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なぜこの起業家に投資したのか ― VCパートナーが語る決断の舞台裏(全3記事)

ヘラルボニーに投資した最終的な決め手は「再現性がない」こと VCパートナー"イチオシ”の起業家・スタートアップ

【3行要約】
・スタートアップへの投資判断において、事業内容より「誰がやるか」が重視される現実がありますが、具体的な判断基準は見えにくいものです。
・著名VCパートナーが集まったセッションでは、グローバル視点での基準など、投資判断の本質が語られました。
VCパートナーたちは単なる事業性だけでなく、起業家の特性やチームの独自性を重視しています。

VCパートナーが語る「なぜこの起業家に投資をしたのか」

矢澤麻里子氏(以下、矢澤):みなさん、こんにちは! モデレーターを務めさせていただくYazawa Venturesの矢澤です。本日は、「なぜこの起業家に投資をしたのか VCパートナーが語る決断の舞台裏」というセッションで、GPのみなさんにお話をうかがっていきたいなと思っております。

やはり事業は事業だけじゃなく、結局「誰がやるのか?」というのが非常に重要になってくると思うんですよね。もちろん事業の部分も一部聞けたら聞きたいなと思うんですけれど、本日は人にフォーカスをしまして、どんな起業家だったら成功するのか、成長するのか。そういったところを詳しく聞いていけたらなと思っております。みなさん、どうぞよろしくお願いいたします。

一同:お願いします。

矢澤:改めまして、簡単に自己紹介をさせていただきます。Yazawa Venturesの矢澤です。弊社は「働く」をテーマに、女性起業家にも積極的に投資をしております。ポートフォリオの起業家として男性半分、女性半分で投資をしております。特にプレシードに積極的に投資をしております。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

矢澤:では続きまして、井上さん。よろしくお願いいたします。

2020年に立ち上げ、グローバルに投資する「NEXTBLUE」

井上加奈子氏(以下、井上):NEXTBLUEの井上と申します。よろしくお願いいたします。NEXTBLUEは2020年に立ち上げたファンドなのですが、グローバルに投資しているのが特徴です。代表パートナーは4名おりまして、私が日本にいまして、残りの3人はシンガポールと、サンフランシスコと、ベルリンと世界に散らばっている状態です。

2023年に2号ファンドを立ち上げたのですが、女性のウェルビーイングと女性の起業家に特化した、アジア初のファンドになっております。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

ユニクロなどに長期投資する関美和氏

矢澤:よろしくお願いします。では、関さん、お願いいたします。

関美和氏(以下、関):ありがとうございます。私のバイオ(グラフィー)だけ物語調になっていまして(笑)。なぜかというと、これは最近Webサイトを新しくした時に、「人となりがわかるような物語調にしてくれ」と言われてちょっと変えたので、こんな感じになっていますけれども。もともと金融畑で、投資銀行におりました。後にバイサイドに移って、上場株の、日本の成長株というポートフォリオを任されて。

みなさんがまだ生まれていなかった1990年代の半ばとかに、当時1号店を出したユニクロさんとかに投資をしたり、まだ北海道の小さい小売家具屋だったニトリさんとかに投資をしたりしていました。その頃、キャシー(・松井)さんと一緒に、バイサイド・セルサイドの中でこの金融業界で切磋琢磨して、ちょっと生き残ったかなという感じです。

2021年に今のMPower Partnersというベンチャーキャピタルファンドをキャシー(・松井)さん、それから村上(由美子)さんの3人で立ち上げました。1号ファンドはグローバルファンドで日本のスタートアップにも、海外のスタートアップにも投資できる立て付けになっておりまして、どちらかというとミドルからグロースステージの会社に投資をしています。2025年になって2号ファンドが立ち上がりまして、そちらも1号ファンドの後継ファンドのグローバルファンドになっています。

それとは別に国内の実績ファンドで、女性起業家と女性活躍に資するスタートアップだけに投資をするという、新しいファンドも立ち上げました。そして今はそれぞれのファンドの運用と、私たち自身もファンドとしてどうやってこのファンドを大きくしていくか。資金調達をして、人を育てることにも注力しているところです。よろしくお願いします。

(会場拍手)

日本からユニコーンが一定出てきている今、次の一手は

矢澤:ありがとうございます。では、最後に高宮さん、お願いいたします。

高宮慎一氏(以下、高宮):こんにちは。グロービス・キャピタルの高宮です。よろしくお願いします。僕らは最新のファンドが7号ファンドで、727億円のファンドとなっていまして、「大丈夫? リターン出る?」なんてツッコミをよく受けるんですけれども。今の日本の状況を考えると、ユニコーンは出ました。

2018年にメルカリが上場して以来74社、1,000億円を超える会社が出ていますが。グロース上場して1年以内で超えるという、若干下駄は履いているのですが。海外に向けてプロモーションする時に、いつも言っているのは、日本からユニコーンが定常的に出てくる状況にはなっているということです。次なるチャレンジは5,000億円超、デカコーンを作るチャレンジだと思っています。

まぁ、僕らはベンチャーキャピタルなんですけれども純然たる投資家ではなくて、アントレプレナー・ビハインド・アントレプレナー、起業家の裏にいる起業家でありたいと思っています。単になりでトレンドを受けてユニコーンに投資して、トレンドのうま味を享受するんじゃなくて、僕らもリスクを取って、まだ見ぬデカコーンを作るんだというチャレンジを起業家と一緒にしたいなと思ってファンドを大きくしています。冷静に考えると2,500億円ぐらいのリターンを作ることを求められているので、大変だなとがんばっています(笑)。

矢澤:すばらしい(笑)。心強い。ありがとうございます。みなさん、よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

イチオシの起業家・スタートアップを紹介

矢澤:さっそくですが、本日、GPのみなさまはグローバルという視点でもかなりスタートアップを見られながら日本に積極的に投資をしているということで、非常におもしろいお話が聞けるんじゃないかなと思っています。その中で、「最近投資された」でも大丈夫ですし、「けっこう昔に投資して、しっかりパフォーマンスを出してくれた」など、そういったイチオシの起業家、イチオシのスタートアップはどこか。

そして「なんでその起業家に投資をしたんですか?」というのを、具体例を挙げてぜひうかがっていきたいなと思います。1社でも、何社でも大丈夫です。では、井上さんからお願いいたします。

井上:我々は現在2号ファンドなのですが、投資先は15社あります。実は、国内は1社しか投資を行っていないんです。それは、グローバルに投資をするオポチュニティがある中で、他のグローバルのオポチュニティと比べて、同等のリターンが出るのかをけっこう厳しく見るので。

その中で、我々がけっこう自信を持って投資したのが、ジョサンシーズです。スタートアップを評価する時に、その市場性やタイミングなどのマクロな視点と、その創業者とチームみたいなミクロの視点の両方があると思うんです。

そのマクロの視点でいくと、やはり昨今の出産や育児のサポートみたいなところの波に乗れているということであったり、我々NEXTBLUEが、フェムテック領域に特化してグローバルに投資をしている中で、我々なりの勝ち筋の仮説をいくつも持っているのですが、そこにピッタリと合致したのが非常に大きかったです。

それに加えて、やはりCEOの(渡邊)愛子さん、そしてCOOの(中)陽子さんがいるというところが大きかったです。特に愛子さんのスーパーポジティブなところや人の巻き込み力に非常に魅力を感じて投資を決定しました。

苦労したが投資して良かった「ヘラルボニー」

矢澤:ありがとうございます。このあと、起業の共通点みたいなところを深掘りしていきたいので。まず関さん、お願いできますでしょうか?

関:ありがとうございます。私たちは1号ファンドがグロースからレイターステージを通して、チェックサイズもそれなりに最初に5億円とかから始めるので。

矢澤:最初が5億円。

関:はい。それで今もっと10億円とか出てくるんですが。そんな中で、私たちはESG重視型と謳っているので、インパクト系と思われがちなんですけれども。やはりすごくリターンドリブンファンドなんですね。インパクトファンドではないんです。ただ、投資チームは会社全体でMPowerらしい投資、MPowerらしい……何ていうんですかね。

ポートフォリオというのは、なんとなく定義があるわけではないんですけれども、ちょっと共有しているものがあります。そんな中で、やはり1号ファンドで私が一番、通すのもすごく難しかったけれども通せて良かったのがヘラルボニーなんですね。

私はシリーズBで参加していますけれども。シリーズAまでは、インパクト系の投資家しか入っていなかったんですよね。

最終的な決め手は「再現性がない」こと

矢澤:リターンを重視するというより、どちらかというとソーシャル的な意味合いが強いような。

関:意味合いが強いイメージの会社だったので、すごくこう……。シリーズAが終わったあとから2年間ずっと追いかけて、定期的に進捗をうかがってはいたんですけれども。やはり他のICのメンバー、GPとかになりますが。彼らはやはり「本当にビジネスとしてスケーラブルなんですか? ポートフォリオのリターンの最大化に本当に貢献しますか?」と。

それで私たちのグローバルというミッションに「本当にそれができるんですか?」という議論がすごくあって、それを何度やっても通らない時もあります。この案件はそういう中でいろいろ……。例えば、ICを通す時にバリュエーションをどうするか。

関:条件が付くこともありますし、そういう意味でもやはりすごく議論が多かった。でも最終的な決め手は、再現性がないのが逆にすごくおもしろい。

矢澤:なるほど!

関:私が翻訳したピーター・ティールの『ゼロ・トゥ・ワン(君はゼロから何を生み出せるか)』にもそれが書いてあるんですけれども。失敗する会社には、やはりどこか似たパターンがあるけれども、成功する会社は実は再現性がけっこうなくて。たぶんヘラルボニーのビジネスは、誰かが真似しようと思えばできるかもしれない。障害がある方のアートをデジタルのIPにしてライセンス販売することは、できるかもしれない。

でも、たぶん松田さんご兄弟のユニークな……弟の松田(崇弥)さんが小山薫堂さんの事務所に勤められていて、くまモンのライセンスのお仕事をしていたりとか。兄の松田(文登)さんは建設系の営業職。でも本当の創業者は、彼らのお兄さんで知的障害の(松田)翔太さんという方だと私たちは思っているんですね。

この(兄弟の)組み合わせとビジネスの組み合わせっていうんですかね。それの再現性がないなと思った。そこが一番刺さったところかなと思います。

矢澤:なるほど。

関:もちろんビジネスモデルの強固さというのはあるんですけれども。

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