社会的インパクトの最前線に触れ、参加者との共創を生み出すことを目指すイベント「IMPACT STARTUP SUMMIT 2024 」が初開催されました。本セッションでは「インパクトエコシステム」と題し、エコシステムの新たな潮流について議論します。本記事では、インパクトスタートアップの現在地について語ります。
インパクトスタートアップの現在地
司会者:それではまず、パネリストのみなさまをご紹介させていただきます。みなさまより向かって右側から、アストロスケールホールディングス創業者兼CEO、インパクトスタートアップ協会理事、岡田光信。
岡田光信氏(以下、岡田):いよっ! こんにちは!
孫泰蔵氏(以下、孫):いよっ!
司会者:いよっ! 盛り上げていきましょう! 続きまして、衆議院議員5期目、自由民主党幹事長代理、政調(政務調査)会長特別補佐、木原誠二さまです。
木原誠二氏(以下、木原):はい、よろしくお願いします。
(会場拍手)
司会者:続きまして、The Edgeof, Pte. Ltd CO-Founder&Visionary、孫泰蔵さまです。
孫:こんにちは。よろしくお願いします。
(会場拍手)
司会者:続きまして、ベースフード株式会社代表取締役、橋本舜さまです。
橋本舜氏(以下、橋本):よろしくお願いします。
(会場拍手)
孫:いよっ! 舜ちゃん!
橋本:ありがとうございます。
司会者:そしてモデレーターは、エール株式会社取締役、篠田真貴子さま。お願いいたします。
篠田真貴子氏(以下、篠田):お願いします。
(会場拍手)
司会者:それでは篠田さま、よろしくお願いいたします。
篠田:はい、ありがとうございます。「インパクトスタートアップは『トレンド』から『王道』に変化するか? エコシステムの新たな潮流とは」というお題で、ここから1時10分までみなさんのお話をうかがってまいります。自己紹介とかなしで、もういきなり本題に入ります。よろしいでしょうか?
じゃあまず、そもそもインパクトスタートアップの現在地をどうご覧になっているか。まず、実際にスタートアップ経営をされているお二人からうかがっていきたいと思います。まずは橋本さんからいいですか? 岡田さんとは先輩後輩関係なんですかね。
岡田:高校の先輩後輩で……主従が決まっている感じですね。
橋本:はい。
篠田:さっき楽屋で、「後輩、お前行け」という指示が飛んでいらっしゃったので。
(会場笑)
インパクトスタートアップは、もはやトレンドではない
篠田:すみませんがお願いいたします。
橋本:そうですね。僕も会員なんですけど、たぶん協会の方はもっとちゃんと整理していると思いますが、N=1の企業としてはすごく新しくて。
やはりパーパス経営とかビジョン・ミッション・バリューは当然重要なことだと思うし、Objective、Key Resultsみたいな目的に対して定量的な指標を立てて計測していくことは、もともとの大きな流れとしてはあると思っています。
そこをもっと前面に押し出していくというか。ビジョン・ミッション・バリューと経営みたいなところとか、数値管理みたいなものを近づけていく取り組みなのかなと僕は思っていますが、先輩、どうですか?
岡田:(笑)。そういうふうに振られるんですね。今日のお題は……あっ、お題なかったですね。
篠田:お題は「トレンドから王道に変化するのか?」というのと「エコシステム」になっています。
岡田:はい。インパクト投資やインパクトスタートアップというのは、おそらく岸田政権で非常に強く言われた言葉だと思うんですが。私はトレンドから王道というのはおかしくて、もう王道そのものだと実感しております。
この6月に上場したんですけれども、その前は、アセットクラスが数十億円、数百億円のVCとかとよくお付き合いさせていただいていました。
今は、もうグローバルオファリング(株式や債券等の有価証券を国内のみならず、米国市場やユーロ市場などで同時に募集、売出すこと)をしたので、数兆円、数十兆円というアセットを扱うパブリック・エクイティ投資家といっぱいお話をします。まさにロングタームでいかに社会課題を解決して、地球上の生活が持続利用(可能)になるものへの投資オンリーです。
もうそれを探しているし、それに張っていくのがプリンシプルになっていると思っておりまして。そういう意味では、もう王道だと思います。
ウォーレン・バフェットの投資の教え
岡田:インパクトスタートアップっていっぱいあるんですけども。逆に言うと、そういったところに出資をいただくためには、やはり上場して出来高が最低10億円、数十億円くらいまでいかないと、彼らってアセットアロケーション(運用する資金を国内外の株や債券等にどのような割合で投資するのかを決めること)ができないので。それが必要になってくるんですよね。
時価総額と利益とともに、それくらいのサイズ感をちゃんと作っていく。これがまさに求められていて、そこを越えていくと王道があるというのが、1つ思ったところでございます。
橋本:控室で話していたことをちょっと話してもいいですか?
篠田:はい、お願いします。
橋本:僕も昨日まで香港でIRイベントに参加していたんですけど、一方で上場株の投資家の方でも投資金額の規模によらず、やはりロングオンリーな方もぜんぜんいらっしゃると思います。
まさにウォーレン・バフェットは、ずっと昔から「10年、20年、株を売り買いしなくてもいいと思うものに投資しましょう」「ファンダメンタルが伸びたら絶対伸びるって確信できるものに、人生では数回会うだろうから、そこに投資しよう」と言っていて、そういう話だと思っています。
僕は、ベースフードはそうだと思っているんですよ。栄養バランスがいいものがファンダメンタルでおいしくなっていけばいいから、僕は8年半ずっとロングで持っているし。そこはやはり本質としてもともとあるんじゃないかなと思っていますね。
岡田:そうですね。
篠田:つまり、いわゆる兆円単位の機関投資家だけじゃなくて、もうちょっとスモールキャップの、上場株で言うとたぶん1,000億円くらいの投資家さん。
橋本:だと思いますし、起業する時って貯金200万円とかでやるじゃないですか。それも同じだと思っていますね。
10年前はリタイアする人の「慈善事業」だと思われていた
篠田:なるほど、ありがとうございます。ここはちょっと泰蔵さんにうかがっていいですか? 今、お二人の肌感でいくと、投資家の規模感を中心に考えると、そこにはエコシステムがあるよと。
でも一方で、ここにいらっしゃる方はまだスタートアップで。私がいるエールもまだシリーズBとかなので、もうぜんぜん、2桁くらい小さな世界にまだいるんです。そこまで視野を広げた時に、泰蔵さんにはどう見えていらっしゃるかうかがいたいです。
孫:そうですね。私もMistletoeという組織で、それこそインパクトスタートアップ協会の会員になっていらっしゃる企業さんをずっと応援してきていたんですけど。10年くらい前にそういうことをやろうって始めた時に、シリコンバレーに行ったんですよ。
それで「最近どうしてんの?」と。向こうのベンチャーキャピタリストや連続起業家の人とかと「最近こういうことをやろうと思ってんだ」という話をしたら、「あぁ、泰蔵さん、もうリタイアするんですか?」と言われたんですよ。
「いやいや、リタイアする気はないよ。なんで?」と言ったら「そういうのはリターンが出ないよね」と。「それでもそういうことをやるのは、ある意味慈善事業的な感じで、ちょっと半分上がっちゃった感じなんですか?」と言われるから、冗談じゃないと。
「俺はちゃんとリターンも出すし、インパクトもどんどん加速させるようにするんだ」と言っていたんですよね。「がんばってね」という感じで言われていたんですけど。
最近は「新しいファンドを組成しているので出資しませんか?」なんて言われるんです。「いや、もう時代はインパクトスタートアップですよ」と、俺に説明しようとしていた。
篠田:(笑)。どの口がっていう(笑)。
孫:どの口が説明しとんねんって言いたくなるくらい、世の中が変わってきたなと、世界的に感じます。ヨーロッパはもうそうじゃない会社には投資しないってみんな言いますし。それはもう小さなアーリーステージからレイターステージ、それから上場株もみんなそうです。
「意義があるから」と言うだけでは投資してくれない
篠田:ちなみにシリコンバレーの新しく組成されるベンチャーキャピタルに「インパクト(スタートアップ)が大事です」と言う時に、具体的にどんなふうに言われているんですか?
孫:わかりやすい例で言うと、グリーンテックやクリーンテックって言われるやつですよね。あとクライメートテック(気候テック)とか言いますけど、地球温暖化を防ぐとか、エネルギーを再生可能エネルギーでやるとか、そういった環境保全に貢献するようなものでも売上が立つと。
ここでポイントなのが、NPOやNGOの世界はアメリカにもたくさんあるんですよね。だから「社会的意義があるからいいじゃん。お金出してよ」というのは通用しないんですよ。そういう意味ではけっこう厳しいなとも思うんですけど、単に利益が出て成長しているだけでも「意義があるから」と言うだけでも投資してくれない。
両方を高い次元で実現できるものだけを「インパクトスタートアップ」と呼べると思っていて、実はある意味ハードルが上がっているんじゃないかって気もします。
篠田:ありがとうございます。アメリカだと特に、いわゆる非営利の世界もすごく発達して、そっちのエコシステムがあるがゆえに、けっこう競争があるんだと捉えました。