2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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志水雄一郎氏(以下、志水):初めまして。フォースタートアップス代表の志水と申します。本日はご参集いただきましてありがとうございます。この資料の内容にしたがってお話しさせていただいて、後ほどの田久保さんとの対談に移ってまいりたいと思います。
本日のお題「『スタートアップで働く』~トップヘッドハンターが考える魅力的なキャリアとは~」について、私からお話しさせてください。
まず、自己紹介をさせていただきます。私は福岡出身で、中高のクラスメイトに堀江貴文や孫泰蔵がおります。最初のキャリアはインテリジェンス(現パーソルキャリア)で、転職サイト「doda(デューダ)」を立ち上げました。
その後、2012年にウィルグループという、現在は東証のプライム市場に上場しているHR会社に移り、スタートアップ向けの人材紹介のビジネスを立ち上げました。そこで初めてヘッドハンター業務に携わり、ビズリーチ主催の「JAPAN HEADHUNTER AWARDS」で2年連続日本No.1を取り、国内で唯一殿堂入りしたヘッドハンターとして認定されました。
2016年に自分が立ち上げた事業を法人化し、MBO、IPOを経て今に至ります。おそらく本日お話しを聞いておられる方の中には、新たに会社の中でイントレプレナーとして新規事業を作られる方もおられると思うのですが、私はアントレプレナーではなく、究極のイントレプレナーだと思います。
上場会社の中で新規事業を作り、分社化し、MBOし、IPOしていくことを実現した1人ですので、後ほどそのようなお話もできればと思います。
ここで少し、私が経営している会社のご紹介をさせてください。フォースタートアップス株式会社の設立は2016年9月です。今は六本木1丁目に本社をかまえています。
これには理由があり、六本木1丁目には日本ベンチャーキャピタル協会ならびに日本を代表するベンチャーキャピタル群が集っています。11月からは、隣にある麻布台ヒルズの「Tokyo Venture Capital Hub」というところに70社のベンチャーキャピタルが集うという状況になります。
現在190名ぐらいのチームで、事業内容は成長産業支援です。人、オープンイノベーション、ベンチャーキャピタルの3つの分野でスタートアップを支えるビジネスを展開しています。法人設立後3年半で上場しており、上場監査が2年になっていた当時、過去2番目のスピードで上場を果たした会社です。
経営陣には、グロービスの卒業生が1人います。それが恒田有希子さんで、第17回グロービス アルムナイ・アワード「創造部門」を受賞されています。
本日お話をしていく上で、前提としてみなさんに知っていただきたいことがあります。それは、私がなぜスタートアップ支援を本業としているのか、なりわいとしているのかについての重要なポイントです。
私がこのフォースタートアップスという成長産業支援事業を立ち上げるきっかけになったのは、11年前。その頃の私は、実は「窓際族のおじさん」でした。
「なんで自分がこんな境遇になってしまったんだろう」と考えるとともに、社会がどういう状況であるかをしっかり踏まえて、反省点にしようと動いたのですが、その頃、「かつて豊かだった日本が、すでに豊かな状況ではない」と気がついたんです。
こちらの図は、日本が直面している社会課題です。
グロービスで学んでいらっしゃる方であれば、当たり前のようにご存知のことだと思います。一番左は、スイスの「国際経営開発研究所(IMD)」が発行する年次報告書に基づく世界競争力ランキングです。1992年の段階では、まさに世界を席巻していたのが日本でした。その日本が2023年には、35位まで下がっています。
たった30年でこれだけ競争力が下がってしまった。このデータを見て、みなさんはどう感じますか? そして、どう行動しますか? 当時の私は行動しませんでした。その前に、日本がこれだけランクが低下していることを知りませんでした。私はこれを知らないことは悪だと言っています。知らないからその課題解決に努めていない自分がいる。
そして現在、私たちはこの課題に向き合っているのでしょうか? みなさんは、この課題の解決に自分の人生をかけようとされているでしょうか?
また、この図は平均賃金です。
かつて、日本は海外から出稼ぎに来られるぐらい生活水準や賃金が高い国家でした。数年前に中国人による「爆買い」という流行語がありましたが、かつて爆買いの象徴は日本人でした。フランスやイタリアの路面店でブランド品を買い漁ったのは日本人で、ニューヨークのビジネス街を歩いて「このビルちょうだい」と言っていたのは日本人です。
今やどうでしょうか? 2021年の調査では、OECD加盟国の中で日本の平均賃金は24番目。先進国の中でもっともビッグマックが安く食べられる国の1つが日本になりました。私たちは、こんな日本を誇れるのでしょうか?
もしくは、世界のどこかの国の生活水準を見て、「自分や家族にもっとも幸せな惑星である地球で享受できる幸せな生活をしている」と胸を張って言えるでしょうか?
右側は、国際通貨基金(IMF)による各国GDPのランキングです。かつて2位だった日本は(2023年9月28日)現在3位です。そして、私たちが生きている間に、どうやら12位まで落ちていくようです。今のランキングで12位は韓国ですが、日本はこれから、少子高齢化や生産性の低下など、さまざまな課題を抱えながらここまで下がっていくことになるでしょう。
本日お話を聞かれている方の半分ぐらいはご家族をお持ちかもしれません。お子さんをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。次世代にどんな時代を残していけるのかという課題に向き合っていますか? 11年前の私は向き合っていませんでした。
そして次の図は、世界時価総額ランキングです。1989年は、上位20社中7割が日本の会社でした。上位50社で見ても、日本の会社が6割を占めていた。まさに世界を席巻していたのは日本でした。でも今はどうか。
世界の時価総額ランキング上位20社中、日本の会社は皆無。上位100社を見ても、日本の会社は1社か2社しか含まれません。世界をリードしていない会社で構成されている日本が、強い国家であるわけがありません。さらに詳細を見ていけば、常に新産業が既存産業をアップデートし、時価総額上位にどんどん組み込まれていることがわかります。
世界のリーダーは起業します。自らのミッション・ビジョン・バリューを言霊として語り、人を集わせ、そこに社会課題・未来課題を解決するプロダクトやソリューションを作り、売上を上げ、利益を上げ、その一部が税金として納められ、社会システムの発展に貢献し、成長の過程で上場を果たせば、その資産によってなかなか前向きな人生を歩めない人のために寄付したりする。
そんなすばらしい仕事が当たり前のように選択できるのが世界です。日本はどうでしょう? 自らが社会・未来を変えるリーダーたる人材だと考えられる人が、日本で自ら社会や未来を変える会社を作っているのでしょうか? 生み出しているのでしょうか? 私はここが1つの課題だと思っています。
もう1つは、構造的賃上げです。岸田政権がいう構造的賃上げをどう行っていくのか。1つの事例としてアメリカを見てみましょう。アメリカにおいては、大企業既存産業と新興企業・スタートアップが人を争って採る時代になっています。
1980年から2010年までの平均で、スタートアップが年290万人の雇用を創出しています。これは国家全体の新規雇用の半分にあたります。
まさに争いで、人を採れる会社が勝ちます。会社は雇用を維持するために賃金を上げていきます。人を採れない会社は負けますから、いわゆる構造的賃上げの社会をいかにして作っていくかが1つのポイントだと言われています。
それだけ強い新興企業・スタートアップのマーケットを作るためにはどれぐらいの規模が必要なのかを示したのがこの図です。
2021年、日本の資金調達市場は10年で10倍になり、1兆円規模まで拡大してきました。アメリカは2021年のデータで約40兆円と、まさに日本の40倍のマーケットが存在します。その資金調達額によって生まれたユニコーンの企業の数は、アメリカは日本の100倍です。
ここが数兆円や数十兆円の企業価値になっていく種だとすれば、日本は未来永劫大きく差をつけられていく。これほど強大なスタートアップのエコシステムをどう形成するか、これは日本にとってはとても重要テーマだといえます。
当然、日本の官僚も指をくわえて待っているわけではありません。遅ればせながらとはいえ、まさしく世界が向かっている方向へむけて歩もうとしています。2022年、岸田政権はスタートアップ創出元年を宣言し、同年11月には「スタートアップ育成5か年計画」なるものが発表されました。
さらに、2022年および2023年に、国家の成長戦略である「骨太方針」にスタートアップへの投資と、スタートアップの推進が入ってきました。まさに日本経済の1丁目1番地にスタートアップが組み込まれ、国家の重要テーマになったのが2022年以降の動きです。
2023年7月に経済産業省が発表した資料「スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する」に、「スタートアップこそ、課題解決と経済成長を担うキープレイヤーである」という、とても良いメッセージが記載されています。
この資料の「我が国を代表する電機メーカーや自動車メーカー」とは、ソニーや日立やパナソニック、そしてトヨタやホンダなどを指すのでしょう。続けて、「戦後直後に、20代、30代の若者が創業したスタートアップとして、その歴史をスタートさせ、その後、日本経済をけん引するグローバル企業となった」とあります。
戦後、さまざまな課題がある中で、「日本を必ず復興させよう」「私たちの手で未来を必ず良くするんだ」と御旗を立てたリーダーがいて、そこに仲間が集っていったのです。そんな会社が世界をリードしました。
しかし、2023年現在、多様な挑戦者は生まれてきているものの、開業率やユニコーン企業の数は米国や欧州に比べて低い水準で推移しています。この状況を打破するために、「戦後の創業期に次ぐ、第二の創業ブームを実現すべく、スタートアップの起業や規模拡大・成長の加速、既存大企業によるオープンイノベーションの推進を通じて、日本にスタートアップを産み育むエコシステムを創出する」と謳っているのです。
日本政府は、アジア最大のスタートアップのハブを作ると発表しています。こういうメッセージが出される時代です。東大の総長も、東大は新たな起業家を生むことがテーマの教育機関であり、官僚を生み出すためだけではないんだと発表していますけれども、私はまさしくそうだと思います。
イノベーションや起業は未来を変えられる。人類にイノベーションを起こせる。地球を持続可能性のある惑星にできる。もしできないのであれば、太陽系までを生息圏にできる。それを実現する人たちがいる。それは私たちと同じ「人」であり、後天的に得たもので、未来を変えている人たちなんです。
私は、1人でも多くのリーダーを生み出せる国家にしたいと思っています。そしてスタートアップ関連については、この5年もしくは最大でも10年で、日本の資金調達市場もスタートアップ企業数も10倍にしたい。
それを実現するのが、「スタートアップ育成5か年計画」の3本の柱である、人・お金・オープンイノベーションです。これらを組み合わせて、必ず新たなソニーや新たなトヨタ、そして今世界に君臨するAmazonやGoogleを超えていくような企業体を、日本から新たに産みだしたいのです。
私個人、そしてフォースタートアップスの代表として、実現したいメッセージが(スライドの)この1枚にまとまっています。そして、今日みなさまにお伝えしたいことも、この1枚にまとまっていると思っています。
民だけが活動したり、政治だけが動くのではなく、産学官民が連携して、強力なスタートアップを生み出すための支援をする。これを通じて、日本の国際競争力と日本で生きる人たちの高い志を取り戻し、次世代に可能性あふれる時代を継承する。これが私たちの使命であり、今を生きる人たちの役回りではないかと思っています。
そんな中で、背中を押してくれる人たちがいました。ビジネス領域でぐんぐん伸びている動画メディアPIVOTの(代表取締役の)佐々木(紀彦)さんが、2022年に「志水さん、スタートアップというマーケットで生きる人たちに贈るメッセージを書きましょう」と発案されて、「スタートアップ転職ガイド2022」を作らせていただきました。
それが人気コンテンツとなったところをディスカヴァー・トゥエンティワンさまに見ていただいており、今回の出版につながりました。『スタートアップで働く』という、私が出した初めての本です。盟友である孫泰蔵くんからも「現代のビジネス環境において急成長するスタートアップ企業で働くことの意味と価値について深く考察した一冊」というメッセージをいただいています。
本日はこの本に記載したこと、そして記載していないメッセージも含めて、スタートアップで働くとはどういうことかについて、田久保さんとともにお話ししてまいりたいと思います。
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