社会起業を志す学生が、社会課題を解決するビジネスプランをピッチ形式で発表し、社会起業家らのフィードバックを受けられるイベント「ゼロイチファイナルピッチ2025」。本記事では4人目のプレゼンター、武蔵野大学3年生の鈴木瑠花氏が、SNS特化型のブリーダー直販サービスで、ペットサプライチェーンで命を落とす動物を減らすプランを紹介します。
ペットショップやオークションで1年間で19,763頭

司会者:それでは、ご登場いただきましょう。ご紹介します。4人目は鈴木瑠花さんです。どうぞ拍手でお迎えください。
(会場拍手)
司会者:準備はよろしいでしょうか?
鈴木瑠花氏(以下、鈴木):はい、大丈夫です。
司会者:それでは鈴木さんのピッチスタート。
鈴木:暮らしに寄り添うわんこを、ブリーダーから。「わんこの窓」の鈴木瑠花です。私には大好きな家族がいます。獣医師の祖父とミニチュアダックスフントのハリーです。私はこの2人との生活をきっかけに動物が大好きになりました。

そんな小学生の頃の動物が大好きな私は、この本(『犬たちをおくる日 この命、灰になるために生まれてきたんじゃない』(金の星社))に出会いました。この本には日本の殺処分の残酷な現状について書かれていました。現在でも1年間で2,434頭もの命が殺処分によって奪われています。これでも、私が殺処分(の事実)を知った時より10分の1の数にまで減りました。


ただ、人間の都合で奪われるわんこの命は殺処分だけではないんです。ペット業界のサプライチェーンの中で命が奪われています。ペットのサプライチェーンとは、子犬を育てるブリーダーさんからオークションを通して、ショップから飼い主さんがお迎えする。これが一般的な方法です。
このサプライチェーンのここ(ペットオークションとペットショップ)で命が奪われているんです。その数、1年間で19,763頭。殺処分の約8倍です。背景の画像は、実際にサプライチェーンの中で命を奪われた、ペットショップの冷蔵庫の中に眠る、姿が変わったわんこです。

どのような原因で亡くなるかというと、まず、輸送時のストレスです。生後約3ヶ月の子犬が佐賀県から東京都まで(輸送され)販売されています。次にコストが理由で、ペットショップ(の職員)は連れて行きたくても病院に連れて行けない。そしてわんこは売れ残ったら他の店舗、また他の店舗へとたらい回しにされるんです。
そんなわんこにとって過酷な現状が、サプライチェーンにはあります。このサプライチェーンのままでは命が奪われ続ける。だからこそ私はオークションとショップを省き、ブリーダーさんからお迎えするブリーダー直販を、これからの一般的なサプライチェーンに変えていきたいと思っています。ペットサプライチェーンの再構築です。

一緒に旅行に行きたい人におすすめの犬種とは?
鈴木:今、飼い主さんの75パーセントはペットショップから購入しています。そこで飼い主さんの声を聞いてみると、ブリーダー直販ではお迎えできない2つの理由があったんです。
1つ目は、そもそもブリーダーからお迎えできることを知らなかったという認知の問題。そして2つ目は、直販サイトをWebから見てみたが、たくさんいすぎてわんこを選べないという問題があったんです。


そんな飼い主さんの悩みに寄り添うのが、わんこの窓。SNS特化型ブリーダー直販です。私たちはWebよりもっと手軽に、Instagramを主軸にわんこを紹介していきます。ブリーダーさんの元にいるナチュラルな姿のわんこや、性格、生態的特徴を投稿していきます。
ブリーダーさんからお迎えされた時に仲介手数料として15パーセントいただきます。ただ、このままではただのSNSの拡散、広告になってしまいますよね。私たちの一番の特徴はDMを活用したコンシェルジュサービスです。

ここで選択できない飼い主さんのサポートを行っていきます。動物看護師や動物看護学生、譲渡センターで勤務するスタッフがこのサービスの対応を行います。
例えば私が初めてわんこを飼う(として)、1ヶ月に1回は旅行に行くほどの旅行好きだとしましょう。これから私はわんこと一緒に旅行に行きたいです。私たちはそんな時、その方の暮らし、性格などを聞いて、そのお客さまに寄り添ったわんこをご提案していきます。
今回で言うと、一緒に旅行に行きたいところにフォーカスすると、旅行に行くことがストレスにならないように、新しい環境に適応しやすく、怖がらないチワワをお勧めします。

このように相談を通して、見学予約まではInstagramで行い、そこからブリーダーさんの元へ見学をしに行き、お迎えという形になります。
InstagramやTikTokで販路を拡大
鈴木:実際にコンシェルジュサービスを通してわんこを迎えた方からの声です。「犬が暮らしの一部になってほしい。一緒に旅行にも行けたら」。そんな声からご提案したミニチュアシュナウザーを今はふくちゃんと名付け、一緒に家族として暮らしています。

そんな飼い主に寄り添うわんこの窓ですが、ブリーダーさんの課題も解決するんです。ブリーダーさんにお話を聞いた時に、「他のわんこのお世話をしながらサイト用の撮影をするのが大変」という撮影の手間に関する悩み、そしてWeb以外の販路が見つからないという、販路拡大について悩みを持っていました。

だからこそ我々は他のブリーダー直販サービスでは行わない、自分たちが犬舎に行ってブリーダーを取材し、わんこを撮影するところも行います。そして撮影した動画や画像をSNS企画に載せて、TikTokやInstagramで投稿していくんです。

この投稿を実際の成約につなげるためには、まずInstagramでのライブでの説明会や、1日2回のストーリーズ更新、そして思いに共感を抱かせるためのTikTok、Instagramの投稿を行っていきます。
(現在)契約していただいているブリーダーさんは3件、掲載犬種は8種、掲載頭数は37頭になります。ブリーダーさんからは「すべてをお任せできるのがありがたい。思いに共感したし広めたい」。そんなお声をいただいています。

未来の話をしましょう。私たちはまず、わんこの窓の成約件数を増やしていきます。SNSからどこよりも早く、わんこを飼いたい方にアプローチをしていきます。そしてSNS上だけではなく、オフラインからも顧客の醸成を行っていきます。
子どもとわんこが触れ合う、そして家族がブリーダー直販を知っていく。そうやってブリーダー直販を一般的にしていきます。そしてブリーダー直販が一般的になったら、この命(年間19,763頭)は救われると思います。
ペットサプライチェーンに関係する業者は、この命を救うためにサプライチェーンを変えていくはずです。私たちはペット業界のゲームチェンジャーとして、サプライチェーンを再構築していきます。
大好きな家族をきっかけに大好きになったわんこ。わんこの窓から命を救っていきます。そのためにもInstagramからのフォローで、応援をよろしくお願いいたします。わんこの窓、鈴木瑠花でした。
司会者:鈴木さんありがとうございました。
病院などのアフターサービスにつなげるニーズも
司会者:それでは桑原さんお願いします。
桑原智隆氏:ありがとうございます。とてもニーズがあるサービスだなというのが、最初の印象です。ブリーダーさんから直接買われる方が少しずつ増えている状態かなと思います。すでにトラクションも少しずつ(増えている)というお話もされていました。
そこから得られた飼い主さま側とブリーダーさま側のペインポイントを解決すると、まさにわんこの窓で購入したことの体験が、購入時だけじゃなく、その後にも続いていく。家族としてお迎えした後の飼い主さま側の幸せと、これまでペットショップが中心になって提供していたようなその後のサービス(提供にもつながっていったり)。
1つ、個人的に思い浮かんだのは、動物病院ですね。例えば連れて行ったほうがいいのか、様子を見ていいのかみたいなところ。アメリカのスタートアップなんかですと、月額や年パスみたいなオンライン型で、1回登録をしておくと、過去の診察データとかも全部ある。そういったスタートアップなんかも生まれ始めていると思います。
この販売体験の後の、まさにご自身が家族として過ごした中で飼い主側の体験価値としての新しいサービス。
このわんこの窓をきっかけに、犬のいる生活を手に入れられた方のウェルビーイングを最大化していく。そういった御社の絶対強いところに、Power to Scaleを持ったプレイヤーとの連携も含めて取り組まれると、ますますおもしろいなと思いました。
誰よりも鈴木さんが取り組まれる、自分クレジットのプロジェクトだと思いますので応援してます。
鈴木:ありがとうございます。
司会者:ありがとうございました。
「この子だ」という運命感をどう演出するか
司会者:櫻本さんお願いいたします。
櫻本真理氏:はい、ありがとうございました。これもすごく共感する課題だなと思います。ペットショップで酷い扱いを受けるペットのお話は、わりと社会の中でも認識されている方が多いと思うので、そこを解消するのは、すごく大きな感情的な価値があるなと感じました。
ペットってどんな時に買うんだろうって想像してみると。やっぱり「ペットを買おう」と思って(店に)いくこともありますし、私は子どもと一緒に道を歩いてペットショップに行くと、つい買いたくなるみたいな。
やっぱりそこでちょっと運命感が生まれると、つい「ああ、しょうがない。子どもも欲しいんだね。じゃあ買おうか」みたいな、パターンと、計画して買うパターンの両方があるんだろうなと思ったんですね。
ネットで買う体験って、たぶんその運命感が生まれづらいんだろうなと。その運命感をどんなふうに設計できるかが、工夫のしどころかなと思っています。
そういう意味ではコンシェルジュというやり方で、「あなたにはこれです」というところに、いかに運命感を持たせられるかどうか。納得感より運命感なんですよね。「この子なんだ」という感覚を与えられるかどうかっていうのがすごく工夫の余地があるんじゃないかなと思ったのが、サービス面での1点。
もう1つは、ビジネスの見せ方としてどっち側に振るのがいいのかなは、検討の余地があるかなと思います。「ペットショップで売られているペットはかわいそうなんです」という共感でこのビジネスを作っていくのか。
あるいは、そもそも中間が排除されている時点で安い値段で買える、それからより自分のニーズに合ったわんちゃんを買えるという価値もあるわけなので。
「自分の素晴らしい運命の出会いをした」みたいな感覚と、「共感で世の中にとっていいことをした」みたいな感覚って時折コンフリクトを起こすので、バランスしづらい感じというか。
そこがコンフリクトを起こさないようなデザインになってると、さらに手を伸ばしやすそうだなと思ったりしました。とても素敵なプロジェクトです。
司会者:発表いただきました鈴木瑠花さんに、大きな拍手をお送りください。素敵な発表ありがとうございました。
(会場拍手)