【3行要約】・株式会社Cellestの佐々木宏志氏は学生時代を含めて複数の事業を立ち上げた経験があるものの、小規模な事業を手がけることに成長の壁を感じていました。
・2017年にメルカリにライブ機能を搭載されたことをきっかけに、ライブコマースに勝機を見出します。
・中国での市場調査では、ライブコマーサーの普及度合いと売上規模に衝撃を受け、ライブコマース事業に集中することを決意したと語ります。
前回の記事はこちら 学生時代に3社の起業を経験
稲荷田和也氏(稲荷田):(学生時代に大学受験の専門塾を起業した話を受けて)そのビジネス自体はどうだったんですか?
佐々木宏志氏(以下、佐々木):今の規模と(比較して)考えると、とてもビジネスとは呼べないかもしれないんですけど。学生が起業したにしては、そこそこがんばったなっていう感じです。
稲荷田:それは何年ぐらい続けられたんですか?
佐々木:2年ぐらいですかね。
稲荷田:けっこうしっかり、2サイクルぐらい。
佐々木:そうですね。学生中に3つ起業して……。
稲荷田:あ、そんなにやっているんですか(笑)。
佐々木:翌年にまた違うビジネスを始めたんです。で、その翌年にもまた違うビジネスをやったので、2年で終わっちゃったんですが、結論としては大学の時に3つやっていますね。
事業の多角化の先で決めた選択と集中
稲荷田:じゃあ今のCellestさんの事業は、ある意味4つ目になるんですか? 事業単位で言ったらもうちょっとありますかね。
佐々木:もっともっとあって、学生の時にやっていた3つ目のビジネスが物販ビジネスなんです。これが今のライブコマースに変わったので、リンクしているんですけど。
そのほかには飲食店を大阪で3店舗開いているのと、アパレルを3ブランドやっていたのと、あと経営のコンサルティングもけっこうやったりして。今のライブコマース1本に絞るまでは、けっこういろんな事業をやっている、コングロマリット的な会社でしたね。
稲荷田:ある意味、経営の理想系というか1つのやり方として、そのままいろんな事業を多角的にやっていく方法もあると思うんですけど、今はいったん、ひととおり閉じ切ったというか、本当にライブコマースにフルベットしている状態になるわけですか。
佐々木:はい、今はほかの事業を売却してフルベットしています。
ライブコマースにフォーカスした理由
稲荷田:じゃあ、そもそもライブコマースっていう領域との出会いとか、なぜそこまで一点集中しようと思えたのかとか、そのあたりはどんな感じですか。
佐々木:いろんなビジネスをちっちゃくやっていると、あまり勉強にならないなって思う時期が来るんですね。売上が200~300万円とか500万円の事業って比較的簡単なので、これを無限に作ることはできるんですけど。
500万円ぐらいの規模の事業なので、1サービスの中における従業員の数や課題感もアッパーが決まっちゃうんですよ。そうすると自分の成長もないですし、いろんなことをやっているので、人に会った時に自分が何者かもわからない。
ただいろんな事業をたくさんやっていて、ちょっと成功している若僧みたいな。これで社会性もなきゃ、ただ自分がお金を稼いでいるだけだなって思って。
もうちょっとドデカく何かをやりたいなっていうのを考え出した時に、たまたま自分が2017年からライブコマースをやっていたこともあり、「これで1発当てるとすごく社会性も、やりがいもある」って考えるようになったのが理由です。
稲荷田:その時はライブコマース以外の領域もひととおり見たりしたんですか? それともライブコマースが「降ってきた」というか、「これだ」っていうのが見つかったのか。
佐々木:それで言うと、ライブコマースにフォーカスをしていました。
稲荷田:最初から。
佐々木:はい。
メルカリで受けた衝撃が、中国で確信に変わる
稲荷田:そもそも2017年、ライブコマースという言葉を知らない人がほとんどだと思うんですけど、どうやって出会ったんでしょうか。
佐々木:先ほど物販をやっているって言ったんですが、メルカリでやっていたんですよ。2017年ぐらいですかね。メルカリにある日突然ライブコマースの機能がついて(2017年7月6日に開始)。
おもしろそうだなと思ってやってみたら、むちゃくちゃ商品が売れて「何これ」ってなって。通常、ECってがんばって1つずつ出品して、(掲載順位が)どんどん下がっていくのでまた更新して上げたりとかして「ECってけっこうめんどくさいな、1つを売るのに労力がかかるな」と思っていたんです。
だけど、ライブだとしゃべっているとバババって商品が売れて、みたいな。そこから興味を持ち出して、調べていくと中国でめっちゃ流行していることを知って、実際に中国まで飛んでいったんです。
そうすると街中にライブコマーサーというかライブ配信者がたくさんいて、店に入れば本当にそのへんで配信しているみたいな。
稲荷田:そのへんでやっているんですね。
佐々木:やっています。で、店側もライブコマーサーを受け入れたいんです。
稲荷田:なんでですか?
佐々木:めちゃくちゃ売れるからです。ふらっと来て10億円とか売るんです。
稲荷田:(笑)。
佐々木:消費者を入れるより、ライブコマーサーを入れて売ったほうがいいんです。なのでもう中国では、もちろん全部が全部ではないんですけど消費者が相手にされていなくて、ライブコマーサーのほうがお客さんとして重宝されている、みたいな店はいくつかありました。
1人が半日で4,000億円を売る
稲荷田:億のレベルってことは、ファッションで言えば大衆向けのものではなくて、ハイブランドとかですか?
佐々木:いやいや、ぜんぜんです。10億円とかは普通の服屋さんです。
稲荷田:えっ、そうなんですね。
佐々木:はい。で、10億円はそんなに大きくないんです。一番売る人が12時間で4,000億円です。12時間で、1人でですよ。
稲荷田:商材はどういうものなんですか?
佐々木:コスメか服だったと思います。
稲荷田:へぇー……じゃあもう、中国で明らかにどでかい市場があることがわかり、日本ではまだそこまで目立っていないが、メルカリさんのような大きなプラットフォーマーはちょっと手掛け始めている。早めに先行者利益も取れるだろうとやり始めたってことですか。
佐々木:そうですね。中国の市場を見た時に、日本に置き換えるとテレビショッピングの文化があります。これが長く根付いているわりにはアップデートされていないなと思って。
さすがにテレビショッピングは何かに変わっていくなと思った時に、ライブコマースだろうなって。スマホと電子決済の普及と動画の3Gとか4Gとかが掛け合わさるとライブコマースになるんだろうなっていうのを、2017年当時に「これだ」と思いながら、今に至る感じですね。
大学時代の同級生がビジネスパートナーに
稲荷田:最初は佐々木さんご自身がライブコマーサーというか、売っていたんですか?
佐々木:いや、違います。今、うちのメインチャンネルの「ぞうねこちゃんねる」のkanaという人間がいて。僕が「ぞうねこちゃんねる」のkanaをプロデュースするかたちで始まりました。なので僕はプロデューサー的立ち位置です。
稲荷田:そうなんですね。ちなみに出会いというか、なんで今kanaさんと一緒にやっていらっしゃるのかみたいなところも教えてもらえますか。
佐々木:同志社大学時代の同級生です。
稲荷田:どんなところに重なりがあったんですか?
佐々木:サークルの友だちとか。あと熊田(佳奈)って言うんですけど、熊田に初めて会った時に、第一声で「起業したい」って言っていたんですよ。同志社大学にAO入試で入ってきたんですけど、「起業したい」って言って入ってきたって言っていて。
AO入試ってそもそもめちゃくちゃ難しくて倍率が高くて、だいたいみんなインターハイに出ているとかスポーツをやっているとか。そのあたりのバックボーンなしに「起業したい」っていう理由で入ってきたので、相当熱量があるんだろうなと。しかも女性で、当時18歳とかだったので、わりとインパクトが強いなって。
稲荷田:強いですね。それでも起業家仲間で終わる可能性もあるじゃないですか。なんでご一緒にやれるようになったのか。
佐々木:プレイヤー気質だなって思ったんです。経営者ではないなと。
稲荷田:そこの役割分担がお互いはまりそうっていうのがわかった。
佐々木:そうです。
稲荷田:なるほど、ありがとうございます。ちょうど起業のタイミングまでうかがえたので、前編はここまでとさせていただきまして、後編ではそんな佐々木さんが展開していらっしゃる事業。
ご自身の言葉で出たところもありますけれども、包括業務提携を締結していらっしゃいますUUUM株式会社より、代表取締役社長執行役員の梅景匡之さんを交えながら深掘りしていきたいと思います。
佐々木さん、そしてお聞きいただいたあなたも、ありがとうございました。
佐々木:ありがとうございました。