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#107 株式会社ヘンリー 代表取締役 逆瀬川光人氏(全4記事)

圧倒的な先行サービスにどう追いつくか? 後発名刺アプリをグロースさせた“後取り”の戦略 [1/2]

3行要約】
・クラウド型電子カルテ・レセコンシステム「Henry」を提供する株式会社ヘンリーの逆瀬川光人氏に、事業内容や学生時代の生活について聞きました。
・未経験でデザイナーとして就職など、常に挑戦を続けたこれまでのキャリアを振り返ります。
・楽天のスマートフォンの戦略組織事業や名刺アプリサービスなど、これまでに関わったサービスでの経験について語ります。

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フェアトレードサークルでの挑戦

稲荷田和也氏(以下、稲荷田):いいですね。先ほど、大学ではフェアトレード推進サークルにいたとおっしゃっていましたけど、これは何なんでしょうか? 「フェアトレード」という言葉は聞いたことはありますが、まずそういうサークルがあることがすごいなと思うんですけど。

逆瀬川光人氏(以下、逆瀬川):そうですね。大学でまちづくり系のサークルが何個かあって、その中の1つに、一橋大学がある国立の街にフェアトレードを普及させていくという(目標のサークルがありました)。

フェアトレード自体は、(発展途上国の生産者との)公正取引(というような意味)で、なるべく直接取引することによって、買う方も(公正な価格で)安く買えるし、売る方もマージンとかを抜かれることなく高く売れる仕組みです。そういったものをちゃんと認知させて、普及させていこうというサークルだったんです。

それを国立の街に広める方法として、我々は大学の時にチョコレートをリパッケージングして売っていました。だいたい通常の年は500個ぐらい売っているんですけど、何を思ったのか、3,000個ぐらい勝手に……。

稲荷田:えー(笑)。

泥臭い営業で3,000個のチョコを売り切る

逆瀬川:数をさばいた方が普及するじゃないですか。高めを目指してやっていこうと、親とかからお金を借りて、代表と副代表なので勝手に買っちゃって、さばく、みたいなことをやりました。(いつもの)倍ぐらいは売れたんですけど、残りの2,000個ぐらいはまったく売れなくて、めちゃくちゃ大変でした。

稲荷田:その2,000個はどうしたんですか?

逆瀬川:それは本当に、トップ営業じゃないですけど、いろんなところのNPOのイベントとかに顔を出して、「売らせてもらえませんかね?」みたいなことを言っていました。

たまたまその時期がバレンタインのタイミングで、あるNPOさんから「ブースを高島屋に出すから、一緒に売る?」みたいな声掛けをしていただいたんです。それで「ありがとうございます。じゃあ、代わりに店番をやりますね」と言って、無事2,000個をはけて、やり切りましたね。

稲荷田:(笑)。へぇ、すごい。やはり圧倒的な目標を掲げて、やると決めたら(結果が)ついてくるんですね。

逆瀬川:いや、でもそこですごく大きい失敗もしていて。

稲荷田:何ですか?

組織崩壊から学んだこと

逆瀬川:けっこう「楽しそうなことはどんどんやっていこう」みたいなことを掲げてやっていたんですけど、結局やり切れなかったんです。ビジョンというか、「おもしろそう」みたいな軸がブレていたからです。当時は勧誘もうまくいって、もともと7人ぐらいだったところが20~30人ぐらいになったんです。

稲荷田:おー、すごい。

逆瀬川:けれども、最終的にチョコレートを売り始めるタイミングには、また7~8人ぐらいに戻っていました。いわゆる組織崩壊じゃないですけど、大量に人が集まって、辞めていく経験もしました。やはり勢いだけの思いつきでやるのは本当に良くないなと、その当時に学びました。

稲荷田:なるほど。ちょっと僕も見切り発車タイプなので、だいぶ刺さる部分がありました。でもサークルと言いながら、本当に起業体験みたいな感じですね。

逆瀬川:当時はそういうつもりではなかったんですけど、振り返ってみるとその部分もあったなと思いますね。

新卒で楽天を選んだ理由

稲荷田:なるほど。じゃあ、ちょっとキャリアも聞きたいです。先ほどおっしゃっていたのは、どちらかというと社会貢献軸が非常に強そうだなと思ったんです。逆に新卒で入られた楽天さんは、しっかりとビジネスをしていくイメージがあったりするんですが、そのあたりはどういう選択だったんでしょう?

逆瀬川:楽天を選んだ理由はけっこうシンプルです。しっかり働けるところ。あと、ある程度実入りがいいという2軸で選んでいました。

当時、環境が一番重要だと思っていました。自分自身はわりと負けず嫌いなので、しっかり切磋琢磨できて、よく働ける環境に行けば、自分もちゃんと働いて、成長できると思ったんです。そういった理由で楽天に入ったかたちですね。

稲荷田:なるほど。先ほどプロダクト側とおっしゃっていましたよね。でも、別にエンジニアとかではなかった?

逆瀬川:そうですね。けっこうふざけた話なんですけど、楽天が営業サイドと開発サイドのどっちもエントリーを開けていて、当時、たまたまその時間帯、営業サイドが閉じていたんですよ。「じゃあ開発サイドでいいか」ということで、たぶん今だとあり得ないと思うんですけど、デザイナーの職種が未経験でも受けられたので、応募したんです。そうしたら、たまたま受かったんですよ。

稲荷田:えっ(笑)?

逆瀬川:そのままデザイナーで楽天に入社したというかたちです。

稲荷田:デザイナーで入社したんですか?

逆瀬川:そうですね。

稲荷田:おもしろっ。

未経験からデザイナー職で就職

逆瀬川:「働ければ真面目にやるので、どうにかなるだろう」と半分見切り発車で応募したら受かったんです。

稲荷田:すごい。

逆瀬川:そのまま(楽天に)行って、すごく苦労したっていう感じですね。

稲荷田:すごく苦労された? 例えばどんな苦労があったんですか?

逆瀬川:それこそ新卒でデザイナーになる人って、ほとんどが多摩美(多摩美術大学)とか武蔵美(武蔵野美術大学)とか、美大出身。

稲荷田:そうですよね。

逆瀬川:未経験の人もほとんどデザインツールを使えるんですよ。その中で私はまったく(デザインツールを)使えなかったんです。かつ、当時のデザイン部署って、デザインに加えてコーディング、いわゆるフロントエンドの開発もやる部署だったんですけど、それもやったことがありませんでした。なので、スキルの差が100倍ぐらいあって。

稲荷田:そうですよね。埋められないレベルの差に感じちゃいますけどね。

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