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#100 株式会社Jamm 代表取締役CEO 橋爪捷氏(全4記事)

クレジットカードの国際的な規制トレンドにも着目 国産決済サービス「Jamm」にVCが寄せる期待 [2/2]

徹底した検証プロセスがスタート

稲荷田:そこからけっこうリードタイム短めですもんね。いわゆる検討のプロセスとかも、最初の案件だといろいろ大変なんじゃないかなと想像するんですけど、どんな感じだったんですか?

藤本:そうなんですよ。もちろん、最初の「Jamming」だけで投資委員会に上げられるわけがないじゃないですか(笑)。

稲荷田:しっかりしたVCでいらっしゃいますし。

藤本:特にうちのファンドってわりとフィンテックに造詣も深いパートナーがいて。代表の西條(晋一)とかは投資も含めてめちゃめちゃいろいろやってきた経歴があって。サイバーエージェントでは自分でフィンテックの事業も立ち上げてやっていましたし。

このビジネスが本当に成功するかどうかを判断するには、業界の動向もグローバルの市場も全部洗った上で、日本がどういうふうに変化していくのかもしっかり分析した上でじゃないと(提案できない)。

最初は宿題のやり直しから始まって、検討プロセスでは橋爪さんにも協力してもらって、いろんな検討スタディを経てようやく投資の意思決定にたどり着いたっていう苦労話があります。

日本では代表的なプレイヤーが不在の領域

稲荷田:橋爪さんからしたらどうですか? かなりDD(Due Diligence 投資対象となる企業の詳細な調査・分析を行う工程)というか、厳しかったと思うんですけど。逆に、解像度が上がる機会だったりしたのかとか。

橋爪:そうですね。客観的に自分が投資家だったら……何というか、決済自体がレッドオーシャンっていうイメージがかなりあって。

かつ、過去に失敗した決済スタートアップがいくつもある中で、自分がVCだったとしてもかなり厳しい目線になる事業かな、とも思います。そういうところを1個1個のボールを打ち返しながら、2ヶ月ぐらいやっていたかなと思います。

稲荷田:潰れてしまう会社もあるとのことでしたけど、(近い分野での)先行者はいるんですか?

橋爪:日本にはいなくて。この領域は海外でA2A決済って呼ばれているんですけど、コンセプトとしてはけっこうシンプルです。基本的にクレカで行われている決済を銀行と銀行の間ですることによって、コストを下げていこうというコンセプトなんですけど。

じゃあ、実際にこのビジネスモデルで日本でやっているプレイヤーがいるかというと、今のところ大きいところではいない状態になっています。

電子決済サービスの拡大が契機に

稲荷田:ちなみに、それはなんでなんですか? なんだかチャンスがありそうじゃないですか。

橋爪:やはり規制(の問題)と、銀行の存在が大きいところはありまして。自由に銀行からお金を行き来させるのって、そもそもいろんな人が銀行にアクセスしないといけない。すなわちAPIが公開されていないといけない、みたいな前提条件がいろいろあります。

そうなってくると、どういう人が接続していいのかとか、国によってその接続の難易度が変わったりする。その中で日本はあんまり接続にオープンじゃないタイプの国なので、あまりこういう事業が生まれにくい背景があると思います。

稲荷田:じゃあ、どうしてJammさんは立ち上がれたんですか?

橋爪:たまたまタイミングが良かったのはあります。ちょうど2年ぐらい前に起業しているんですけど、PayPayとかはもう明らかに伸びていて、銀行群(の目線)で考えると、決済シェアが奪われているという特殊な事情がありました。

それまでは現金で決済していると、引き落としと入金の際に手数料を取れていたのが、PayPayエコシステムに入金されてしまうと、あんまり銀行にとってうまみがない方向性に国が進んでいるところがあって。

そこに対して我々は「じゃあ銀行から直接決済できればいいじゃん」と提案させていただいて、連携しているのが事業のスタートです。

309行の金融機関と提携

稲荷田:それでいくとじゃあ、銀行にめちゃめちゃ刺さるサービスってことですか?

橋爪:そうですね。もちろんどのスタートアップも事業の難易度は高いんですけど、我々は銀行にもOKしてもらわないといけなくて、その次に加盟店に導入して、最後にユーザーに使ってもらわなきゃいけない。

ホップ、ステップ、ジャンプみたいなものが全部成立しない限りは、1円も売上が出ないビジネスです。そういう面ではもちろん銀行ともちゃんと協力体制にいないといけないですし、その先もいっぱいある感じです。

稲荷田:銀行側にWinがあるにしても、説得するのが大変そうだなって印象があるんですけど、現状はどうなんですか?

橋爪:今は309行の金融機関と一緒にやっております。

稲荷田:めっちゃ多いですね。

橋爪:そうですね。ほかの銀行さんと連携のお話も進んでいるので、そういう意味では銀行側の協力はかなり得られているのではないかなと、現状では思っております。

もちろん決済で不正があったり問題があったりしたら、1日で止められてしまう可能性は依然としてあるんですけど、そこは一定、クリアできているのかなという状況です。

「彼であればできるんじゃないか」

稲荷田:加盟店とかユーザーっていう観点だと今、どんな状況ですか?

橋爪:ちょうど今、加盟店側に着手している状況で、導入していただけるところに今月ぐらいから、本格的に営業活動を開始しています。その先にまたユーザーがいるので、まだ未来は非常に遠いんですけど。

稲荷田:なるほど。市場としてのチャンスとか、魅力も進捗もちゃんとある。とはいえ難易度は変わらず高そうだなと思っていて。

それでいくと藤本さんにぜひ聞いてみたいのは、これを信じられた理由とか、それこそ橋爪さんに何を期待して出資ができているのかとか。このあたりのご見解をいただけますか。

藤本:欧州と米国でオープンバンキングの流れが来ているっていうことはまずわかったんですね。ところが日本ではこれが「来る来る詐欺」で結局来ないんじゃないかと。

先ほどもデビットカードっていうお話がありましたけど、デビットカード自体が日本では普及していないので。「銀行間取引自体もどうなんだろう」という話はあったので、今後を占う上ではすごく慎重に精査をしました。

「タイミングが良かった」っておっしゃっていましたけど、わりと「彼であればできるんじゃないか」というファウンダーマーケットフィットの視点は、本当にお世辞じゃなくありました。

海外のトレンドに見る「Jamm」のポテンシャル

藤本:1つは銀行のAPI自体はずっと公開されていたんですけど、それを活用してハックしてモノにする起業家がなかなかいなかった。そういう中で彼はそれをハックして、ローンチはまだこれからですけど、300行以上の銀行と提携して使えるようにした。

あとは日本の市場も、そろそろ変わるんじゃないかと思っていまして。ヨーロッパではデビットカードもかなり普及していますし、銀行間決済もかなり伸びているんですね。

背景にはクレジットカード自体の高金利がちょっと人々を蝕んでいるんじゃないかということで、規制が入り始めていると。

稲荷田:国側で。

藤本:はい。今後、そういう波がグローバルに強化されていくんじゃないかというのはあって、日本でも「ちゃんと利率とかを提示しなきゃいけないですよ」っていう規制の流れも来ると言われているので、消費者がポイント漬けになってしまっている現状が変わるんじゃないかと。

それと、彼のJammingという言葉も自然体で言っているようで、「自由にしたい」という思い自体が活動を加速させている部分はあるんじゃないかと僕は思っていて。「この難しいチャレンジも、彼ならばできるんじゃないかな」と賭けたところはありました。

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