【3行要約】・株式会社Jamm CEO橋爪捷氏は、決済サービス事業を行う理由の一つとして、大手クレジットカード企業に依存した現状に対する疑問があると語ります。
・橋爪氏は、銀行と直接決済できる時代に信用ベースの決済インフラ一本に依存する必要はないのではないかと提案します。
・橋爪氏は「Jamm」の導入メリットとして、加盟店が支払う決済手数料の安さや、セキュリティ性能などを挙げています。
前回の記事はこちら 決済の常識に対する疑問
稲荷田和也氏(以下、稲荷田):ありがとうございます。今のところを引き継いでぜひ橋爪さんに聞いてみたいことがあります。だいぶ抽象的な質問ですけど、「決済を自由にしたい」というのはどういった思いなんですか?
橋爪捷氏(以下、橋爪):ベースとしては、みなさん決済する時に、何にも思わずVisa、Master、Amexみたいなアメリカ企業に(払うお金の)一部を支払われている状況かなと思っておりまして。それってあるべき姿なんだっけ、と問い直したいところがあります。
今までの決済自体、かなり信用ベース。クレカを誰かに付与して「あなたならいくらまで使えますよ」というふうにして、その信用の中で自由に決済するのが今までのモデルだったんですけど。
銀行と直接決済ができる時代において、そもそも銀行と銀行の送金のハードルがめちゃくちゃ低くなっている中で、「信用ベースの決済インフラ1本に依存し続ける必要があるのか?」とは非常に思っています。
もちろん信用を使って決済する人たちがいることは問題ないと思っているんですけども、信用を得られないとか、クレカを作れない、持っていない方もいらっしゃるので。
そういう人にとっても自由に、自分の銀行口座をベースに決済できるのは、社会としても良いんじゃないかなと思っています。
決済の選択肢はもっと自由でいい
稲荷田:なるほど。ユーザーが使うメリットでいくと、これはクレカが使えない人たちのために「Jamm」があるみたいな話なのか、それとも(クレカと「Jamm」の)両方が使われるものなのか。そのあたりの解像度をちょっと高めたいんですけど、どうですか?
橋爪:現状、すべての決済を1パーセント値引きにしております。なので(例えば)10,000円のお買い物をする時、9,900円しか引き落とされないので、すべての方がクレカ同等の還元を受けられます。そういう面ではユーザーの方にもメリットがかなり大きいんじゃないかなと思います。
逆にポイントだと使い先が限られていたり、失効期限があったり、ふだんなら使わないところにポイントを使う方もいらっしゃいます。それが現金で口座にそのままあるということは、もちろん貯蓄だったり投資に回せたり、そのまま消費にも使える。
より現金を持っていることが一番自由かなとも思うので、そういう選択をユーザーに委ねられる状態になっていると思います。
稲荷田:なるほど。ちょっと意地悪な質問をすると、カードを使ったほうがキャッシュアウトは先送りにできるじゃないですか。そのあたりはどうとらえたらいいですか?
橋爪:クレカのメリットとしては、来月に払えるので、1ヶ月分は猶予がある。「Jamm」は使うとすぐ引き落とされてしまうので、そこは我々にないところです。ただ、還元みたいなことでいうと、その代わりに現金が残る。
ポイントと現金のどっちがユーザーにとって良いのかは、みなさんそれぞれあると思うので、より個人の状況にフィットするものを選んでいただくほうがいいのかなと思います。
稲荷田:多様なニーズにちゃんと沿うところ。
橋爪:そうですね。例えばサブスクに加入する時とか、毎月2,000円を翌月払いにするって、本当にそこまで大きなメリットかというと……。
稲荷田:確かに。
橋爪:毎月2,000円サブスクされている方であれば「その金額なら銀行口座にあるよ」という方がかなり多いかなと。なので、そういう場合であればクレカで翌月に回さなくても、別に問題ないケースが多いのかと思っています。
割安な決済手数料などのメリット
稲荷田:ありがとうございます。じゃあ、銀行さんとユーザーさんの話も聞いたんですけど、逆に加盟店さんにはどういうメリットがあるのかとか、どういう方々が導入すると良さそうとかってあるんですか?
橋爪:現状は1.8パーセントの決済手数料で提供しておりまして、2027年から2.2パーセントにする予定です。日本の今のクレカの決済手数料の平均値って、3パーセント前後ぐらい。
稲荷田:そんなに高いんですね。
橋爪:もちろん会社とか業態にもよるんですけれども、かなり低くても2.5パーセント前後みたいな会社が多いです。そういう中では圧倒的に安いところがわかりやすいメリットでして(笑)。
あとは、我々は信用を提供していないタイプの決済なので、不払い率みたいなものが発生し得ない。
稲荷田:逆に、既存のサービスだと不払いがけっこうあるんですね。
橋爪:そうですね。ユーザーに「払ってください」って催促したりすることがけっこうあったりします。
もう1つ、関与している社数がすごく少ないのもあります。クレカの場合だとブランドもあれば、アクワイアラー(クレジットカード決済を導入・運用する店舗の管理を行う事業者)もイシュアー(クレジットカードの発行会社)もいますが、我々は1社で進めているので、かなり関与者数が少なくなっております。
実はもう1個、不正みたいな話があって。最近は3Dセキュアとかが導入されているのでちょっと状況が違うんですけど、基本的にクレカだと番号を入力してしまえば決済できる。番号で決済するので、盗難に非常に弱いところが1つの大きな問題です。
我々はパスキーという認証を使っているので、パスワードとかユーザーネームとか番号とかがありません。フィッシングみたいに盗難されても勝手に使えないので、不正されにくいというところでもコストを圧縮できています。
長期的な目線で支援したい
稲荷田:ありがとうございます。ここまで藤本さんも聞かれていて、投資検討のプロセスで今の話もたくさんあったと思いますし、ここに対する投資家目線での補足とか、追加でこんなことも思っている、みたいなところがあったら教えていただけませんか。
藤本崇氏(以下、藤本):投資家としても、すぐに「ボーン!」と跳ねるビジネスではないことはわかっていまして、わりと長い戦いになると思っています。
今回の出資のプレスリリースを出すまでのタイミングでようやくプロダクトが作れて、今は加盟店に「さあどうぞ使ってください」というタイミングですけど。これからは、コンシューマーが、先ほど言ったみたいにポイントがつくカードじゃなくて本当にこちらを選んでくれるかとか、長い道のりになるとは思っています。
ただ、繰り返しになりますけど、これをやり切る、エベレストを登頂するのは、この人しかいないとは思っています。私も前職のつてでいろんな会社も紹介できますし、そこにたどり着くまではしっかり応援して、支援もしていきたいなと思っています。
国際色豊かな開発メンバー
稲荷田:ありがとうございます。あと追加で聞きたいのは、やはりプロダクト開発の難易度が非常に高い。メンバーと言いますか、組織はどういうふうに作っていらっしゃるんですか?
橋爪:来月から6名になるんですけど、現在はエンジニアが5名ぐらいで作っていまして、かなりスモールチームでガンガン作っています。5人中、日本語をしゃべれないメンバーが4人いまして。
稲荷田:えっ、そんなにいるんですね。
橋爪:ほとんど日本語をしゃべれないメンバーでやっております(笑)。
稲荷田:社内公用語は?
橋爪:英語なんですけど、3人ぐらいは中国語ができるので、たまに中国語でダべっていたりします(笑)。
稲荷田:おもしろい(笑)。
橋爪:なので日本語が一番、オフィス内の使用頻度としては低いです。
稲荷田:じゃあ、ちゃんと話すって意味では英語が多いですか。
橋爪:そうですね、はい。
稲荷田:すごい。橋爪さんのバックグランドも活きている。じゃあ、これから入りたい方も、基本は英語を話せたほうがいいですね。
橋爪:一応、ビジネスサイドのメンバーであれば日本語だけでもOKとしているので、特に営業周りとかだとそこまで英語は使わなくて大丈夫なんですけど、プロダクトサイトのメンバーですね。PDMとかデザイナーとかエンジニアは、英語がないとけっこう大変です(笑)。
導入加盟店は随時募集中
稲荷田:聞き足りないところではあるんですけど、お時間が来てしまいました。ぜひ最後にリスナーさん、ここまで聞いてくださった方々に、届けたいメッセージがありましたらお願いいたします。
橋爪:現状としてちょうどプロダクトをリリースして、加盟店の導入は進んでいるんですけれども。サブスクでもECみたいな都度決済でも大丈夫なんですけど、toCの事業をやられている方には、「Jamm」の導入を検討いただきたいなと思います。
ユーザーの方も決済ページのところに、我々の紫のアイコンを見かけましたら、ぜひクリックいただいて、「Jamm」経由で決済していただきたいなと思っております。
稲荷田:ありがとうございます。たぶん聞かれている方々は事業者さんも多いと思いますので、ぜひJammさんのホームページをご覧いただくか、橋爪さんにご連絡を取っていただければと思います。
(ポッドキャストの)概要欄にJammさんの各種リンクも記載していますので、ぜひご確認ください。そして今回の配信を気に入っていただいた方は、ぜひ番組のフォローや評価、SNSでの拡散を……やっぱりフォローと評価がね、少ないんですよ(笑)。
橋爪:(笑)。そうなんですね。
稲荷田:悩みなので。XTech Venturesさんといえばオフレコ対談を手嶋(浩己)さんがされていますけれども、ちょっと僕はぜんぜん敵わないぐらいの差がございますので、追いつきたいなと思っています。
藤本:応援・拡散させていただきます。
稲荷田:ぜひ。フォローと評価もぜひお願いします。
藤本:もちろんです。
稲荷田:ありがとうございます(笑)。お聞きいただいている方も、ぜひお願いできればと思っております。じゃあ橋爪さん、そして藤本さん、聞いていただいたあなたも、ありがとうございました。
橋爪:ありがとうございました。
藤本:ありがとうございました。