最近では、これまで続けてきたことから脱却し、アントレプレナーシップ(起業家精神)を持って新しいビジネスを生み出す環境を創っていくことが重視されています。本イベントでは、
『図解・ビジネスモデルで学ぶスタートアップ』の著者である池森裕毅氏が登壇。本記事では、起業家に必要なマインドセット6選をお伝えします。
起業家に必要なマインドセット6選
池森裕毅氏:最後の項目の「起業家に必要なマインドセット」です。僕はたくさんの起業志望の若者や学生に講演しています。その時によく「こういうマインドセットが求められるからね」という説明をしていて。今回はそれをみなさんにお伝えしますね。
起業家に必要なマインドセット6選。1つ目は「とりあえずやろう」です。基本的に起業において重要なのは、まずは実行してみるフットワークの軽さです。「やるやる」と言っておいて、いつまでもやらない人は残念ながら起業に向いておりません。
でもこの気持ちはすごく理解できます。やろうと思ってもやらない理由を考えちゃうじゃないですか。不安で怖いからちょっと先延ばしにしちゃうんですが、この図(スライド)を見てください。
この図の縦軸は不安の量、横軸が時間の経過です。見てわかるとおり、考えている時と実行に移すまでが一番怖いんですよ。だから人はなかなか実行に移せないんですね。
でも、いざ実行し始めると一気に走り抜けますから、もう不安を感じている暇はない。気づいたら何年も経っている状態なんです。だから起業には「まずはやってみる」というフットワークの軽さが重要です。これが1つ目です。
一定の知識量を超えると成功確率が落ちる
2つ目は「準備をしすぎないこと」です。起業は頭で完璧に考えて準備しても意味がありません。受験勉強みたいに正解があるわけじゃないからです。事業の最適解はトライアンドエラー、その都度探し続ける必要がある。「失敗して学んで」をくり返しやること。
だから完全に準備する必要はありません。この(図の)下軸に書いている「Done is better than Perfect」という言葉が僕はけっこう好きで。Metaのマーク・ザッカーバーグの言葉なんですが、「完璧に動くものを作るよりも、まずは実行してやろう」という意味です。
これは起業で考えると、僕は「完璧に準備するより、まずやろうぜ」と捉えています。準備しすぎないのはけっこう重要なことなんですね。この図を見てもらいたいんですけど、横軸が知識量で縦軸が成功確率です。
当然知識量はないよりもあるほうが成功確率は高いです。知識がなく起業すると、成功率はあまり高くありません。でも知識量がある一定量を超えると、成功確率は落ちるイメージがあります。つまり、ほどほどがいいんですよ。
知識量が増えすぎると、それが足を引っ張ってしまうことがある。「ほどほどに準備してやりましょう。まずはやってみようぜ」というお話です。これが2つ目です。
「儲かるビジネスはないか」と言う人が成功しづらい理由
3つ目は「折れない心」です。これは当然なんですけど、結局諦めない人間が勝ちます。自分の中でやり遂げたい気持ちを持てる事業をやりましょう。そのためには「このためだったら人生をかけられる」「とりあえず5年~10年はこの事業にコミットできる」、そういう事業を探したほうがいい気がします。
けっこう僕のところには「池森さん、なんか儲かるビジネスはないですか」という人が来るんですけど。「あれがいいよ」と教えても、なかなか成功する人はいません。なぜなら他人に勧められた事業はハードシングス(困難な局面)を乗り越えられないからです。
だから僕は「自分の中で光り輝くダイヤモンドのような意思を持てる事業をやりましょう」とよく伝えます。
4つ目は「良い意味で周りを巻き込んでいくこと」ですね。結局1人でできることは限られるので「応援団を作っていきましょう」という話です。
そのためには「こういうことをやろうと思っています」というアイデアを周りに伝える勇気が大切です。僕のところには「相談しに来たんだけど、アイデアをパクられるのが怖いから言いたくないです」という、なんのために来たんだかよくわからない人がたまに来るんですけど。
アイデアそのものにあまり価値はなくて、それをいかにやりきれるかが重要になってきます。だからアイデアをパクられることを気にしないで、応援団を作るぐらいの勢いでどんどんいきましょう。これが重要です。
「やる理由」に納得してから動く人は起業家に向かない
5つ目は「人間素直が一番」です。信頼できるメンターや顧問からアドバイスをもらったら、とりあえず実行しましょう。
みなさんの中にこういう人はいませんか。受けたアドバイスを自分の中で咀嚼し「なんのためにするんですか?」と理由を聞いて、納得してやる価値があるものだけをやるという。
これは残念ながら、だめなんです。起業家にはあまり向かない。気持ちはわかるし、僕もそうなんですけど、これをやると成長曲線が著しく落ちるのでおすすめできません。とりあえず「言われたことはやる」を個人的にはおすすめします。
ただ「だれかれかまわず聞け」というわけじゃなく、信頼のできるメンターや顧問からもらったアドバイスは聞いたほうがいいのかなと個人的に思っています。これが5つ目です。
「今日できることは明日に延ばすな」
一番最後に重要なマインドセットを持ってきました。もうぶっちゃけ「今日はこれだけ覚えて帰ってください」というぐらいに重要です。起業家に必要なマインドセットの6番目は「今日できることは明日に延ばすな」。これはすごく重要です。起業家にとっては明日も平穏な日々とは限りません。
「予定があるから来週やろう」「1ヶ月後は空いているから、1ヶ月後にまとめて取り組もう」と思っても、その1週間後にスケジュールが空いている確約はない。経験上そんなことは、ほぼないです。なにかしらのトラブルが起きたりする。その約束された1週間、1ヶ月は永遠に来ないものだと思ってください。今、時間があるなら、今、やるべきです。
これは会社員の人だとわからないと思うんですが、たとえ忙しくて仕事ができなくても、起業家は誰にも怒られることないんですよ。誰にもとがめられることはありません。でも誰かが代わりにやってくれることもないんですね。
サラリーマンだったら、ほかの社員がカバーしてくれることもあるじゃないですか。でも起業家はカバーしてくれる人がいない。その代わり誰かに怒られることもないんですよ。
「それはいいじゃん」と思うかもしれませんが、そうじゃないんです。誰にも怒られないけど、責任は自分で取るしかない。あなたの事業が伸びなくても誰も怒らない。うまくいかなくて誰もとがめない。でもうまくいかなかったら責任を取るのは、あなたですよ。うまくいかなかったら、あなたが後悔する。あなたの人生がうまくいかないだけですからね。
好きなことをやってもいいですし、好きなことを言っていいです。休みたかったら休んでください。でも「全部自分で責任を取ってくださいよ」というのが起業家です。それが怖いのなら時間がある時にやれるだけのことをやりましょう。
「ビビリ」な精神を忘れない
僕がどれぐらい徹底しているかをお話しますね。今日は19時から講演していますが、18時までずーっとコラムを書いていました。僕は4年前から経済産業省に週2本コラムを下ろす業務をやっています。週2本書くので次の分のコラムを書いていました。
僕が忙しい講演の1時間前まで時間を惜しんで書いていたコラムが、いつ掲載されるものなのか。みなさんは想像がつきますか。来月掲載のコラムだと思いますか?
正解は2025年の7月分です。2024年の10月・11月・12月、2025年の1月・2月・3月、今年度分はもう納品しています。来年度分の4月・5月・6月までも週2本分、全部納品しているんです。
でも、もし7月にけがをしてコラムが書けずに経産省に迷惑かけたら嫌だから、講演1時間前に時間を惜しんで来年の7月分のコラムを書いていました。それだけ僕はビビリなんです。だから、みなさんもぜひ、今日できることは明日に延ばすな。誰も責任を取ってくれないので、責任は自分で取るしかありません。このことだけは絶対に忘れないで帰ってください。
ということで、アントレプレナーシップ、マインドセットのお話でした。ショートなセミナーでしたが、これをもって私の講演は終了になります。ご清聴ありがとうございました。