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#100 株式会社Jamm 代表取締役CEO 橋爪捷氏(全4記事)

「ノリと気分」で起業し金融テックの“空白地”を発見 決済サービス「Jamm」の緻密な事業設計プロセス [2/2]

事業計画も未定のまま起業

稲荷田:かなり大きいカンパニーから、5人の会社のギャップはなかったんですか?

橋爪:ギャップとしてはどちらかというと、エンジニアとか、プロダクトみたいな方と働くことがまったくなかったので、実際に入ってから1年ぐらいは本当に使い物にならなくて。エンジニア1人、デザイナー1人と自分で新規事業の立ち上げとかを行ったんですけど、まったく立ち上がらなかったやつもけっこうあったりしました。

稲荷田:本当ですか?

橋爪:はい。まぁ、プロダクト作りってめちゃくちゃ大変なんだなって、実際に一緒にやってみて思ったことが、当時の自分(の実感)でした。

稲荷田:なるほど。辞めた理由はどんな感じですか?

橋爪:新規事業をいろいろやらせていただいていたので、特にestieに不満はまったくなくて。その当時、3つぐらい着手して進めていたんですけど、ふと、「3つぐらいやったけど、そろそろ自分でもできるんじゃね?」っていう、めちゃくちゃ甘い気持ちで(笑)。あまり考えずに起業しちゃいましたね。

稲荷田:じゃあ、辞めるタイミングで、具体的に事業案があってとか、「これをやりたい!」っていう状態ではないんですか?

橋爪:えっと、辞めるタイミングではまったく何も決まっていなくて。

稲荷田:え!?

「さて、なんの事業をしようか」

橋爪:事業内容も決まっていなかったですし、社名を考えだそうかなぐらいで、一応、コーポレートカラーが紫っていうことだけは決まっていました。

稲荷田:なんでですか(笑)? 逆に、なんで紫にしたんですか(笑)?

橋爪:(笑)。堅苦しくない色の、ポップな会社がいいなと思って、はい。コーポレートカラーを決めて、社名だけJammって決めて「さて、なんの事業をしようか」と(笑)。そうやってスタートした感じですね。

稲荷田:でも、コンサルや不動産テックからの“ポップさ”って想像できないんですけど。それはどこから出てきたんですか?

橋爪:うーん。たぶん、(事業計画を)めちゃくちゃ考えて起業される方がほとんどだと思うんですけど、逆に、自分はそんなに考えたら起業できなくなっちゃう気がしたので。「あまり考えないうちに起業しちゃって、そこから何しようかを考えたほうがいいかな?」と思って、ノリと気分で決めてしまいました(笑)。

稲荷田:ノリと気分で(笑)。

橋爪:はい(笑)。

偶然耳にしたレゲエの曲が社名の由来に

稲荷田:Jammって、どういう意味でしたっけ?

橋爪:もともとは、ボブ・マーリーの「Jamming」っていう曲があって、レゲエなんですけど。聞かれます?

稲荷田:聞かないです。

橋爪:ですよね(笑)。なんかたまたま会社を起こす時に、スタートする時に、Spotifyのプレイリストで自分のお気に入りソングをシャッフルしていたらたまたま(その曲が)かかってきて、自分の目指したいコンセプトと似ていたので、「じゃあJammで!」って思って。

稲荷田:すご! じゃあ、Spotifyさんに多大なる影響が。

橋爪:確かに。たまたまシャッフルでかかってきたからなんですけど。意味としては、音楽のジャムセッションみたいな感じで、個々の人たちがちゃんと意識的に参加するっていう。

社会としても、個人的にはみんな意識的に貢献して何か変えようみたいなところがあるといいなと思っているのと、Jammという単語がけっこうフィットしたのでそういう名前にしました。

ユーザーに貢献する「ムーブメント」

稲荷田:いいですね。プレシードの資金調達のプレスリリースとかも拝見しましたけど、けっこうモメンタム感があるような…。あれ、どういうフレーズで出してましたっけ?

橋爪:えっと、ムーブメントですね。

稲荷田:ムーブメントか! あれは、どういうことなんですか?

橋爪:こう、スタートアップという言い方をすると、なんだか会社がお金儲けをしてグロースをするために存在している感じが出てしまうんですけど、我々の決済サービスとして決済行動を行っているエンドの、ユーザーの方に貢献している気持ちを持っていただきたいというところをムーブメントと表しています。

そういう面では、使う方も参画している感じをちゃんと作っていきたいなと思っています。

稲荷田:めちゃくちゃいいですね。

橋爪:ありがとうございます。

緻密な事業検証と、大胆なアクション

稲荷田:じゃあ最後に聞くと、今の事業に着地した理由とか、どんな経緯だったかを最後に教えてもらえますか?

橋爪:そうですね。先ほどノリで起業したと言いましたけど、実はプロセスはめちゃくちゃ緻密にやりまして。やはり、自分がアメリカにいたのもあって、けっこうファイナンスまわりのテクノロジーは、日本はあまり先進的なことができていない環境かなと思っていました。

そうであれば、必ずファイナンスまわりでアンバンドルできるに違いないと考えました。じゃあ、銀行のやっていることをちゃんとAからEぐらいまで……もっとあるかな? 全部リストアップして、それぞれの領域でどういう方向性のイノベーションが起こせるかを全部書いて。それをどういうスタートアップがどういうところに取り組んでいるかを、日米とかで見て。

たまたま、2Cの銀行間決済が、日本にはない穴みたいな。「これ、なくない? じゃあ、日本で実現できないか?」というところで銀行にアポを取らせていただいて。

稲荷田:え!?

橋爪:はい。「こういうことをやりたいんですけど」みたいな相談をしに行ったのが、2023年の4月ぐらいですかね。

実家の居酒屋が事業初期の突破口に

稲荷田:あ、じゃあ、ぜんぜん2年前ぐらい。銀行の方って、それでアポを取れるものですか?

橋爪:それがたまたま、うちの実家の居酒屋のお客さんで、1980年代ぐらいに駐在で来ていらっしゃった銀行の役員の方がいて。

稲荷田:相当エリートというか。

橋爪:はい。みなさん出世されて役員をやられている方が多くて、そういう方経由でちょっと「居酒屋力の息子なんですけど……」って。

稲荷田:(笑)。

橋爪:(笑)。「ちょっと一度お話しさせていただけませんか?」みたいにアポを取らせていただいたのが最初です。

稲荷田:居酒屋の息子にいきなりアポを取られて、その方もめちゃくちゃビックリするでしょうね。

橋爪:確かにそうですよね。ただ、実家の居酒屋は親が定年で3、4年ぐらい前に閉めているんですけど。その時も、各支店の方から寄せ書きをいただいたりとか。

稲荷田:えー、すごい!

橋爪:その人の名前とかも載っていので、「この人に話をしに行かないと!」と思って、そこからつてを辿ってアポを取るみたいな(笑)。

稲荷田:じゃあ最初に昔のご縁を引っ張りだして、濃密なヒアリングと、仮説検証がかなり進んだっていうことなんですね。

橋爪:そうですね、はい。

稲荷田:なるほど。ありがとうございます。事業のところを最後に触れて、そのポテンシャル、市場感とかがすごく気になってきたので、このあたりを後編で、担当キャピタリストの方も交えながらお話をうかがいたいなと思います。橋爪さん、そしてお聞きいただいたあなたも、ありがとうございました。

橋爪:ありがとうございました。

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