2024.10.01
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【イグジット後のキャリア・前編】スモビジ一人社長の経営秘話/起業を目指すならコンサルを経験すべき/勝木健太氏(全1記事)
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高野秀敏氏(以下、高野):キープレイヤーズ高野でございます。今日はイグジットした方のキャリアを追いかけてみようということで、勝木さんというすごく優秀で、かつかなりおもしろい方がいらしてます。勝木さん、よろしくお願いします。
勝木健太氏(以下、勝木):(笑)。お願いします。勝木と申します。
高野:勝木さんは会社をやって売却して、今いろいろとチャレンジされるということなんですけれども。金融・コンサル、監査法人と、起業して売却して上場企業の幹部の経験があるという、なかなかこのレベルでやってる方はすごく少ない。キャリアの豪華幕の内弁当の実践者という感じなので、そのあたりを質問させていただきたいと思います。
まず勝木さんは京都大学ということですけども、最初はどういうふうに就活されて会社を選んだんですかね。
勝木:就活時期はぜんぜん意識が高くないというか、リテラシーもなかったので、サークルばっかりしてました。なので、どこに就職すればいいかもわからなかったし、だいぶ遅れてましたよね。大学の同期が「博報堂のインターンに受かった」とか喜んでるのを見て、「博報堂ってどこや」みたいな感じでした。
あまりにもリテラシーがなかったので、父親に相談して「三菱みたいな名前がついた日本の大企業に入ったらどうだ」と言われてました。いったん3年程度、そういう日本の誰もが知る企業でお作法とかを学ばせてもらうのがいいんじゃないかと。私の父親はそれなりに日本で有名な会社で執行役員とか顧問とか最後までいったレベルのビジネスパーソンなので、一応聞いてみようかなって。
よくわからなかったのでいったん大手に入るという、何の戦略性もありませんでした(笑)。ただ、それはよかったですね。ちゃんとしたお作法とか、ビジネスマナーとか、文章を書く力とか、会社員としての足腰を鍛えていただいたとは思っています。
高野:高学歴系の方で最初にメガバンクを選択される方はもちろんいらっしゃいますよね。そのままずっと勤務される方もいる中で、なんで転職されようと思ったんですか。
勝木:最終的にトレーダーとか、より金融専門職的なキャリアになりそうなところで、金融機関に入ったことは後悔はしていないというか。だいぶ勉強になったものの、一生金融の世界だけで生きていこうってつもりではなかったんです。
もう少し汎用的なスキルが身につきそうな、選択肢が金融以外にも広がりそうなキャリアを目指したいなってことでですね。
ある種消極的な選択として、間口を広げるというか選択肢をまだ狭めたくないなというフェーズだったので、コンサルにいったん行きました。
高野:やっぱりコンサル系は、一度は経験したほうがいいという意見が、わりとキャリアの世界だと多いと思います。コンサル会社の良かった点はありますか。
勝木:仮説思考とか構造化思考とか逆算思考みたいなことを言われますけど、こういったものがあるといいですよね。でもある種コンサルタントって、ビジネスパーソンの足腰的な、ドキュメンテーションとかプロジェクトマネジメントとか。
中長期的なアウトプットから逆算して、「こうなったら利害関係者が多い中でプロジェクトを進められる」みたいな汎用的な会社員としてのスキルを身につけることができたので良かったと思います。
勝木:あと、やっぱりコンサル出身者だとすごく独立しやすいですね。フリーコンサルっていう市場があって、かなり単価も高いので。大きな挑戦をするためには、ほとんどの人にとってはある程度のセーフティーネットが必要だと思います。
独立していきなり150万円とか200万円とか単月で稼げる仕事はなかなかなくて、これがみんなできないから、20代の時とか貯金はないですから。なので、起業するとなってもやっぱりVCファイナンスに行かないといけないし、銀行借入するにも自己資金がないとあんまり相手にしてくれないでしょうから。
セーフティーネットっていうのを作りやすいって意味で、コンサル出身者って実は起業しやすいですね。医師免許を持っている方がたまにそう言いますが、医師免許があるとバイトで年収2,000万円は堅いし、時間もサクッと終わると。(例えば)美容クリニックやヒゲ脱毛とかで、ちょっとしたチェックをするお医者さんもたまにいらっしゃいますよね。
高野:そうですね。
勝木:素人目線ではそこまで重たくない仕事に見えるんですが、セーフティーネットって意味でキャッシュエンジンみたいなものを作るのは、個人の生存戦略としては1つありなんじゃないかなと思います。
それだけじゃ中長期的にはキャリアとして埋没していく可能性があるんですけど、いったんキャッシュカウ(安定した利益を上げることができる事業やブランド)を作って、中長期的に伸ばす。事業を作るには時間がかかりますから。
キャッシュエンジンを作るって意味で、コンサルを1年ぐらい経験する程度でも(起業家として)ぜんぜん振る舞える。ビジネスパーソンとしての足腰を鍛えるって意味でも、起業への第一歩って意味でもけっこうおすすめですね。
高野:その後に監査法人に転職してると思うんですけど、監査法人の中のコンサル系の仕事をされてたんですか?
勝木:そうですね。コンサルにいた頃に、フィンテックの仕事みたいなのがあって。このあたりで「ブロックチェーンとかが今後来そうだな」みたいな流れがあって、私はブロックチェーンキャラだった頃があったんですよ(笑)。
高野:なるほど。
勝木:監査法人トーマツで、ブロックチェーンとか暗号資産とかに特化した部門があって。フィンテックからより尖りますけど、ブロックチェーンキャラで一点突破してみようって思った時期があったので、監査法人トーマツに行った感じですね。
高野:トーマツとかPwCとかアクセンチュアとか、それぞれのファームごとの違いもあると思うんですけど、それはどう考えられたんですか。
勝木:ブロックチームの部門はトーマツしかなかったので。でも監査法人のコンサル部門って、そんなにめちゃくちゃ激務ではないですね。
高野:実は同じコンサルでも違いがあるんですね。
勝木:そうですね。PwCはそこそこ激務ではありましたけど、システム系の仕事とかもあったので。よくXとかで、戦略ファーム出身者と総合ファーム出身者がバトってる時とかあるじゃないですか。
でもPwCで戦略系とかIT系・システム系みたいなものを、一応両方経験させていただいた身からしたら、仕事としてまったく別物です。だからシステム案件って難しさがなんか違うというか。もちろん思考のシャープさって意味では、戦略案件とか戦略ファームの人のほうが分がある気がするんですけど。
利害関係者がめちゃくちゃいて、とんでもない複雑なシステムをなんとかまとめ上げてって意味では、そのPwCのシステムコンサルとかですごい頼りがいがあって、優秀な方(もいます)。大企業のシステムなんて動かなかったら、もう会社として終わるので。だから胆力って意味でもちょっと違くて、ある意味別の民族なんですけど。Xでは単価とか年収とかですごく比較対象になりがちですよね。
高野:よくXでもこういう議論があるのと、自分もこの仕事をしていると、戦略系の人をスカウトしてほしいとか。またはDXの人のほうが即戦力だから、DXコンサルの人のほうがいいって言われたりします。もう人によってぜんぜんニーズが違うという感じですね。
勝木:炎上した、とんでもない難しい状況下に戦略コンサルが放り込まれても、たぶんなにもできないですね。逆にその戦略案件の炎上フェーズにシステムコンサルが送り込まれたほうが、まだなにかパフォーマンスする余地はある気もします。
高野:なるほど。
勝木:それに、戦略よりもITとかDXとかシステムコンサルのほうが、今の世の中のニーズ的にも多い。私も若い頃は「戦略関係につきたいです」とよく上の方に言ってたんですけど。若い人がそういう戦略案件に憧れるみたいなのはあるあるですね。
でも「システム案件をもっとちゃんとやってりゃよかったな」って後悔はちょっとありますね。
高野:リアルな話をありがとうございます。そこから起業されますけれども、起業のきっかけや、その事業選定をどうやって決めたのかは、どうですか。
勝木:起業のきっかけは、ブロックチェーンのトーマツで仕事をしていて。『ブロックチェーン・レボリューション ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか』っていうダイヤモンド社から出版された本の翻訳をしました。
ブロックチェーン関連の情報発信をしてたら、ダイヤモンド社の中の方とつながって、私に直接案件の依頼があったり。その案件を当時の上司に渡したりもしたんですけど、意外と渡しても「こいつ、なんだ」みたいな感じで、あんまり感謝されなくて。そこらへんから、自分で独立してやったほうがいいんじゃないか、となりましたね。
そこから顧問案件みたいなのをやりつつ、フリーコンサルでデジタルマーケティングの案件で単価月180万円みたいなものを1年ぐらいやって資金を2,000万円程度貯めて。これはある種の受託での資金調達ですよね。
フリーコンサルで独立して立ち上げながら「何しよっかな」と。もっとサービス的なものを作って労働集約的ではない事業を作りたかったので、フリーコンサルをしながら、そういった次の一手を考えてました。
勝木:その時に、まだM&Aだとかでうまくいってる会社で、当時キュレーションメディアが多かったんですよね。まぁメディアが売りやすいんだろうなっていうのが頭の中にあったのと。その数年前にDeNAさんで、これは有名な事件なので(話しても)いいと思うんですけど、「WELQ(ウェルク)騒動」がありました。
その頃からメディアの信頼性の評価を、Googleが大きく変え始めたんですよね。簡単に言うと、ドメインパワーをより重視し始めた。トレンドの変化というか、よく「法改正の変化がビジネスチャンスにつながる」とおっしゃる人がいらっしゃるんですけど、一方でGoogleのドメインのアルゴリズムの抜本的な変化。
これもある種のビジネスチャンスにはなると思ったんですよね。GoogleってWebの法律みたいなものですもんね。
高野:確かに。
勝木:なので、そのGoogleのアルゴリズムの「WELQ事件」以前・以降ってたぶん一番変わったと思うんです。この変化によって、ドメインパワーを重視してより有力なサイトとか機関、会社からリンクが貼られているメディアを優遇しようって変わった。
要は良質な被リンクを獲得することの重要性が、「WELQ騒動」以降めちゃくちゃ上がったんですよね。
今でこそ被リンク代行業者とかありますけど、当時は被リンクを戦略的に取ろうとしているプレイヤーがいなかったんで、それに気づいて変化をうまくとらえることができたのはありますね。
だからひたすら被リンクの強化をした1年間で、これはかなり思い切った戦略ですね。
高野:自分が「すごいな」って思ったのは、自分も一応SEOとか少し勉強して、キープレイヤーズのメディアのドメインを上げていったので、勝木さんがやってるメディアがすごく上位表示されてることにものすごく驚きました。このポジションって空いてたのかなって思いますし、今はそういうのはあんまりないのかなって気がしていて。
勝木:ちなみに似ている構造としては、「ダイヤモンド・オンライン」のサブディレクトリに「ザイ・オンライン」ってのがあるんですよ。「ダイヤモンド・オンライン」で信用力を貯めて、「ザイ・オンライン」のほうはクレジットカードのおすすめとか(を載せる)。あれと構造は似ていて、だいぶ参考にさせていただきました。
あとは転職系の比較サイトで、私以外にもmotoさんや「転職アンテナ」さんがいました。motoさん自身が、「新R25」ってメディアで月2,000万円程度利益が出てるという話をされていて。かつ、転職のアフィリエイト系の比較サイト。当時知人経由でASPの方とかに聞くと、トップ層で2,000万円はありうると。1,500万円、1,000万円プレイヤーはいますという話を得たので。
転職のアフィリエイトで、トップで2,000万円いくとして、4分の1でもいいから収益が生まれたら月500万円いきますから。これで売却したら数億いくので、1回目の企業のイグジットとしてはありなんじゃないかと(考えました)。転職の比較サイトって市場を調べきった上で飛び込んだ感じですね。
高野:なるほど。なかなか現代風経営で、社長がいるけども、いろいろクラウドワーカー的な感じとか業務委託で、雇用リスクを負わずに経営されていくスタイルなんですかね。
勝木:そうですね。だからある意味固定費は人件費もないですし、家賃もレンタルオフィスで毎月7,000円ぐらいでしたから。そのあたりの、一般的な会社経営が抱えがちなリスクがないので、ある種思い切ったことができましたね。
もうこの1年間、ひたすらドメインパワーを上げることだけに注力する。その上でコンバージョンにつながるような記事を出す。最初の1年間なんて、「転職アンテナ」さんとか、「Career Picks(キャリアピックス)」さんとか、「Career Theory(キャリアセオリー)」さんとか、競合メディアのドメインパワーを「Ahrefs(エイチレフス)」で調べて、競合メディアに追いつくことをKPI目標としてましたね。
PVもユニークユーザーも収益も、一切KPIは無視して、ただただドメインパワーだけをやってましたね。一般的に重視されるそういったKPI指標を完全に無視して、自分が大事だと思うものに一点集中する。それがないとたぶん弱者で後発は勝てないと思うんですよね。
リソースが無限であればいろんなことできるんですけど、リソースは限られてるので、どこに一点突破して突き刺すかの見極めのセンスが大事。
これもそんな毎回当たるもんじゃないんで、だいたい打率3割ぐらいで「うまくいかない」「うまくいかない」「うまくいった」みたいなパターンとかが多いと思うんですけど。私の場合は、運良く、わりと早い段階から失敗なく筋のいいところにいけたなと思います。
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