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社会を変えるイチを生み出せ『ゼロイチ ファイナルピッチ2025』(全10記事)

ベトナム農家の年収100万円増を狙う、21歳日本人の野望 コーヒーの果実で作るスイーツ「カスカレート」の開発秘話

社会起業を志す学生が、社会課題を解決するビジネスプランをピッチ形式で発表し、社会起業家らのフィードバックを受けられるイベント「ゼロイチファイナルピッチ2025」。本記事では、1人目のプレゼンターである広島修道大学3年生(イベント当日時点)の西谷旭斐氏が、コーヒー生産者の所得格差問題を解決するビジネスプランを紹介します。審査員からのフィードバックも含め、掲載します。

1杯500円のコーヒー豆農家が困窮している現実

司会者:さあ、それではさっそく1人目の発表となります。最初にご登場いただきますのは西谷旭斐さんです。どうぞ大きな拍手でお迎えください。

(会場拍手)

司会者:西谷さん、トップバッターよろしいでしょうか? 準備はいいですか?

西谷旭斐氏(以下、西谷):はい、ありがとうございます。

司会者:それではスタートさせていただきます。用意スタート。

西谷:みなさんこんにちは。コーヒー生産者の所得格差問題を、カスカラで解決する西谷旭斐です。みなさん、今日はよかったら「カスカラ」という単語を覚えて帰ってください。

1パーセント。この数字はコーヒー1杯における農家さんの取り分の割合になります。彼らは生産時期、1日何キロ、何百キロというものをすべて手作業で作業を行っています。こうして彼らが作ったコーヒー豆は、さまざまな中間業者を通して私たちの手元に1杯のコーヒーとして届いてきます。

僕はこれまで全国を旅しながら、コーヒー屋として活動をしてきましたが、この事実を知った時に「真実を知りたい」と思って海を渡りました。訪れたのはベトナム。この方は小規模生産者ハジムさんです。彼は1杯500円以上する高品質な豆を生産しています。いいものを作っているんだから、彼らの生活は豊かなんだろうと勝手に思っていました。

でも、彼は今でも日雇い労働をしながら生計を立てています。コーヒー豆を作っても結局コーヒーだけでは生活ができない。このような理不尽な現実を知って、衝撃を受けました。

事実としてベトナムでは地域別、産業別で農家さんの所得は最下位を記録しています。このような小規模生産者は世界に約2,000万人以上いると言われています。そして、なんと5人に2人が貧困状態であると言われているんですね。

なぜこんなことになったのか、主に3つ(の理由があります)。1つは中間業者の取り分が多く、取り分が減ってしまう。家族経営だから誰も助けてくれない。そして気候変動によって、ベトナムでは年々10パーセント以上もの収量が減っていっています。

対策としてフェアトレードというものがありますが、農家さんにとって認証取得には多額の資金が必要です。農家さんにお金がないので、かなり難しい問題です。

コーヒー豆に依存してしまっている。僕はここに原因があるのではないかと思っています。借金をして、いい豆を作って、販売をして、でも結局収益を得られない。そしてコーヒー豆だけでは生活ができない。僕たちはこういった負のスパイラルを、コーヒー豆に依存しない収益源を作ることで解決をしていきます。

コーヒー豆の果実「カスカラ」をスイーツに

西谷:そこで出てくるのが、冒頭で申し上げた「カスカラ」という可能性なんですね。コーヒーを飲んだことのある方はわかるかもしれませんが、私たちがふだんよく見るコーヒー豆の最初の赤い果実をコーヒーチェリーと言います。そしてこの果肉と果皮が、いわゆるカスカラに当たります。

実際は、カスカラは産地と豆の種類、コーヒーの数だけ風味が異なる特別なものです。コーヒー豆の生産量は(世界全体で)年間約1,000万t、対するカスカラの未活用量は2,000万t以上に上ります。ですが、日本でも世界でもほとんど流通していません。みんな知らないんです。

みなさん、今日カスカラという単語を初めて聞いた方がほとんどじゃないでしょうか? そこで僕たちは需要を増やすため、「From Casca」というカスカラ専門ブランドを立ち上げます。

僕たちのプロダクトは、まずカスカレートといったカスカラを使ったコーヒースイーツです。みなさんにカスカラの味を説明したいんですけど、よくわからないと思います。今日はジャムとシロップをブースでご用意してるので、ぜひ後ほど試食に来てください。

販売価格は小売価格で1,500円、卸売価格で1,000円を想定しています。ビジネスモデルは、僕たちが生産者からカスカラをダイレクトトレードで仕入れます。そしてB to Cで消費者に売る。卸売価格で高級バー、コーヒーショップに販売を行っていきます。

ターゲットとしてはよりフォーマルで、そして価格も高い、卸売のバーを狙っていきます。お客さまの声です。実際の銀座のバーの(バーテンダー)Tさんから、「香りがめちゃくちゃあっておいしい。産地の違いが主張できてすごくいい」。こういったお声をいただきました。

顧客の本音として、「やっぱりどこにでもあるものは使えないよね」。それぞれのお酒に合うものはバーの人がそれぞれ自分で探しています。こういった手間があるんですね。

僕たちは、そこのバリエーションが圧倒的に多いカスカラの種類、そして僕たちにしか出せない生産者ストーリーで、特別感を出していきます。「嗜好を、至高へ」。僕たちのブランドコンセプトはこの軸に絞っていきます。

カスカラで農家の収入100万円増を狙う


西谷:
購入予定先として、銀座のバーでは1店舗、そしてコーヒー屋さんでは約3店舗あります。ブランド戦略は、フェーズ1として限定エリア、限定店舗での販売で、僕たちのブランドの価値と土台を築いていきます。そして価値を高めていきます。

フェーズ2としては高級百貨店(での販売)、また商品ラインナップの拡大をして、僕たちのブランドをより拡大していきます。最終的にフェーズ3としては、実店舗の運営で、僕たち自身が直接表現をしていく。このようなフェーズを考えています。

今後の事業戦略です。実はこのカスカラ、既存の設備ではなかなか作ることが難しいです。理由としては、気候変動の影響で生産量と品質面がかなり不安定なんです。

そこで僕たちは現地農家と連携して、カスカラの製造工場の設立を目指していきます。これを直近数年間で行います。最終的に安定した生産と品質を実現させます。

そしてもちろん、このカスカラを自分たちで作ることもそうですが、これを用いて原料の卸売のほうにシフトをしていこうと考えています。

ソーシャルインパクトです。こちらのハジムさんは年収150万円ですが、ベトナムの平均所得は250万円。カスカラ500kgを扱うことで収入を100万円増加、そしてベトナムの平均所得250万円を達成させていきます。

ソーシャルインパクトは、まず2026年に契約農家を4世帯、(利活用量は)2,000kgを目指します。そして自社ブランド、プロダクトを販売しながら、10世帯、4,000kgを目指し、さらに2030年には30世帯を目指していきます。そして2035年には300世帯、(80,000kg)。その工場のシステムをベトナム以外のグローバルにも展開をしていこうと考えています。

生産者から消費者まで、誰もが笑顔で、誰も罪悪感を感じずに循環していく、そんな産業にしていきたいと思っています。僕の理念である、誰もが幸福を得られるカスカラ産業。僕たちの応援をぜひよろしくお願いします。ありがとうございました。

キャッシュフローで苦しまないための方法とは

司会者:西谷さん、ありがとうございました。さあ、それでは審査員のみなさんはどう感じられたのでしょうか? お話を伺いたいと思います。まずは山中さんからお願いします。

山中礼二氏:しょっぱなからすごく完成度が高いピッチで、たぶん2番目以降の方ドキドキしてるんじゃないかなと思うんですけど、心配しないで大丈夫ですので(笑)。お疲れさまでした。

このテーマでピッチをされるって聞いた時、最初はあんまりおもしろくないなって思ってたんです。でもピッチを聞いてぜんぜん印象が変わりましたっていう話をしますね。

「GOOD COFFEE FARMS」や「TYPICA」がありますよね。私はカスカラを使ったカスカラティーまでは飲んだことがあったんですよ。だから、あんまり新規性がないかなって思ってたんですけども、一口食べて印象が……これはすごくおいしいですね。カスカラの酸味を生かしながらおいしいお菓子として仕上げたのかなと思いました。

それからアドバイスとして。これは、原材料を仕入れて物を作って売るということで、どうしてもお金の出が早くなって、入りが遅くなって、キャッシュフローで苦しむパターンになりがちな産業なんですね。

なので、西谷さんが事業を展開する時には、できればお金が前払いでもらえるような、何かのビジネスモデルを組み立てられると非常に大きくなりやすいかなと思います。がんばってください。

司会者:山中さんありがとうございました。

小売ではなく商社というスタンスを取るべき理由

司会者:続いて田口さんお願いします。

田口一成氏(以下、田口):お疲れ様でした。

西谷:ありがとうございます。

田口:もう最初にゼロイチが始まった時は、なんかよくわかんないクッキーみたいな、すごくまずいのを作っていたのが……。(今日食べてみたら)もう、すごくおいしくて、びっくりしました。

西谷:ありがとうございます。

田口:素晴らしいなと思って。カスカレート?

西谷:はい。

田口:ナイス。カスカレートは一発で覚えられて、非常にいいなと思いました。

西谷:ありがとうございます。

田口:(販売先として)バーとかをちょっと僕もアドバイスしたんですけど。今日食べて、コーヒーショップにフォーカスしてもいいかなって改めて思いましたね。バーもいいとは思うんだけども。

西谷:はい。

田口:きっとコーヒーに合うなってすごく思ったんで、やっぱりコーヒーを飲むんだったら、その横にはカスカレート。そういう世の中の認知をもう徹底的に作っていく。もうこれで、1本作り上げてしまう方がマーケットは作りやすいかなと。

その時に大切な立ち位置が、原料商社というスタンスを、ある程度最初からちゃんと取る(こと)。あまりフロントのほう、小売りショップとかに行っちゃうと、ちっちゃく終わるんで。やっぱり生産現場のことを考えると、農家に一番近いポジションを取って、そこで自社ブランドを自分で作っていく。

その時に価格コントロールする立場で農家と接してないと、農家の所得保証にはならない。そうやってカスカレートというものの価格基準を、自分たちでコントロールしないといけない。それをパートナーとうまく連携しながらやっていく形がいいんじゃないかなって思いました。

そこらへんのマーケティングと、ビジネスにおけるポジショニング。この2つが、しっかり間違わなければ、すごくいいプロダクトができたと思うんで、めっちゃ可能性あるんじゃないかなって思いました。

西谷:ありがとうございます。

田口:カスカレートっていいな。みんなにあげたいんですけど、ごめんなさいね。これ、後で売ってるのかな?

西谷:いや、今日は一応あるんですけど。直接お渡しできれば。

田口:ぜひぜひ本当においしいです。すごいなと思いました。お疲れさまです。

司会者:もう配信見てるみなさんも食べたくなったんじゃないでしょうかね? それでは、トップバッターの西谷旭斐さんにどうぞ大きな拍手をお送りください。

(会場拍手)

司会者:はい、素敵な発表ありがとうございました。どうぞお戻りください。

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