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ポケトークが挑む、「言葉の壁をなくす」ことで広げる組織と個人の可能性(全2記事)

苦しい経営を乗り越え、Newsweek誌のグッドカンパニー50社に選出 AI通訳機「ポケトーク」が歩んできた道のりと成長戦略

300社の最新スタートアップが一堂に会する展示会Startup JAPAN EXPO。カンファレンスステージでは、スタートアップに関する最新トピックから、大手事業会社が取り組むオープンイノベーション事例まで、第一線で活躍する登壇者たちが語り合いました。「ポケトークが挑む、『言葉の壁をなくす』ことで広げる組織と個人の可能性 」と題した本セッションには、ポケトーク株式会社の代表取締役社長兼COOである若山幹晴同氏が登壇。

「言葉の壁をなくす」ポケトークの挑戦

司会者:それでは、さっそくセッションを始めてまいります。続いてのセッションのテーマは、「ポケトークが挑む、『言葉の壁をなくす』ことで広げる組織と個人の可能性」です。グローバル市場への挑戦はスタートアップにとって大きな成長機会である一方、同時に言葉の壁という大きな壁も立ちはだかります。

本講演では、製品開発秘話や事業展望を交え、世界市場で成功するために必要なビジネス構築の要点と技術革新の重要性を探ります。AIを活用した通訳ソリューションで多様な文化、言語環境におけるビジネスチャンスを生み出すポケトーク社の現在地に迫ります。それでは、講師からここでしか聞けない貴重なお話、どうぞお聞きください。

ご講演は、ポケトーク株式会社代表取締役社長兼COO、若山幹晴さまです。みなさま大きな拍手でお迎えください。それではここからは若山さま、どうぞよろしくお願いいたします。

若山幹晴氏(以下、若山):みなさん、こんにちは。ポケトーク株式会社代表取締役社長兼COOの若山です。よろしくお願いいたします。

それでは、さっそく当社のビジョン・ミッションから共有させていただければと思います。我々ポケトークはAI通訳に携わる会社で、私たちのビジョンは「すべての人がわかりあえる世界へ」で、ミッションは「イノベーションで、言葉の壁をなくす」というものを持っています。

「イノベーションで」というところは、やはりAIテクノロジーと関わってきます。後ほどご紹介させていただく点で多く出てくるんですけれども、技術革新もそうなんですが、売り方やマーケティングといった工夫も含めたイノベーションで、社員一丸となってこの「言葉の壁」をなくそうというかたちで取り組んでおります。

2017年に「POCKETALK」初号機が発売

若山:弊社ポケトークの歴史について、少しご紹介させていただければと思います。実はポケトークはもともと、今の親会社のソースネクスト株式会社から、2017年に「POCKETALK」初号機が発売されたところから始まります。

創業者の松田(憲幸)が、常に彼自身も言葉の壁に困っていた経験があり、「いつか言葉の壁をなくすようなソリューションやプロダクトを出したい」という思いをずっと持っていたんです。それがようやく技術的に追いつきまして、2017年に初号機のPOCKETALKを発売していったという経緯になります。

そこからハードウェア、ソフトウェアと革新を続けていき、2018年に「POCKETALK W」、そして2019年にはカメラ翻訳もついた「POCKETALK S」を発売していきました。2020年に「POCKETALK S Plus」というサイズが大きいものを出したんですが、ここでコロナが始まりました。

AI通訳機と聞かれますと、みなさんも「海外旅行で持っていくものなのかな?」というのは想起しやすいかなと思います。実際に2017年に発売して以降、日本人のお客さまの「海外旅行で言葉の壁なく楽しみたい」という需要がすごく大きくて、売上もどんどん伸びていったんです。ただ、2020年に入ってコロナが発生してから、かなり売上が落ち込んでいきました。

なんですが、コロナで混乱が起きていた医療現場。特にアメリカとかは移民の方がとても多くて、英語以外を話される方が人口の中の約20パーセントぐらいいらっしゃるんですね。そんな中でコロナが起こったということで、かなりの混乱が起きていました。

我々も営業自体はかなり苦しかったんですが、先ほど見ていただいた我々のミッションである「言葉の壁をなくすんだ」というところを実現すべく、多くの医療機関にポケトークを寄贈していたんですね。その時に、アメリカで権威ある雑誌の『Newsweek』に、このパンデミック下におけるグッドカンパニー50社に選ばれました。

親会社からポケトーク事業を切り出して分社化

若山:2022年に親会社ソースネクストから、このポケトーク事業を切り出してポケトーク株式会社として分社化するんですが、その1つのきっかけとなったのが、この『Newsweek』(US版)の掲載でした。

『Newsweek』の表紙に各社のロゴが並んでいます。ファイザー(Pfizer)さんとか、みなさんが知っているような、コロナ禍でグッドカンパニーとして活躍される企業が並んでいたんですが、ポケトークのロゴが並んでいるんですね。

その当時はソースネクストという会社だったんですが、製品名の「ポケトーク」が取り扱われました。やはりプロダクトソリューションと会社名は一致していったほうが、より認知も広がっていくだろうというところで、分社化のきっかけになった1つの出来事でした。

プロダクトに話を戻しますと、そこからコロナはしばらく続きまして、対面でのコミュニケーションがかなり減ってしまったんです。ただ代わりに、みなさんご存じのようにZoomやTeams、Meetなどのオンライン会議が増えていきました。

対面のコミュニケーションが減っていく中で、お客さまに耳を傾けますと、「オンラインの場でも言葉の壁をなくしたいよ」という声がありました。今までずっとハードウェアでやっていたんですが、ソフトウェアにも開発を広げていきまして、2021年からオンライン上でも使っていただけるポケトークのソリューションを広げていったというところでございます。

リアルタイムで翻訳ができる「ポケトーク ライブ通訳」

若山:みなさんご存じの方もいらっしゃるかもしれないんですが、実は今はプロダクトとしてはポケトークという端末だけでなく、その管理ツールである「ポケトーク アナリティクス」、ソフトウェアの「ポケトーク ライブ通訳」、このようなイベントカンファレンスでお使いいただける「ポケトーク カンファレンス」というのが、弊社が今持っているプロダクトソリューション群です。

この「ポケトーク ライブ通訳」がどんなものなのか、少しご紹介させていただければと思います。よくオンライン会議や対面でも、ずっと外国語が流れる場面があります。こういった場面で、ソフトウェアなのでパソコンやスマートフォンでお使いいただけるものが、このポケトークライブ通訳です。

中国語が流れていくんですが、どのようなかたちで動作するのかをご覧いただければと思います。

【動画が再生される】

若山:私も仕事柄、英語を使う場面が多いんですが、中国語はてんでわかりません。中国のお客さんと商談をする場面とか、あとはいろんな動画で情報を取ることもあるんですが、「中国の現地ではどんなニュースが流れているのかな?」という場面でも使っていただける。

人間の同時通訳者さんと同様に、会話を切らせることなく、流しっぱなしでどんどん通訳が流れていく。あとで履歴もダウンロードすることができまして、サマリーや議事録も使っていただけるというのが、このライブ通訳という製品になっています。

これを応用したのが、こういったイベント会場で使っていただける「ポケトークカンファレンス」というものです。こちらもちょっと動画を見ていただければと思います。

【動画が再生される】

若山:こういったイベントでの同時通訳者のアサインというのは、人件費だけでなくブースの設営とか、みなさんもお借りになったことはあると思うんですが、レシーバーの貸し借りでかなりコストと運用がかかってくるんです。

このポケトークカンファレンスはQRコードを掲示するだけで、来場者さまのスマートフォンで同時通訳を提供できる、使いやすく魅力的なプロダクトになっているかなというところです。

「精度がいい」と評価されるポケトークの仕組み

若山:弊社の強みをご紹介しながら、徐々にビジネス面に話を移していければなと思っています。ポケトークは、よく「精度がいい」とご好評いただくことが多いんです。どのようになっているかというところなんですが、機械通訳は主に3つのステップがあります。

まず最初のステップは、今、私が話しているように音を認識してテキストにすることです。例えば英語で「Hello」と言った時に、「このHelloの音はH、e、l、l、oのHelloだな」と認識するところが一番最初で、音声認識と言われるステップです。

この「Hello」を、みなさんご存じのようにGoogle翻訳なので翻訳をする作業が、真ん中の2番目のステップですね。「Hello」を「こんにちは」という文字にするのが翻訳の作業です。

最後に「こんにちは」という文字情報を、「こんにちは」という音に出す。この3つ目が、音声合成というステップになっています。私が「Hello」と言うと、すぐに「こんにちは」となるのは、音声認識して、翻訳して、音声合成という3つのステップを、一瞬に処理して翻訳しているからです。

今、記載しているのは英語から日本語(への翻訳)ですが、弊社の強みは、音声認識、翻訳、音声合成を言語ごとに「英語から日本語の場合は音声認識はこのエンジンが良い」「このAIが良い」というのを、それぞれファインチューンしながら世界中で一番精度がいいものを常に使うところにあります。

ですので、我々自体はAIを開発しているのではなく、AIを使いこなして一番精度が良い状態にするところに強みとノウハウ、特許などを持っています。ですので理論上、世界で一番翻訳精度が高いというところを我々の強みにしています。

このような仕組みで、今、私たちはミッションである「言葉の壁をなくす」というものを、4つの軸でグローバルで展開しているところです。

このセッションの1つの目的でもある「スタートアップ」。我々も2022年にできて2年ちょっとの会社ですので、まだまだスタートアップです。スタートアップとして全包囲網をやりたいところなんですが、人員、そして予算にも限りがあるといったところで、かなり選択と集中が必要になってくるかなと思っています。

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