2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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「Cross the Boundaries」を旗印に、日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)が2024年も昨年に続いて京都で開催されました。今回のセッション「The HARD THINGS 次世代の起業家へのメッセージ」には、インターホールディングスCEOの成井五久実氏、newmo代表の青柳直樹氏、そしてNOT A HOTEL CEOの濱渦伸次氏が登壇。ANRI 代表パートナーの佐俣アンリ氏がモデレートし、起業家が10年後も続けられる事業を選ぶ理由などが語られました。
佐俣アンリ氏(以下、佐俣):ここからはどういう見立てで事業を決めたかについて、事業探索のノウハウをシェアできればと思います。濱渦さんはどういうことを考えながら探索していったんですか? いまだに一言で言うのは難しい事業で、オリジナルな事業だと思いますが。
濱渦伸次氏(以下、濱渦):起業家って飽きやすいというのもあります。新しいチャレンジを常にしたくなって気が散ることも1回目の起業で学びました。それで一生続けられるかどうかというテーマを選びました。そのほうが自分の情熱がいくし。
NOT A HOTELは今7ヶ所作って次は14ヶ所ですけど、毎回新規事業です。土地も一個一個違うし、作るものも、一緒に作るクリエイターも違うので毎回楽しい。続けられる。自分のモチベーションが続けば、会社を長く続けられる。それこそグリーの田中(良和)さんとか前澤(友作)さんと話した時に、成功するには20年がんばらないとだめだよねと言われました。
佐俣:その20年って何なんですかね?
濱渦:良い会社はシンプルに時間がかかるんですよね。
佐俣:青柳さん、めちゃめちゃうなずいていますけど。
青柳直樹氏(以下、青柳):本当にそうですよ。下準備もそうだし、グリーの10年、20年という話や、メルカリも10年かけてたどり着いていて、ずっと飽きずにいられるかどうか。大きいテーマ、大きい市場というところは、2回目、3回目だからこそ、自分が10年後もやっているイメージが持てるものを選ぼうというのは、すごくうなずきました。
佐俣:なるほど。
佐俣:その中でNOT A HOTELという事業はどういう着想なんですか?
濱渦:僕が欲しかったものを作った感じです。ぜんぜん参考にならないですね(笑)。
佐俣:なんにも再現性がないなあ、ちくしょう(笑)。でも自分が欲しいものという話と、起業家として追い続けられるテーマが合体することって、じゃあ僕はコカ・コーラを作ればいいのかみたいになっちゃうので、その接点とかを……。
濱渦:(笑)。
佐俣:いやいや、そうじゃないですか。
濱渦:そうですね。市場が大きく、インバウンドがこれから増えるとかもありますし、僕はずっとアパレルとeコマースをやってきました。服は好きなものを選べるし、食べるものも「今日は何を食べよう」と選べますが、家は一度買ったら一生そのままというのはおもしろくないと思って、いろんな場所に自分の家があったら楽しいなと子どもみたいに感じました(笑)。
佐俣:ちょっと待って。僕、若い人たちにノウハウをシェアしたいって言っていましたよね。聞けば聞くほど絶望的な気分になってくる(笑)。でも、日常的に自分の好きなものとか、もっとこうだったらいいのになとかを考えているんですか?
濱渦:僕、前澤さんが宇宙に行くと言った時に辞表を出したんですけど、そのあとにロックアップの契約書を見たら、アパレルとeコマースをやっちゃだめだと後で知りました。これをやりたくて起業したわけではなく、辞める1ヶ月前に、自分の好きなホテルを1つ作れたらいいかなと思って始めました。ごめんなさい、ちょっと僕を飛ばしてください(笑)。
佐俣:再現性のある発言をしてくれ(笑)。なるほど、そういうので結果的に回っているということですね。
濱渦:そうですね。でも、長く続けられるモチベーション、自分のモチベーションの設計をすることは次の起業では大事だと思ったので、それだけはちゃんと考えて選びました。
佐俣:モチベーションの設計は成井さんもしましたか?
成井五久実氏(以下、成井):しました。実は母がカウンセラーで、母のカウンセリングルームで起業しています。継ごうと思って心理学科に進んだんですが、自分のモチベーションの根源は心理学にあって、マズローの欲求階層説で言うと、人間は自己実現をするために生きているということです。
私にとっての自己実現は、自分の使命を全うして、それが社会に受け入れられる瞬間を感じることです。なので、「社会に良いことをする」というのは非常に大事な概念です。今回の真空特許技術で本当に世界のフードロスがなくなると信じられたので、それが私の生きるモチベーションの自己実現と重なります。さらに、私のメンバーや社員も自己実現を感じてもらえる会社にしたいと思います。
濱渦:それです、それです。
佐俣:ちょっと乗っかったな(笑)。成井さん、その話と、さっき言ったDeNAぐらい偉大な会社を作りたいという事業性の接点はどうやって探していくんですか?
成井:そこはやっぱりトレンドがあると思います。投資家の方にお話しに行く時も、トレンドを捉えているかでぜんぜん違います。
佐俣:ちょっと待って、トレンドだけに投資するわけじゃないですよ?
成井:すみません(笑)。アンリさんはまったく違うタイプだと思いますが、みなさんやはり実績ベースで、シリーズA以降では断られたり、今回の調達でもたくさん悲しい思いをしてきました。
キュレーションメディアもトレンドでしたが、自分はトレンドに乗っかって作るのがうまいという再現性を感じています。昨今のSDGsのトレンドが来た時に、「これだ!」と思って飛びつきました。
佐俣:なるほど、ありがとうございます。
佐俣:青柳さんもなんかちょっと良くない答えが返ってきそうだなと思いますが(笑)、自分のモチベーションが大事だという話と、市場性をどうやって見極めるんだという話がありますよね。その接点はどうやって見つけたんですか?
青柳:まずは、アンリさんの期待に応えて。前にやったマーケットプレイスもフィンテックも非常に大きい市場で、プレイヤーは多かったんですが、その中でやりようがたくさんありました。PayPayとかと競争するという難題も解いていました。
自分は兆円単位の市場がいいと思いました。それだけ活動があるので、長く続ける上でも大きい市場がいいと思いました。また、自分の強みが活かせるところが、ファウンダーマーケットフィットとでも言いますか、自分としてその中で色を出せるのでいいなと思いました。
佐俣:一度止めていいですか。大きい市場って言葉が当たり前に使われるんですけど、起業家のプレゼンテーションを聞く仕事をしていると、すべての起業家が「すごく大きい市場です」って言うんですね。
実際そこまで大きい市場ではないこともあるわけですよ。青柳さんが考える大きい市場って具体的に何なのか。ベンチマークの企業の時価総額とか、動いている人数とか、流動している何かの数字なのか。
青柳:最終的に使っていただける人の数とか、その人たちにとっての占める時間の割合とかを考えるようになりました。
自分の意思決定はそれに沿っているなと思うのは、グリーの時も、MIXIがグリーよりも伸びていたタイミングでグリーに入ったんですけども、モバイルインターネット人口は9,000万人になると2006年当時に信じられていました。
まだiPhoneとか出てきていないんですけど、絶対そうなるというところの中で、それをやろうとしている会社が少なかったから、チームさえ良ければいけるとか、中国を見て絶対キャッシュレスになるなと。次のお札が出る時にはキャッシュレスのほうが上回っていたり、そうなるんじゃないかというのはありました。
今回は、既存のタクシー産業の市場規模もありましたけど、20年単位で続くことが間違いない。高齢化と人材不足というテーマであれば山の登り方は変わるけれども、課題はあり続けるし、多くの人たちのけっこうな時間と絡むというのはありました。あとは登り方をどこからというふうに考えています。僕の場合は、そういう部分とパッション、エモが結びついた時に始まったという感じですかね。
佐俣:ちなみにもう1つうかがいたいのは、さっきは「自分の強み」と言っていましたけど、起業する時に自分の強みって何だとブレイクダウンして自己認識したんですか?
青柳:タクシーの二種免許を持っている起業家は自分しかいないということと、まだ僕らのnewmoはアプリも出ていないわけですけど、お金を集めて、今日発表させていただいたM&Aで……。
佐俣:そうそう、みなさん今日、日本経済新聞見ましたか? 朝刊一面に新しくnewmoグループに入るタクシー会社の発表が出ました。拍手です。
(会場拍手)
青柳:ありがとうございます。起業して、今日でちょうど半年、6ヶ月目なんですけど、newmoグループの社員が1,000人を超えました。
佐俣:いわゆるスタートアップでは日本最速かもしれないですね。
青柳:ありがとうございます。そういうことができる。半年で「本当にできたじゃん」と言っていただくと、「本当に規制が変わるの?」「あの会社に挑戦できるの?」みたいな話も、少しずつ信じていただけるようになるので。
起業やスタートアップのグロースって、孫(正義)さんが言うように、いかがわしさのバランスがあるからこそ逆に醍醐味があるみたいなところで、本当に良い挑戦になるんじゃないかって、自分の中では論理的にも直感的にもいける気がして始めました。
佐俣:なるほど。
成井:さっきの経済インパクトについて考えていたのは、インフラになることかなと思って。青柳さんもおっしゃったんですけど、ライドシェアもインフラですよね。インフラということをすごく意識しました。私のこの真空パックについては、今食品物流は冷凍が当たり前なんですけど……。
佐俣:真空パックが何なのか、みなさん若干ハテナが付きながら聞いていると思うので、この真空パックが何者なのかを話してもらったほうがいいですね。
成井:ありがとうございます。日本の特許技術で、なんの変哲もない真空パックなんですけど、この中は10のマイナス6乗という、宇宙空間と同じ圧力で食品を保存できる、99.5パーセントの真空パックを使って起業を始めたという状態です。
佐俣:99.5パーセント真空にできるというのは、容器が頑丈ということですか?
成井:上の逆止弁1つで、機械も電気もいらずに多孔真空にできるので、コールドチェーンがないところにも持っていけます。この点で、食品流通のインフラになり得ると思っています。
佐俣:生鮮食品とかを、長く保存できるってことですか?
成井:おっしゃるとおりです。例えばお米だと半年間新米のままだったり、ワインや日本酒も、ずっと味が変わらず保存できます。
佐俣:なるほど。
成井:今インフラ化を目指して、1トンの真空コンテナを作ったり、貿易や流通の分野に進出しています。冷凍食品が当たり前になったように、真空食品が当たり前になれば、経済へのインパクトは大きいと思って、挑戦しています。
佐俣:普通にめっちゃすごい話ですね。
成井:ありがとうございます。
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