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【起業のリアル】起業家の挑戦ストーリー(全4記事)

8社創業・4社Exitの起業家が語る、連続起業する人のマインド 挑戦し続けるための「成功するか失敗するか」ではない捉え方

東京・立川を拠点に起業に関連したさまざまなイベントを開催しているStartup Hub Tokyo TAMA。本記事では、代表や立ち上げメンバーとして8社の創業に携わり、4社をExitした起業家の池田朋弘氏が登壇したイベントの様子をお届けします。今回は、「借金は保険」の考え方や、スモールトライを大切にする理由などを語りました。

「借金は保険」の考え方

池田朋弘氏(以下、池田):起業・Exit経験からの9つの学びの7つ目。「借金は保険」。私は2013年に起業した時、子どももいるし絶対に借金をせずに手元資金でやっていこうと思っていました。ただ、本を読んだり事業を続ける中で気づいたんです。結局キャッシュが手元にあるかどうかが会社の生命線だと。

キャッシュがなくなりそうな時に借金しようと思っても手遅れです。銀行も貸してくれないし、打つ手がない。お金がちゃんとあって大丈夫な時に借金をしておけば、例えば手元に1,000万円があって1,000万円を使い果たしたら終わっちゃうわけですが、1,000万円がある時、銀行は1,000万円くらい貸してくれるわけですよ。2,000万円持っておくと。

そうしたら最悪1,100万円まで使わなくちゃいけないシーンがあったとしても、手元には900万円残るじゃないですか。もちろんこれは債務超過で非常にまずい状況なので、そこにいかないほうがいいんですが、1,000万円の借金をしていないと、1,000万円使ったらゲームオーバーなんですね。

使わない前提ですが、借金でバッファを作っておけば、何かあった時に手元にキャッシュがあって生き残れる。つまり保険なんですよね。利子は保険代と一緒だなと。

これは社長になった後にガラッと変わった考え方でして、ぜひ伝えたいなと思って「学び7」としてお伝えさせてもらいました。

ポップインサイトは、こういう考えで2年目から借金をしていて、3年目の途中までは大丈夫だったんですが、途中から業績が悪化して債務超過に陥った時期があるんですね。その時に借金をしていなかったらたぶんアウトで潰れていた。借金をしていたのでなんとかもつことができました。

このまま潰れたら借金が残ってしんどいなというプレッシャーはあったんですが、なんとか生き延びることができたのはこの考え方で借金をしていたからだなと思っています。これは起業する人には伝えておきたい。

最初はすごく抵抗があると思うんですが、冷静に考えれば、借金をできる時にしておいて使わないのが一番いい。使わないほうがいいんですが、できる時にしておかないとアウトなので、これは伝えておきたい。「借金は保険」という考えです。

ミッションを言語化して、繰り返し伝えることの重要性

8つ目。「言語化し、繰り返し伝える」。これは人が増えてきて組織を作る時に重要だったなと思います。

私はミッションやビジョンは、「大企業がやることだよね」「キラキラスタートアップがメディア受けのために作っているんでしょ」「従業員は関心ないでしょ」と思って、作っていなかったんですね。

ところが、これを作らずにやっていると、いろいろと難しいことがありました。社員からは、「この会社がどうなっているのかわかんない」「何が大事かわかんない」と言われたり、考えの軸がないので、何か揉めた時も社長の好き嫌いで物事が決まってしまって、うまく物事が進められなくなっちゃったんですね。

私の会社は2016年くらいからフルリモートワークにして、ぜんぜん会わずに組織運営をしたので、余計に難しいわけですよ。離反しがちで、テンションも下がりがちだったんですが、「何のために会社をやっているのか」「どういうことを重要視しているのか」という行動指針やミッションを言語化して毎週伝えることをやったら組織がすごく良くなった。

最初は気づかないんですよね。「やらなくてもいいよね」「個別に話したらいいじゃん」と思っちゃうんですが、組織化していく時には絶対やった方がいいです。ミッション、ビジョン、行動指針。言葉で定めて、しかも定めておしまいではなく言い続ける。

周りに社長の考えや想いの全部は伝わらなくても緩くは伝わります。温度差はありますが、多少熱くはなります。こっちが100だとしたら社員はたぶん10か20くらいですが、ゼロよりは圧倒的にマシです。組織化フェーズに入っている方にぜひお伝えしたいと思います。

挑戦し続けるための「成功するか失敗するか」ではない捉え方

最後、学びの9つ目は「成功するか、成長するか」。私は今、このスタンスを持っています。物事は、成功するか失敗するかって捉えがちですけど、そうではなくて「成功するか、成長するか」しかないと。

何かやって、結果がうまく出れば成功じゃないですか。想定どおりに出た。営業で売上が作れた。マーケティングでリードが作れた。成功だと。

一方で、営業しても売れませんでした。マーケティングに取り組んだけどリードが取れませんでした。失敗に見えちゃうと思うんですけど、それを失敗ではなく、「新しいことをやったし、学びがあったな」と捉えれば、成長しているじゃないですか。

なので、結果が出るか、成長するかのどっちかしかないと思ったら、新しい取り組みにすごく前向きにチャレンジできますし、結果を捉えることができるんですよね。

失敗と思わなくすることがすごく重要かなと思っていて。当たり前ですが、やったことがない新しいことをやる時って、アウトプットが出ないことが多いんですよ。わかりやすい成果はあまり出ないんですが、学びは自分の捉え方次第で、成長は必ずできるんですよね。

昨日の自分よりはちょっとマシにはできる。いつ結果が出るかは外部環境依存なので確約できないんですが、昨日の自分より今日の自分のほうがちょっとマシになっているというのは、新しいアクション・気づきがあるだけなんで、絶対できる。

私はこのスタンスを途中から持ち始めて、失敗しても成長したなと。つらいことやうまくいかないことがあった時に、どっかで話そうと思うように変えたことが、楽しくできている理由じゃないかと思っています。

これは言われてすぐにできるものではないと思うんですけど、社長はこういうスタンスであまりへこまないようにするのが、すごく重要じゃないかなと思います。この考え方を持つと楽ですし、すごく楽しくなるので。

「成功するか、成長するか」というスタンスで、物事に臨んでいくといいんじゃないかなと思います。

ということで、あっという間に時間になっちゃいました。ここからまだ回答できていない質問にお答えできればなと思います。

スモールトライを大切にする

司会者:たくさんご質問いただいています。読み上げますね。「新規事業立案からマネタイズの確率はどの程度でしょうか」。

池田:スモールトライは、8社の起業とはぜんぜん関係なくたくさんやっていますが、かなり失敗しています。立案からマネタイズの確率はけっこう低いと思いますが、低リスクでスモールトライすることが重要だと思っています。

失敗は学びであって、ネタにもなる。ぜんぜんお金はかけておらず、困ることのない失敗はたくさんしていますが、そこは大して問題ではない。試行回数が増えた結果、成功する可能性が出てくることが重要だと思うので、そんな考えでいろんなトライをやっています。全部成功ではまったくないです。

司会者:ありがとうございます。続きまして、「『売ってから創る』についてです。仲介サービスをやろうと思っています。まずはサプライヤーを見つける必要があると思いますが、営業する際はすでにサービスがあるという体で話したほうが良いでしょうか」。

池田:そうですね。料金表とか本当にモノがあるから売ろうとしている営業と、ヒアリングっぽく「これから考えているんです」ではぜんぜん話が違うわけですよね。

なので、サービスがちゃんとあるという体がいいかなと思います。もちろん売れたらやらなくてはいけないので、サプライヤーが見つけられそうかどうかをちゃんと考えたり、「すぐに契約したい」とお金を払わなくても、「いたら紹介するね」とやるのはリスクもないし簡単じゃないですか。

そういうことはちゃんとやった上で営業したほうがいいと思いますが、営業する時は本当に売れる体でやらないと意味ないです。ヒアリングになって、「できたら買うわ」とか言われても、実際には買われないことが多いわけなので、そういうのはやめたほうがいいですね。

1社での新規事業ではなく、会社を複数にわけた理由

司会者:続きまして「先日会社を設立した者です。手元資金のみで運営していくか、どこかで融資をしてもらうかで悩んでいます。キャッシュは大事なことですが、手元資金の調達はどこで行いましたでしょうか」。

池田:ありがとうございます。ちなみに最初の起業では、自分と妻と親から借りました。

司会者:ああ、そうなんですか。

池田:共同創業者と一緒に出したわけですが、最初は手元で集めてきました。資金の考えとしては、人によっては自分の給料はゼロにして、なるべくお金を使わない起業もあると思うんですけど。

私はキャッシュもなかったですし、不健全かなと思ったので、生活がギリギリできるくらいの報酬をもらうかたちで、1年で単月黒字にいかなかったらやめようと思ったんです。また就職しようという感じでやっていた。

正直、融資ができるならしてもらったほうがいいですね。最初は政策金融公庫なんかで、自分の保証をつけずに借りることもできるので、ちょっと金利が上がっちゃいますが、保険料と思って融資は絶対してもらったほうがいいです。

司会者:「多くの事業をなさっており1人では不可能だと思いますが、事業を軌道に乗せる、または乗せた直後のフェーズでジョインする仲間との健全なモチベーションはどのように保っていますか。

池田:めっちゃ難しいですよね。まず私が会社を分けている理由は、私が社長ではなく、メインの人が社長であったり、ちゃんと株を持つ状況になることで、続ける理由になったり成功を味わえると思うからです。

1つの会社での新規事業になると会社の株を簡単に分けるわけにいかないと思いますし、比率なども難しくなるので、事業ごとに会社を分けてメインメンバーに株をちゃんと持ってもらった上でやるかたちを試行した。

結果、複数起業になりましたが、仲間と分かち合うかたちによってモチベーションの維持にもなっていると思います。

あとは、一人ひとりやりたい理由も違うのでちゃんと1on1をしたり、その人にとっての意味合いを話しながらやっていこうとしていましたね。

今できることからをリスクがないかたちで始める

司会者:ありがとうございます。お時間になりました。今日お申し込みしていただいた方のメイン層は、40代、50代の男性の方です。おそらくこれから何か事業を立ち上げたり、副業していきたい方々。

今日の9つの学びの中にも「副業で心技を試す」が入っていたと思いますが、最後に今後起業を検討している方にメッセージをいただけるとうれしいです。

池田:そうですね。私は38歳なので、そういった方々に本当に有益かはあれですが、やはり始めるのに遅いことはないのではないかと思っています。いくつになっても成長したり、チャレンジはできる時代・状況かなと思っています。

とはいえ、状況や年齢によって、取れるリスクやできることは選択肢の全部ではないと思うんですが、今できることからまず始めて、リスクがないかたちで始めるのが、起業の第一歩かなと思います。

勉強会をやるとか情報発信をするとか、そういったアクションだけでもやるかやらないかでぜんぜん違うと思うので、まずは大それた一歩ではなく、スモールの一歩を踏み出してみる。

一歩踏み出すと歩くのが惰性になります。歩くのが普通になって、だんだん速度が上がる時もあるでしょうし、速度は出なくても楽しくやっていただければいいのではないかと思っています。「一歩を踏み出しましょう」というのがメッセージですかね。

司会者:ありがとうございます。今日の9つの学びができたら、たぶん成功するんだろうなと私個人はすごく感じました。

池田:そうですね。一番言いたいのは、9個目の「成功するか、成長するか」マインドですかね。これがあるといろんなことが楽です。失敗を失敗と捉えなければ、別にいくらでもチャレンジができるわけなので。

YouTubeも2チャンネル目で、1個目は100本出してチャンネル登録者数150人なんですよ。100本出して150人ですよ。めっちゃつらくないですか。

司会者:つらいですね。

池田:当時は外注だったので、200万円くらい払ってまったく増えず、やってもやっても反応がないみたいな感じだったのですが、私は過程と思っているので大して気にならないというか、見てくれている人はいないけど、発信した自分の学びにはなったなと。

「どこかで成功したら、そういう話ができるからまあいいかな」と思いながらやっていたので、気になっていないというか、むしろネタになるくらいの感じで、そうなっていると楽ですよね。

司会者:なるほど。貴重なお時間をいただきまして、どうもありがとうございました。

池田:こちらこそ、ありがとうございました。ぜひ多少なりともみなさんの参考になれば幸いです。

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