【3行要約】・投資家が起業家を評価する際、ジャッジメンタルにならず多様な視点で見ることが重要視されています。
・伸びる起業家の特徴として「コアがブレない柔軟性」や「投資家を上手に活用する力」を挙げています。
・成功する起業家になるには、プロダクトの優位性を明確に示しつつ、厳しい質問にも耐える「打たれ強さ」を身につけることが求められています。
前回の記事はこちら 投資判断でやらないようにしていること
矢澤麻里子氏(以下、矢澤):ありがとうございます。じゃあ関さん、先ほどヘラルボニーさんの例を挙げてくださいました。それ以外にも、ファウンダーマーケットフィットで確かに成功に再現性はないなというのは本当におっしゃる通りだなと思っています。その中で、先ほどのIC、投信会になかなか通りにくかったというお話があったと思うんですけど。
やはりそれでも「こだわって投資をしたい!」みたいな、好きな起業家とか、特徴をうかがってもいいですか?
関美和氏(以下、関):もちろん先ほど高宮さんがおっしゃったことがほぼすべてではあるんですが。でも私は、できる限り、そのジャッジメンタルにならないように、すごく気をつけています。
矢澤:1つの軸で判断するわけではないと。
関:そう。結局、先ほどみたいに10年知っているとか、ヘラルボニーも何年も追いかけているとか、そういう会社じゃないスタートアップさんとお会いすることも、もちろんあるんですね。そういう時に、1時間とかのミーティングで相手のことがわかるわけではない。
矢澤:そうですよね。
関:たとえ何回か会ったとしても、その人のことが本当にわかるわけではない。そういう前提を持って、自分たちも違うという前提を常に持って、そういうジャッジをなるべくしないようにしています。
こういう起業家だから投資をしたいとか、そういうのは予め逆に決めないように、すごく自分の中で気をつけています。「こういうキャラクターの人に投資をします」とか、「こういう人だったら投資をしません」とか、そういうのは逆にない状態で、必ずお話を聞くようにはしています。
矢澤:そうすると、けっこう交渉する起業家の傾向というのも、自分の中で「こういうのが好きだなぁ」という型があるよりは、バラけているという感じですかね。
関:あるかもしれないんですけれども。でも、なるべくそういうことを公言しないようにはしています。
「コミュニケーションが密に取れるかどうか」も大事な要素
矢澤:ありがとうございます。じゃあ井上さん、いかがですか?
井上加奈子氏(以下、井上):そうですね。お二人のおっしゃったことでほぼカバーされていると思います。やはり起業家の一番重要な役割は、採用と、資金調達だと思います。その2つは人をどうやって魅了するか、どうやって自分の仲間になってもらうかというところだと思うのですが、その、人を魅了する力がすごく大事だと思います。
それは、すごくいろんなスタイルがある。すごく愛嬌があって「この人、助けてあげたい」と思う人であったり、すごくロジカルでなんでも答えられる人であったり。いろんなタイプがあると思います。投資先国内外問わず見ていて、すごく成長している投資先の共通項でいくと、コミュニケーションが密であるというところは、1つあるかなと思います。
矢澤:コミュニケーションが定期的に取れている? (コミュニケーションが)密?
井上:両方ですね。海外だと、(投資を)断られたとしても、ニュースレターを四半期に1回送ってくれるスタートアップとか多いです。「自分たちがこれだけ成長していますよ」というのを、けっこう定期的に教えてくれる。そうすると、投資はしていないのですが、すごく身近に感じるし「あ、成長しているんだな」とわかります。
フィードバックを取捨選択する
井上:そうすると、次のラウンド時に投資判断しやすいところがあって、やはりコミュニケーションを密にしているかどうかは、すごく大事だと思います。あとは、オープンマインドで柔軟だけど、コアがブレないというところも大事だと思います。
矢澤:はい(笑)。
井上:高宮さんがおっしゃっていたこととちょっと似ていると思います。やはり資金調達をしていると、いろんなフィードバックを受けて、すごくブレやすくなると思うんですよね。
矢澤:そうですね。
井上:そうすると、投資家も話していて、毎回会うたびに言うことが違っていたりすると(「大丈夫かな?」と)すごく不安になります(笑)。フィードバックを受け入れて柔軟に対応することはすごく重要なのですが、やはりすべてのフィードバックを真に受けるのではなくて、その中から自分たちに合うものを取捨選択するのがすごく大事だと思います。
投資家をうまく活用できる「甘え上手」な起業家は強い
井上:あと3つ目が、すごく甘え上手で、投資家をうまく活用していると思うところが、けっこう共通しているなと思っています。
矢澤:ありますねぇ。頼ったりできる方はね。
井上:そういうところが、すごく上手なんですよね。それで、なんならその投資家の方に営業を手伝ってもらうとか。そういうところをちゃんとやっている投資先がやはり伸びていると思います。
なので私もピッチとかでお会いしたスタートアップに、自分の投資先じゃなくても「何かお手伝いできることがあったら言ってくださいね」と言うのですが、これは形式的に言っているわけじゃなくて、それでちゃんと言ってくるかというところをけっこう見ていて(笑)。それで「あ、この人は今回投資してくれなさそうだな」と思って連絡してこないと、やはりその次のラウンドでも投資しにくくなりますね。
その間に「こういう人を紹介してくれませんか?」とか「壁打ちしてくれませんか?」みたいにうまく甘えてくるところは、その次のラウンドで投資することもけっこう多くなります。
矢澤:そのコミュニケーションも結局、対投資家だけじゃなくて、すべてに言えるのが人となりですかね。
井上:そうですね。
矢澤:社会とか、チームメンバーとか。
井上:そうですね。そもそもコミュニケーションがちゃんとできないと、売上も上げられないので(笑)。事業としてもうまくいかないだろうなぁと思います。
伸びている企業は「感謝力が高い」
矢澤:なるほど。ありがとうございます。私がピンポイントでうかがいたいなと思ったことがあって。すごくふんわりしているので、この場でしゃべるのもアレかなと思ったんですけど(笑)。最近、伸びている企業は「感謝力が高いのでは?」とすごく思っていて。
井上:昨日、Xで話されていましたね(笑)。
矢澤:はい(笑)。良い起業家って、すごくいろんな人に感謝をしている部分があるのかなと思っています。やはりやってもらったことに対してちゃんと「ありがとう」と言うのは当たり前。株主に対しても、「投資しているんだから、あなたたちが手伝うのは当たり前でしょ?」と思わずに、感謝できる起業家は伸びるなぁって。もちろんそれだけで伸びるかというと、そういうわけじゃないんですけど。そのへんとかはどう思います?
井上:でも、すごく同じように感じます。例えば誰か紹介したあとに、結果どうなったのかをまったく連絡してこない人と、すぐに「あのミーティングはこうでした」と連絡してくれる人とでは、また次もお手伝いしたいかどうかにも関わります。