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ミズノ発 “靴の当たり前を変える” スピンアウトスタートアップ DIFF.の挑戦 〜生産と流通を変える実験と探索〜(全5記事)

ビジネスの失敗要因は“事業か人か”の2軸で分析 つまずきを学びに変える「失敗ノウハウ」の蓄え方 [2/2]

失敗には“事業と個人”の2軸がある

三冨:やはり「事業としての失敗」と「人としての失敗」の2軸があって、それぞれいろんな失敗から学習していくことになりますもんね。

清水:そうなんですよね。「最初から大きいもんを作るな」って、もう耳にたこができるぐらいに聞いていたはずですし、自分でも言っていたはずなんです。なのに、「自分でやるとなったらやっちゃうんやな。人ってそういうもんなんかな?」みたいなところも含めてですね(笑)。

三冨:ちょっとごめんなさい。このままの流れであともう1個だけ。最後のほうの資料で、足型を軸にした顧客データベースの検証をされているという話だったじゃないですか。

今ってどのぐらいの仮説の粒度で検証を回されていて、それに対してKPIみたいなものをどうやって定められているか、聞いてもいいですか?

清水:ありがとうございます。まず大きく2つ検証する必要があるなと思っています。「足型ってそんなに集められるんだったっけ?」という点が1つです。もう1つが、足型が集まったあかつきに、要は手元にある我々が売りたい在庫のモデルとお客さんがマッチするところを、きちんとリッチな体験にしていけるのかの2点だと思っています。

リッチな体験かどうかはわりとミニマムに検証ができます。なので足型の登録をしていただいた上で「このシューズが本当に合いますよ」というアナウンスがどの程度効果を発揮するのかを定性・定量で採っていくところかなと思っています。

検証は“量と種類”が重要

清水:ここに関しては、ある程度ベースになる体験の設計と足型の最低限の量が採れてきているので、間もなく実証を回せるかなと。

そこで「やはり動き出せるね」という話であれば今度は量を作って、「足型のデータが多く採れるのかどうか?」に着手していく流れになるかなと思いますね。

三冨:ありがとうございます。大きく2つ、「足型をいっぱい集められますか?」という、どっちかというと実現可能性に近い内容と、あと「お客さんとしっかり足型がマッチするか?」という体験価値の部分の話でした。

「体験価値」の部分を詰めていった後に、利用してくれる方がどれだけいるのかで、前者の「足型を集められるか否か」もや決まっていく、というような順番になるとお考えですか?

清水:そうですね。足型を十分に集められるのかどうかは、複数のチャネルといいますか、いろんな接点で集められると思っています。どのチャネルからの流入が一番効率的なのかの検証になるかなと。なので、チャネル設計とかを並行してやっている感じです。

三冨:そうですよね。いろんな要素を並行して検証していかないと。ありがとうございます。すごくたくさんおうかがいしてしまって、すいません。

清水:いえいえ、とんでもないです。

最初のアイデアから現在の事業に至るまで

大長:僕も1個だけいいですか? 僕が清水さんのお手伝いをさせてもらった時の初めのアイデアは、Webサイト上で靴のサイズをレビューするというものでした。その時から靴の最適化はずっと言っていたんだけど、手段としてはレビューだったじゃないですか?

清水:そうですね。

大長:そこでいったんストップがかかったんですけど、違う探索が始まって、今度は流通に行き、今度は3Dプリンター。テーマは同じなんだけどどうやって見方を変えていったのかという、そのいきさつをちょっとお聞きしたいです。

清水:ありがとうございます。言いたいことって、もう本当に1つしかないんですよね。「自分に合ったシューズを手に取るのって、めっちゃムズくないですか?」という話になった時にその課題を解決するサービスがあればいいということです。

さっき大長さんからご紹介いただいた最初のアイデアって、「靴って、良い、悪いを横の人に教えてもらえないよね」というのがあるだろうなと思っています。これは何かと言うと、横の人と足の大きさも形も違うからです。

となった時に、自分の足に近い人が「この靴は良かったよ」と言ってくれるようなサービスを思いつきました。「足型をキーにして登録してもらうようなものがあったら、いい靴が探しやすくなるんじゃないかな?」というアイデアだったと思っています。

ユーザーの声と社内データが事業のヒントに

清水:このアイデアがミズノの中で落選して、それで悔しさとか、さっきの「事務局をやらないとダメだ」みたいな話で、「外部のプログラムに持っていきます」となったんです。

そこから軸になる「自分に合った靴を探すのってムズ過ぎないか?」という話の中で、「じゃあ、どういう課題を持っている人が多いのか?」を調査するため、あらためてユーザーさん回りをしていくタイミングがありました。

いろんな人の話を聞いていると、まあまあの確率で「自分の足はこっちの足がデカいから靴を選ぶのが大変なんですよね」という話を教えてくれる人がいるなと。

自分自身も足の大きさが左右で違うので、「あぁ、確かにな。その話は課題感があるな」ということで、「自分だけだし我慢したらどうにかなるか」で逃がしてきた視点に出会ったのが1つです。

ミズノにいたので足型のデータは社内にたくさんあります。あらためて手元にあるデータをひっくり返したら、さっきの「左右別サイズで履くべき人」が20パーセントぐらい。その中でもとりわけ足のサイズが5ミリ以上違う人って5パーセントぐらいいる。「20人に1人ぐらいは靴を我慢して履いている状況なんやな」ということが数字からも見えてきたと。

「これを解決したら自分に合ったシューズを履きやすい人の数が増えるんじゃないかな?」ということを新たな仮説としてセットしてヒアリングを回ると、まあまあリアクションもいいと。

靴を片方捨てているサッカー選手のエピソード

清水:そういうベースになる部分をセットしながらいろんな人に課題のヒアリングを広くさせてもらった時に出会ったのが左右別サイズの課題の話です。

ちょっと象徴的に覚えているのが、左右別サイズで靴を買いたいがために2足買って片方ずつ捨てていたサッカー選手の話です。その人は「お前みたいな実力がない者が、何を調子に乗ってそんなことをしてんねん」と言われて、半ばちょっといじめられたみたいな話がありました。

これは、左右別サイズの靴が流通していないがために捨てていただけのことです。その人にとっては当たり前のことなのにそんなことが起こるんやな、みたいな話がありました。

なので「靴を買える場所を作るだけじゃなくて、靴を片方ずつ左右別サイズで買えることを当たり前にせにゃあかんのやな」と思うような話を教えてもらった時に、「これをやろう。これを絶対に達成するんだ」と強い思いを持った、みたいな話もあったりします。というのが1つ目の左右別サイズの事業の話ですね。

自分の興味関心と社会課題がつながった瞬間

清水:3Dプリントの話に関しては、ちょっとまたこれも軸が異なるんですが、入社した2012年当時に私自身がはまっていた『MAKERS ―21世紀の産業革命が始まる』という本があるんですね。

ざっくり言うと「これまで大量生産で作っていたものが、製造技術の進歩によって3Dプリンターなどを使って自分に合ったものもどんどん作っていけます」という内容の本なんです。

これは「靴も、足の形が人によってこれだけ違うんだから、絶対その方向になるよな」と当時から思っていたのがあって、ゆくゆくは3Dプリントのシューズが世の中に浸透していくことに関して信じていた部分がありました。

ただ、今の3Dプリンターで作ったシューズの価格帯を考えた時に、一般のスニーカーを履かれる方に対して提供しても買いたい人は少ないだろうなと。「提供し得るところってどこかにないのかな?」と、うっすら頭の中にあったのがまず1つです。

そんなふうに、「温めていた」ではないですけど、「3Dプリントのシューズを作る」という、ずっとくすぶっていた思いがあった時に、糖尿病患者の足・靴の課題がかなり根深いのを教えてもらいました。

これもひょんなタイミングです。足に合ったシューズを提供でき、左右別サイズでシューズを買えるという体制が整った頃に「足を守らなきゃいけない人の代表と言ったらやはり糖尿病やで」「えっ、そうなんですか?」みたいな話をしたんです。

“足の健康を守る”という目的は変わらない

清水:「そういうことなんだったら、提供していけることは何かあるんじゃないのかな?」というので、「どういうかたちがいいのかな?」と考えた時に、今、彼らの足を守るとなったらオーダーメイドのシューズで守っていることが多いと。

「だったら左右別サイズよりも、one by oneで作れることに価値が発揮されるんじゃないのかな?」みたいなところからいろんなお話を聞かせてもらいました。すると、「義肢装具士さんが減っていっています」みたいなことも含めて、けっこう業界的な課題も深そうやなと。

「じゃあ、そういう状態なんだったら、もしかしたら今まで私がやってきた靴のエンジニアリングも含めてお役立ちできるポイントがあるんじゃないかな?」と思いました。そこから事業として成立するのかどうかを深めていく機会を得た感じですね。

大長:なるほど。ありがとうございます。「3Dプリンターで何かを作る」という考えがずっと頭のどこかにあったから、糖尿病の話を聞いた時にパッと……。

清水:「あっ、あるかも」って思ったという感じですね(笑)。

大長:コネクトしたということですよね。足を守るためというコアは一緒だから自分もやりたい。「じゃあ、DIFF.がやってもいいんじゃない?」っていう。

清水:そうですね。そうやって事業領域を増やしてでもやりたいと思った感じですね。

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