
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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「Cross the Boundaries」を旗印に、日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)が2024年も昨年に続いて京都で開催されました。今回のセッション「Road to PMF 一流起業家から学ぶピボット成功の極意」には、BoostCapital CEOの小澤隆生氏、IVRy 代表取締役の奥西亮賀氏、そしてコインチェックの執行役員・大塚雄介氏が登壇。DCM Venturesの原健一郎氏の司会のもと、桁違いに成長したPayPayの成功戦略が語られました。
原健一郎氏(以下、原):ここからはPayPayの話に移りたいんですけど。PayPayはこの数年で日本のコンシューマーサービスとして桁違いに大きく成長しました。どのタイミングでこれほど大きくなったんですか? そして、いくらぐらい使ったんですか?
小澤隆生氏(以下、小澤):累損で4,000億円です。
原:4,000億円。
小澤:4,000億円を突っ込みました。
(一同笑)
原:なるほど。もう日本のスタートアップ投資のほとんどを使ったみたいな感じですね。
小澤:まあ、1年で8,000億円ぐらいの市場なので、その半分ぐらい使った感じですね。
原:その4,000億円を使うという決定はどういうタイミングで行ったんですか?
小澤:最初に300億円を用意しました。いや、これ、みなさん何を聞きに来てるんですか?
(一同笑)
原:確かに。これ、誰の参考になる話なのか……。
小澤:今日のテーマはPMFですか? ピボットですか? 何が聞きたいんですか?
奥西亮賀氏(以下、奥西):おざーんさんの話が。
小澤:いやいや……まぁ、何でもいいか!
奥西:なんでもいいです。おざーんさんの話を聞きたいです。
小澤:PayPayを作ると決めたとしましょう。その際、何をするかというのは懐具合との相談ですよね。手元に1億円しかなかったら、その範囲内で考えます。私たちの場合、毎年2,000億円の利益が出ていたので、300億円ぐらいは使えるという感じでした。300億円を1年で失っても市場に対して説明がつくと考えました。
最初は300億円でテストをしました。300億円を3つに割って、100億円・100億円・100億円に分けました。プロダクトを作るのは数億円でできます。PayPay自体は簡単なサービスです。QRコードを読んで決済するだけですから。
その上で、マーケティングに「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施しました。最初はキャップをつけずに20パーセント還元で進めましたが、直前でキャップをかけないと大変なことになると思い、100億円に制限しました。300億円で2ヶ月ぐらい持つと思っていましたが、10日間で終わってしまいました。世界中から詐欺師が集まってきました。そして、多くの人がApple製品を買い、それをメルカリで売っていました。
(一同笑)
原:いやいや、この中にはいないかもしれないですね(笑)。
小澤:あぁ、そうかそうか。そういう人たちがわーっと来て、あっという間にユーザーが伸びました。同時に、店舗側も受け皿になりたいとインバウンドで入ってきました。
だから、あれはC向けでありB向けのマーケティングで、一気に来たんです。これは大変なことだぞと感じました。2つわかりました。100億円というインパクトと、20パーセント還元のインパクトが非常に大きいこと。ただ、大変なことにもなると。システムも落ちるし。
次は上限をきっちり決めて、設計し直しました。100億円、100億円とやっていくことで、一気にユーザーが増えました。ヤフーのユーザーも送り込んで、数百万人から1,000万人ぐらい一気に増えました。それが俗に言うPMFだと思います。
最初の300億円で「これいける!」となってからは、とことんいこうと毎年800億円赤字を続けました。
(一同笑)
原:それがどれだけスタートアップに参考になるかわかりませんが、PayPayはBtoBとBtoCの両方があります。100億円キャンペーンをやる時に使える店舗がなければ意味がありません。どのタイミングで「いける」と踏んで、BtoBの営業をかけていたんですか?
小澤:BtoBは、PayPayという商品がない頃から「QRコード決済サービスをやったら使ってくれますか?」と営業をかけていました。最初は社長や副社長を含む5人で福岡をローラーで回っていました。
原:福岡に絞ったんですか?
小澤:テストマーケティングで福岡を選びました。孫(正義)さんが福岡好きで、「福岡行こうぜ」となりました。私の部下が福岡で1日5件ぐらい飛び込みで契約を取れたので、日本中で1年間で100万件取れるなら3,000人雇おうと決めました。それで1ヶ月で3,000人雇いました。
原:3,000人は新規採用ですか?
小澤:厳密に言うと、20人ぐらいはうちの営業、ソフトバンクから50人ぐらい、そして新規採用で2,930人ほどです。
原:で、全国展開ですか。
小澤:全国です。方眼紙のようにエリアを分けて、1人あたり1日2.5件を目標にして、100万件に到達するように計算して取り組みました。
原:富士山の山頂にもあると聞きましたが、すべての場所に展開するというポリシーだったんですか?
小澤:そうです。ローラー営業ですね。あまり参考にならないかもしれませんが。
原:(笑)。いや、聞いていておもしろいです。
奥西:最初に、なぜ社長や副社長を含めて自分たちで行くんですか?
小澤:これは私のポリシーです。1回自分たちで全部やるという考えです。楽天イーグルスを作った時に、球場の広告を電通さんが全部6億円で買い切ると言った時に、三木谷(浩史)さんに相談したら「自分たちで売ってみろ!」と言われました。自分たちで売ったら18億円分の売上になったので、これを教訓にしています。とにかく1回自分でやってから考えようと思っています。
Yahoo!ショッピングの営業でもなんでも、私も含めて1回やります。それでベンチマークとしての数字を作ります。私が1日5件なら、他の人なら2.5件ぐらいだろうと考えます。それで100万件取るために必要な営業人数を割り出すという感じです。
奥西:じゃあ、事業計画の自信を得るためと、「俺がやれるんだからお前らもやれるだろう」という基準を示すために自分でやるということですか?
小澤:「俺がやれるんだから」という言い方はしません。常に数字の裏側が重要です。3,000人という数字もなんとなく決めたわけではありません。人事とコストの計算時にも「なぜ3,000人なのか」という話になります。具体的な理由があって3,000人にしました。その営業効率が落ちてきたので、現在は800人ぐらいに減らしています。
原:3,000人を雇った後に100億円キャンペーンをやったんですか。BtoBとBtoC、どちらを先に?
小澤:先に3,000人を雇い、BtoB側を先にやりました。受け皿がないと使えないので、チェーン店、特にファミリーマートさんなどをターゲットにしました。朝から晩までファミリーマートさんの社長、副社長に「これ、お願いします!」とアプローチしました。ビックカメラやヤマダデンキにも協力をお願いし、基幹のチェーンを抑えた上でキャンペーンを実施しました。
原:そのキャンペーンの前にBtoBは福岡でテストしましたが、コンシューマー側も絞ってテストしたんですか?
小澤:100億円に絞りました。
原:100億円に絞ったんですか!?
(一同笑)
小澤:これはお財布次第です。
原:そういうことですね。
小澤:僕らには2,000億円のお財布があったから100億円と言えただけで、もし2,000万円しかなかったら30万円とか300万円になるだけです。身の丈に合った金額を使うというだけで、絶対金額が大きいだけなんです。PayPayのようなものは陣取り合戦です。最後発で入って一気にまくらなければならないと考えました。
しかも、150兆円ある現金決済を取りに行くというビジネスですから、100億円はそれに比べれば大きくないです。実際、すでに黒字化しています。
スタートアップのみなさんは、ベンチャーキャピタルにビジネスモデルを聞かれても答える必要はありません。とにかくユーザーを増やすことが大事です。ユーザーが伸びれば後でどうにかなるというのは本当に正しい考え方です。先にビジネスモデルがある必要はありません。その代わり、信じられない角度でユーザーを増やさなければならないです。
その成長を1度でも味わったらやめられないです。PayPayでは、信じられない金額で決済が行われているのを見て、「これは間違いじゃないか」と思うくらいです。ユーザーの登録と決済金額が毎秒億単位で増えていくのを見ると鳥肌が立ちます。自分が作ったプロダクトが成長するのを見るのは本当に素晴らしい経験です。
もしベンチャーキャピタルが理解していなければ、「あなたはわかっていないね」と言って、この成長を見せるべきです。ただし、その成長を作らなければ意味がありません。
原:すごい迫力のある話ですね……。
(一同笑)
原:でもスタートアップ的にはこんな競合が入ってきたら大変ですね。
大塚雄介氏:絶対に参入しちゃいけないところ、ありますからね。
奥西:そうですね。
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