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組織に依存しない「スペシャリスト」としてのキャリアの歩み方(全3記事)

スタートアップの仲間に入れてはいけない“ヤバい人”の特徴 どこにいっても活躍できる人の「結果」と「プロセス」の考え方

JAC Digital主催のイベント「VUCA時代 組織に依存しない『スペシャリスト』というキャリア~副業でスキルに磨きをかける~」の模様をお届けします。JAC Digitalアドバイザーの澤円氏と、UXデザイナーの助松裕一氏、IMS事業部部長の三浦功嗣氏が登壇し、「スペシャリスト」というキャリアについて深掘りしました。

良い仲間作りでは「自分が人を助ける機会を多く持つ」こと

澤円氏(以下、澤):では最初にいただいた質問の中で、一応これに答えておこうかな。

「仲間が大事というお話の流れで良い仲間作りで重要なのは、頼ること以外ではやはり自分自身がスキルや志を高くすることが必須ということでしょうか? 私もできないことを伝えることは、プライドもあったり周囲の期待に応えたくてなかなかできないです」ということなんですが、このへん、どうでしょうか。

助松裕一氏(以下、助松):助松、答えていいですか?

:もちろん、もちろん(笑)。

助松:今ふと思いましたけど、その時必ず向こうも私の何かを期待している。要はお互いの強みを意識しながらシェアし合ってたんでしょうね、今、気づきました(笑)。

:シェアし合うことによってお互いが補完したり補強し合ったりできると思えるから、組む選択肢になるんですよね。

助松:そうです、たぶん無意識に行われてると思いますね。

:きっとナチュラルボーンバンドマンなんでしょうね。

助松:(笑)。

:でもそうすることで、情報発信をしたり自分の強みを活かしたい意志を持っていると、惹かれ合うんじゃないかなと思うんですよね。もちろんある程度のアウトプットは必要だし、そのスキルを磨いておくのも必要なんですけど。

あともう1つが、僕はよく「自分が人を助ける機会を多く持つ」という言い方をするんです。これを別の言い方にすると「『ありがとう』と言われる機会を多くしましょう」と。何かをして「ありがとう」と言われると、それは自動的に自分のタグになりやすくなると、僕は思っています。

そうすると結果的には「あの人はこういうことに関しては助けてくれる」という意識が芽生えるので、チャンスが回ってきやすくなる、そういうメカニズムがあるかなと思います。

助松:思い起こすとその連続だったと思います。

スタートアップの仲間に入れると“ヤバい人”の特徴

:いいですね、ちなみにさっきの「仲間」というキーワードで言うと、僕が時々言ってるのは、仲間に入れる時には「こいつはヤバい」という直感には正直になったほうがいいよ、ということです。

もし参加者の中に、スタートアップをこれから立ち上げたいと思ってる方がいらっしゃったら、やることは仲間を探す、仲間を作ることなんですけど、やっちゃいけないのは「ヤバいやつを入れる」ことなんです。

助松:(笑)。これ、ポジティブの「ヤバい」ですよね?

:いや、ポジティブ「ヤバい」だったらいいんですよ。ガチヤバいやつ、ネガティブヤバいやつ。

助松:ネガティブヤバいやつ(笑)。それはなんでですか?

:特にスタートアップの文脈で「結果が出ていないのに、がんばってることの評価をやたら求めるやつ」のことです。スタートアップとか初期段階は、プロセスより結果のほうが遥かに大事……もちろんプロセスも大事なんだけど、最初は一気にブーストしていかなきゃいけないので、日々ちょっとした結果が大事なんですよね。それを続けていかないと離陸することができないので。

そのためには「こんなにがんばったんだから評価してよ」というのは「飛び立ってから言え」なんです。飛び立ってもいないのにそれをやられると、落っこちちゃうので(笑)。

別に承認欲求が強いことは否定はしないんですが、ただ結果が出ていない、うまく回っていないにも関わらず「こんなにがんばっているんだから、俺は評価されるべきだ」と言うやつは、入れるとヤバいですね。何回かそういう事例を見たことがあるので、あれは本当にヤバいなと思います。

助松:私の場合、結果がすべてだと思ってるので(笑)。

:それが最初から脳みそに叩き込まれてる人間は、まずヤバい人間にはなりようがないです。常になにかしら貢献しようという思考なので、結果的にはどこにいってもだいたい活躍をされるんじゃないかなと思います。

年齢は、まず自分が気にしないこと

:事前にいただいている質問の中で、年齢に関することを書かれている方が何人かいます。3人いるか。「40代でプログラミングやデータサイエンスとか、そっちの道にいくのは厳しいんじゃないか」「30歳で研究者なんだけど、今からだとキャリアチェンジはちょっとできないかな」とか。30歳という(年齢)、この文脈では問題にはしてないんですけど。

あとアラフィフかな。「営業サポートをしていて、ライフワークになる副業を始めたいけれども何からやればいいかわからない」。助松さん、年齢を気にして何かを決めたことはあります?

助松:ないですね。

:「ええ歳こいて」と言われようと、という感じですか。

助松:「ええ歳こいて」の連続。48歳なので「ええ歳こいて」と最近言われてますけど(笑)。

:(笑)。僕も今年で54歳ですけど、ええ歳こいてこの長髪ですからね。もうほっといてくれよと(笑)。

助松:(笑)。あとから言われるだけで、自分であんまり気にしてないので、という感じですかね。

:まずは自分が気にしないことが一番大事です。自分が気にすればそれは問題点になるけれども、自分が気にしなければまったく問題点にならない。何歳からでもガンガン始めればいいし。「40代からだと視力や体力が低下していくから厳しいんじゃないか」と言う人がいますが、それは自分が決めることでいいと思うんです。

要はその体力に合わせた働きをすればいい。40代で20代のような無理のきかせ方をしようというのは無謀です。別のやり方をどんどん編み出していけばいいんじゃないかなと思います。だから年齢はそんなに気にしないでもいいし、やりたいことにものすごくバカ正直になるのが重要かなと思います。

転職や起業に「退路を断って臨まなきゃいけない」は嘘

:あっ、こんな質問がきたぞ(笑)。これは助松さんに答えてもらおう。「助松さんは転職を複数回されているとおっしゃっていましたが、家族からの反対や懸念はなかったのでしょうか。どう家族に説明をされていましたか?」(笑)。

助松:(笑)。実は40歳過ぎてから3回転職しているので、反対はされます。

:あっ、されるんだ!

助松:されます。自分で起業もしましたが、その時も反対されました。ある意味、家族からは「こいつは、1回言い始めたら止まらんやつ」という認知をされていて、それに対して家族がどう対応するかは、お互いやり合いみたいなのがあるので(笑)、それを押し切るのが私だっていうところです。

あとはちゃんと食べられる、食べていけるのが私のモットー。ちょっと答えになっていないかもしれませんが、そこさえクリアしてればいいかなと。

:ひぼしにはなっていないことはすごく重要なポイントです。うまくいかなかったら「これだったら食っていける」というキャリアの保険は何かありますよね?

助松:そうですね、基本的に自分しか持っていないスキル……要はすべてスキルありきだと思っています。「これだったらこれぐらいの市場価値があるだろう」というのは、自分の中では持っています。

:これは、すごく大事なポイントなんですけど、転職や起業を「不退転の覚悟でやらなきゃいけない」とか「退路を断って臨まなきゃいけない」と言う人いるんですけど、あれは嘘ですからね。もしそれをやったとして、その人は助けてくれないですから。そんなものを真に受ける必要はぜんぜんなくて、必ず保険はかけておいて、命綱があった上でチャレンジしたほうがいいと思います。

たぶん助松さんは本能的にそれをご存知なので、「これがうまくいかなかったら、これでは食っていける」というのがわかっているから、わりと無茶できるんじゃないかなと思うんです。なにもかも捨ててとなると、家族は反対するどころの騒ぎじゃなくて、たぶん座敷牢かなんかに入れられちゃうと思うので。まぁ座敷牢に入れられたら食っていけないですけどね。それでできる仕事があるかもしれない(笑)。

助松:(笑)。私の場合は、基本ベースアップがありきなので。

:それは大事ですね。だから副業や転職が不安だと思っても、何か条件の中でも「月にこれぐらいは稼げるな」という確証ができたら、いろいろなチャレンジができますね。

バイネームで受ける仕事は、「その瞬間」から始まる

:とある女性起業家の人としゃべっていた時に、いろいろなチャレンジをする中で「私はどういう状態でもたぶん月100万円は稼げる」と思った瞬間に、ありとあらゆる制約が自分の中で解けたと。月に100万円はけっこうデカいですけど、そうなるとものすごく大きなチャレンジができるんですよね。

時間給型のものではなく、コンテンツを生み出すとか、別のかたちで社会的な価値を生み出すというもので、さらにそれを継続できる、持続性があるとわかった瞬間に、チャレンジがまったく怖くなくなったという話を聞いて。「ああ、そうだよな」と、なんかわかりましたね。

助松:すごくわかります。

:じゃあ次は「副業から業務委託(個人)でやっていくには、どのくらいのスパンやステップがあるのでしょうか」ということです。助松さんは副業もやっていたことがあるんですか?

助松:そうですね、あります。

:副業から個人で受けるまでかなり時間がかかったり、面倒くさいステップを踏んだりしたんですか?

助松:いや、ぜんぜんないですね。

:きっと頼まれたらその日からみたいな感じですよね。

助松:そうです、そうです。

:僕も基本的にまったく同じですね。

助松:いきなりですね。

:その場合、頼まれ方としては「助松さん、これをやってよ」という感じですよね?

助松:そうですね、知り合いとかが多いですね(笑)。

:バイネームで仕事がくる場合には、ぶっちゃけその日からなので、スパンもステップもないです。もうその瞬間から始まります。僕は今9社でやらせてもらってるんですけど、ほとんどがあとからの契約でしたね。もちろん、法的には問題ないかたちでですよ(笑)。正式な契約の前に、もう入ることを前提にして。

価値を提供してバイト代みたいにいただくんだけれども、もう業務委託になることありきで「澤さん、これをやってよ」「いいですよ、じゃあ今日からやりましょうか」みたいな。「ちょっと契約書はあとになるけど、じゃあ手伝って」という感じです。瞬間的でしたね。

その代わり、「助松さん、やってよ」みたいに、ちゃんとタグとニーズが一致する状態をどれだけ認知させるかは、けっこう大事かなと思います。そのへん助松さんは、もうスペシャリストとしてのタグをしっかりつけていらっしゃるんでね。

助松:ええ(笑)。

「友だちなんだから安くしろ」は受け付けない

:じゃあ、次にいきましょう。「お二人は副業や独立をした際、どのように自分の提供するものの価値(価格)を決められましたか? 相場はなんとなく認識しており、それに合わせれば無難かなと思いつつ、自分の提供するものがそれに相当するのか悩んでおります」ということですが、これはどうですかね。

助松:まずは、言い方がすごく乱暴ですけど、ふっかけると言いますか(笑)。

:(笑)。

助松:自分がどこまで買ってもらえるのかを、まずやってみますね。

:大事(笑)。

助松:「今回多すぎたな、きついのイヤだな。もうちょっと楽したいな」と思えば、価格を下げるしかない。まずはそこでやってみて、バランスをとっていくのが私のやり方かなと思いました。

:大事ですね。ちなみに僕は、価格設定を自分でやるのが面倒くさいので人に任せちゃうんですけど。ただ、安請け合いは絶対にしない。ものごとの安請け合いはするんだけれども、安くは受けない。特に助松さんのオリジナルのコンテンツだったり、オリジナルのものやアセット(資産)があった場合には絶対に安売りしちゃダメですよね。

助松:うん、うん。

:ちなみに、僕の最も嫌いな言葉の1つが「お友だち価格」というやつ。お友だち価格で安くするとかタダにするというのが、僕は大っ嫌いで。「お友だち価格は倍」というのが僕の相場なんです。

助松:倍(笑)。

:だって本当の友だちだったら、相手に対してもっとたくさん払いたいと思ってもよくないですか? 「友だちなんだから安くしろ」とは「アンタ、友だちの関係を何だと思ってんの?」というのが、ぶっちゃけ正直な話。

こっちから言うんだったらアリなんですよ。「俺は友だちだし、そんなに満額はいらないよ。だから助けさせろ」というのはぜんぜんアリで、むしろそれは積極的にやるんですけど。「友だちだから安くしろ」はちょっとな、って。

日本は「安くすることが善である」というカルチャーが強すぎる

助松:そう言ってくるのは、こっちはもともと友だちと思っていないのかもしれない。

:そうそう、そういうやつに限ってね(笑)。

助松:「お前が勝手に友だちと思ってるだけだ」って(笑)。

:「いつ友だちになったんだよ」って(笑)。「助けてくれ」と言われるのはぜんぜんアリ。「本当に困っているんだ、助けてくれ。ただ今はこれしかないんだ」と言われた時にどう判断するか、ボールはこっちにあるので、それを受ける受けないは判断してもいいですけどね。

助松:すごくアグリーでおります。

:値づけは、自分でバリューがあると思ったら、むしろ安くしちゃいけない。それを安くすることが善であるというカルチャーが、日本はちょっと強すぎるので、それによっておかしくなってるところもありますからね。「これは適正である」と自分が信じる価格で相手に提示するのが、鉄則かなと思います。

自分へのタグ付けのコツは「徹底的に没頭する」こと

:次にいきますね。「マネジメントも経験したことのない普通の会社員(営業)です。自分の得意なもののタグがうまく作れません。タグをつけるコツを1つお教えいただけるとうれしいです」というのがきています。どうでしょう、コツかと言われると……僕はいつもこの「コツ」に反応しちゃう人間なんですけど。コツ、どうですか。

助松:ごめんなさい、私は答えがわからないです(笑)。コツは……ない。

:そう、コツはないんですよね。僕ね、いつもこの「コツ」についつい反応しちゃうんです。たぶん近道をしたいと思っていらっしゃるのかもしれないんですが、コツだけを知っていても何もできないんですよ。

タグは、意識的につけるのであれば「徹底的に没頭する」ことしかないかなと、僕は思っています。時間と熱量によってタグはつくんじゃないかなと思うんですけど、どうですか。

助松:まったくアグリーです。熱量でしかない。私は熱量しかないと思います(笑)。

:暑苦しくいくのは、けっこう大事ですよね。そうそう、残念ながら熱量がないと本当のタグはつかないんですよ。もしかしたらタグは溶接なのかもしれない。ヒモとかでつけるんじゃなくて溶接するようなもので、結局熱量があればあるほどガッツリつく。そう考えるのは大事かなと思います。

まずは、もし自分が得意なものを自認しているのであれば、徹底的にそれに没頭する、没入する時間・期間を作るのが大事です。そのことばかり言うとか、そのタグをつけてツイートしまくるとか。

僕に薄くついているタグで「蕎麦好き」というのがあります。蕎麦を食べるたびに写真を撮って「#蕎麦好き」というハッシュタグをつけてアップしているんです。おかげさまでけっこう接待に連れていってもらうお店は蕎麦屋が多いですね。いい蕎麦屋を紹介してもらったりします。

助松:なるほど(笑)。

仲間との仕事は「いかにおもしろくするか」をプロデュースする

:「スペシャリストを目指す思いが強くなるごとに、組織の中でミスマッチを感じ転職を繰り返していますが、自分自身としては仲間の中で仕事をしたいという思いがあります。副業でも本業でもですが、環境作りについての幸福度的なお話をうかがいたいです。環境に合わせる、目標をチームで達成することのバランスが難しく感じています」ということです。これはどんな感じで受け取られます?

助松:難しいですね。そう深く考えたことがない……(笑)。

:(笑)。本能的にやってるんですね。

助松:とにかく、もうノリですね。お祭り。

:しまいにノリになっちゃったよ(笑)。

助松:要は私、どれだけ仲間と神輿を背負えるかというテーマをずっと持っていて。神輿が重い時は、誰かが力を抜いてるじゃないですか。でも神輿が軽い時は、みんなが同じ意識で動いてる時。基本的に私は、いかに祭りをうまくやるかしか考えてない。あまり難しいことを考えてないですね。……めちゃくちゃなことを言ってるけど(笑)。

:いや、大事だと思います。本当におっしゃるとおりで、僕も祭りだと思ってやってたので。「おもしろがればいいじゃん」というだけの話なんです。「仲間として仕事をしたい」だったら、もうそれ一択になるんじゃないかと思います。

環境が許さんとか、その環境が何なのかわからないですけど。例えば売上を達成していないとガチャガチャ言われるんだったら、いかにしてその鼻を明かすか、『がんばれ!ベアーズ』みたいな感じでやればいいんじゃないかな。『がんばれ!ベアーズ』、古いな。

助松:(笑)。

:弱小のところでどうやってジャイアントキリングするかみたいな。そういうので祭りにすると、これは絶対におもしろいと思います。「いかにおもしろくするか」をプロデュースするのが、すごく重要なんじゃないかなと感じます。

助松:すごい。私の話もまとまった。

「感謝された瞬間」と「評価された瞬間」は違う

:(笑)。もうちょっといくな。「ご自身のスペシャリティに気づけたきっかけなどを教えていただければ幸いです」、どうでしょう。

助松:これはもう、お客さんが「すごい」と言った時ですね。「これはすごい、ありがとう」。

:やっぱりそうなんだよね。感謝された瞬間はすごく重要ですよね。これは「評価された瞬間」とは微妙にニュアンスが違うと思うんですけど、どうです?

助松:そうですね、「すごい」は評価ではないです。本当にお客さんの想像を超えたものじゃないとダメだと思ってるので、それで「すごい」と言ってくれるし感謝(してくれる)……確かにそうですね。とにかくそういう意識でやっています。

:「すごい」は要するに、感謝とか「ありがとう」という感じもそうなんですけど、興奮するって、感謝と非常に相性のいい考え方だと思うんです。ちょっとそれを言いたかったんですけど……そうだった、間違えた。半ぴったりまでだと思ったら、25分で終わらせなきゃいけなかったんだ(笑)。

事務局から「ええ加減にせえよ」というツッコミがありました。すみません、失礼しました。完全におしゃべりに夢中になっちゃって、カンペを見るのを忘れていました(笑)。木村さん、お返しします。

司会者:ありがとうございます。私たちもまだまだお聞きしたいところではあるんですが、お時間の都合もありますので本日はこれにて終了とさせていただきます。澤さん、助松さん、貴重なお話いただきありがとうございました。

:ありがとうございました、失礼します。

助松:ありがとうございました。

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