話なんですか。

西村:そうですね。実際にそれを体験したので、これはあるって思って。

稲荷田:難しいと思いますが、そこの体験をもうちょっと言語化すると、ふだんのLINEとどういう違いがあったんですか。

西村:相手がそこにいるという保証があるだけで、気軽な冗談も言えたりするんですよね。

稲荷田:はあー。

西村:LINEで悪口を言ったとすると、そのまま相手から返信がなかったら、ガチ感が出るじゃないですか。でもきりがいいとこまで話すというルールだったら、対面で悪口を言うみたいな感じで、冗談というのがすごく伝わるんですよね。

同じテキストを使っているのに、伝わるものが違うというのを感じたんです。

稲荷田:それは心理的な安全性みたいなものもあって、ちょっと躊躇しちゃうようなことも言えるし、受け取ってもらえた時の喜びがあるから、より深い関係性ができていくとか、そういうことなんですか。

西村:そうですね。終わった後に仲良くなっているという。これはすごいなと思いました。それまでもいろいろ思いついたことがあったら、既存のツールでそのシチュエーションを試してみたりしていたんですけど、この「Jiffcy」の原型のテキスト×リアルタイムというところはまったく違っていて、明らかに価値があるし、既存のやり方だと自然には実現できないものだと思ったんですよね。

既存ニーズの置換と新しいニーズの発掘

稲荷田:今コロナ禍はある意味終わって、外にも出られるようになってきたわけじゃないですか。それでいくと、誰がどう使っているかみたいな変化はあるんですか。

西村:単純に音声通話よりハードルが低い音声通話みたいな扱いになっているなというのはあります。音声通話をするまでに至らないけれども、けっこう早めに返事が欲しいとか、これを話し合っておきたいという時に、今までだったら何もせずに悶々としてたんですけど、「Jiffcy」で通話的のハードルが下がったから、「Jiffcy」かけるみたいな。

受け取る側も電話とはまったく違う体験ということがわかっていて、ストレスがほぼないことがわかっているので、音声通話だったら出ないけど、「Jiffcy」なら出るとか。

稲荷田:なるほど。

西村:あとは単純に、家族が家にいる時は音声通話はできないけれど、「Jiffcy」ならできるとか。音声通話の一部を置き換えていくというニーズと、音声通話に至らなかったけどテキストでは合うというニーズ。既存のメッセージングだと不十分みたいなところで「Jiffcy」が使われています。既存のニーズを満たしているのと、新たなニーズを発掘してるという、両方の側面があります。

稲荷田:確かに。例えば仕事中とか電車に乗っている時に妻から突発的に電話がかかってくることがよくあるんですが、僕も電話を取るのがけっこう苦手なんですよ。しかも出れない環境もあったりするから。「え? なに?」と思うわけですよ。

けっこうドキッとするし、大変なことあったのかなとか思うけれど、出れなかったりして、仕方なく切って。でもそこからLINEが来ていなかったりすると、今のなんなんだろみたいなことを思って、ハラハラしちゃう自分もいて。まさにそういうところとかでヒットしたりするんですかね。

西村:そうですね。まさにヒットすると思います。あと「卵買って来て」とか「何時に帰ってくるの?」みたいな。

稲荷田:本当にそう(笑)、緊急なんだろうなと思って無理やり電話を取ったけれど、今言ったような、なんでもない日常の会話だったりもして。

西村:緊急性はあるけど、重要性はかなり低いみたいな。

稲荷田:うんうん。

西村:よくありますよね。

稲荷田:それは確かに。年齢問わずありそうなニーズですね。

西村:はい。なので今は、学生のユーザーが多いんですが、社会人のユーザーもいます。社会人のユーザーも学生と同じぐらい長く使い続けていますね。

稲荷田:へえ、おもしろいですね。そっか、じゃあ別に夜ダラダラと、恋人同士で電話つなげるみたいなニーズだけじゃないんですね。けっこう広くなってきているんですね。

西村:はい。

稲荷田:ありがとうございます。創業の経緯から、サービスの話も詳しく聞いてきましたが、いったん前編はこんなところにしようかなと思います。後編ではまた事業について投資家さんを交えながらその魅力により深く迫っていきたいなと思っています。西村さん、そしてお聞きいただいたあなたも、ありがとうございました。

西村:ありがとうございました。

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