50人規模まで離職はほとんどなし、ビジョンに基づく組織作り
——多くのスタートアップ経営者は「30人の壁、50人の壁」などに突き当たりますが、少数精鋭体制からの組織拡大は問題なく進みましたか?
北嶋:幸いなことに、組織拡大に伴う大きな問題は経験していません。これは、創業メンバーの質の高さや、明確なビジョンに基づいた組織作りが奏功した結果だと考えています。
Relicの創業メンバーはそれぞれが専門分野を持ち、お互いの足りないところを補完し合える関係でした。そのため、例えば30人程度の規模までであれば、メンバー間の連携がスムーズに取れており、組織としても円滑に機能していたのだと思います。
また、私たちは上場を目指すことよりも、自社のビジョン実現に注力するという方針を取っていました。この姿勢が組織に柔軟性をもたらし、短期的な数値目標に縛られることなく、長期的な視点による組織の構築を可能にしたのだと思います。
私自身が過去に人事関連の業務を経験しており、創業初期の段階で人事制度を整備した点、そして事業が順調に成長していた点なども、社員のモチベーション向上や組織全体の活性化にうまくつながったのかもしれません。その結果、組織が50人規模になるまではほとんど離職もありませんでした。
経営者として直面している悩み
——資金の壁を乗り越え、事業や組織が順調に成長する中で、北嶋さんは現在経営者としてどのような悩みに直面しているのでしょうか。
北嶋:目下の悩みは会社のカテゴライズの難しさでしょうか。私たちはプロダクト開発だけでなく、事業プロデュースや投資も手がけており、スタートアップ、コンサルティングファーム、アクセラレーターといった複数の要素が複合的に絡み合っています。
営業先などでも時間をかけて会社概要や事業内容を説明すれば「すごくおもしろい」と興味を持っていただけることが多いのですが、単一のプロダクトやサービスで事業展開をしている会社と比べて、事業の全貌を理解してもらうまでの説明コストが高いという課題があります。
また、私たちは上場を目指しておらず、短期的な利益追求よりも社会的なインパクトを重視した事業展開を行っており、それゆえの採用時の苦労はあります。IPOを経験したい人材は採用が難しく、ストックオプションといった一般的な採用の武器も持っていません。
新規事業の支援や共創といったマーケットでは国内シェアNo.1とはいえ、メガベンチャーなどと競合すると、思うように採用できないこともあります。
そのため、地方の眠れる人材や、採用競合の少ない高専や大学の人材から、Relicのビジョンに共感し、カルチャーにもフィットする優秀な人材の採用に全力を尽くしています。しかし、まだまだ仲間が足りていないのが現状です。
上場しない自由がイノベーションを生む
——上場を目指さない理由についてもお聞かせいただけますか?
北嶋:私は過去に上場企業と非上場企業の双方で新規事業開発に携わり、それぞれのメリットとデメリットを深く理解した上で、新規事業に特化し続けたいというRelicのビジョンを実現するためには、上場はしないほうが良いと判断しました。
上場すると、株主や株価を意識した、短期的な業績や成長に重点を置いた経営が必要になります。赤字を出すリスクも取りにくくなり、すべての意思決定に合理的な説明が求められます。
これらは一般的には悪いことではありませんが、Relicのように多様な企業とイノベーションを共創していく会社にとっては、経営の自由度や意思決定のスピード低下は死活問題です。
また、非上場であることの強みとしては、例えばパートナー企業がリスクを取りにくい上場企業である場合でも、Relicが事業責任を持つことでスピーディに新規事業を進めることができるなど、柔軟な対応が可能です。
短期的には非効率、非論理的な選択であっても、イノベーションを生み出し続けるためにリスクテイクができる。この自由さこそが、私たちが上場を目指さない大きな理由の1つです。
多様なスタートアップ群で1,000社規模を目指す未来像
——今後のお話についてもうかがいたいと思います。北嶋さんが目指すRelic社の未来像についてお聞かせください。
北嶋:上場企業が抱えるさまざまな制約にとらわれず、自由で柔軟な発想によって新規事業を創出し続けることで社会に貢献したいと考えています。
私たちは3年前にホールディングス化を実施しました。Relicを中核事業会社に据え、ホールディングスの下にさまざまなスタートアップや新規事業をカーブアウトして展開しています。これにより、単一の事業会社にとどまらず、多様な事業を展開する分散型のベンチャー・スタートアップ企業の集合体への成長を目指しています。
現在、グループには17社が所属しており、IPOや売却、グローバル展開など、それぞれの領域やビジネスモデルに適した方針や戦略のもとで、自立的かつ自律的に成果を追求しています。
従来のスタートアップはユニコーンばかりを目指しがちでしたが、私たちはそこには拘らず、多様な企業が共存するエコシステムを構築したいと考えています。こうした多様な企業群が集合体として大きく成長し、将来的には最低でも1,000社、1,000事業、3000億円規模以上の事業を形成するという未来図を描いています。
全員が事業家、CxOとして成長する組織へ
——その未来像を実現するために、どのような組織を作っていきたいと考えていますか? 求める人物像についてもお聞かせください。
北嶋:理想の組織は、全員が事業家であり、何らかのCxOであることです。具体的な役割は問いませんが、事業責任者やグループ会社のCxOなど、各自が主体的に事業を推進できることが重要だと考えています。
Relicは「事業共創プラットフォーム」として、事業家を育成・輩出することを掲げています。そのため、社員一人ひとりが自ら事業を持ち、その成功に責任を負うことが欠かせません。
人間の本当の成長は、責任を伴う厳しい状況を経験し、それを乗り越えることで得られるものです。研修や学びも重要ですが、責任を持って全力で取り組む経験には敵いません。全員が事業家、CxOとして日々の仕事に向き合うことによって個々が成長し、結果として組織全体も強くなるはずだと信じています。
Relicは新規事業の“打席”が無数にある会社
——最後に、このタイミングでRelicに参画する魅力や働きがいについて教えてください。
北嶋:現在Relicは、日本中の新規事業やスタートアップの種が集まるプラットフォームとなりつつあります。大企業からスタートアップ、自治体や地方の中堅・中小企業、さらには大学や研究機関に至るまで、さまざまな事業アイデアや技術・特許などが日々Relicに持ち込まれてきている状況です。
私たちはこのプラットフォームやスタートアップスタジオを通じて、今後も多数の事業を立ち上げていく計画です。今から参画する人たちには、新規事業の企画から立ち上げ、そして成長まで、あらゆるフェーズに関わる機会を提供できると思います。
また、従来のスタートアップは、会社の成長に伴い新規事業の立ち上げに携わる機会も減っていくものですが、私たちは1,000社規模のグループを目指しており、社内の新規事業やスタートアップスタジオ、他社とのJVや共同事業など、次々に新しいチャレンジが待っています。
Relicという一定の成長をした企業の中で新規事業の経験を積むこともできますし、そこからカーブアウトしてグループ会社の経営を任されるチャンスもいくらでもあるはずです。キャリアの選択肢も非常に多様で、スタートアップの立ち上げから、すでに成長している会社のグロースまで、さまざまなプロジェクトや投資に関わることができます。
新規事業開発に興味がある方にとっては、Relicほど多くの打席や機会を提供できる会社は他にないと自負しています。Relicの仕事は楽ではありませんが、私は最高におもしろい仕事だと思っています。大志ある挑戦を、ぜひ私たちと一緒にしてみませんか?