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新しい価値の創造と才能をマネタイズすること(全6記事)

クリエイティブでは自分やクライアントの「嫌い」を知ること ヒットメイカーが説く、自分の才能をマネタイズする8つの法則

東京・立川を拠点に起業に関連したさまざまなイベントを開催しているStartup Hub Tokyo TAMA。本記事では、CDセールス8,000万枚以上の人気音楽プロデューサーでありながら、起業家としてフードテックGigi株式会社を立ち上げた今井了介氏が登壇したイベントの様子をお届けします。今回は、共創・共生の時代に必要なマインドや、自分の才能をマネタイズする8つの法則が語られました。

共創・共生の時代に必要なマインド

今井了介氏(以下、今井):結局今は、「音楽」も「食」も共創・共生。みなさんもよく耳にする言葉だと思います。共に創って共に生きる。誰かがGAFAのようにものすごく大きなパートやシェアを持っていくんじゃなくて、みんなが少しずつ。

例えば二酸化炭素やカーボンオフセットもそうです。先進国はこんなに二酸化炭素を出しているのに、後進国や途上国には「お前らは二酸化炭素を出すな」という時代ではないじゃないですか。みんなで抑えていかなきゃいけない。

本当は二酸化炭素を出したほうが、経済はすごく簡単に回るのかもしれない。でもみんながそれを抑えるために技術とお金を使うのが、共創・共生の時代に必要なマインドや精神なんだと思います。こういうことをボランティアではなくて、事業化していくことがポイントだと思っています。

イタリアにはSuspended Coffee(保留コーヒー)という、コーヒーを分け合うカルチャーがありますが、こんなことを謳っているんです。

「Money buys Happiness when you spend money on others」、利他の心というのは、つまり自分の幸せである。

ブリティッシュコロンビア大学とハーバード大学からは、「Spending money on others increases 20% happiness levels(他人にお金を費やすことによって、自身の幸福度が20パーセント上がる)」という論文が出ていますので、ググってみてください。

利他の時代、誰かが喜んでくれることが、意外と自分の幸せなんだなと思える社会が本当にそこまで来ている。

ちなみに僕にとってすごく印象的だった言葉を挙げさせていただくんですが、2022年にレディ・ガガが来日した時の言葉です。

「May kindness rule the world.(優しさが世界を支配しますように)」とMCで言っていて、時代はどんどんこういう方向に向かっているんだなと強く感じた瞬間でした。

自分の才能をマネタイズする8つの法則

今井:(スライドを表示して)時間がないので、ここはクイックにいきます。僕が音楽と食の両方を取り組まさせていただいた中で、自分の才能をマネタイズする時の8つのルールを挙げてみました。

これだけで、大学で1時間の授業をしたことがあるくらい、重いというか大事なパートですが、8分くらいで説明します。

まず「お金を払う価値のある体験をする」。今は何でも無料コンテンツがたくさんあるんですが、やはり旅に出る、本を読む、ライブやエンタメを肌で感じるなど、お金を対価として自分が何かを得られるような体験をすること。

日本は貯蓄大国と言われていますが、お金を払う価値のある体験をして、自分の次の事業につなげたり、感性を磨くことに回していく。特に20代の、自分の感性がフレッシュなうちは、貯蓄よりもたくさんいろいろな体験をしてほしいと思います。

そして「自分の地雷を知る」。言葉がちょっとショッキングですけど、誰でも苦手なことや嫌いなことがあると思います。何でもかんでも「苦手だから、嫌いだから克服しなさい」じゃなくて、嫌いなものは嫌いなままでもいいんだけど、どう嫌いなのか、どうしてこれが嫌なのかをより具体的に知ること。

また、人とやり取りする時、もの作りでもそうですけど、好きなものだけを聞くんじゃなくて、(その人の)苦手なものも吸収して作ることで、より精度が高くクリエイティブなものが作れたりする。企画書を作る時もそうですよね。そういうことができるんじゃないか。

3つ目「小さな革命を必ず注入する」。何か神秘的なものを絶えず探そう。今はこれが売れているし、世の中はこれが受け入れられているしというマーケティングベースドももちろん超大事です。データはとても大事です。でも、そこに小さな革命を何か1つ入れようとして生きてみてください。

そして「言語化する/解像度を上げる」。なんとなくじゃなくて、ちゃんと解像度を上げて、言語化できることが超大事。例えば僕は音楽の仕事を30年やってきました。クライアントからオファーが来ました。曲ができる前にも「こういうタイプのこういう感じで、こういうテンポ感でこういう曲にしていこうと思うんです。どうですか?」とか。

やはり音楽は影もかたちもないものなので、きちんと仕上がった時に「何これ、打ち合わせしていた内容とぜんぜん違うじゃん」とならないように、なるべく言語化してしゃべっています。

「寂しがらないこと」の大切さ

今井:それから「事業規模とお金の流れを把握する」。「これで本当に自分が食っていけるの?」ということを絶えずきちんと考える。データや過去の事例などをたくさん見ていくことで、本当に自分のビジョンを達成できるマーケットなのか、その先の将来があるのかどうかを考えることが、すごく大事だと思っています。

そして「圧倒的であること」。自分が新規事業や、自分の才能を活かして何か新しいことを始めたいといった時に、自分よりもがんばっている人がいると自分には誰もついてきません。自分が圧倒的にリードしていることが大事。負けず嫌いなこともモチベーションになるでしょうし、好きだったら没頭できる。誰にも負けないくらい圧倒的であれ。

プロ野球選手やサッカー選手もみんなそうですよね。今活躍している大谷翔平選手もたぶんそうだと思うんですけど、ほかの野球選手がご飯や飲みに行っている中、ずっと練習しているんですって。才能の開花は圧倒的ですよね。

「謙虚であること」。圧倒的であることによって勘違いしやすいのが、「俺が一番だ」になりがち。「俺がボスだ。俺が一番だ。俺が一番やっている。だから俺の言うことを聞け」ではないんです。やはりいろいろな意見がそこに出てきます。

もしかしたら人との軋轢もあるでしょう。そういう時、別に全部を認めなくても、「こう言語化した結果、違ったな」でもいいんです。中には「なるほど、気づきがあったな」ということがあるので、人の話には耳を傾ける、謙虚であれということもぜひ取り入れてみてください。

そして最後。これもけっこう大事。「寂しがらないこと」。抽象的なのでちゃんと説明します。よく「経営者は孤独だ」なんて話を聞くじゃないですか。何か新しいことを始めようとした時に、『ワンピース』みたいに体よく毎回仲間がどんどん増えていくような都合のいいことは起きなくて、けっこう孤独な時期が長いんです。理解者もなかなか出ない。

でも続けていくうちに、自分を応援してくれる熱狂的な人が出てきます。こういう人が見つかるまで我慢できないと、自分が本来やりたかったことより違ったものにどんどん曲がっていっちゃったりする。だから寂しがらないことは意外と大事です。

孤独に打ち勝つだけの自分のビジョンを持ち、解像度を上げ、商業規模があると本当に信じたなら、ちゃんと続けてみるといいと思います。ちょっと駆け足になりましたが、これが才能をマネタイズする8つの法則です。

「喜んでくれる人が多いもの」をちゃんと作る

今井:先ほどもチラッと言いましたが、何か新しいことを始める時、誰かが喜んでくれることを自分が提供できた時、人の心が動くところでは必ず経済が動き、新しい波になっていきます。音楽だって、レコード会社の人が喜んでくれても、その先のリスナーが聴いてくれなかったら結局1円も印税が生まれないわけです。

音楽ってけっこう厳しくて、1万再生くらいしかない曲しか作れなかったら、もしかしたら吉牛(吉野家の牛丼)1杯くらいしか食えないかもしれない。もっと少ないかもな。

なので、喜んでくれる人が多いものをちゃんと作ろうとすることによって、初めて自分に対価がくるんだよということ。自分自分という利己的なものよりも、利他とか誰かの幸せが自分の幸せであれということを考えた時に、素敵なサービスや新しい価値になれると僕は思っています。

最後のほう、ちょっと駆け足になっちゃいましたが、今日はもちろんこのあとにご質問も受け付けます。今日思いつかなかった質問があるけど、今井のTwitterで何か質問してみたいなと思ってくださったり、『さよなら、ヒット曲』という書籍も出させていただいていて、こちらの中にももの作りのヒントになるようなことをいろいろ書かせていただいていますので、ぜひご参照ください。

さっき言った「Your Happiness is My Happiness.」が、新しい価値を作る1つのキーワードなんじゃないかということをみなさんにお伝えして、今日の講演を終わりたいと思います。ありがとうございました。

司会者:ありがとうございました。

(会場拍手)

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