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常識破壊-「問い」が切り拓く未来の事業(全4記事)

常識を破壊する新規事業をつくる「問い」の力 Paidy元社長が語る「観察」の習慣

既存の枠組みを超えた発想がどのように新しい事業の形成を促進し、社会に影響を与えるのか。『常識破壊-「問い」が切り拓く未来の事業』と題して開催された本セッションでは、未来の事業を牽引するための「問い」の力について語り合います。本記事では、問いの源泉にある「観察」の価値や、15年位前まで好奇心がなかったという伊藤羊一氏を変えた出会いについてお伝えします。

「伊藤羊一氏みたいな人」とはどんな人か?

伊藤羊一氏(以下、伊藤):僕も「アントレプレナーシップ教育、アントレプレナーシップ教育……ん? 起業家教育とアントレプレナーシップ教育って違うのか?」とかね。それから、「授業を教えられるのか?」とかずっと考えるわけですよ。

結果として、「いや、これは教えられないから一人ひとりで学んでいってもらおう」ということで、対話とかインタラクティブのセッションになりました。だから寮で1年間、一緒に住もうという結論が出てくるんですよね。だから、それって思考法じゃなくてもう筋トレなんです。

筋トレするにあたって、ひたすら「うーん」とか考えるんじゃなくて、「Why?」と「So what?」と「True?」を、もうひたすらにできるか。結局、それはやりたいからそうなんであって、やりたくないことはたぶん考えられないんじゃないかなとは思いますよね。

杉江陸 氏(以下、杉江):今のお話を聞いて、直ちにパッと頭の中に浮かんだ問いは、「伊藤さんみたいな人ってどういう人?」って。やはりここが本質だと思うんですよね。

伊藤:そうね。

杉江:やはりリプロダクションするということは型にするということじゃないですか。

伊藤:はいはい。

杉江:「でも、伊藤さんの型って何だろう?」というのは、すごく今聞いて……型にはまらないこの人をつかまえて言う「型」って何やねん、と。

伊藤:たぶん杉江さんみたいな人って、自分のことはわからないじゃないですか?

杉江:うん。

伊藤:僕もわからないんですよ。わからないから、それも考えたわけ。だから、俺みたいな人で、俺のコピーじゃない。「俺みたいな人ってどういうこと?」というと、例えば俺がグロービスとかヤフーとか、外でいろいろやってきた中で自分ができている。

それで僕、20代とかでメンタルをやられて、会社に行けない時期とかあったんですけど、30年ぐらいかけて変わったわけですよ。僕が今どうかは定義できないけど、「その30年間を4年間にギュッと凝縮すればいいんじゃないか?」と思ったんですよね。

杉江:僕の言葉で言うと、30年間折れそうになりながらレジリエンスを見つけてきたような、そういう強さのある人を4年間で集中講義して鍛えてやろうみたいな感じ?

伊藤:それって僕自身、わかっていないんですよ。

杉江:なるほど(笑)。

忙しい中で「自分に問う」ことを続けるには

伊藤:結果そうなんだけど、僕は自分のことをわかっていないし。要するに、何を作るべきかみたいな理想とするゴール、Mustがもうぜんぜんわからなかったんですよ。

杉江:なるほど。

伊藤:だけど、俺はいろんなところでいろんなことをやったし、自分が変わってきたし、それからヤフーとかでもやってきたし、それをギュッと縮めるのはできるなと考えて、結果としてこれが出来上がった。ということなので、その問い自体は、実は僕は捨てているんです。

なぜならば、イメージとして僕のコピーみたいな感じになっちゃうじゃないですか。それはちょっと駄目だと。みんながみんならしく、自分の生きたいように生きることに目覚められれば、それでいいじゃないかと。

小笹文氏(以下、小笹):それ、すごく大事ですよね。

伊藤:だから、そういう意味ではその答えは、「俺」の分析じゃなくて、要するに「Live your life」ですよ。自分が生きたいような人生を生きられればいいんだと、後から気づいたんです。

杉江:「Live your life」は本当、そうですね。

伊藤:そうそう。

小笹:ただ、そうは言っても、我々はふだん仕事していて、自分で会社を興しているケースもあれば、やはりどこかの会社の従業員として働いているようなケースもある。日々いろいろやることが多い中で、常に問いというマインドを持ちながら対峙し続けるって、筋トレがまだできていない時期はすごく大変なことだと思うんですよね。

お二人は、すでにもう筋トレができている状態だなというふうに(思うんですけど)。

伊藤:違う違う、筋トレをし続けた。

小笹:し続けている状態だなと思うんですけど。問いの源泉というか、ご自身の原体験でもなんでもいいんですけど、なんでそういうふうに常に問いを問い続けられるのか。杉江さんはいかがですか?

杉江:なんで問い続けられるのか? ちょっと言葉を換えると、何を問いたいのかという話だと思うんですけど。

問いの源泉はいくつかあって、だいたい頭の中で試行錯誤していて、「ああなのか、こうなのかな?」みたいなのもあれば、あとは実験で、「成功するかな? 失敗するかな?」みたいなのもあるんだけど。でもだいたいそういうのは頭でっかちなんですよね。

小笹:はいはい。

問いの源泉は「観察」である

杉江:だけどいつも自分が考えさせられるのは常に、問いの源泉が観察である時。あの人がこういうふうに困っているとか、「事象としてこの市場ってなんかおかしくない?」と感じるみたいな。観察によるインサイトって、すごく深掘りしたくなるんですよね。

だから、それこそリンゴが落ちるみたいなのはすごく大事なんだと思うんだけど。例えばニュートンとかが重力のことを考えながら偏微分とかを考え出したみたいなのはたぶん後付けの話で、本当は見て感じるものが最初のインサイトの源泉なんだと。

伊藤:じゃあ、そもそもその観察のモチベーションは何なのか?

小笹:そうですね。

杉江:というか、行動していると常に、まさにこうやって観察するわけですよ。「この変なおじさん、何やねん?」とか思うわけですよ。

伊藤:おぉ、思う思う。

小笹:(笑)。

杉江:どう変なのかということを今一生懸命考え出そうとしているわけですけど。

伊藤:それはこっちもまったく同じことを考えている(笑)。

杉江:でしょう(笑)?

(一同笑)

杉江:だから、その観察ってめちゃくちゃ、最初の一転がりにしてくれるんですよね。

伊藤:おっしゃるとおりですね。

杉江:まさに「伊藤さんみたいな自分になるとしたら、どこを学んだら伊藤さんになれるのかな?」ってずっと考えているから、さっきの質問になるわけですね。

伊藤:それはある意味、純粋なキュリオシティというか好奇心がそうさせるところはあるんですか?

杉江:だって、すごいじゃん。「どこがすごいんだろう?」って一生懸命感じたいわけ。

「15年くらい前までマジで好奇心がなかった」伊藤羊一氏を変えた出会い

伊藤:だから、そこを思えるかどうかってすごく大事ですよね。「うわぁ」みたいな。あっ、ちょっといいですか?

小笹:どうぞ。

伊藤:僕は、逆に15年前ぐらいまで、マジで好奇心がなかったんです。人と会うのが嫌だから、こういうイベントとかに(参加者として)行くのも怖かったんですよ。

杉江:マジすか(笑)?

伊藤:「何を言ってんだ?」と思うかもしれないけど。例えばこういうところで、「じゃあ、ちょっと隣同士で話してみましょうか?」というのがあると嫌だから、俺は出られないみたいな、そのぐらい(嫌だった)。

小笹:はいはい。

伊藤:好奇心を持ったらそういうことをやらなきゃいけないから、好奇心は持たなかった。「うぜぇ」「早く終わらねぇかな?」みたいな感じで思っていたんですけど。

15年前に孫正義に出会って変わった。それは孫正義さんから得たんじゃなくて、孫さんの後継者を育てるソフトバンクアカデミアに1期で入ったんですよね。平尾丈さんとか村上臣さんとか、料理人とかいろんな人がいて、ワチャワチャ盛り上がっているわけ。僕はサラリーマンだし入れないなみたいな感じがあったんですよ。

ところがね、よく観察してみると、この人たちはなんか馬鹿だし、2つの言葉しか言っていないんですよ。何かといったら、「すげぇ」「ヤベぇ」。「このiPhone、ヤバくない?」「すごいよね」みたいなことばっかり言っているわけ。

(会場笑)

小笹:(笑)。

伊藤:それでいいんだと思って。だから僕もニュースとか見ながら、「おぉ、すげぇ!」とか声に出して言うようになったんですよ。そうしたら、後天的に好奇心が生まれてきたんですよ。「すげぇ」とか「ヤベぇ」とか。

これね、茂木健一郎さんのお墨付き。「すげぇ」とか「ヤベぇ」とか声に出して言うのが大事なんです。そうすると、今もう好奇心の塊みたいになれるんですよね。そんなもの人生の中で変えられると思わないじゃないですか? 変わったんですよ。

小笹:でも確かに自分の体験でいくと、周りにそういう人がいると、「あっ、すごいんだ」とか。

伊藤:そう。「あっ、すごいの?」ってなるじゃないですか。

小笹:そうそう(笑)。そうすると、自分もそういう視点を持つようにもなってくるということがありますね。

伊藤:そうなの。声に出してしゃべるのが大事なんですよ。だから僕の学部はもうとにかくしゃべるんですよ。そうすると、「すごいね」みたいな、そんな感じになる。

アントレプレナーシップで大事な「嫌われる勇気」と「褒める力」

小笹:なるほど。杉江さんはどうでしょう?

杉江:一方で、すごい人のお話をしていると、明日を忘れません? 「そんなすごい話、俺、できるかな?」「私はできないよ」という話になるでしょう?

伊藤:だから、もうめちゃめちゃ具体的なレベルで、「すげぇ」と「ヤベぇ」と言うとか、「Why?」と「So what?」と「True?」と言うみたいな、めっちゃ具体。

杉江:そうそう。僕も本当にそう思っていて、アントレプレナーシップとか言われると、あたかもいつも起業していなきゃいけないとか。いつも人に尊敬されていなきゃいけないとか、すごく重圧に駆られると思うんだけど。

でも、名古屋なんか特に大企業がいっぱいあるし、今そこにある生活プラスアルファのこと、みたいなレベルで収まっていちゃいけないんじゃないかと思っているかもしれないけど、そんなこと思わなくて。

例えば世の中のチームにはたくさんすごいことがあるし、隣のチームにだって尊敬すべき部分があると思うし、人間一人ひとりに絶対いいところはあると思うんですけど。そのいいところに目をつけるだけで、学びの機会はいくらでもできると思っていて。

伊藤:いや、本当にそうなんですよ。

杉江:だから、アントレプレナーシップって、僕は自分で2つ定義しているんですが。1つは嫌われる勇気っていう、よく言われる言い方をしているんですけど。もう1つは、すごい人を褒める力。

小笹:確かに。

杉江:そこから学んでほしいなと思っていて。なので、僕も20年ぐらいサラリーマンをやっていましたから、もし今ここにサラリーマンの方が多いとしたら、僕もそんな感じでしたっていうか、今だって、明日誰かに雇われているかもしれないんです。

でも、それもぜんぜん悪いことじゃなくて、誰かと一緒に世の中を変えるためには、その誰かの良さを知ろうというところから始めていただいて、人を愛することから始めてもらう。

伊藤:いや、本当にそうですね。

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