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なぜこの起業家に投資したのか ― VCパートナーが語る決断の舞台裏(全3記事)

「何か手伝えることがあったら言って」を真に受ける人は強い 伸びる企業のリーダーの共通点 [2/2]


投資判断で厳しく見る点・割り切る点

矢澤:ありがとうございます。そうしたら、3つ目の質問テーマにいきたいなと思います。投資の時にどういったところを厳しく見て、どこから割り切るのかというところですね。例えば先ほどの高宮さんのお話でステージという話があったと思うんですけど。

やはり起業家は、そのステージにおいて完璧じゃないんですよね。プロダクトを作る、プロダクトを作ったらそれを顧客に売ってスケールさせていく、さらに展開させていく。そういったステージの中で、みなさんが、どういったところを厳しく見つつ、ここからは許容していますよというところをうかがわせてください。

あとは、「こういう投資家にはきっと投資しないな」といった、投資しない共通項もあれば、おうかがいしたいなと。高宮さんからうかがってもいいですか?

高宮慎一氏(以下、高宮):いや、僕はけっこう先ほど言っちゃったのでアレですけど。ステージ相応のリスクリターンみたいな話で、初めてちゃんと投資家っぽいことを言うと……。

矢澤:(笑)。

高宮:すべてはバリュエーションとの相対でしかないと思っているんですよ。最後に目指しているところが5,000億円だとして、5,000億円到達しているためには、これと、これと、これが100できていないといけません。シードだったら当然2か3ぐらいしかできていないんだけど、そのシード期で一番大事であるPDCAができているという、2ができていますか? とか。

シリーズAだったら、5ができていて。一番大事な5,000億円にいった時にターゲットのセグメントとなるようなところのレプレゼンタティブカスタマーにちゃんと刺さっていますか?とか。そのステージ相応、ステージに比して適切なバリュエーションがあると思っています。

一方で、現実としては、どれだけVCが来ているかという需給でバリエーションが上がったり下がったりします。加えて、どれくらいその起業家がいいと思ったかという個々のVCの見立てでもバリュエーションが上がったり下がったりします。

理論上は中央値っぽいフェアバリュー感みたいなのがあって、そこに比べてどれだけ上なのか下なのか。それに比べてどう事業進捗があるのかという話だと思うので。一般論的にどこを厳しく見るとか、どこは割り切れるというのは、あまりないと思っていたりはしますね。

「社会課題」ばかり強調するもったいないプレゼン

矢澤:なるほど。ありがとうございます。じゃあ、関さんにもおうかがいしていいですか?

関:私も高宮さんとまったく同じなんですよ。先ほどの、もう1個前の質問にも戻るんですけども。特に私たちだからなのかもしれないんですが、社会課題というか、ペインの部分をすごく強調なさっている方は多いんですね。「世の中にこういうペインがあります。だから市場がこれだけあるんです」と。

でも「じゃあ、あなたのプロダクトやサービスが、本当にそれを解決する一番良い解決策なんですか?」。既存の解決策に比べて、どれだけ一番良い解決策で、BtoBだったら「企業がどれだけ長く、どれだけたくさんのお金を払ってくれるプロダクトやサービスなんですか?」というところが、しっかり伝わるか。そこを伝えてほしい。プレゼンテーションの前半の全部が社会課題の話ばかりで(笑)。

矢澤:はいはい(笑)。「課題はわかったよ」みたいな(笑)。

関:課題はだいたいもうみんなわかっているので。そこじゃなくて、「なぜあなたのプロダクトやサービスが、それを解決する一番良い、今あるものなのでしょうか?」というところを、やはり説得していただけると、すごくいいなぁと思います。高宮さんがおっしゃったように、それはすべてバリュエーション次第というか、プライシング次第なので。

矢澤:そうですね。

関:どこまでそれができているかも、バリュエーションの中にリスクが含まれると考えますね。

あえて「厳しい質問」をして起業家の反応を見る

矢澤:なるほど。ありがとうございます。じゃあ井上さん、いかがですか?

井上:そうですね。事業性の部分は本当にお二人が言ったとおりで、リスクというものはバリュエーションに反映されるものなので。あまりどこから諦めるとかはないかと思います。シードアーリーステージでは人を見ることがすごく大事なので、打たれ強さというところはけっこう……。

矢澤:大事!

井上:見ています。我々のチームの中で、やはり飴と鞭みたいな役をして、あえてすごく厳しい質問をする人を作って、その厳しい質問をした時に、(相手が)どういう反応をするのか。もちろんそれも通常の事業の中での打たれ強さとはまた質がぜんぜん違うのですが、それでもやはり何か厳しいことに直面した時にどういう反応を反射的にするのかは見られるので。

あとはけっこう数字の部分ですね。もちろん蓋然性を求めているわけではないのですが、数字をロジカルに説明できるのか。どのように考えて、その数字を導き出したのかみたいなところを、けっこうグリグリと(笑)、ミーティングで質問させていただいています。

矢澤:なるほど、なるほど(笑)。そこはすごく厳しく見て判断されていると。

井上:そうですね。やはりいいことばかりじゃないので。

関:高宮さんのチャチャが(笑)。

矢澤:何ですか?(笑)

高宮:井上さんに厳しい質問をされたら、役割としてやっているだけであって、本当は厳しい人ではありません……(笑)。

井上:認知がみなさん変わりましたね(笑)。「井上さんに質問されて泣きそうになりました」と言っていた投資先もあります。それでも投資しているので。

矢澤:なるほど(笑)。じゃあみなさん、安心してくださいと。あともしかしたら逆に、郡(裕一)さんのほうが実はもっと厳しかったみたいなこともあるかも(笑)。

井上:郡が厳しい時もあります。

矢澤:あります(笑)。井上さんが優しければ、(郡さんが)そうじゃないかもしれない(笑)。

関:私は優しいです。

矢澤:本当ですか(笑)!?

高宮:常に優しいです(笑)。

矢澤:常に優しい(笑)。なんかアピールされているみたいな(笑)。ありがとうございます。そんな話をしていたら、あっという間に40分経ってしまいました。まだまだたくさん聞きたいことがあって消化不良みたいな気持ちもあるんですけど。みなさんのテイクアウェイはありましたか?

私も実際に投資を12、13年やっていますけど、みなさんのお話しされていたことは本当にそのとおりだなと思っています。毎日毎日投資先に向き合っていますので、ぜひ参考にしていただけたらうれしいです。

最後は登壇者のみなさまを、拍手でお送りください。みなさん、ありがとうございました!

(会場拍手)

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