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畔柳茂樹氏 × 創業手帳 大久保氏によるトークセッション(全5記事)

需要が増えるのに供給が減る“唯一のビジネス”とは? 農業起業家が行った、産業の掛け合わせと創意工夫

創業時に会社が取り組むべき資金調達、営業、経理、総務、オフィス環境、ITツールなどの情報を1冊にわかりやすくまとめた、起業家向け経営ノウハウ誌「創業手帳」が主催した「創業手帳EXPO」に、『最強の農起業』の著者で農業起業家の畔柳茂樹氏が登壇。ビジネスとしてのブルーベリー観光農園の魅力や、コロナ禍でも業績を伸ばした4つの理由などを語りました。

自己実現とは何か?

畔柳茂樹氏(以下、畔柳)「自分だけのWhyを作ってください」と言って、「じゃあ僕はどうなの?」ということなんですけど。先ほど言いましたように、僕はサラリーマンでどん底を味わいました。人生のどん底です。「これ以上の下はないな」ぐらいのどん底でした。

なので、「世の中には、本当に苦しんでいるサラリーマンの方がたくさんいる」ということがよくわかりました。自分と同じような人がたくさんいると。

「行き場のない、悩めるサラリーマンの方」、あるいは「『どうせ自分なんて』と思っている方」は多い。「どうせ自分なんて、そんなのできないよ」と思っている方が多い。

僕はそういう方たちに向けて、「好きなことを仕事にして、自分らしく生きてください」「自己実現してください」ということを、常にメッセージとして発信しているつもりなんです。

今、僕は「自己実現」と言いました。みなさん、「自己実現とは何ぞや?」と聞かれたら何と答えますか? 

「自己実現とは、自分の内なる才能を最大限発揮して、自分らしさを体現すること」。これは僕ではなくて、心理学者ユングの言葉です。

本当にそう思います。僕も脱サラして、好きなことを仕事にしたら毎日ワクワクするわけですよ。そうすると、自分の気づかなかった能力みたいなものが溢れ出る感じなんです。

例えば今、僕はこうして人前でしゃべっています。オンラインはもちろんのこと、会場で200~300人を前にしてもけっこう楽しく話せるんですね。以前は緊張するし、「こういうことは絶対やりたくない」と言っていたんです。

あるいは、最近僕はこの本(『最強の農起業』)を書いたんです。国語は通知表で一番悪くて、絶対才能なんかないと思っていたんですけど、本を出したい、本で伝えたいと思ったんです。そうしたら、スラスラ書けたんですよね。言葉が内側から溢れてくる感じ。

この本は、ライターさんの力も借りずに全部自分で書きました。出版社の方に見ていただいても「文章上手ですね」と言われるようになりまして。こうした、「『見えないもの』がどんどん溢れている」という感じなんです。

人口減少の中でも日本の活力を維持する秘訣

畔柳:みなさんも、たぶんそんなに自信たっぷりの方はいらっしゃらないと思うんですよ。やっぱりいろんな不安があると思います。

例えば、「今までそんなに大したことをしていないしな」とか「学校の成績も大して良くないしな」とか「サラリーマンの時の評価も高くないしな」とか。ネガティブな思いがいっぱいあると思います。

ただ、それはたぶん「好きなことやっていないからでしょ?」と。僕はサラリーマンの時、嫌々やっていました(笑)。みなさんも嫌々やっていたからネガティブな思いがいっぱいあるんだと思います。

だから、好きなことをやっているとぜんぜん違うんです。臆せずにやっていただくのがいいと思います。

日本はこれから、劇的に人口が減っていきます。それぞれの人が今までと同じ能力しか出さないんだったら、日本は確実に没落していきます。衰退していきますよね。人口が減るんだから。

でも、僕はそうじゃないと思います。人口は減るけど、能力を今まで以上に発揮したら、日本の豊かさと活力はまだまだ維持できると思うんです。

例えば、人口が30パーセント減るとします。それでも残り70パーセントの人が1.5倍の能力を出したら、これによって日本は伸びていくわけですよ。1.5倍どころか、2倍、3倍、絶対いけると思うんです。

僕も気づいたら、いつの間にかけっこういい歳になっちゃいました(笑)。だから、「次の世代に残していかないといけないな」「何かでお役に立たないといけないな」と思うようになりました。

本当に微力ですが、この日本の豊かさや活力を次の世代につないでいきたい。そのために何かできないかなと思っていて。それで、同じようなことを何回も言わせていただいています。

これが前半にお伝えしたかったことです。

ビジネスとしてのブルーベリー観光農園の魅力

畔柳:続いてビジネスモデルの説明に入ります。資料も出しますね。

大久保幸世氏(以下、大久保):みなさん、先ほど畔柳さんがおっしゃった「起業のWhy」、ぜひチャットに投げ込んでください。みなさんの整理にもなるかもしれませんので、ぜひお願いします。

畔柳:Whyはなかなかすぐには出ないと思いますけど(笑)。書ける範囲でいいですよ。では引き続きいきますね。

大久保:はい、お願いします。

畔柳:「年60日の営業で年収2,000万円 脱サラからの最強の農起業」がテーマです。

これも一番伝えたいことを最初に言っちゃいます。「ブルーベリー観光農園が将来有望で絶対におすすめな3つの理由」が、僕の中にあるんです。

1つ目は「コロナ禍でも業績が伸びる数少ない業種」だということです。具体的な数字で言うと、コロナ前の2019年と比べても、今年の営業成績は106パーセント売上が伸びているんです。

入園者数は85パーセントで、15パーセント減りました。みなさんご存知だと思いますが、第7波は7月の中旬ぐらいから始まり、感染者数が激増しました。愛知県では1日1万5,000人ぐらいに跳ね上がったんです。

そういう時って、明らかに人が動かなくなるんですよ。7月中旬から8月上旬の2~3週間は、例年の半分ぐらいしか人が入らなくて、コロナ前を割ってしまいました。

ですが、客単価がものすごく上がっているんですね。商品力として単価の高いものを投入して値上げをするなど、いろいろ対策を講じて、お客さんの単価が3,000円から3,700円に上がりました。

コロナ禍でも業績を伸ばした4つの理由

畔柳:スライドの最後に書いてありますが、飲食、おみやげ部門が125パーセントに伸びています。うちは農業ですが、飲食業でもあり、観光業でもあります。コロナによってダイレクトに影響を受けた産業ですが、うちはへこまないんです。伸びています。そういう稀な業種だとお考えください。

「コロナ禍でも業績を伸ばした理由」の1つ目は、「ほぼ完全な屋外施設である」ということがたぶん一番大きいですね。ハウスじゃないんです。本当に、露地栽培なので風が吹き抜ける感じなんです。そして休憩施設も屋外テラスが中心なので、「安全だよな」ということがあります。

2つ目は「団体さんお断りの個人専用観光農園」だということです。これは、創業以来の僕のポリシーです。だから、コロナで団体さんが消えちゃいましたけど、うちは何の影響もなかった。もっと言うと、今までは団体で動かれていた方が、個人客で流れてきたんです。だから、言い方はちょっと失礼ですが、むしろ追い風ぐらいの感じだったんですよ。

3つ目は「インバウンドに頼らない」。幸か不幸か愛知県はインバウンドが少ないんです。もともとあまりなかった。ですから、インバウンドが完全に消えてもほとんど影響がなかったんです。

4つ目は「マイクロツーリズムの流れ、お金を使う場所がない」。要するに、「遠くに行けないから、近場でお金を使おう」という流れになっていましたよね。海外旅行に行けないので、お金を使う場所がないと。だから「近場に行ってもどんどんお金を使おう」という流れがあったんです。

僕も明らかにそれを感じましたね。財布の紐がめちゃくちゃゆるくて、1万円とか2万円とか、すぐ使ってくれる感じでした。以上が「コロナ禍でも業績を伸ばした理由」だと思います。

需要が増える産業と供給が減る産業の掛け合わせ

畔柳:おすすめな3つの理由の、「コロナ禍でも伸びる」の次は「『需要と供給』から将来は明るい」ということ。僕が思うに、「需要が増える産業」は当然、将来は明るいですよね。でも、競争相手は多いです。

一方、「供給が減る産業」はけっこうおいしいと思うんです。なぜかというと、どんどん競争相手が脱落していくわけです。そして、最後に生き残ればそれをある程度独占できる。そういったうまみがあるんですね。

簡単に言うと、「需要が増えて、供給が減る産業」にビジネスチャンスがあると思っています。需要が増えるのは「観光」です。これはみなさん、疑う余地はないですよね。供給が減るのは「農業」です。高齢化が進んでいて担い手不足です。だから確実に供給が不足するのが農業です。

この2つを合わせ持つ産業って、ぶっちゃけないんですよ。こじつけみたいに思われるかもしれないけど、本当にないと思います。唯一、観光農園がこれに該当するんですよね。これが2つ目の、おすすめな理由です。

ジム・ロジャーズも成長を予想する日本の「観光」と「農業」

畔柳:3つ目いきますね。いきなりスライドにジム・ロジャーズが出てきました。投資家ですね。3大投資家の1人で、毎年2~3冊本を書いています。

ジム・ロジャーズは日本で今後成長する3つの産業として「観光・農業・教育」を挙げています。だから、ブルーベリーの観光農園は3つの産業のうち、2つが含まれているんです。農業よりは、特に観光のほうがすごいとは思うんですけど。

日本は相対的に技術力が下がっていますよね。製造業の位置づけが下がってきています。最近、ある有名なアナリストの方が「日本で最後に残るのは観光だと思う。観光こそ日本が最後に誇れるものだと思う」と言っているのを聞きました。このように観光はとても有望だということです。

スライドの言葉は、ジム・ロジャーズの言葉をそのまま書きました。「農業で大儲けしたければ、まずは自分が農家になるべきだ。思い切って農場を買えばいい」。

以上、3つの理由でした。ちょっと番外編も用意したので聞いてください。

スライドに表示したのは『農で起業する!』という2005年に出版された本です。杉山(経昌)さんが書かれました。

この方は僕と経歴がすごく似ています。大企業の管理職、確か元部長職で、「もうこんなストレスまみれな会社は嫌だ」と脱サラして、農業やって、生産性の考え方を取り入れていくわけです。

僕はブルーベリー観光農園しかやっていないんですけど、この方はいろんな農業に挑戦されました。普通の農業や有機農業など、試行錯誤をしながらいろんなことをされたんです。

そして、最後に辿り着いたのは何だと思いますか? 「やっと理想のかたちに辿り着いたよ」と、この方は最後に締めくくります。それは「ぶどう狩り観光農園」なんですね。「週休4日だよ」っておっしゃっていて。僕の記憶では、確かこの人は最後に、もう廃業されるぶどう狩り観光農園を買い取ったんです。

僕は2005年にこれを読んだので、当時から「農業をやるんだったら答えの1つは観光農園だな」と考えていました。

ブルーベリーの種類の多さと食後の満足度

畔柳:ここでちょっとブレーキングタイムです(笑)。ブルーベリーって気品があって、こんなに美しいんですよ。

実に300~400種類ありまして、味もそれぞれ違うんですね。

いちご狩りはポピュラーだから行ったことのある方も多いと思いますが、それとの違いは、ブルーベリーの種類の豊富さです。うちでも50種類ぐらいありますので、食べ比べができるんです。

いちごはたぶん、1種類か2種類ぐらいだと思うんですよ。だからいちご狩りって、同じ味ばかり食べている感じですよね。ブルーベリーは、10~20種類と食べ比べができるのがいいところだと思います。

500円玉ぐらいの大きさのブルーベリーや、ピンク色のブルーベリーもあります。写真のように、1つの木で何千個という実がなるんですよね。もう「枝が折れるんじゃないの?」っていうぐらいなんです。

このグラフ、「本当ですか?」「作ったんじゃないの?」と言われちゃうんですけど、アンケートを取ると99パーセントが「美味しかった」とお答えいただくんですよ。すごく高評価をいただいています。

タレントが絶賛して行列ができたスイーツメニュー

畔柳:最近はコロナでそこまでいかないんですけど、うちは調子が良ければひと夏で1万人入るんです。農園は街中ではなくて、山の中にあります。空から見るとスライド写真のようにこんな感じで、山の麓にあるんですね。周りにマンションの1つもないですし、民家がポツン、ポツンとあるだけです。

それなのに、これだけ人が集まってくるわけですよ。お客さまの50パーセントは家族連れです。スライドの写真のように親子で来てくれる感じですね。

また、スライド右側のようにカップルがめちゃくちゃ多くて、6月は完全にデートスポットですね。「どれだけいるんじゃ」ってぐらいカップルがいます。

今は3つの幼稚園から240人ぐらいの園児が来ています。まるで、天使が舞い降りた感じですよ。

僕の中で一番「やっていて良かったな」と思う瞬間ですね。みんな、生まれて初めてのブルーベリー農園です。本当によろこんで来てくれるんですよ。本当にうれしい、楽しい瞬間です。

あとこれ、きれいどころがいっぱい写っていますけど。何が言いたいかというと、女性客が7~8割だということです。業態としては、美容院とかエステサロンに近いのかなという感じ。年齢は問いません。それこそ20歳前後~70代ぐらいまで幅広いです。だから、女性ウケしなかったらまったく成り立たないと思ってください。

単にブルーベリーを食べるだけじゃなくて、こういうスイーツを充実させまして。これが今年の全メニューです。ピザからケーキセットから、スコーン、パフェみたいになんでも揃っています。

スライドの左上にあるブルーベリーのピザがバカ売れしています。TOKIOの国分太一さんが来て、本当にのけぞるように「美味しい!」って絶賛してくれた直後から行列ができまして。

ブルーベリーをのせたフルーツピザなんですけど、これがすごい人気になっています。ブルーベリー狩りのテレビ中継も多いんですけど、スイーツを特集したテレビ中継も多いですね。また、写真にあるとおりセミナーもやっているので、後ほどご説明します。

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