【3行要約】
・未整備な市場での挑戦を選んだ起業家たちが、それぞれの背景を語りました。
・カーファイナンス、アートトイ、クリプトといった多様な分野で、新しい可能性を模索しています。
・整っていないからこそ挑戦できる市場に、どのような戦略で飛び込んだのかを明らかにしました
セッションテーマはテーマは「Japan to Global」
山本航平氏(以下、山本):じゃあ、始めましょう。みなさん、朝からお集まりいただきまして、ありがとうございます。本セッションはまさに「Japan to Global」で、最近の日本のスタートアップでも、みなさんがまず話題にするトピックです。まさに(日本発・世界で戦うスタートアップとして)最前線で活躍されています3人の起業家の方にお越しいただきました。よろしくお願いします。
モデレーターと登壇者の自己紹介
山本:簡単にちょっと自己紹介から。私は山本と申します。2024年にサッカーの本田圭佑とVCファンドを立ち上げました。今は155億円のファンドで、日本のスタートアップに投資をしています。
みなさんからも、1分ぐらいでちょっと簡単に自己紹介をお願いします。じゃあ、小林さんから。
小林嶺司氏(以下、小林):小林と申します。アフリカに6年間住んでいまして、現状、今はインドに移住しています。カーファイナンスの事業をやっていて、クレジットスコアリングを自社で作っています。テクノロジーを組み合わせて、貸倒れ(のリスク)が低いローンの商品を設計しています。本日はよろしくお願いします。
(会場拍手)
髙橋史好氏(以下、髙橋):みなさん、よろしくお願いいたします。「TOKYO LOLLIPOP」(というブランドを運営しているconcon株式会社代表取締役CEO)の髙橋史好と申します。
私の生まれはごく普通の公務員家庭なんですけど、16歳の時に家出して1年インドに住んだのが大きなターニングポイントとなり、起業家を志しました。最初は資本がなかったので、登録者20万人のうち98パーセントがインド人というメディアをずっとインドでやっていました。
その後、そのメディアを売却して、今はそのお金を握りしめて、だるま屋をしております。それから、インバウンド向けのお土産の物販や、あとは2025年にF1の世界大会の会場装飾をやらせてもらいました。そういったいろんなコラボレーションをしたり、だるまをBE@RBRICKのように売ったりする会社をしています。今日はよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
石濵嵩博氏(以下、石濵):ありがとうございます。「Yay!」のファウンダーの石濵と申します。よろしくお願いします。Yay!はクリプト(暗号資産)用語で「SocialFi」という(性質を持つ)SNSのプラットフォームです。(株式会社ナナメウエは)それを運用しておりまして、今はだいたい1,000万人ぐらいが使うサービスを提供しております。
目標としては、ビットコインやイーサリアムみたいなものが、いわゆるマスの人に届く(ことです)。彼らが意識しない中で、ビットコインやイーサリアムみたいな経済圏に触れることができるクリプトサービスを目指してやっております。
最近だと、やはりエクイティ市場でビットコインマネーがものすごく盛り上がってきています。逆に言うと、グローバルのアルトコイン(ビットコイン以外の暗号通貨)市場がちょっと落ち着いちゃっています。やはり今ちょっとホットなトピックは、日本のエクイティ市場ではあるんですけど、そういったところも含めて今日はお話しできたらなと思っています。よろしくお願いします。
(会場拍手)
山本:ありがとうございます。ちょっと最初に、まさに石濵さんはクリプト(事業)で、もうマーケット自体がそもそもグローバルな市場で戦われています。髙橋さんはどちらかというと、日本のカルチャーの輸出みたいな文脈で。小林さんはまさに金融と自動車という、本当に世界に誇る日本の産業の下でやられています。3人とも各人各様なのかなと。
カーファイナンス事業の背景にある“未整備な市場”への興味
山本:そもそも、なんでその市場でやられたのかは、今聞くと本当にメイクセンスする感じなんですけど、(まず)小林さんからちょっと簡単にその経緯をおうかがいできますか?
小林:私はケニアという国から(事業を)始めました。まず、そもそもアフリカを主戦場にしたいと10年、15年も前から思っていて、ようやく事業を始められたのが6年前になります。
(ケニアは)もともと人口も伸びていますが、金融市場が整っていません。(社会インフラが)整っていない世界観に行くのがけっこう好きだったというか、なんなら江戸時代に生まれたかったぐらいのモチベーションがあります。やはり整っていないからこそ自分のパワーが発揮できるだろうなと思ったのでアフリカを選びました。
(アフリカには)54ヶ国があり、14億人が住んでいるんですけど、(ビジネス上の)主要国はあまり多くありません。その中でも東アフリカの中ではやはりケニア一択なので、今のところ経済が整っているケニアからやった感じになっています。
150のアイデアと6つの実証実験
山本:ちょっといろいろ突っ込みたいんですけど、とはいえ、まさにまったく未知なわけじゃないですか。「(ケニアに)行って、チームを作って」というのは、どこから取っ掛かりをつけたんですか?
小林:実は最初の段階はうまくいっていないんですよ。1年間ずっともがき苦しんでいました。その当時、150個ぐらいアイデアを持っていて、その中でやったのが6個の事業となっています。それを、1個100万円ずつぐらいの予算を付けてぐるぐる回していたのが、その当時でして。
山本:とりあえず、まず先に物理的に行ったんですね。
小林:「(まず)行って、始めた」という感じです。
山本:なるほど。現地で始めたという感じなんですね。それで、今のカーファイナンスのところにベットしようとなっていったと。
小林:そうですね。(まずは)無担保マイクロファイナンスをやっていて、それはちょっとフェイルしてしまって、最終的に今のカーファイナンスに行き着いた感じですね。
レンタルが主流のタクシー業界で“所有”を可能にする仕組み
山本:なるほどですね。ちょっと今やられていることにもう少しズームインしたいです。アフリカではタクシー会社は個人から車をちょっとレンタルしてタクシーにするみたいな業界でした。まさに今、(その仕組みを変える)プラットフォームを作られている。ちょっとそのへんもおうかがいしていいですか?
小林:そうですね。やはりレンタカーで事業をやる方々がほとんどなので、一生車が持てない状態です。「そもそも、タクシーの車を持ってどうするねん?」とみなさんは思うかもしれないんですけど、向こうだとけっこう車を持ちたいんですよ。
土地は山間部にみんな持っている状態で二束三文なので、車が一番ステーブルする。もしかしたら石濵さんとちょっとつながるかもしれないですけど、車が一番インフレの中で安定資産になり得るというのがけっこうあります。ゴールドとちょっと近いんです。
なので、車を持ちたい方がかなりいて、タクシードライバーの方々も最終的に車を持てるようになるという我々のプログラムにアプライしてくる感じですね。
山本:なるほどですね。そうすると、最初はローンなんですけど、最終的には車を持てるようなパスになっているんですね。
小林:そうです。
青春を過ごしたインドで芽生えた“日本人としての視点”
山本:なるほど。じゃあ、ちょっと髙橋さんにお話をうかがいたいです。インドに留学されて、(最初に始めた事業は)YouTubeメディアだったと思うんですけど、どういうふうにだるまに行き着いたのかというところを。
髙橋:まず、前提として、私はメディア自体も(好き)なんですけど、めちゃくちゃ日本が好きで。というのも、一番多感な青春時代をインドの街で唯一の日本人として生活したり、あとはその後も、「日本人インフルエンサーのFumiko」としてずっと活動したりしてきました。
なので振り返ると、一番多感な青春時代の一番の関心事が、「日本人の私としてどう見られるか?」だったんですね。なので、まず前提として愛国心がすごく強いです。
あと、実際にメディアをやっている時に、登録者の98パーセントがインド人だったので、当時は日本の会社の商品をインドに売る仕事をメインでしていました。(しかし)現地ではやる日本の商品の大半が日本の事業者さんのものじゃなかったのがすごくショックでした。
日本ってすてきなものがありつつも、うまくそれを世界で商売に持っていける人が少ないんです。なので「自分で物を持とう。商売を始めよう」と立ち上げたのが、だるまの事業をやっているTOKYO LOLLIPOP(というブランド)です。
地元の工芸と世界のIPを掛け合わせる「だるま」の可能性
山本:日本発のIPって抹茶とかを含めて最近盛り上がっているのがいろいろあると思うんですけど、だるまはご自身の地元の工芸品だったんでしたっけ?
髙橋:そうです。だるまに今オールインしている理由が2つあります。1つが、前提として工芸品の領域って、生産体制が事業の中の一番の参入障壁というか肝になるんですね。私がその町で生まれて、わりと親戚もだるま屋が多いので、まず、過去にできなかったデザインのだるまの量産を実現しているというところ。
あともう1つが、だるまのすごくおもしろいところで、型自体がパレットになって(いるので)いろんなものとコラボができるところです。最初にも言ったように、BE@RBRICKさんのような展開ができる。工芸品の中でも、ここまでパレットとして有用なものはだるましかないなというので、だるま屋さんになっています。
6兆円のアートトイ市場と日本工芸の“新しい住所”
山本:ありがとうございます。ちょっと実際に見られたほうがたぶんイメージが湧くと思います。髙橋さんのだるまは、F1や、あと最近はDIESELなど、すごいIPとのコラボレーションを実現しているんですよね。
(アート)トイ市場というと、POP MART社でしたっけ?
髙橋:POP MART社ですね。
山本:(そういう)ものすごく大きな会社がアジアにあったりとか、(株式会社メディコム・トイの)BE@RBRICKというクマさんの人形も数百億円の売上があったりして、非常に大きいというところですね。ありがとうございます。