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アークエルテクノロジーズ株式会社 代表取締役CEO 宮脇良二 氏(全1記事)

アクセンチュアMDが40代で脱炭素ベンチャー起業へ 安定を手放しキャリアチェンジに踏み切った理由 [2/2]

創業期の最大の壁

スタクラ:スタンフォード留学を終え、本格的にアークエル社の事業をスタートしてから今に至るまでには、経営者としてさまざまな壁に直面されたかと思います。多くの創業者は人材と資金に苦労しますが、宮脇さんの創業期の最大の壁は何でしたか?

宮脇:やはり「人」の問題には最もエネルギーを奪われた気がします。アクセンチュアでの経験があれば対応できると少し軽く考えていましたが、実際には想像をはるかに上回る難しさに直面しました。現在は人事のサポートメンバーも増え、以前よりは負担も軽減されましたが、創業直後はすべてを自分1人でやらなければならず、非常に苦労しました。

社員との関係構築が思うように行かず、結果的に退職に至るケースなどはやはり辛いものがありました。それぞれの従業員が異なる人生や視点を持っており、期待通りのパフォーマンスを引き出すのは簡単ではないことを痛感しました。

資金面に関しては、幸い創業当初から昔のお客さまから仕事をいただけたこともあって、他のスタートアップほど資金面での苦労はありませんでした。創業直後はコンサルティング業務で収益を上げつつ、少しずつ投資に回していく形を取っていました。現在は事業規模の拡大に伴い大きな資金が必要となってきたため、今年初めて資金調達を行いました。

スタクラ:スタートアップは仲間集めに苦戦する企業が多いですが、創業初期の採用はいかがでしたか?

宮脇:アクセンチュアからの引き抜きはほぼ行わず、主に採用媒体を活用していましたが、比較的順調にメンバーは増えている方だと思います。私のアクセンチュアでの経験が、ある程度の安定感や「力がつきそうだ」という印象を与えているのかもしれません。

もちろん、求めるスキルを持った人材の確保は常に課題としてありますが、会社のビジョンに共感し、共に成長したいという志を持った方が数多く応募してくれることには大変感謝しています。

事業立ち上げや拡大期に直面した壁

スタクラ:資金や人材が集まり、事業が成長してきた一方で、事業立ち上げや拡大の過程でどのような壁がありましたか?

宮脇:まさに今、その壁に直面しているところです。私たちはEV普及に貢献するサービスを提供したいと考えていますが、EV市場の成長には長い時間を要します。その長い時間軸の中で、資金やメンバーのモチベーションをどう維持するかは大きな課題です。

また、例えばCO2排出量の見える化サービスを提供しているアスエネ社のように、特定の分野に特化して一気に事業を拡大している企業も存在します。私はそこまで思い切った投資ができておらず、その慎重さが今の課題でもあります。

より大きな勝負に出るためには、長い時間をかけて市場を分析し、適切なタイミングで投資を行う必要がありますが、競合他社との競争が激化する中で、好機を見極めることは容易ではないと感じています。

スタクラ:新型コロナウイルス感染症の流行は、事業にどのような影響を与えましたか?

宮脇:新型コロナウイルス感染症の流行は、むしろ当社の事業にとっては追い風となりました。エネルギー業界のデジタル化が加速し、2020年には「脱炭素」がキーワードとして注目され、DXとGXが同時に進行しました。私たちもこのタイミングで事業拡大に入ったと感じています。

特に経済産業省・資源エネルギー庁の「蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業」に採択されたことは大きな転機となり、EV事業への取り組みを加速させるきっかけとなりました。

スタクラ:大学時代から志していた起業家としてのキャリアを歩む中で、葛藤や限界を感じることはありますか?

宮脇:実は、最も感じているのは孤独感かもしれません。経営者としての悩みを深く共有できる相手はそう多くありません。また、経営者の能力の限界は会社の成長の限界だと感じており、常に自己成長を意識する必要があります。競合他社は非常にレベルが高く、限られた時間の中で自身の能力を向上させることは、私に課せられた大きなテーマだと考えています。

脱炭素化社会の実現に向けて掲げるビジョン

スタクラ:今後のお話についても詳しく伺っていきたいと思います。 今後の事業展開と、その実現に向けての課題について教えてください。短期的、中長期的な視点からどのような課題があるとお考えですか?

宮脇:当社のビジョンですが、まずは2030年の温室効果ガスの46パーセント削減という目標に向けて、エネルギーの需給バランスを最適化するプラットフォームを構築し、業界内での中心的なポジションを確立したいと考えています。

そして、2050年にはより広範な分野へと事業領域を広げ、持続可能な未来の実現に向けて総合的な環境ソリューションを提供し、産業全体の脱炭素化を牽引する存在となることを目指しています。

しかし、このビジョンを実現するためには、いくつかの課題があります。1つ目の課題は時間との戦いです。

EV市場をはじめとするエネルギー市場の成長は、予想以上に時間がかかる可能性があります。そのため、長期的な視点で事業計画を立てつつ、状況に応じて計画を修正できる柔軟性が必要です。また、大企業の参入や、生成AIをはじめとする新たな技術の台頭など、外部環境の変化も常に意識し、迅速かつ柔軟に対応していくことが求められます。

2つ目の課題は資金です。事業の拡大には大規模な投資が不可欠であり、資本の調達が重要なカギとなります。現在はさらなる資金確保に向けて、ファイナンス部門を強化しているところです。

また、当社は2026年末から2027年春にかけてIPOを目指しています。もちろんIPOはあくまでも1つのマイルストーンではありますが、まずはそこをターゲットに経営基盤の確立に注力していく計画です。さらに、大企業との連携強化も重要な課題です。再生可能エネルギーの効率的な利用を実現するためには、例えばEVや蓄電池、給湯器などをデジタルで制御し、電力の需給バランスを最適化する技術が不可欠です。

今後は自動車メーカーや電力会社との協力を進め、私たちの技術を多くのEVやエネルギーシステムにインストールすることにより、持続可能な社会に向けて共にイノベーションを起こしていきたいと考えています。

社員の10パーセントが「海外出身者」

スタクラ:宮脇さんの考える理想の組織についてお聞かせいただけますか?

宮脇:当社ではダイバーシティを非常に重視しており、女性社員の比率が高いだけでなく、社員の10パーセントが海外出身者という多様な構成となっています。これは、私のアクセンチュアでの経験が大きく影響しています。

異なるバックグラウンドを持つ人々が集まれば、意見の衝突や価値観の違いが生じる場面も増えます。一見すると、ダイバーシティにはストレスも多いように感じるかもしれません。しかし、グローバル企業のアクセンチュアで学んだのは、「複雑な問題を解決するためには世界中の多様な視点を取り入れることが不可欠である」ということです。

例えば、日本のエネルギー業界の課題を解決しようとした場合、日本国内の事例だけでは限界があり、海外の事例やまったく異なる業界の事例からヒントを得る必要が出てきます。また、男性だけでは見落とす可能性がある新しいアイデアが、女性の視点から生まれることもあります。多様な視点を持つことが、イノベーションを促す想像力を豊かにしてくれるのです。

確かに困難を伴うこともありますが、ダイバーシティの推進により組織は柔軟になり、変化への対応力が付くはずです。変化の激しい時代において、ダイバーシティこそが最良の答えだと確信しています。

ハイパフォーマーのモチベーションを高めるためには実力主義が不可欠

スタクラ:最後の質問です。このタイミングでアークエル社に入社する魅力と、求める人物像について教えていただけますか?

宮脇:当社は現在、正社員と業務委託などを含めて約80名の組織です。現在はIPOを控え、成長の重要な転機を迎えています。このタイミングでの入社は、スタートアップの精神は維持しつつIPOを経験できる貴重な機会だと思います。

また、組織がこの規模に成長したことで部門ごとの役割が明確になり、効率的に事業を進められるようになりました。新たなソリューションの開発も進んでおり、今後は市場が大きく拡大していくことが期待されます。脱炭素化社会実現に向けた流れが加速する中で、私たちほど変化に備えている企業は多くありません。このタイミングで参加されるみなさんは、必ず貴重な経験ができると確信しています。

求める人物像ですが、成長意欲の高い方を歓迎したいと思います。当社は完全実力主義を採用しており、年齢や経験よりも、やる気と能力を重視しています。私自身も若いうちにアクセンチュアでMDを経験し、ハイパフォーマーのモチベーションを高めるためには実力主義が不可欠だと考えています。

また、当社は風通しの良いフラットな組織であり、若手社員もリーダーとして活躍しています。高い目標を掲げる人材に対しては成長を促す環境も用意されており、魅力的な職場だと自負しています。私たちのビジョンに共感し、共に成長したいと思ってくれる方がいらしたら、ぜひご応募ください。お会いできるのを楽しみにしています。

スタクラ:本日はすばらしいお話をありがとうございました!

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