2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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AI技術の発達により「AIが多くの仕事を担う時代」が予測される今、ライフスタイルやビジネスに『アート×デザイン思考』を取り入れることが注目されています。本イベントでは、今後AIに仕事を奪われないための価値創造のコツを、ロジカル思考・デザイン思考・アート思考を横断しながら語ります。本記事では、一般社団法人i-ba代表理事/クリエイティブ・マネージャーの柴田雄一郎氏が、ひらめきを新規事業に落とし込むプロセスや、組織における事業開発の難しさについてお話しします。
柴田雄一郎氏(以下、柴田):(興味関心を)共有したら次にやるのが「結びつける」ということです。これはいろんなイノベーションに関する本を読むと「イノベーションは新結合である」「関係なさそうなものを結びつける」と、同じことを言っています。新結合とは、たくさんの要素から結びつけて新しいものを生み出すことなんですね。
『アイデアのつくり方』という名書があって、これは1940年に出版されたのにいまだに売れ続けています。ここに基本的なことが書いてあって、「アイデアとは既存の要素の組み合わせ以外の何物でもない」と。まさにそうで、「既存の要素を新しい組み合わせにするには、物事の関連性を見つけ出す才能が必要だ」と言っています。
「いろんな要素がただあるだけじゃなくて、それらを関連付けて結びつけることによって新しいものが生まれてくるんだよ」という話なんですね。これはいろんな本を読んでも、「アイデアを作るのは必ず組み合わせだ」と言っています。
スティーブ・ジョブズがこんなことを言っています。「創造性とは、物事を結びつけることに過ぎない」。妄想して結びつけて、過去の経験をつなぎ合わせ、新しいものを統合する。
それが可能なのは、彼らのようなアイデアの豊かな人たちは、他の人よりも多くの経験、引き出しをいっぱい持っているからです。あるいは、他の人間よりも自分の経験についてよく考えている、思考しているということなんです。
私もいろんな企業さんの相談を受けますけど、まず個人の経験とか知識が少ないから結びつく要素が足りない。だからアイデアが枯渇するんですね。
さらに、よく考えているか。言っちゃ悪いですけど、薄っぺらにしか考えてなくて、「新規事業をやりたいんだけど、こんなのやったらいいんじゃないかな?」と。どういいのか、なぜいいのか、本当にいいのか、誰にとっていいのかというところまで説明できていないことがけっこう多くて、それは単なる思いつきなんですね。
思いつきも時としてはすごくブレイクするものもあるんですけど。ビジネスなので、そこはやはりちゃんとエビデンスというか根拠になるロジカルを持っていないとなかなか難しいと。
じゃあどうやってアイデアを生み出すかは、次の1時間で新規事業をその場で作っていくというワークショップで。さっきの思考法、要素を組み合わせて新しいものを生み出すことについて実践してみます。
柴田:ひらめきへのプロセスについて最後にまとめますけれども、まずひらめきを持つ、アイデアを作るには、とにかく情報を収集します。先ほどのデザイン思考でも、調査や観察をしていましたよね。
乗客が電車に乗って電車を降りるまで、それこそ家を出てから家に帰ってくるまでの行動観察をする。そういったところから新しいアイデアを生み出すわけです。そのように集積をします。
直接的に仕事に関係ないことかもしれないけれども、とにかく調べて、いろんなものに興味を持って引き出しをたくさん持っていると。それを妄想するのがアート思考です。ふわふわっと頭の中にいろいろあるものが結合するんですね。
妄想してひらめいたら、今度はニーズを検証しないといけないです。これはデザイン思考です。「お客さんが本当に求めているのかな?」とか。自分よがりのものではなかなか人からは価値が見えないので、「これはどういう人がどう使ったら、どういう価値が生まれるんだろう」ということをちゃんと検証していって、計算しないといけないんです。
ロジカルに客観的に、事業計画としてそれが成り立つかどうかを考えると。こういうことを行ったり来たりして、何度も繰り返していくわけですね。
その後に商品を世の中に出すと。それでも成功確率は非常に低いと思うんですけど、やはりこれぐらいのことをやっていかないと、なかなか新規事業とか新しい事業を成功させるには難しいと。
アイデアが生まれない理由として「目的と手段が逆転しちゃっている」という場合があります。これは本当によくあるんですけども、例えばSDGsとかDXって、「やらなきゃ」ってみんなやり始めているんですけど、本質的には「やっていたら結果としてSDGsだった」というほうが正しいと思います。
自分たちが社会におけるパーパス、つまり社会的意義ですね。「なんで存在しているんだっけ?」という存在目的。「これがやりたいからだ」ということに基づいて「自分って何者か?」「何がやりたいのか?」という本質的な問いから始まって、結果としてそれがDXなのか、あるいはAIを使うのか、あるいはそれがSDGsになるのかと。
多くの人は「DXをやらなきゃ」とか「SDGsをやらなきゃ」という手法、手段から始めますが、これは本質がないまま進むのでなかなか難しいですよね。
柴田:あと、やはり深掘り・研究、引き出しが足りない。どれだけ研究してもリサーチしても成功が難しい中で、中途半端なリサーチや研究だったら、やはり中途半端なものしか生まれてこないんですよね。
それから、先ほどお話しした発想のコツや思考法を知らない。やはり自分の中で実践していくことで身についてくるものです。簡単にぽっと出たアイデアも時としては本当にブレイクすることもありますけど、アイデアが浮かぶまでの情報を集積して好奇心を持って。
そして拡散と収束。今は広げて考えていいんですけど、今度はそれを収束させて実現化させていく。固まりすぎたらまた拡散してと。この繰り返しをしていくんですね。世の中を俯瞰してみて、新しいものを作り出していく思考の方法をこの型にはめていくと、けっこうできるものです。
それからメンタル面で言うと、やはり「やらされている」ということではなかなか難しいです。自分軸とは「やらなきゃいけない」「やらされている」ではなくて「やりたい」ということなんですよね。やはり自分がやりたいと思って続けないと、続かなくなっちゃいます。
「自分のアイデアを自分たちで生み出していこう」という意志が弱くて、「言われたからやっている」というのではなかなか実現しないですね。あとはワクワク感。本当に新規事業になればなるほど実現のプロセスが(厳しくて)、私なんかも経験上、7人のチームの半分がうつ病になってドクターストップがかかっちゃいましたね。本当にハードワークになります。
それぐらい大変なことをやっていかなきゃいけないので、やはりワクワク感とか自分のモチベーションが生み出せるようなチームワークを作っていかなきゃいけません。
柴田:あと外的要因として、これはスタートアップにはあまりないんですけども、大手企業になると経営陣の理解が足りないと。片手間に新規事業をやらせるとか、意思決定ができない。社員が一生懸命考えて言ったことに対して「それ、本当に儲かるのかよ」と一言で終わってしまうと。
アクセルを踏みながらブレーキを踏む経営者の方もすごく多いと思うんですけど、「やれ、やれ。新規事業を考えろ、考えろ」と言って煽るんですけど、結局「それは儲かるのか?」とか「いや、そんなことはうちのやることじゃないんじゃないか?」とブレーキをかけると。
これは結局「やらせる」ということなんですけど、やはり経営する立場の人間と現場の人間がコミットして一緒にやっていく環境を作らないと、なかなか難しいですね。
よくDX推進で、「AIとかわからないから、お前らちょっと若いので勉強してこいや」と言って「じゃあAIを導入します。1億円です」となったら「そんなにかけて本当に儲かるのか?」みたいな。そういうことによって、「じゃああんたがちゃんと話を聞いてこいよ」と(現場がやる気をなくしてしまう)。
自分から聞いてもいないのにすぐ否定から入っちゃう経営者だと本当になかなか実現は難しいですよね。そういった意味では、実際にこんな本(『自分軸で生きてます』)も出ているので、どうして(私が)アート思考になったかはここに書いてあったりするので興味があったら読んでください。
ということで4分過ぎましたけれども、一応ここまでが本当にざっくりとしたアート思考とかデザイン思考の違いですね。それとこれから経営者に必要なマインドセットとしてのアート思考。基本的に講義は以上になります。ありがとうございました。
司会者:ありがとうございます。ではここからQ&Aのお時間とさせていただきます。現在何件かご質問をいただいているんですけれども、事前に質問を何件か頂戴しておりましたので、それにまず1つずつ触れていき、リアルタイムでみなさんからのご質問にご回答していただければなと思います。
最後のお話にも近いかと思うんですけれども、「世の中にないアイデアの良否(いい・悪い)を判断する手段について教えてください。『誰もが反対するアイデアこそすばらしい』という考え方もある一方、『独りよがりなのでは』という不安を払拭する術が欲しいと考えています」ということです。
先ほど柴田さんのご説明の中にもあった、「なんだよこれ」と否定されるようなものがいいアイデア、イノベーションなんじゃないのかということや、最後にメンタルの部分で「ワクワクが足りないんじゃないか」ともおっしゃっていただいていたと思うんですけれども。
そういったことも踏まえて、やはりどうしても不安になる。「これは成功するのか?」というところもあるかなと思うんですけども、そのあたりはどう克服するべきなのか。
柴田:そうですね。判断基準って、やはり成功するか・失敗するか、単純にそれだけじゃないですか。「失敗を恐れちゃダメだ」という基本があると思うんですよ。「失敗の数が成功の道だ」と考えるのか、「失敗したらどうしよう」と不安になるのか。「失敗したらどうしようか」とずっと考えていると、成功はやってこないですよね。
最初に自分のプロフィールで言った、僕が前半にやっていた仕事で企業が損失した赤字額って150億円ぐらいです。要するに新規事業ってぶっ飛んじゃうんですよ。それぐらい経験しているから、経験則からの判断は若干はあるにしても、成功するか・しないかって紙一重なんですよね。
例えば井戸を作ろうと思って穴を掘っていって、あと3メートルで水源到着するのに、その3メートルを掘らなかったことで到着しないこともあるじゃないですか。これは失敗を恐れているとなかなか生まれないので、正しいか間違っているかの判断は、やってから判断するので僕はいいと思います。
司会者:なるほど。やってみて「うまくいきそうだな」「いや、ちょっとこれは怪しいな」みたいな、そういう反応をまず確かめてからでも遅くないと。
柴田:そうですね。ただもちろん、そこに至るまで圧倒的に研究した結果ですよ。何もしないでとりあえずやってみたけどダメだというのは、やはり結局それなりのものなので。それを実現させるために圧倒的に研究して、いろんなトライをしてやってみようというところまで持ってきて、それでも失敗したらそれはもう「力のある失敗」になるという考え方ですかね。
司会者:ありがとうございます。ぜひみなさんもご参考にしていただければと思います。リアルタイムからいただいている質問も何件か増えてきたので、まずこちらをご回答いただければなと思います。
「とても興味深いお話をありがとうございました。大人になってから思考を身につけることは難しいと思います。子どもの頃の喜びが大きいほどアート思考を持つと思われますか? また、どんな育ち方・遊びをした人がアート思考が得意だと思われますか?」。
ということで、アート思考の適性のお話ですかね。どういう人が得意で、どういう経験をしているとアート思考がしやすいといったものって何かございますか?
柴田:これは先ほどちょっとご紹介した『自分軸で生きてます』という本に、僕がアート思考になった歴史が、ちょっと黒歴史も含めて書いてあるんですけども。
司会者:(笑)。
柴田:大人になってから身につけるというよりも、そもそも身についてたものを大人になると忘れちゃうんですよね。僕もお子さん向けに1年間ワークショップをしていて、例えば豆腐作りとかプログラミングとか、毎月いろんなプロデュースをやったことがあるんです。その時にわかったのは、そもそも子どもはみんなアーティストなんですよ。
それを大人が「これはダメ、あれはダメ」とか「これが正解、これが不正解」とやっていくことによって、どんどん削がれていっちゃって。
司会者:なるほど。
柴田:パブロ・ピカソは「子どもは誰でもアーティストだ。問題はアーティストでい続けられるかどうか」と言っているんですよね。つまり、もともとみなさんはアーティストぐらい創造性が豊かで、いろんなものに好奇心を持って、自分で失敗を繰り返して学習して今を生きているわけです。ところが、いろんな教育の中でそれが削ぎ落とされちゃったんですよね。
そこからアート思考を持つのは確かに難しいんですけど、入り口の1つは、今日もお話ししたように好奇心を持ってみること。1つでも好奇心を持っていろんな自分の興味が膨らんでくると、それは自分の中で「新しい」を生み出す要素になってくるんですよね。
芸術って受験で必要ないものだから、一番最初に排除されるわけじゃないですか。要するに科目としては美大に行く人しか要らないやつだから。そこで排除されちゃったものを、今更僕らが身につけるってやはりなかなか難しいんですけど、実際僕らの中にある能力なんですよ。
それが実現できるかどうかは別としても、「これがやりたい」「こんなものを思いついちゃった」というのはみんなが持っているので、好奇心を持って習慣づけることによってアイデアは生まれてきます。
アーティストとは別だと思うんですけど、生活を豊かにする工夫とかビジネスにおいて新しいものを生み出すことは、筋トレと同じなので意識してやっていれば、絶対戻ってきますね。
司会者:なるほど。我々大人が始める最初の一歩としては、今まで「いや、これは無理だろうな」と思うことを意識的にやめて、ワクワクする方向にまず向かっていく感じですかね。
柴田:あともう1つは、どんな育ち方・遊び方をした人がアート思考が得意か。ちょっと語弊があるといけないですけど、いじめられた人とか、登校拒否とか、アスペルガーみたいな人。ほぼほぼ統計的に言えば、そういう社会不適合な人ほどアート思考脳は強いと思います。
司会者:それはまたどうして?
柴田:結局、今までの既成概念はどんどん植え付けられていくじゃないですか。ちなみに僕は左右盲といって、左・右の認識が弱いんですけど。
小学校の時に僕は左・右が弱いということで「左向け左」とかがぜんぜんできなかったんですよ。小学校にもなって左・右がわからないので、アホな子と思われていたというコンプレックスがあるんですね。あと数の勘定が苦手だし、けっこう一般の人ができることが僕はできなかったりするんですよ。
その分、人ができないところに興味を持ったり人が行かないところに行ったりする習慣があったので、もともとあったアート思考的なものをずっと維持できたのは障害やコンプレックスがあったからだと思うんですけど。
ただアート思考があればいいというわけでもないんですよ。先ほどお話ししたデザイン思考のように、相手のこともよく理解できて、それからロジカルに考える。この3つの要素が必要になってくるので、必ずしもアート思考を持った人が偉いとかそういうわけではないということだけ、ちょっとお話ししておきます。
司会者:うまくバランスをとるというか。
柴田:そうですね。
司会者:ありがとうございます。
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