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自由診療クリニックのDXを通じ、1人でも多くの人の心身の健康向上に貢献したい(全1記事)

最初の事業は「独りよがりのプロダクト」で失敗 苦境を越えて掴んだ「自由診療DX」のシェアNo.1 [1/2]

【3行要約】
・自由診療クリニック向けDXシステム「B4A」を提供する植松正太郎氏は、起業家として幾度もの挫折と転機を経験し、現在は業界トップシェアを獲得しています。
・同氏は「初期の失敗から学び、プロダクト品質の向上と特化型戦略に徹することで競合に打ち勝った」と振り返ります。
・今後は基幹システムを土台に金融決済など付加サービスを展開し、自由診療領域全般のプラットフォーム構築を目指すとのことです。
※このログはスタートアップクラス(スタクラ)のCEOインタビューの記事を転載したものに、ログミー編集部でタイトルなどを追加して作成しています。

生い立ちと起業家への芽生え

——はじめに、植松さんの生い立ちや今の仕事につながる原体験などについてお聞かせください。

植松正太郎氏 (以下、植松):栃木県の宇都宮育ちで、会社員の父と起業家の母と私という、少し珍しい家庭環境で育ちました。小さな頃から商売がとても身近だったことで、私自身も自然と「将来は会社を経営してみたい」と思うようになりました。

中学から大学までは学習院で過ごしました。小学生時代には宇都宮から埼玉の進学塾に通い、学習院入学後は授業料に加え新幹線での通学費もかかりました。両親が教育に多大な投資をしてくれたおかげで、若いうちから視野を広げることができ、大変感謝しています。

起業への思いが本格的になったのは、大学3年生から始まった就職活動の時です。中高時代は学習院の牧歌的な校風の中で馬術部やバンド活動を楽しんでおり、ビジネスには興味がありませんでした。

就職活動を始めた時も、最初はみんなと一緒に大企業の説明会に参加していたのですが、やはり商売をしている家庭に育った影響か「自分も会社を経営し、事業を興したい」という思いが少しずつ湧いて来て、徐々にスタートアップに注目するようになりました。

SBIで得た経験と仲間との縁

——新卒でSBIへの就職を決めた理由と、携わっていた業務について教えてください。

植松:最大の理由は、説明会で北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役会長兼社長兼CEO)の話に強く惹かれたことです。

当時、SBIはソフトバンクグループから独立し、新たなスタートを切った直後でした。コングロマリットとしておもしろい事業をどんどん創出したり、利益を社員に還元してみんなで幸せになろうと言っていたりと、金融会社のイメージを覆すような意外性がおもしろいと感じ、入社を決めました。

新卒採用の同期は約80名で、個性豊かなメンバーが揃っていたことも魅力的でした。現在のCTOもSBI出身ですし、他にも入社してくれたり、今後入社予定のメンバーもSBIの内定者仲間が複数含まれています。SBI時代の縁が今でも続いていることに喜びを感じています。

SBIでは、新入社員は多数の事業会社のいずれかに配属されますが、私はSBIモーゲージ(現ARUHI)という200名規模の会社に配属されました。ここでは社長直轄の下、営業、経営企画、マーケティングなど幅広い業務を経験し、「会社はこうやって運営されるのか」という理解を深めることができました。

ただ、ここは住宅ローン業務に特化している会社だったこともあり、「より幅広いビジネススキルを身につけたい、そして自分で事業を立ち上げてみたい」という希望を叶えられる会社への転職を検討するようになりました。

エムスリーで培った医療×ITの知見

植松:その両方を実現できる会社として紹介されたのが、転職先となるエムスリーでした。面接での好印象や周囲からの強い勧めも入社の決め手となりました。

エムスリーでは、製薬会社向けのプロモーション事業に携わりました。入社して驚いたのは、私以外のメンバーが全員コンサルティング会社出身だったことです。エムスリー自体が製薬会社にコンサルティングをしながら商材を売る会社だったので当然と言えば当然ですが、最初の半年くらいはついていくのに必死でした。

ただ、営業経験があるメンバーは少なかったため、売上面では貢献することができましたし、Web講演会サービスの立ち上げや事業拡大の経験を通じて、転職時に希望していたビジネスのスキルセットや新規事業立ち上げのノウハウを得ることができました。

そこからゲノム関連の子会社や遠隔医療や医療情報サイトなど複数の事業にCEOやCOOとして携わり、さらにメルカリで鹿島アントラーズのM&Aプロジェクトをリードした後に、B4Aを創業する運びとなりました。

B4A創業、自由診療を選んだ理由

——メルカリなどとまったく違う分野ですが、この事業を選んだ理由を教えてください。

植松:もともとヘルスケア分野に興味があったことと、エムスリーで培った医療分野×ITの知見を活かしたかったことが主な理由です。

また、当時保険診療ビジネスにはエムスリーをはじめとした強いプラットフォーマーがいる一方で、自由診療分野に本格的に取り組んでいる企業やこの事業領域に知見がある起業家はまだ少なかったため、ここを軸足にしようと考えました。

今からもう15年以上前、大学時代に初めてヒゲ脱毛をした時は、周囲から「気持ち悪い」と言われるほど、かつての自由診療や美容医療は「怪しいもの」と見られていました。しかし、現在は男性の脱毛もすっかり一般的になり、世の中の価値観も大きく変わってきています。

「今なら自分のノウハウを活かしておもしろいビジネスができるのではないか」と考えたのです。

起業に踏み切った思い

——起業というのは軽い思いつきでできることではありません。植松さんが起業に踏み切れたのは、どのような思いがあったからでしょうか?

植松:家庭環境の影響もあり、学生の頃から「いずれ事業を興したい」と考えていたので、起業へのハードルはそこまで高く感じていなかった気がします。

「失敗したら、また会社員として再スタートすれば良い」と思っていましたし、一代で会社を大きく成長させたSBIやエムスリー、メルカリの創業者たちと肩を並べるためにも、できるだけ若いうちに起業したいという強い思いがありました。


最初のプロダクトの失敗と苦境

——子会社のCEOとしての経験はあったとはいえ、初めての起業にはさまざまな困難が伴ったと思います。どのような壁を経験されましたか?

植松:はじめは美容医療分野で、「トリビュー」や「ホットペッパービューティー」の動画版のようなサービスを作りました。美容医療を受けたいユーザーと集客したいクリニックをマッチングし、手数料を稼ぐビジネスモデルです。

エンジェル(投資家)から資金調達を行い、動画も技術力の高いエンジニアと一緒に高難度なチャレンジを行ったのですが、プロダクトの形こそできれど、まったくうまくいきませんでした。

今思えば、自由診療分野におけるユーザー側の知見が圧倒的に不足しており、エンドユーザーのニーズを把握しきれていない状態で、独りよがりのプロダクトを作っていたのだと思います。

それでも最初はうまくいくと信じて積極的にクリニックに営業をかけていたのですが、エンドユーザー側の登録が伸びず、あっという間に「このままではあと数か月しか持たない」という瀬戸際に追い込まれました。

ただ、社長として「これをやろう」と言って始めた手前、失敗を認めるのは難しく、スタッフも「失敗するだろうな」と思いながら進めざるを得えない状況が続きました。その結果、会社の雰囲気までどんどん悪くなっていき、この時期は非常につらかったです。

資金調達の壁と支援者への感謝

——エンジェル(投資家)から資金調達したということですが、創業期のお金の苦労はなかったのでしょうか。

植松:シード資金の調達は比較的スムーズに進んだのですが、最初の事業を失敗した後、現在のビジネスモデルに至るまで暗中模索の状態が続き、その間にバリュエーションも半減してしまいました。最初の事業を失敗してからが本格的な壁だったと思います。

10人ほどのエンジェルのみなさんには、頭を下げ、引き続きの支援をお願いしました。みなさんから「植松さんを信じる」と言っていただいた時は、涙が出るほどうれしかったと同時に責任も感じ、この信頼に必ず報いようと心に強く誓いました。

現在の事業を始めるための新たな出資者探しも困難を極めました。プロダクトはまだ形になっておらず、前の事業で失敗もしている状況では簡単に見つかるはずもありません。悩みを共有できる相手のいない創業社長の孤独を初めて痛感し、精神的にもかなり追い込まれました。

なかなか突破口が見出せず、ギリギリの状態から抜け出せない苦しさで、この時期の記憶は断片的にしか残っていないほどです。しかし、「支援者のみなさんを裏切るわけにはいかない」という強い思いに支えられ、なんとか乗り越えることができたのだと思います。

幸いにも、その際にご支援いただいたVCの方は現状に至るまでフォローを続けてくださっており、感謝してもし切れません。

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