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日本のディープテックデカコーン戦略~グローバル市場で輝く日本の強みとは?~(全4記事)

詐欺師呼ばわりからユニコーン企業へ 日本人起業家がアメリカで起こした逆転劇

高級イチゴの植物工場を運営するOishii Farmの古賀大貴氏と、海藻テックを駆使した商品を手がけるAqua Theonの三木アリッサ氏が自社事業を紹介。前例のない事業における資金調達の課題や、アメリカで直面した人種差別の壁など、リアルな経験を語ります。

前例がない事業の始め方

有馬暁澄氏(以下、有馬):また古賀さんに質問なんですけど、一方で、めちゃくちゃCAPEX(設備投資の支出)がすごいじゃないですか。さっきのとんでもないソーラーパネルとメガファームを建設するために、めちゃくちゃ資金調達をして、設備投資額も大きいじゃないですか。「もうどうしよう?」みたいな感じにはならなかったんですか。

古賀大貴氏(以下、古賀):もう最初からこれはすごいCAPEXヘビーなのはわかっていたんですが、正直、植物工場でレタス以外を作ったことのある人がまともにいない中で、外注ができないんですよね。誰もやったことがないんです。

建設1つを取っても、例えば大手ゼネコンさんは当然建設のプロですが、そこにお願いしたからといって、イチゴを作ったことがないからわからない。ロボットをロボティクスメーカーにお願いしようとしても、イチゴなんか採ったことがないからわからない。もうほぼ全部がそういう状態になっていました。

もうしょうがないから全部を自分たちで始めて内製化していったんです。それこそ最初のシード期の資金調達の時は、本当にコンセプトしかない。

「植物工場って、今はレタスしか作れないけど、きっと僕がやったらイチゴも作れるようになりますよ。それができるとブランディングができて、10年後、20年後に植物工場というマーケットが立ち上がった時に、ウチがナンバーワンになれる可能性がありますよ」と。もう弾はそれしかないんですよ。しかも別に連続起業家でもない。

だから最初の資金調達の時は、本当に一番大変でした。こんな妄言めいたことを言っているやつに、「一応お金を出してあげようかな」と思う人をどれだけ探せるかという、それだけです。

詐欺師扱いからミシュラン御用達ブランドへ

古賀:だから「あいつは詐欺師だ」みたいなことも散々言われました。もうシードラウンドで資金調達先が決まっていたのに、すごく有名なエンジェル投資家の人が「あれは詐欺だからやめろ」と言って、みんな「じゃあ、やっぱり投資しません」みたいな話があったりしました。

カリフォルニア大学バークレー校の出身なので、教授も「スタートアップだ! やれー!」って、みんな応援をしてくれるんですけど、いざ教授のところに行ったら「いや、これじゃあ僕の友だちは紹介できない」みたいな。

もう、そういう時代でした。当時はSaaS全盛期だったんですよ。2017年にはアグリテックという単語すらない。バークレーのアントレプレナーシップの権威の先生に「農業でスタートアップなんて考えられない。悪いことは言わんからやめろ」と言われました。

そこから何やかんやでいろんな人からちょっとずつお金を集めて、ちょっとトラクションが出てき始めると「おっ」という感じになってきました。(スライドを示して)こういうマンハッタンのミシュランのレストランの2割ぐらいが我々のイチゴを使ってくださっているんです。

こういう人たちがお客さんになるところまでいくと、いろんなブランドともパートナーシップができるようになってきます。ここまでいくと、「もしかしたらうまくいくんじゃないかな」と思う人がちょっとずつ出てきました。

一番重要なのはブランドを守り続けること

有馬:すごいおしゃれですね。

古賀:そういう感じで、そこからはもうトップ営業で、ひたすら日本の事業会社の社長や会長の方々をニューヨークまでお呼びして、ファシリティをお見せして、資金調達をやっていったという。

有馬:現場であれを見たらみんなが出したくなりますよ。「関わりたいなぁ」みたいな。

古賀:そうですね。やはり日本のメーカーさんは、製造業のスタートアップにはちょっと“胸熱”になる人がすごく多いかなと思いますね。

有馬:ちなみにこれからも基本的には自社工場を構えていくビジネスモデルなのか、他社にもライセンスアウトしてやっていくのかは、考えているんですか?

古賀:そうですね。いろんなパターンがあると思うんですけど、やはり一番重要なのはブランドを守り続けることです。安定しない状況でフランチャイズモデルにしちゃって、よくわからない品質のものがOishiiの名前で売られることは絶対に避けなきゃいけない。

だからたぶん、しばらくの間は自社でやっていくんですが、CAPEXを自分たちで持ち続けるかというと、別にそこがゴールじゃないので。

例えばどこか違う企業と組んでジョイントベンチャーにして、資材代をそっちに出してもらって利益を折半するようなかたちで、ウチは技術指導と品質管理をすることも考えられます。

ゆくゆくはウチの会社がどこに行き着くかというと、たぶん自分たちで研究開発とブランディングを圧倒的に突き詰めていきます。間の建設と製造は、ある程度は自動化、量産化していければ他の人にOEMのかたちで任せられる時代が来るかもしれないですね。

有馬:だから直近も、日本の大手の事業会社さんともたくさんコラボレーションして、資本提携しながら大きなメガファーマーをみんなで作っていくみたいな。ああいうオールジャパンの絵はきれいですよね。

2025年には東京に研究施設を設立

古賀:そうですね。ありがとうございます。植物工場ってこれだけの周辺領域がまさにけっこう関わってくるんですよね。今まではこの全部を自社のエンジニアが1個1個作っていたんですけども、それじゃあスケーラブルじゃないので。

植物工場専用のロボットや空調、LEDとか、我々の最先端の技術をメーカーさんに全部お見せして、そこに来ていただいています。

2025年に、オープンイノベーションセンターを東京に作ることが決まっています。そこでいろんなメーカーさんを連れてきて、将来はもう、工場のパッケージとして、IKEAの家具みたいなかたちで、セットを作って。

有馬:うわ~、すごい。

三木:いいなぁ、かっこいい。

有馬:これはいいですね。

古賀:ここから数年かけてこれを世界中に輸出していきたいなと思っていますね。

有馬:いや、すごいですよ。次のラウンドはいつですか。オープン中? 

三木:(笑)。

古賀:一応、常にお金は募集していますので。

有馬:ちょっと聞いてもいいですか。チケットサイズは(いくらですか)? 個人で出したい人もいるかもしれない。

古賀:ちょっと個人で出せる人はなかなか(いないと思います)。出せるんだったらぜひ、という感じですけど。

有馬:ありがとうございます。ぜひこの後、お話しいただければと思います。

日本とアメリカの食品衛生基準の違い

有馬:一方でアリッサさんは自社工場というよりかはOEMでやっていたと思うんですけど、「自分はOEMにお任せする」じゃないですけど、なんでその方針でやろうと思ったのか?

三木:私は本当に古賀さんリスペクトなんです。でも、これはやはり古賀さんだからできることで、私には無理だなと思ってしまったのが大きいです。

ラッキーなことに、我々は海藻のテクノロジーですから、CAPEXが要らないんじゃないかなという発想で始めたんですね。

ただすごく難しかったのは、例えば、日本だと煮沸は85度で15分トンネルを通さなければいけません。でもアメリカだと「60何度で、5分でいいよ」みたいな、もう規制がぜんぜん違うので、出回っているマシーンが違うんです。

なのでそのマシーンに合わせて、例えばスクリューを開発したりしました。結局、「アメリカで一般流通しているマシーンの基準のもうちょっと上を作れば、この技術はできるよね」みたいなことで進めていけば、完全内製はしなくてもいけるんじゃないかなというのが、最初からの構想でした。

ただ一方、メリット・デメリットはすごくわかりやすいと思っています。我々はCAPEXはゼロですと。なので資金調達のほとんどすべてを、いわゆるマーケティングや人件費に投資ができる。

またCAPEXがゼロなので、例えば今回みたいにいきなり700店舗、1,000店舗に契約がドンと入っても、もう生産の限度はアンリミテッドになるんですね。我々の工場じゃないので、その条件とこのツールを使えばできるのがわかっていますから、ガンガン増やすことができるのはメリットです。

古賀:それはもう、めっちゃ羨ましいですよ。

アメリカで人種差別・性差別の壁に直面

有馬:自分で作らなくていいんだったら、もう絶対にOEMのほうがいいですよね。

三木:ただ、4年かかったんですよ。やはり多くのスタートアップは4年も製品化されないもので調達ってできない。

有馬:みんなつらいですよね。

三木:ラッキーだったのが、私たちは「Misaky Tokyo」のトラクションがガンと上がって、その間に「OoMee」に持っていって、別の特許に持っていくことができました。

「じゃあ、これは他の会社さんもできますか?」と言われると、「あぁ、それはできないかもな」と若干思いながら。

有馬:バランスが難しいですね。自分たちで作ってやるのも、それはそれでお金も時間もすごくかかると。生産ラインが立ち上がらないと売れないので。生産ラインを作って回して、稼働がちゃんとうまくいって、その後に売るじゃないですか。OEMも相手がいるから、自分たちだけの問題じゃないじゃないですか。

三木:もう、すごいんです。特にフード業界って、やはり残念ながら白人男性のドミナント(支配的)の業界なんです。なので私みたいなアジア人女性で非英語ネイティブだと、もう露骨に差別されるわ、わざと異物混入されるわ、わざと窒素充填させないわ、みたいな酷い仕打ちを受けたことがありました。

しかもカリフォルニアの中では「まずはこのOEMからいきましょう。ここで成功しないと僕たちは受け取りません」みたいなルールがやはりあるんですね。ここの関係者が超差別主義者の人で、それを食らって、もう大変でした。

大規模工場からパッケージ化を目指す

有馬:大丈夫ですか(笑)? だから、アメリカも日本も変わらずけっこう「自分たちの村社会」じゃないけど、それに近い雰囲気があるので、そこに入れるかどうかですよね。

三木:そうですね。なので「じゃあ、はたしてOEMがいいのか? CAPEXヘビーモデルがいいか?」というと、やはり「うーん、今はまだその答えが出せないな」という感覚はありますよね。

古賀:僕らは自分たちでしか作れなかったから作っていました。だから今は逆に、OEMモデルに早くいきたい。

有馬:いきたい? あぁ。

古賀:それこそパッケージ化で、誰でもこれを作れるわけですよね。パッケージを作って、IKEAの家具のように世界中にドンと送りつけて、ウチから1人か2人送り込めば、現地の人たちで回せるみたいなところまで持っていきたいですよね。

有馬:確かに。だって今はITテクノロジーで遠隔オペレーションもできますもんね。すごいなぁ。

古賀:おっしゃるとおりですね。

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