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株式会社リモートワーククラウド 代表取締役 早川周作氏(全1記事)

企業のブレイクスルーに必要なのは「一握りの超優秀な人材」 1年半で人員を約16倍に増やした会社が、採用で学んだこと

海外のエンジニアリソースを使ったCTO向けサービスなどを手掛ける株式会社リモートワーククラウド。本記事では、幾多の挑戦、そして挫折を乗り越えてきた同社代表の早川周作氏に、資金に余裕のない中小企業への営業を通じて気づいたことや、メンバーが自然とバリューに則った行動を取り始める仕組みなどを伺いました。 ※このログはアマテラスのCEOインタビューの記事を転載したものに、ログミー編集部でタイトルなどを追加して作成しています。

就職したコンサル会社での挫折

アマテラス:初めに、早川さんの生い立ちや学生時代のお話についてお聞かせください。

早川周作氏(以下、早川):出身は広島です。父はゼネコンの役員、母は主婦兼パートというごく普通の家庭に育ちました。

高校は地元の進学校に入学して、同じ高校で2度退学になるという珍しい経験をしています。その後17歳で大検を取得したものの、18歳で「大学には行かず、東京に行って1年間のうちにホームレスで200万円貯める」と決めました。1人で働いて生活することで、生きる力を身に付けたいという思いもありました。

計画どおり200万円貯めた後はアメリカに渡り、コミュニティーカレッジに入学しました。ESLを修了した後、いったん帰国してAT&Tのコールセンターでアルバイトをしながら学費を貯めていたのですが、結局アメリカに戻ることなく、コンサルティング会社に正社員として就職することになりました。

その会社は当時「牛角」や「ガリバー」「銀のさら」などのフランチャイズビジネスの立ち上げを行っており、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで事業を拡大していましたが、私はここで大きな挫折を味わいました。

一緒に働く社員はみんな国立大学卒など高学歴なメンバーでしたが、彼らは勉強だけでなく仕事もものすごく熱心で、しかも優秀なのです。自分では到底敵わないと感じていました。

34人のスタッフのうち33人が、方針が合わずに辞める

早川:22歳で地元の先輩が経営するコンプリート・サークルというカフェなどの飲食店を展開する会社に転職し、渋谷にあるSUZU CAFEの1号店を任されることになりました。当時、赤字を出して潰れる寸前だったものを、私が「絶対黒字転換させるからやらせてくれ」とお願いしたのです。

結果3か月で黒字化、1年間で売り上げを2倍とし、毎月200万円の赤字から毎月200万円の黒字店に変革することができました。

その一方で、34人いたスタッフのうち33人が私の方針に合わず辞めるというカオスも経験しました。当時は私も尖っていましたし、前職のコンサルティング会社で相当鍛えられて来たという自負もあったため、スタッフにも私と同じレベル感で働くことを求めたことが原因だったと思います。実績は上げられたものの、反省が残る苦い経験にもなりました。

そこで1つ得たのは、「良い人間がいるコミュニティには、良い人間が芋づる式に集まる」という学びです。スタッフがどんどん辞める中、当時所属していた早稲田大学のサークルや、サラリーマン時代から仲良くしてもらっていたスタートアップの経営者たちから多くの助けを得ることができました。彼らの助けがあったからこそ上げられた実績だったと思います。

ベトナムで起ち上げた事業会社を日本企業に売却

早川:SUZU CAFEが常態的に黒字を出せるようになった頃から、何か次のチャレンジをしたいと考えるようになりました。そして、付き合いのあった上場企業の社長たちの協力を仰ぎながら24歳で初めて起業し、表参道にハンバーガー店を出店することになったのですが、残念ながらこの起業はうまく行かず3年ほどで会社を潰すことになってしまいます。

潰した直後は周りのスタートアップ仲間がどんどん活躍の場を広げているのを見るのが辛く、自分だけ取り残されたような複雑な気持ちを抱いたのを覚えています。

その後、カフェ・カンパニーのシンガポール店起ち上げに参画し、そこからさらにベトナムに渡ることになります。ベトナムでは事業会社を起ち上げ、ベトナム人向けのお好み焼き屋さんなどのレストラン経営、上海ジャピオン(邦人向けフリーペーパー)のベトナム版の出版などいろいろな事業に携わりました。「GMOランシステム」というGMOの子会社と一緒に日本向けの開発にも取り組みました。

ベトナムで事業を始めて8年ほど経過した頃、ベトナム進出を検討する日本企業から買収の話が舞い込み、次のステップに進むちょうど良い機会だと売却を決意します。

そして、この資金を元手にベトナムと日本で新たなビジネスを模索し、その後起業したのがエンジニアプラスです。ベトナムのダナンにオフィスを構えようと準備していたのですが、コロナをきっかけに、日本にとどまる決断をしました。

中小企業のDX案件のみを直受注

早川:初めは私が日本で受注したシステム開発案件をベトナムオフショアで開発し、日本で納入するという、いわゆるシステム開発の代理店としてスタートしました。

当初は開発に関わる全工程をベトナムで行っていたのですが、ビジネスイシューの共有等においてコミュニケーション上の問題が生じることがあり、日本でもSIerや外資系コンサル出身者、UI/UXデザイナーなどを雇用してSI機能を持つことにしました。

一般的にオフショア案件は二次請け、三次請けをやっている会社が大多数を占めますが、当社の特徴はSES(システムエンジニアリングサービス=ソフトウェアやシステムの開発・保守・運用における委託契約の1つ)などを一切行わず、中小企業のDX案件のみを直受注でやっていることです。

システム開発部分だけではなく、事業計画書の作成やPoC、PMFなどからじっくり関われるのでやり甲斐を感じます。

アマテラス:中小企業も幅広いですが、どのような業種が多いですか?早川:業種の偏りは特にありません。美容関係も飲食系もありますし、SaaS系のプロダクト運営をしている会社もあります。私たちもどんな相談にもお応えできるよう体制を整え、コンサル出身メンバーなどがゼロベースでそれぞれのお客さまに合わせた対応をしています。

現在のお客さまは私個人の関係先からの受注が半分、残りの半分は以前のお客さまからの紹介という感じで、マーケティングコストもほとんどかけずにやっています。

資金に余裕のない中小企業への営業を通じて気づいたこと

アマテラス:2020年に創業されて約3年、経営者としてさまざまな葛藤やご苦労があったかと思いますが、早川さんが特に思い出されるのはどんなことですか?

早川:創業時の一番の苦労はやはり資金繰りだったと思います。

元々の社名「エンジニアプラス」は、「国内企業に海外エンジニアを実装しよう」という意味で付けたものです。オフショアのリモートSES事業をやっていこうと考え、テレアポ業者なども使って積極的に展開を試みましたが、初めはなかなかうまく行きませんでした。

ベトナムに安価で潤沢なリソースがあるという安心感もあり、私が開発案件を取ってベトナムに投げれば商売になるという安易な考えが伝わっていたのでしょう。資金に余裕のない中小企業にその程度の考えで営業に行っても全く相手にされないのは当然のことだったと思います。

結局、お客さまは「欲しくて欲しくて仕方ないもの」以外にお金は払いたくないんです。「私にはできない」、そして「他の人にもできない」。そんな深い悩みを解決できる存在に私たちがならない限り、この状況は改善しないのだと気がつきました。要するに、海外エンジニアはお客さまにとってそこまで「欲しくて仕方ないもの」ではなかったということです。

そこからは、価格やユーザビリティで勝負してみたり、エンジニアサブスクリプションのリリースをしてみたりと片っ端から試してみましたが、今考えると迷走期間でしかありませんでした。サービスが中途半端だと、やはり良いお客さまは来てくれない。痛い思いばかりの創業初期を過ごしました。

企業のブレイクスルーに必要なのは「一握りの超優秀な人材」

アマテラス:人材面のお話も伺います。会社の拡大に伴う採用のミスマッチなど、採用については多くの経営者が最も悩む部分です。早川さんも恐らく失敗したご経験があるのではないでしょうか?

早川:創業直後は本当に人材集めに苦労しました。苦労しすぎてHR SaaSを作ろうかと思ったくらいです。最初の頃は、資金もない小さい企業ですからindeedなどを利用して安い時給で募集したり、インターンを取ってみたり、街中で「うちで仕事しませんか?」なんて声を掛けていたこともあります。

これでは人材のレベルにバラつきが出てしまいますし、うまく行かなくて当然ですよね。そんな時、たまたま入ってくれた外資系ソフトウエア企業出身の恐ろしく優秀なメンバーが瞬く間に諸問題を解決していくさまを目の当たりにし、会社のブレイクスルーに必要なのは多くの労働力ではなく一握りの超優秀な人材なのだと気がつきました。

そこからは採用条件を根本から見直し、優秀な人材に絞ってアプローチをする方針に転換しました。そこからは順調に成長が始まり、1年半前に3人ほどだったメンバーが、今は50人ほどに増えました。

アマテラス:現在のメンバーは正社員での採用ですか?

早川:既存のメンバーは正社員ではなく業務委託契約で、本業のある方がほとんどです。「転職するほどではないけれど、おもしろそうなプロジェクトをやっているから」と、大手コンサルやDXをやっているメンバーなど優秀な人材が集まってくれています。

「コスパも良いし、お客さまにも喜んでいただけるし」と考えてここまで来ましたが、組織体として「葉っぱは生い茂っているけれど、根っこが弱い」状態ではあるので、そろそろ次のステップに向けて正社員を採用したいと考えています。

メンバーにとっての仕事のおもしろみ

アマテラス:早川さんからご覧になって、今集まってくれているメンバーはリモートワーククラウド社のどのあたりにおもしろみを感じていると思われますか?

早川:まずは、プロジェクト自体を楽しんでいるメンバーが多いと感じます。うちは中小企業との契約が多いため、請け負うのもクライアントの社運をかけたプロジェクトが中心になります。会社全体を俯瞰してプロダクトを開発できるのは、大企業では経験できないおもしろさだと言われます。

例えば、現在やっているプロジェクトの中に「AIジム」というのがあるのですが、設計チームのメンバーは実際にジムに足を運んでUXを体感し、それをすぐにプロダクトに反映させています。お客さまとの距離が非常に近い分、「会社の経営にインパクトのある仕事をしている」という実感があり、やりがいとなっているようです。

また、優秀なメンバーの中で働けるというのもおもしろさを感じる大きな要因になっているのではないでしょうか。「どんな相手と一緒に働くか」というのは誰にとっても大事な話で、お互いに切磋琢磨できる環境がそれぞれの成長につながっていると感じます。

実際の働きぶりを見ても「ぶら下がっている」メンバーより「積極的に稼ぎに来る」メンバーが圧倒的で、それがプロジェクト活性化の原動力にもなっていると思います。

メンバーが自然とバリューに則った行動を取り始める仕組み

アマテラス:組織の急激な拡大に伴い、マネジメント側もいろいろな苦労があると思います。早川さんはどんな時にマネジメントの壁を感じましたか? また、その際にどのように解決されたのかもお聞かせください。

早川:うちはいわゆる「文鎮型組織」なんですけれど、人数が増えて来るにつれ少しずつ組織運営がうまく行かなくなって来ました。私は採用とお客さまとのクライアントワークに注力し、あとはそれぞれに任せている状態でしたが、少人数だからこそ機能していたということなのでしょう。

そこで始めたのが各メンバーとの1on1のミーティングです。1人につき30分程度、それぞれが持つ課題やそれをクリティカルに解決するためのプロセスについて話し合ったところ、イシュー度がぐっと高まった印象があります。まさに『イシューからはじめよ』ですね。

早川:それともう1つ、四半期ごとに「投票ボーナス」という制度を取り入れました。私が掲げる10個のバリューがあり、そのバリューに該当すると思うメンバーを全員で投票し合うのです。

投票がそのまま投げ銭となり、得票数に応じてボーナスの額が決まります。興味深いことに、全員リモートで働いているにも関わらず、投票の結果は私から見ても正しい結果だと感じます。


【バリュー】Social (利他性)、Self Starter (主体性)、Sense (創造性)、Speed (スピード)、Stoic (集中力)、Global (俯瞰性)、Guarantee (達成思考)、GID (詳細性)、Gratefulness (感謝する心)、Growth (成長)
私が新しいメンバーを採用した時に言うことは「あなたのミッションはこれ」「投票ボーナスで得票できるようにして欲しい」という2つだけです。私にとっては一定額の投資でみんなが自然とバリューに則った行動を取り始めるという大きなメリットがあります。

また、それぞれのメンバーにとってもこの投票を通じてメンバー間の認知も進みますし、好ましい行動をする、あるいは内省する良い機会が得られる優れたシステムだと自負しています。

現在は私自身のニーズを作り込んだタレントマネジメントシステム、要は「私が欲しくて欲しくて仕方ないシステム」なのでこのような機能構成になっていますが、これをさらにDAO(Decentralized Autonomous Organization=分散型自律組織)に進化させ、新たなSaaSプロダクトとして展開したいと考えています。

「上場」や「売却」を前提とした経営をするわけ

アマテラス:今後の展望についてお聞かせください。

早川:まず、会社名が「エンジニアプラス」から「リモートワーククラウド」に変わりました。それに伴い、ミッションも「リモートワークの可能性を最大限に引き出し、未来の働き方をしよう」に転換します。

また、先ほど少し触れましたが、現在タレントマネジメントシステムのSaaSプロダクトの開発に取り組んでおり、これを広く展開して行きたいと考えています。このプロダクトは私たちが散々使って来たものですから、実証実験が完了した状態で世の中に出せるという強みがあります。

経営者としては、上場または売却前提の経営をしようと思っています。上場や売却をしたいということではなく、その2つを前提とすることで「財務諸表からも評価される経営をしなければ」とか「買い手が付くくらい魅力あるプロダクトを作らなければ」という意識につながりますので。

アマテラス:組織は今後、どのようにして行きたいとお考えですか?

早川:アメリカのギャラップ社が実施している「エンゲージメント・サーベイ」はご存じでしょうか。全世界の1300万人のビジネスパーソンに12の質問「Q12」を行い、その結果から従業員の幸福度や熱意をはかる調査です。


(参考)「Q12」の内容
Q1:職場で自分が何を期待されているのかを知っている
Q2:仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
Q3:職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
Q4:この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
Q5:上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれているようだ
Q6:職場の誰かが自分の成長を促してくれる
Q7:職場で自分の意見が尊重されているようだ
Q8:会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
Q9:職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
Q10:職場に親友がいる
Q11:この6ヶ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
Q12:この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった
2017年の調査では、日本企業には「熱意あふれる社員の割合」がたったの6パーセントしかいないという大変残念な結果が出ていたのですが、私の予想ではうちで働くメンバーにはワークエンゲージメントの高い人間が多いと思っています。

これをさらに「うちにはこの6パーセントに該当する人間しかいない」という状態まで持って行くつもりです。働き蟻の法則は信じないというのが私のスタンスです。

ニートのような生活や海外放浪も経て、たどり着いた結論

アマテラス:最後の質問です。今のタイミングでリモートワーククラウド社に参画する魅力や働き甲斐についてお聞かせください。

早川:今のところ正社員は私1人で、あとは全員業務委託というかたちでやっているため、会社としてゆるふわな状態です。つまり、このタイミングで参画してくれたら「この会社をどんな色にもして行ける」という魅力はあると思います。私としては「社風でも何でも、どんどん好きに作って行って欲しい。そのために土台は作っておきました」という感覚です。

働き甲斐については、少なくとも私自身はものすごく感じています。若い頃からニートのような生活を送ったり海外を放浪したりと本当にいろいろやって来ましたが、結局、仕事が一番おもしろいという結論に落ち着きました。

今の仕事がおもしろくて仕方なくて、オフィスに入り浸りたいがために住み心地の良いマンションを出て、会社近くの安アパートに引っ越したくらいです。もちろん私だけでなく、現在働いているメンバーたちもそれぞれがやりがいを感じながら日々仕事に向き合ってくれています。

正社員1人でも年商3億円規模なら何とかなりました。ただ5億円、10億円を視野に入れるとなると、私だけでは到底足りません。これからこの会社はもっともっとおもしろくなるはずです。

「リモートワークで世界をもっと自由に」というミッションに共感する方がいらっしゃれば、ぜひ門を叩いてみてください。私たちと一緒に、未来の働き方を作ってみませんか?

アマテラス:本日は貴重なお話をありがとうございました。

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