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スモールビジネス「起業後の心得」~成功する起業家とは?~(全5記事)

話を聞いて「ああ、そうなんだ」で終わる人と血肉化する人の違い 成功者・経験者の知見を自分のものにするための「前提」

東京・立川を拠点に起業に関連したさまざまなイベントを開催しているStartup Hub Tokyo TAMA。本記事では、13年間で1万社超の中小企業・個人事業主を支援した株式会社ウェイビーの伊藤健太氏が登壇したイベントの様子をお届けします。今回は、定年退職後の独立・起業で失敗する人が多い理由や、起業で成功するための環境作りなどが語られました。

起業家にとっての優秀さとは?

伊藤健太氏:起業プログラムの4つ目です。先ほども申し上げましたが、起業家にとっての優秀さは学歴とかではまったくなく、どれだけ行動できるかです。

ある意味、どれだけクレイジーになれるかですね。スティーブ・ジョブズの有名な言葉でもありますが、どれだけハングリーでいられるか、自分がやりたいことに対してクレイジーでいられるかは、とても重要なことです。

今日聞いてくださっている人の中でも、大きな会社を作りたいという人もいれば、自分1人が生活できればいいと考えている方まで、いろんな方がいらっしゃいます。

すべての人にドンピシャの話にはなかなかなりませんが、自分の力や自分のアイデアを使ってお金を稼いでいくという意味では、全員にとって必要なお話だと思っています。

先ほどリスクの正体についてお話ししましたが、リスクの裏にはチャンスがあります。リスクが大きければそれだけチャンスもある。大きなリスクを取ってくださいと言っているわけではなく、「自分が許容できるリスクを建設的にコントロールしていく」のが大切だと思っています。

「リスクがあるから」と、ネガティブな前提で始めてしまいますと、「リスクがないもの、リスクがないもの」という発想になってしまうので、リスクをどれだけうまくコントロールできるか。やたらリスクに敏感になるのはもったいないと思います。

定年退職後の独立・起業で失敗する人が多いわけ

伊藤:今日、事前に参加者の方にアンケートをいただいていますが、けっこう年配の方も多くいらっしゃる。

僕が独立・起業を応援させてもらっている時、40代、50代のお客さんが一番多くいらっしゃったんですが、その時にすごく感じることがあった。40歳はちょっと違うかもしれませんが、50代や60代の方は、よく大丈夫かなと心配になることがあったんです。

僕は20代で独立して、お金がまったくない中で起業していますが、50歳くらいになられると、お金持ちという意味ではなくて、相対的な意味で少しお金を持っている方がいらっしゃると思うんです。

人は「余裕があると緩くなる」というのは、そのとおりだなと思っています。

ここ(スライド)に書いていますが、「あなたは100回試験が受けられます。その中で1回受かったらいいですよ」というケースと、「3回しか受けられません。その中の1回受からないといけません」というケースでは、当たり前に後者のほうが試験を受けた後に、例えば落ちた場合はなんで落ちたのかを絶対に分析するじゃないですか。

持っているお金の量に余裕がある少しシニアの方のほうが、若手の方に比べたら良い意味でも悪い意味でも余裕があります。ただ、この余裕がけっこう怖くて。

定年退職された方が独立・起業して失敗されるってめちゃくちゃある。これは余裕が完全に悪いほうに作用してしまっている。ハングリーさがまったくないんですね。「まだちょっとお金にも余裕あるし」という感じで、「ゆっくりやれたらいいです」みたいにめちゃくちゃ弱い。

ファジーな計画だったり、めちゃくちゃ抽象度高く、どこか1回うまくいったらいいくらいの感覚になってしまう。そんなにうまくいくほど甘くありません。

余裕があることが悪いのではなくて、余裕があるせいでハングリーさが失われてしまっている状態にある人は、最も危ないと思っておいていただけるといいのではないかと思います。

起業で成功するための環境作り

伊藤:5つ目。「起業前にやっておくべき4つの仕組みづくり」です。ここまでの話の整理にもなります。

そもそも、「みなさんはなんでそれをやりたいと思われているのか?」ということです。(スライドに)「WHY」と書いていますが、目的の部分です。

目的は、崇高な理想とか、かっこいい大義なんてなくたってよくて、「お金持ちになりたいです」だってまったくかまいません。とにかく「なんでやりたいのか?」がとても大切だと思います。

ここを整理していただけるといいかなと思います。大切なのでもう1回お話ししますが、崇高な理想って実はいりません。お金持ちになりたいとか、女子にモテたいとか、本当にそんなんでもかまわないんです。

最初は、止まっている車を動かすという意味において、どんな力を使っても自分の中で湧き上がるエネルギーを使って前進させていく。

何のためにやるのかは、みなさん大なり小なりあるところなので、その部分に関しては言語化するほうがいいと思います。

次に、「環境づくり」と書いています。

これもめちゃくちゃ重要です。いわゆる類は友を呼ぶじゃありませんが、起業準備中の人や起業したての人がやったほうがいいのは、間違いなく環境作りです。

環境は、みなさんの当たり前や前提、常識を作ります。先ほどハングリーさやリスクテイクの話をしましたが、独立・起業の前提に立っていないような人たちとずっといると、みなさんの中にもその前提ができあがってしまうわけです。

先ほど申し上げましたが、独立・起業は、今まで日本で生きてきた中でのフォーマットとはまったく違う。むしろ、真逆です。起業のフォーマットやルールがあります。そういうルールでうまくいっている人たちの中にみなさんが入っていけるかは、とても大切なことです。

話を聞いて「ああ、そうなんだ」で終わる人と血肉化する人の違い

伊藤:こういう話をすると、「いやいや、伊藤さん。それはそうですよね。でも、自分なんてまだ起業していないのに、すでにうまく事業をやられている社長とどうやったら会えますか?」「どうやったら付き合ってもらえますか?」という質問になりがちです。

聞きたい気持ちもわかるんですが、本当にうまくやっていく起業家の人は、もちろんそういう質問もするのかもしれませんが、どうやったらそれができるかを自分なりに考えて、自分の周りの社長を探して、まずアポイントを取っていく。

そのアポイントを大切にしながら、次の社長を紹介していただいて、少しずつステップが上がっていくみたいなこともあります。

僕も意地悪な人間ではなくて、聞かれたら答えるんですけど、ただ、なんで僕が今みたいに若干ネガティブな捉え方としてお伝えしているかと言うと、起業の世界って答えがあるわけではない。「自分で答えを見つけていくのが正しい世界」だと思っています。

全部のことに答えがあって、その答えを知った上でやろうみたいなことは、すごく合理的な発想だと思っていますが、自分でしっかりと考えることをしないと、考える力が奪われていくのではないかな。スポットでご質問いただいたことに僕が答えて、それがうまくいったとしても、また早いタイミングで次の課題が出てきます。

基本的には、まず自分の頭で徹底的に考えて、やってみる。やってみてうまくいかなかった時に誰かに相談する。まだやってもいなくて考えてもいないのに、思いついた質問をして、それっぽい人が回答して、「ああ、そうなんだ」とわかったふうになってしまうのでは、思考プロセスで言っても、みなさんの血となり肉となりみたいなところで言っても、ものすごくロスになる可能性があると思います。

成功者・経験者の知見を自分のものにするための「前提」

伊藤:やっていただきたいことの3つ目は、「具体化」です。

この前の環境作りにも通じるんですが、やはり独立・起業はほとんどの方が初めてやられるわけです。初めてやることって、わかんないのが当たり前。だって、やったことがないからわかるわけないじゃないですか。

例えばですが、アメリカに1回行ったことがある人と、1回も行ったことがない人って、まったく違うじゃないですか。たった1回でも、まったく違うわけですよ。アメリカに2回行ったことがある方、3回行ったことがある方、4回行ったことがある方と、行ったことがない方って、解像度がまったく違う。

それとまったく一緒です。起業の世界も、実際にやった人とやっていない人。もうちょっと正確に言うと、アメリカに行ったことのある人と、行ったことがない人。行ったことはないけど、アメリカに関しては本をすごく読み込んでいる人と、そうじゃない人。差がたくさんあるわけです。

みなさんのゴールは起業することではありません。起業した後に、自分の目標である、例えば月100万円の収入を得るとかを実現することだとしますね。

そうした時に、その具体的な目標に対して、今準備中の方であれば、そこに最速・最短でたどり着くように無駄なことをやらないで、全エネルギーを「何をやればいいか」に注ぎ込んでいくことになるわけです。

でも、やったことがないとこれがジレンマなんです。やったことがないから、何していいかわからない。合っているのかもわかりません。だから、ここは誰かに建設的に相談に乗ってもらったほうがいいと思うんですね。

でも、先ほど言いましたが、自分で考えることをしないで、「何をしたらいいですか?」と丸投げして誰かに聞くことはめちゃくちゃナンセンスです。

自分の中でひたすら学習をして、自分の中で考え抜いてやってみました。でもうまくいきません。またはうまくいきました。でも、うまくいったのは部分的だったので、この部分がうまくいきません。これってどうしたらいいですか、と聞く場合では、まったく違うものが得られるわけです。なので、この前提は必ず置いて、その前提の中でお話をしてください。

良いメンターを置く

伊藤:周りに、先輩や目標として良い方をメンターというかたちで、相談相手としてぜひ置いていただきたいと思います。

やったことのないことを1人でやっていくこと自体、とても難しい話です。なので、やったことがすでにある人を道案内人的に、ぜひメンターを置いてほしいと思います。決定的に変わると思います。

ただ、後でお話ししますが、メンターは「メンターらしき人」「本物のメンター」とに実力によって分かれます。誰をそこでセレクトできるかは、みなさんの選択の力になります。ぜひ相談相手をつけていただくといいかなと思います。

「やっていただきたいこと4つ」のお話をしています。1つ目が目的確認、2つ目が環境を変えていくこと。これは今からやってほしい。当たり前ですが、独立前も独立後も一切関係なく、結果を変えたい方は今からやってください。

3つ目は具体的に相談できる人をちゃんと置く。結果を一定出している現役の経営者にお願いするのがミニマムだと思います。

「1回も会社経営をやったことがありません」という人を相談役に置くのは意味がないと思います。必ず最低1人は、現役でうまくやっている経営者の方に相談できる状況を作ることがとても重要です。

今日はいろんな方がいるので、全員に対してのお話にならず恐縮な部分もありますが、「自分1人がうまくやれたらいいや」という人であっても、できたら視座の高い経験を、いろんな経験をされている方を、相談役として置いていただくほうがいいと思っています。

「小さな成功体験」を早く積む

伊藤:「やっていただきたいこと」の4つ目です。「小さな成功体験」を早く積むことがとても重要です。特に今日は参加者の方に40代、50代の方が多くいらっしゃって、サラリーマンとしての経験が長いと思います。

そういう方ほど一刻も早く、会社とは関係のない人脈、つまりあなた個人で、どんなことでもかまわないので成功体験を積んでいくことが、極めて大切です。自ら企画をして小さなイベントを開催するとか、事業計画書を作って誰かに相談してみたら「これ良いじゃん」と言われるとか。

商品・サービスのプロトタイプと言って試作品を作って誰かに見せて、「これ、めちゃめちゃ良いじゃないか。これってもう売っているの?」と言われて、「いや、まだ売っていないんです」「もしできたらすぐ買うよ」と誰かに見せて言ってもらえたら、めちゃくちゃうれしい経験になります。

こういった小さな成功体験をいかに早く積めるかが、とても大切です。みなさんの起業における温度感やスピードを変えていくのは、結局は小さなアクションなんですね。

ですので、何度も言いますが、できることはたくさんありますので、明日以降はどうやったら小さな成功体験を積めるのかを考えてみる。

今日の話でいうと、「売上を上げる」という一番難しい目標に対して、逆算的にどうやったら早くそこにたどり着けるかを、準備前、起業準備中の人であっても、すでに起業している人でも、目標設定してやっていただくといいかなと思います。

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