柔軟なアイデアこそビジネスのヒント
清水:おっしゃるとおりで、いいアイデアだなと思います。実際、スキーのブーツってフォームを入れて隙間を埋めることでその人に合ったものを作っていると思います。
DIFF.としては今のところ検討できていないです。けれどもそういうギミックを持たせたシューズは、実際に世の中で検討されているものもあります。
私じゃないですけど、ミズノでも幅の調整ができるようなシューズをテスト的に販売してみようというプロジェクトもあったので、そういうアプローチも確かにあるなと。
本当に、「じゃあ、靴って靴の形をしていなかったらいけないの?」みたいな問いも立つと思うんですよね。
大長:確かに。
清水:「足を守りながら快適に歩けりゃいいんだから、別にほかの方法があるんじゃないの?」とも思います。そういう広い問いに変換しながらやっていくのを定期的にやらないと、視線がギュッと狭くなり過ぎるなと思うので、アイデアをいただいてとてもうれしかったです。
大長:ありがとうございました。いったん今日の質問は以上で終了したいと思います。
大企業には“本当の意味で痛い目を見た人”が少ない
三冨敬太氏(以下、三冨):あっ、1個だけいいですか。すいません。ちょっとどうしても聞きたいことが……。
大長:どうしても聞きたい? OK。
三冨:清水さんのスライドの最後のほうで、失敗に対して「ナイストライ!」と伝えるとか、多く学ぶ「ナイストライ!」を連発するような人が重要というお話があったじゃないですか?
清水:はい。
三冨:清水さんは今、会社の外に出られていますが、もし大企業にいた時にそういう文化を作るためにどういうことができたんじゃないかとか、こうしたらそういう文化が作れるんじゃないかとか、あらためて思うことがあったら、どうしても聞いてみたくて。
清水:ありがとうございます。即答できないところはあります。今質問していただいて思ったことで言うと、今日みなさまから再三ご質問いただいてお話ししてきた「失敗から何を学ぶのか?」という内容について、肌感がある人はめっちゃ少ないんじゃないかと思っています。
本当の意味で痛い目を見た人が増えていく必要があるよねとなった時に、企業の中にいる限り、自分で意思決定する回数ってすごく少ないなと思っています。
会社から飛び出して初めて気づくことがある
清水:私自身も、ミズノでの新規事業としての「左右別サイズの(シューズを販売する)プランを前に進めていきましょう」の話もそうです。ほかにも新規事業として進めたプロダクトもあって、自分自身でもいっぱい意思決定してきたつもりでいたんです。

けれども「最終的には上司が意思決定しているんやな」みたいなことを、会社から出ると気づいたりするわけですよね。
そうなった時に、失敗しても実はそんなに自分事として痛くなかったりする「痛みの足りてなさ加減」みたいなのがあるんじゃないかなと思いました。
いかに本当に痛い思いをするのかを環境として作るにはどうしたらいいのか、というところから出発すると、「失敗して立ち上がった」じゃないですけど、失敗から得た学びの深さみたいなのが作っていけるんじゃないか。
そういう姿を継続して作っていけるようになってくると、「あっ、失敗している人のほうがいい感じやな」みたいな(状態にできると思います)。だから、短期でバツンと変えるみたいなことは相当ハードルがあるんじゃないかなと感じました。
どうしても「複数年計画、5ヶ年計画で、こういう人が育ってきている状態を作ろう」だとか、長い目線でのお話になってしまうのかなと、しゃべりながら考えていたらそういう感想に至りました(笑)。
三冨:なるほど。ありがとうございます。そうですよね。やはりもうちょっと比較的長いプランで痛みを伴う意思決定ができるような環境と、それがもし失敗したとしても評価されるような仕組みを作っていかないと。
清水:そうですね。