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日本発・世界で戦うスタートアップはどう生まれるのか?(全4記事)

Z世代起業家が語る、“日本の強み”との向き合い方 産業・文化・通貨、3つの戦略的アプローチ [1/2]

【3行要約】
・日本の強みを武器に、グローバル市場でどう勝つか? Z世代起業家3人が語り合いました。
・自動車・金融・アートトイ・クリプトなど、それぞれが選んだ「勝てる領域」とその理由とは。
・守る、変える、捨てる。産業・文化・通貨とどう向き合うかに、起業家の戦略がにじみます。

前回の記事はこちら

「日本の強み」は産業か文化か

山本航平氏(以下、山本):なるほどですね。ありがとうございます。あと、今日お三方にちょっとうかがいたかったことがあります。

やはり投資をしていると、「日本の強みをどう活かすのか」という文脈ってあるかなと思っています。やはり日本のスタートアップである以上、何かしらその強みを活かしていくというところで、そのへんをどう考えられているのかですね。まさに自動車と金融って、金利の話も先ほどあったと思うんですけど、そのへんってどう活きていくのかについて考えをおうかがいしてもいいですか?

小林嶺司氏(以下、小林):我々はこのポジショニングを取っちゃって申し訳ないという感じなんですけど、アフリカにおいて勝てる筋って、たぶん金融と自動車しかないと僕は思っていました。なので、そういう意味ではやはりそのポジショニングを取れたのはかなり大きかったなと思っています。

やはり最低金利(も高い)ですし、今インドだったら(定期預金に)預けたら利息が年利で8パーセントくらい付くんですよ。こっちだと定期預金に預けても0.01パーセントの世界観じゃないですか。800倍(も差がある)世界観だったりします。

それと比べたら、やはり向こうのほうが圧倒的に金融市場が整っていなくて、日本からの調達によって、うちで運用するというところが今のところはハマっているかたちです。あと今は一応、日本車もうちのポートフォリオの95パーセントを占めているので、基本的にそこでOEMから提携が行えたりしていますね。

だるまを“守る”のではなく“変えて売る”ことで広がる市場

山本:カルチャー(の場合は)どうですか? まさに商品自体が日本のものになってきますけど。

髙橋史好氏(以下、髙橋):ものづくりの領域で言うと、私は逆だと思っています。今までの「工芸品とか(日本のカルチャーを)残そう」という、いわゆる地方創生などでの取り組みの多くは、(例えば)だるま市場は15億円と言われているんですけど、いかにこの15億円の市場を絶やさず保護するか、ちょっと拡張するかが論点だったんです。

けれども、私たちがやっているのって、また違うものとして売っているんですね。POP MARTやBE@RBRICKが君臨する6兆円のアートトイ市場で戦っています。「15億円を保護しよう」という今までの売り方をしていたら、市場が6兆円になることはきっとありません。

私たちが違う住所でまったく違うゲームをしているから、10倍の価格でも関係なく、だるまが売れているという状況なんですよ。なので逆に、ものづくりへの「ディグり」や深めていくことが日本の強さというよりも、どう売っていくか、どこの市場に住所を変更するかという戦い方が、私はこれから、日本の文化輸出の1個のロールモデルになるなとは思っています。

だるまがサブスクになり得る

小林:さっき聞いておもしろかったのが、「だるまがサブスクになり得る」という話があって、toBに対して1回単発で売られて終わりなのかなと思ったら、サブスクで毎年買ってくれるという。

山本:だるまサブスクは、それがすごいですよね。

髙橋:だるまはLTV(顧客生涯価値)が高いんですよ。

山本:LTVが高い? なるほど。

小林:LTVをだるまで聞くとは思わなかったです(笑)。

髙橋:目が入っただるまって、毎年回収をして、燃やしてサイズアップをするのが慣習なんです。けれども、私たちはその文化を再定義して、「お焚き上げ代行します」というサービスで、今スタートアップさんに来年の新年会用にサイズアップしただるまを毎年届けて、サブスク商材としてたくさん売っています。2025年は数千個ぐらい届けています。

小林:じゃあIVSも、1ブースに1だるま。

髙橋:お願いします。今日、100個ぐらい売りに来ているので。

山本:髙橋さんのところは会社の半分以上がデザイナーで、IVSでは(自社の)法被のデザインも手掛けられています。おっしゃるとおり、本当にIPみたいなかたちですよね。なので、ある種「ポケモン」にすごく近いのかなと思っています。かつ、そうするとやはりIPってファッション(業界)も含めてどんなIPと一緒にコラボできるのかが大きいので、まさにそこをやられているというところですよね。

髙橋:そうです。まさにものづくりの領域で言うと、日本の人たちはこだわりと歴史に重きを置き過ぎるが故に、(変化させずに)そのものとして売り続けてしまうんですね。でも、私たちはまったく違うものに変えたりIPのコラボを進めたりして、単価を上げる挑戦をしています。

“思想が強すぎる”だるま カルチャー輸出のジレンマ

小林:これは海外では売っていかないんですか?

髙橋:実は今、海外でも展開しています。最初に進出した場所が台湾ですね。今、ATT 4 FUNという、日本で言う109のような建物で、うちの卸展開が始まっているんです。

けれども1個、BE@RBRICKは「思想がない」という、私たちにない強みがあります。だるまは思想が強過ぎるんですよ。歴史がないことがパレットとしての強みだったんですけど、逆にだるまの数千年の歴史ってパレットになるにはちょっとエグみというか重さが発生しちゃうんですね。

なので、まずは日本カルチャーへの理解がある台湾や仏教カルチャーがあるところから進出していくというのがあります。BE@RBRICK化の1個の大きい壁が、だるまの重みですね。

山本:なるほどですね。確かにBE@RBRICKって普通のただのクマでもありますものね。それ故にカスタマイズしやすいみたいな。

髙橋:そうです、思想が混ざらないんですよね。

法定通貨の“減価”を前提にビジネスモデルを設計する視点

山本:なるほどですね。ありがとうございます。石濵さんはどうですかね。最初は本当にWeb 2.0のソーシャルメディアとしてやられていて、今まさにWeb3化していくと。ここって、日本みたいな文脈ってむしろ消しているんですか?

石濵嵩博氏(以下、石濵):日本? そうですね。どちらかと言うと、僕はある意味日本発というよりも……やはりクリプトのサービスを本気でやられている人たちって、まず日本市場にあんまりいないんですよ。

さっきの話にもちょっと近いんですけど、「アフリカ(の通貨)と日本円で金利の差がありますよ」と言った時に、要はそういう日本円やドルなどの先進国の通貨と比べたら安定しているよねという文脈感だと思うんです。

けれども、僕はけっこうそこの思想が強めで、「法定通貨は全部きついんちゃうか?」という感じがあって、金建てでわりと本当に見るんですよ。金建てで見た時に、やはり法定通貨の価値ってどんどん落ちていく。物が高くなる、イコール、法定通貨が安くなっていると僕は見ています。

「そこの価値がどんどん落ちていくよね」と思ってビジネスを考えた時に、法定通貨建てのビジネスって、ベルトコンベアが後ろ向きに下がっている状態で作っているなって思っているんですよ。だから、1年前に100億円を使って何か物を建てて(次の年に)130億円回収しても、これでトントンという世界線だったらビジネスは成り立たないな。これが加速し得るって思っているんですね。

だから、僕たちの思想としては、「イーサリアム建てやBTC建て、いわゆる価値が減価しない通貨建てでビジネスをやるのがめちゃめちゃ重要なんじゃないの?」と思って、4年前からブロックチェーンの領域に入ってきています。なので、「フロム・ジャパン」かどうかはあんまり気にしていないですけど、いかに減価しない通貨建てでのビジネスを作っていけるかに注力しながらやっています。

蓋を開けてみれば、ビットコインをどんどん買っていく会社のバリューがめちゃめちゃ高いよねというのが、今のエクイティ市場(の流れ)になっているんです。やはりそれって買ったものから順々に法定通貨建てで上がっていく。逆に言うと、法定通貨は下がり続ける。そういうところを僕たちとしてもビジネスとして変えていきたい。

だから、ユーザーさんの生活において、「トークンがもらえるよ」「収益を稼げるよ」みたいなものが、ちゃんとBTCやイーサ建てになる世界線が、僕はどこかで来ると思っています。なので、それを作る一番の会社になりたいなと思っています。

クリプトが根付くのは“通貨の不安定さ”が背景にあるから

山本:確かに、クリプトって法定通貨のパワーが弱いところのほうが相性がいいというか、むしろ法定通貨がまさにもっとディスカウントがかかってくるので(相性が)いい。ある種、日本(円)って安定しているんですけど、JPYでもぜんぜんベルトコンベアが(後ろ向きに)下がっていますよということですよね。

石濵:下がっています。2025年は戦争とかがあったので金は30パーセント上がっちゃっています。イコール、日本円やドルは30パーセント下がっているんです。けれども通常でも金って複利で15パーセント上がり続けているんです。イコール、円とドルは15パーセント下がり続けると僕は思っています。

これは超メガトレンドなんですよ。なんでかと言うと、人口統計的にもうお金を稼ぐ人がいないからです。でも「社会保障費は増やさなきゃいけない。バラマキを増やさなきゃいけない」みたいな政治になっているので、止めようがないんですよ。

という前提に立つと、僕は法定通貨の減価は超メガトレンドで、超長期で続いていくと思っています。仮に貯金が1,000万円あった時に、今年ある1,000万円が、来年は800万円になります。再来年は600万円になります。でもみんな、1,000万円というラベルが付いているから気づかないだけなんですよ。でも実際は減っている。

「米の値段が上がっています。土地(の値段)が上がっています。なんちゃらの値段が上がっています」と(日本では)言われています。けれども、「いやいや、法定通貨がどんどん下がっているだけ」という考え方を持っているので、この世界線でビジネスはムズいなと。

小林:これはまさに、関係ない話に見えて、やはりアフリカがめちゃくちゃ関係あるんですよね。私は6年間ケニアに住んでいたんですけど、やはりナイジェリアやケニアはある程度ステーブルしているほうなので、あんまり(法定通貨の減価を)感じることができなかったんです。(ただ、)やはり日本に住んでいても、金利の上昇はまったく感じることができないなと思っていました。

やはりインフレが激しいガーナやナイジェリアってクリプトが本当に流行っているんですよ。なので、僕は今日聞いていて、石濵さんのポジショントークじゃないなとずっと思っていました。これはもう、本当にバカにできない、無視できない流れが来ていると思っています。

JPYはさすがに30年、40年はぜんぜん大丈夫だと思います。けれども、ナイラ(ナイジェリアの通貨)やガーナの通貨に関しては、まさに年間で30パーセント落ちる状態が起こり得るので、我々が事業計画を作る時にも全部それを織り込まないといけないんですよ。

なので、FXのコストで30パーセントをヘッジコストとして払っている状態になっています。そうすると我々のチャージする金額が金利で100パーセント近くにならざるを得ない。それだけ聞くと、日本の方って「高過ぎるんじゃん」って、やはり平地で並べて話すんですけど、やはり現地の状況をわかっていないとそれが議論にすらならないと思っています。

もしかしたら日本円もやはりドロップする(という)流れは、メガトレンドとしてちょっと僕も2018年頃からある程度感じています。なので、そこはある程度キャッチアップするべき事項なんじゃないかなと思っています。

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