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「問い」のすゝめ、「問い」の効能とは?~新たな視点やアイデア創発させるための問いの役割~(全4記事)

出会いたい人に出会わせてくれる「緩いつながり」の価値 アイデアを社会実装させる「わらしべ長者力」の重要性

「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」は「渋谷から世界へ問いかける、可能性の交差点」をコンセプトに、多様な人々が交差・交流し、社会価値につながる種を生み出す会員制の共創施設です。今回はSHIBUYA QWS主催のカンファレンス「QWS FES 2022」より、安斎勇樹氏、石川善樹氏、出川久美子氏の3名が登壇したセッションの模様をお届けします。新たな視点やアイデアを創発させるための「問い」について議論が交わされました。本記事では、「問い」を起点に施設運営をするQWSの取り組みについて語られました。

問いを考える「出会う」「磨く」「放つ」という3つのフェーズ

出川久美子(以下、出川):ありがとうございます。次に進ませていただきたいと思います。SHIBUYA QWSは「問い」を起点として施設を運営しているんですが、その「問い」に対する取り組みについてお二人にご紹介させていただきつつ、適宜ツッコミを入れていただいたり、コメントをいただきたいと思います。次年度以降のQWSに活かしていければなと思っているので、みなさんにお付き合いいただければと思います。

まずQWSから生まれたプロジェクトの「問い」なんですけれども、3年前に開業して以来、QWSで199以上のプロジェクトが活動してきました。その施設の入り口、エントランスに「問い」があるんですけど、入ってこられる時に見たという方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。これは過去にプロジェクトで活動した方々の「問い」が展示されています。右側のプロジェクトボードが現在活動中のプロジェクトで、だいたい69プロジェクトが活動しているかたちです。問いがこんなかたちで展示がされているんですが、お2人はお気づきになりました?

安斎勇樹(以下、安斎):僕はもうとにかく急いでいて、遅れないようにと思って来たので、ゆっくり見れなかったですね。あとで見ます。

石川善樹(以下、石川):すごいですね。3年間で199個できたんですか?

出川:そうですね。3年間で199プロジェクトを支援しました。

QWSはどういう所かというと、「問い」を掲げて活動するにあたって、そのフェーズに合ったプログラムを提供しています。大きく「出会う」「磨く」「放つ」という3つのフェーズに分けています。

「出会う」は、自分の問いと出会うのもそうですし、その問いを一緒に解くための仲間と出会うためのプログラムです。「磨く」が、出来た問いを仲間と一緒に磨いてプロトタイプまで作っていくプログラムで、最後の「放つ」が、そのプロトタイプを世に放っていくプログラムです。(この3つのプログラムを)ご用意しています。

誰しも「問うていない人」はいない

出川:その中で1つ、大きなコアプログラムが「Cultivation Program」というものです。先ほど自己紹介の時にもおっしゃっていたように、安斎先生に監修していただいたプログラムなんですけれども。問いの感性を耕すプログラムとして、ちょうど11月17日にあるんですけれども、こちらに関してなにかコメントがあればぜひお願いします。

安斎:本当にオープン当初からやらせていただいているプログラムで、オフライン・オンラインで、いろいろ試行錯誤しながらやっています。やはり「問いが重要だ」というと「良い問いを立てないと」みたいなプレッシャーがあると思うんですけど、誰しも「問うていない人」っていなくて、1日に誰にも問いかけない日ってたぶんないと思うんです。

ちょっとした問いを他者と共有しながら育てていくと、なにか自分にとって思い入れのある問いにつながっていったり。あるいはそこで仲間が見つかったり、身近なんだけれどもすごいパワフルな「問い」の魅力に気づける入り口として、このプログラムとして作らせていただきました。

MIMIGURIの小田というメンバーがリードしているんですけれども、ぜひ興味あればご参加いただければと思います。CMみたいなっちゃいますけど大丈夫ですか(笑)?

出川:(笑)。安斎さんがおっしゃっていたように、コロナ禍ではオンラインで実施をしていまして、地方の方や海外からのご参加とかもありました。オンラインでないとできないこともあるんですが、ウィズコロナということで、今年度からオフラインで実施をしています。

参加者の方は、このワークショップ内でご自身の「問い」を書いていただいて、それを掲げて議論していきます。過去に参加いただいた方の問いを展示するスペースがあって、会員さんだけでなく、参加者も触れられるような施設になっています。

本来「問い」に良し悪しはない

出川:なかなかおもしろい問いもあるので、ぜひイベントが終わったあとにご覧いただけたらと思います。すごい石川さん、めちゃくちゃ見られていますね。ありがとうございます。

石川:いえいえ。けっこう社会規範からして「こんなことを堂々と書いちゃっていいんだろうか」みたいな問いもありますよね。

出川:こ自身が問いたいと思ったことを素直に書いていただくかたちでやっています。

石川:でもそう言うとちょっと見てみたくなりません? 「社会規範から外れた問いってなんだろう」って興味持ちますよね(笑)。

出川:そうですね。内覧でご案内する時にも、「あっ、こういう問いもあるんですね」みたいなことがあります。

課題解決にあたっての良い問い・悪い問いはあるとは思うんですけど、本来問いに良いとか悪いはなくて。問いは平等だと思ってやっているところがあるんですが、お考えをぜひお聞かせいただけますか。

安斎:重要ですよね。思うんですよね、学校とかで問いのプログラムとかをやると、お利口さんの問いしか出てこないんです。たぶん規範からはみ出してはいけないんだろうなと(思っている)。でも問いって、そもそもそういうもんじゃないじゃないですか。

「自己紹介してください」と言ったら「自己紹介とは?」って(笑)。その天の邪鬼性のような、フレームを1回疑うところが問いの根本的な機能だとした時に、「こういう問いも出していいんだな」と思える場があるのは重要だなと思いましたね。

出川:ありがとうございます。まさにCultivation Programはそういうプログラムになっているので、ご参加お待ちしています。ありがとうございます。

「コミュニケーター」の存在

出川:次に、QWSの特徴として「コミュニケーター」がいます。今私は白衣を着ているんですけど、コミュニケーターは、同じく白衣を着て受付にいたり、館内を回っているスタッフです。会員と密なコミュニケーションを取って、悩みを聞いたりする中で、「あぁ、じゃああの人を紹介しようかな」と言って会員同士をおつなぎしたり、あとは(アイデアの)壁打ちをしたりして、活動を支援する役割です。

このコミュニケーターがQWSの施設の中で特徴的なところで、見学されている方も気軽に声をかけたり、いろんなことを聞いてくださるような存在になっています。

QWSでは「Question Wall」という、会員さんの問いを掲げるボードを設置しています。それに対して他の会員さんが「こういうふうに思います」とか反応したり、回答したり、問いに問いで返したり、付箋で自由に付けていただいています。

このボードもなかなか貼りづらかったりするので、(掲げる問いそのものを)答えやすいような問いとか反応しやすい問いに設定するのに、コミュニケーターが適宜サポートをしています。

こちらのウォール、昔は1台しかなかったんですけど、今は2台常設で置いています。さらに今入り口前に「あなたの問いはなんですか」という3機目のボードを掲げています。よかったらそちらもご覧いただければと思います。

さらに「Question Break」という取り組みもしていまして、こちらは問いを囲んで他の会員さんと実際にお話しするものです。付箋だとどの方が書いたかがわからないんですけれども、(こちらは対面で顔がわかるようになっています)。問いについて、他の会員さんで「ちょっと興味ある」という方にご参加いただきます。14時〜15時とかにやっていることが多いです。

「Question Wall」から派生した問いをテーマにすることもあります。そのサポートもコミュニケーターが行っていて、書記やファシリテートとかもしています。こういった取り組みは、問いについて深く考えるきっかけになるのかなと思っているんですけど、どうですか。

安斎:やはりコミュニケーターの方が鍵ですね。

出川:重要な存在です。

コミュニティ運営者も問い、学んでいる

安斎:今まで予算をかけて施設を作る時、ハードは立派な建築があるんだけど、中のソフトが伴っていなくて。オブジェと化したおしゃれな椅子だけがあるだけで、そこに魂が宿らないことが多いと思うんですけど、そこをつなげたりかき回せたりし続けている人がいるのは重要なことだなと思っています。逆に育成とか、どうやってされているんですか?

出川:もともとファシリテートのスキルがある方もいらっしゃいますし、グラレコが書けたり、物が書けたり、いろんな特殊能力がある子たちがすごくたくさんいるんです。でもそれを自分だけのものにするよりは、みんなでできるようになるにはどうしたらいいかと考えてくださっていて。

部活を作っていて。名前は違うんですけど、わかりやすく言うとファシリテーション部ですね。会員さんのお話を聞いて、文字起こして記事にするような部活で、そういうのでみんな切磋琢磨しています。

安斎:コミュニケーターの部活?

出川:そうです。スキルアップのために、日頃会員さんに接するためにがんばってやっています。

安斎:それが肝かもしれないですね。スタッフが問うていなかったり学んでいなかったりするのに、会員さんには「問うてくださいね」「学んでくださいね」となると、だいたいうまくいかないじゃないですか。

コミュニティ的に、運営している人たちも問うているし学んでいる。重層的になっているのが成功の秘訣なんだろうなと、今勝手に思いました。

出川:そうですね。確かにそういう意味では、スタッフも問いに向き合っているので、会員さんとの関係性「この問いって実はこういう問いなんじゃないの」と思ったら率直に伝えらえるくらい、しっかりつながっているのかなと。

一見非効率に見える「緩いつながり」がつなぐ出会い

出川:石川さんはこういう取り組みをどう思われますか?

石川:「緩くつながる」って書いてあるじゃないですか。これがすごく大事だなと思っていて。やはりどこかでお金が必要になったり、あるいは人脈が必要になったりするんですが、その時に、自分の直接的な強いつながりの人たちだけだと、(出会いたい人に)出会えないことがけっこうあるんです。

緩く、弱いつながりの人ですよね。その人たち自身はお金とか権力とか人脈を持っていなかったとしても、緩くつながったその先には、誰かいるかもしれないですよね。

自分の問いを突き詰めて世の中に実装しようとした時に、興味がない人たちに対しても波及させていこうと思うと、「緩いつながり」は一見非効率に見えるんですけども、長い目で見るととても効率的なんです。(QWSは)そういう場になっているんだろうなと思いますね。

出川:ありがとうございます。コミュニケーターはプロのメンタリングとかができるわけではないので、問いに対する最短距離の回答をするというよりは、もう本当に緩くつながって。「この人だったらこの人を紹介したらいいかもしれない」というところでおつなぎしていて。

石川さんがおっしゃったように、直接的になにかが生まれるというよりは、今後のネットワーク作りが広がっていくようなところを狙っていけるといいのかなと今思いました。

石川:自分の問いに興味がある人たちの強いつながりだけでいくと、底が浅いものになる可能性があるんです。でも弱いつながりを通した「わらしべ長者力」って、僕はすごく大事だなと思っています。「人とつながる」ことにすごく価値を置いている人は、わらしべ長者力があるなと最近思うようになりましたね。

出川:コミュニケーターにもフィードバックさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

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