2024.12.19
74歳の事務員がたった1人で請求業務を担当…… 作業時間を105時間→10時間まで削減させた、介護DX成功の舞台裏
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ーーまず、深田さんの事業のテーマである旅やアウトドア、サウナとの出会いや、興味・関心が高まっていった経緯を教えてください。
深田渚央氏(以下、深田):1歳年下の仲のいい従弟と、この会社を創業しています。そこから友人たちが増えて、今は5人の仲間でやっています。
最初の旅は、自分が6歳で従兄弟が5歳の時です。一駅の隣の町に電車で行って、初めて子どもだけでごはんを買い、道中の公園で遊ぶというそれだけでしたが、僕には冒険のような気分でした。それ以来、「去年よりも遠くに行く」ことを目標に、年に1、2回、どこかに旅をしました。
そうやって100キロメートル、200キロメートル、300キロメートルと距離が伸びていき、僕は大阪(出身)ですが、小学校5年の時には名古屋に行きました。高校・大学では、自分たちだけで海外に行きました。
大学生の時には「ユニークな旅にしよう」と、自転車で大阪から東京に行くチャレンジをしました。それはいろんな旅の中でも、けっこう思い出深くて。5日間で600キロメートルの旅で、道中は野宿でした。
テントとコンロを持って、食材を買い込みながら、途中途中でいろんな人に出会って。バーベキューをしていると、お菓子をくれたり、ケーキをくれたり。東に進むにつれて、食材がどんどん贅沢になっていきました。
途中、箱根の峠を越えるところは、ママチャリだったので本当につらくて。「ロードバイクじゃなく、ママチャリにしよう」と、なんとなく決めたんですけど。
正直、「やめたい、帰りたい」という気持ちになったんですけど、峠を越えた時にパッと富士山が見えて。「しんどいなぁ、苦しいなぁ」という中から、光が射して富士山が見えた。しんどいけれども、そのギャップに感動しました。そうやって自分の足で移動して、人と触れ合う旅のおもしろさを感じました。
社会人になってからは三菱のデリカを寝られるように改造して、日本各地を回りました。焚き火が好きだったので、いろんなスポットで焚き火をしました。その地域でいらなくなった間伐材なんかも、もらえたりするんですよ。
そういう旅の時、日本にはちゃんとお風呂というインフラがあって、サウナにも行きました。アウトドアとサウナはセットでしたね。そういったことに魅力を感じて、仕事や人生の中で関わりたいなと思っていました。
ーー幼少期から学生時代にわたって旅やアウトドア、サウナの楽しさを知り、そこから社会に出られた。就職先はどういった基準で選ばれたのでしょうか。
深田:「独立したいなぁ」という考えがフンワリとありましたが、祖父が小さい会社の経営をしていて、社会の仕組みとか、組織がどう成り立って、みんながどういうポジションや役割を担っているかをまず俯瞰で見たほうがいいと言ってくれたんです。
それで、まず就職しようと考え、世界を見てみたいという思いがあったので、何かしら海外に携われる仕事がいいなというのがありました。
もう1つ、人は楽しいことや気持ちのいいことのために生きているんじゃないかと思ったので、「遊び」とかそういう領域に関わる仕事がしたいなと。そして、イオンの子会社で、子どものプレイランドなどを開発・運営している会社に就職しました。
2016年から2022年まで6年働いて、日本での仕事は4〜5年で、コロナ前までの1年弱くらいインドネシアに駐在していました。
ーー「世界」と「遊び」が重なるところで就職先を選び、海外駐在も経験されたと。
深田:施設の中にちょっとしたテーマパークや公園みたいなのを作る仕事で、それぞれの人の役割や一つひとつのプロジェクトの成り立ちなどが見られて、会社員生活は予想していたよりすごく楽しかったですね。
ただ、海外と日本の違いはめちゃくちゃ感じました。インドネシア駐在時は経営者層など日本では僕が関わらないような人たちと接することが多く、そういった人たちは予算や人をそんなに気にすることなく、裁量を持って、ダイナミックな動きをしていました。
昔の日本の人たちにも、「どんどん国を発展させて、国力を上げていこう」という気持ちがあったと思いますが、人口も経済も急成長中のインドネシアの人たちも気合いがぜんぜん違い、ものすごくパワーを感じました。
僕が会った人たちは「もっと国に貢献するために、どういうことをやっていこうか」ということを考える、積極的な人が多く、めちゃくちゃ刺激を受けましたね。
そういったところを見て、「独立したいなぁ」とフワッと思っていたものが、「自分でやったほうがおもしろそうだ」という気持ちに変わっていきました。
深田:一方で、しんどい部分もありました。海外駐在は本社からの数値管理がけっこうきつく、デモが起きて施設が閉まるなど、外部要因で稼働が止まり、売上が止まるということがあっても、そういうことはこれまでの経緯から推測ができたはずだから「対策を打たないと」とか。外部要因だけでなく、税制をきちんと理解していなくて、数字が合わないという自分のミスもありました。
言語や価値観、商習慣などの違いもあってスタッフの人たちとのコミュニケーションも難しく、言ったらあれですけど、「よそ者にはついていけません」みたいな感じで若干組織崩壊みたいなこともあって、精神的にかなりつらかったです。
そんな時は、うちの近くのサウナに行きました。ノイズのない場所で「何のためにここに来ているんだ」「現地の人にどうやったら寄り添えるのかな」と冷静に考えました。当時の自分にとってサウナは安心安全な空間でした。「将来、何らかのかたちでサウナに携われたらいいな」と思ったのはその時です。
ーー6年間の会社員生活を経て独立されたわけですが、どういうかたちで事業を起こされたのでしょうか。
深田:自分の好きなことは調べる意欲も高く、知見も深まります。実際に他の人より詳しく、自分がやりたいことだったので、動くホテルをコンセプトにしたキャンピングカーのリースを始めました。
もう1つはサウナです。コロナ前にロシアに行った時にテントサウナを知って、「こういうのは意外と日本にないな」と思ったので、このテントサウナの輸入販売を始めました。
ーー現在は独自に開発したIESAUNAを販売されていますが、最初は輸入販売だったんですね。
深田:まだ自分の力でお金を稼いだことがなく、どうやって価値を感じてもらい、お金にしていけるかを試したいと思って、まずは輸入販売をやりました。これがけっこう好調で、行けるかもしれないと感じてサウナの開発を始めました。
テントサウナも良かったんですけど、改良したい点がいくつかあって、同じことを思っている人が絶対にいると思ったんですよ。「じゃあ、作ってしまおう」ということで、開発を始めました。
ーーキャンピングカーのリリースは、何台で始められたのでしょうか。
深田:最初というか、今も1台でやっています。自己資金がなく、車の改造と合わせると500〜600万円の世界なので、修繕とかも鑑みて、いきなり借入するよりはまずは1台から小さく始めようと考えました。
車をリースしたり、テントサウナを販売したり、別の事業で営業の企画をやったり。細かい仕事でお金を稼ぎながら、サウナや車の開発費に充てていましたね。
ーー今回の特集テーマは「『好き』のエネルギーの活かし方」ですが、深田さんにとって好きなことを仕事にするためのポイントは何でしょうか。
深田:好きなことって、どんどん調べて、どんどん詳しくなると思うんですよ。他の人よりも、ある程度は自然に得意になっていくと思います。加えて、自分が好きでやり始めたことなので、自分ごととして行い、責任感も芽生えます。自分も自然とそうなっていきました。自分ごととして捉えられなくなったら、継続できないのではないかと思います。
継続するためには、「これを自分は人生の中でやる」と決めることだと思います。もはや好きも嫌いも凌駕して「決めている」ので、やるしかないと。期限も「いつまでに」というのをある程度は決めておくと続けられる。
好きなことは、かたちを変えたり変容したりします。でも、僕は途中で心が折れそうになったとしても、自分で決めたことだったら続けられます。また、自分の心の中だけでなく人を巻き込みます。人に言ったからには、やらないといけない。ある意味自分へのプレッシャーだと思うんですけど、まずは決めるということです。
そんなに好きなことがなかったとしても、「好きになりそう」みたいなものでもいいので、決めて走りだせば、やっているうちに何かが見つかると思います。
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