2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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田所雅之氏(以下、田所):みなさん、こんばんは。金曜の夜に、非常に勉強熱心ですばらしいです。
清田が最後に「Make Something People Want」と言いました。僕が支援していた、とあるスタートアップが先日サービスをクローズするとアナウンスしました
そのスタートアップの創業者は「資金調達してからPMF(プロダクトマーケットフィット)する」みたいなことをブログに書いていました。資金調達は重要ですが、事業の解像度が高まってきて、資金用途が決まってから行う手段の1つです。なので、甘い事業の見立てで資金調達に臨んでもうまくいかないケースがあると思います。
先ほどみなさんにお願いしたアンケートで、ほとんどの方が「1」(起業前)と書いていました。みなさん1回目なんです。もしスタートアップがロールプレイングゲームの『ドラクエ』だとしたら、まだ1回も攻略していない状態ですね。起業には、やはりそれなりの順番や優先順位づけがあると思っています。
その優先順位や強弱の付け方を僕の持ち時間の30分弱で、清田の話の内容とSmartHRのピッチも含めて解説しようと思います。プラス、僕もベンチャーキャピタルを4年やっていましたので、VCがスタートアップをどう目利きするのかについてもお話しできると思っています。
つまり、僕は「ピッチをする側」だけじゃなくて、「ピッチを受ける側」も4年間やっていたんですね。そのあたりもお伝えしたいと思います。
一応30秒くらいで自己紹介をしますね。田所と申します。ユニコーンファームという会社の代表をやっていまして、これまで5社起業しております。スタートアップは2社ほどやってきました。先ほど言いましたが、シリコンバレーの某ベンチャーキャピタルでベンチャーパートナーを4年くらいやっていました。
田所:今日のテーマは「ピッチの極意」です。スタートアップ起業家は、基本的に手持ちの武器が少ないです。その状況で「ストーリーテラーになることが大事」だと僕は思っています。つまり「人・物・金」がない中で、ストーリーを伝えて、他の方々を巻き込むということ。ある意味、これがスタートアップ起業家の最大の強みだと思っています。
先ほどチャットで「大企業がもし、同じ事業をやったらどうなるんですか?」みたいな質問がありました。大企業が新規事業を始める場合、言い方は悪いんですけど、「オーナーシップがない」んですね。つまりどんなに成功しようが「部長になって給料が上がるかもしれない程度」だと。事業に関して、株を持っているケースは少ないです。
例えば、『FORTUNE』とか『Forbes』の日本の金持ち100位ランキングを見たらわかると思うんですけど、ランクインしているのは基本的に起業家なんですね。
今、1位がユニクロの柳井さんで、3位が孫さんだと思います。例えばZOZOの(元社長の)前澤さんも4,000億円くらい資産があると言われています。また先ほど名前が出ていたメルカリの山田進太郎さんも、まだ45歳ですが、多くの資産を持っています
そういう、本当に成功した方がいるんです。起業家とは「ハイリスク超ハイリターン」という話がありましたが、やはり創業者利益というものは非常に高いと思うんですね。「人生を賭けてそれをやる」ということは、ただ単に世界を変える、社会課題を解決するだけでなく、そういった金銭的リターンも大きいかなと思っています。
ただ大事なのはそういった起業のモチベーション(Why)だけではなく、いろんなスキル(How)があるんですね。今日はそのあたりをお伝えしたいと思います。
田所:まずは「ピッチでカバーする要素」です。先ほど清田もまとめていましたが、僕はこのあたりのオタクなので、いろいろなフェーズごとにまとめてみました。
これを一つひとつ解説すると長くなるので、一番「留まりがよくない」と言われているシリーズAからシードのクランチあたりのポイントをお伝えしたいと思います。
そもそもピッチとは何か。英語ではpitchで、プレゼンテーションのことですね。今日は資金調達のピッチに関してですが、実は一番やる機会が多いのは、採用候補者に対して自社の魅力を伝えるピッチなんですよ。
VCに対するピッチって、たぶん最大でもそのステージで50本ぐらいなんですね。一方、みなさんが今後スケールしていく中で、経営者の仕事の3~4割が採用になってくると思います。そういった意味で、仲間集めのピッチの頻度の方が多くなります。
投資家に対するピッチは、言うなれば「自分たちの成長戦略や将来のポテンシャルを売ること」だと思うんですね。一方で、採用候補者に対するピッチは「Visionピッチ」です。つまり競合は、プロダクトの競合ではなく採用競合になります。
「非常に優秀なエンジニアを、どうしても口説きたい」というピッチのほうが、タイミングとしては圧倒的に多いんです。ピッチというと、どうしても近視眼的に資金調達だと思われがちですが、経営をしているといろんなステークホルダーがいるんですね。
当然、お金を出資してもらう投資家もいますし、取引先もいます。取引先にはセールスピッチがあるし、メディアに対するピッチ、仲間集めのピッチもあると思います。いずれにしろ、起業家は優れたストーリーテラーになる必要があると思います。
田所:僕がどういう感じで「共感、目利きをするか」ということを最近まとめたんですね。スライドの表の縦軸が「仕組み」と「個の力」で、横軸が「定量的」と「定性的」です。
やはり初期はまだトラクション(実績)がないし、本当に再現性があって、拡大再生産できるかどうかは謎ですよね。だからどこで評価するかというと、まさに「起業家の経歴」や「潜在市場の見立て」なんです。
例えば、一昨日ベースフードが上場しました。2017年6月に、確かMakuakeで百万円程度集めたんですが、当時は誰も完全栄養食なんて信じていませんでした。
当時はいわゆるフードテックみたいなことがアメリカで流行り出していて、市場が非常に伸びていたと思います。潜在市場の見立てがあったんですね。そこが評価されて、彼らは初速としてMakuakeでお金を集めることができたんだと思います。
あと、今年ANYCOLORというVTuber向けのプラットフォームが上場しました。「にじさんじ」(バーチャルライバーグループ)がやっているところです。それこそ、2017年の創業時点では「Vtuber? それなんやねん?」みたいな話でしたよね。今でこそ、メジャー感が出てきましたけれども、当時はほとんど市場が存在しなかった。
それが今や時価総額が2,000億円を超えている。シード期にあって、今後伸びる市場へのインサイトがあったのかなと思っています。
このように、初期においては「個の力」「起業家が見ている世界観」「潜在市場の見立て」が大事です。
田所:ところが、プロダクトを出すと徐々に「プロダクトマーケットフィットの蓋然性」が大事になってきます。例えば、先ほどのスタートアップに関しては、残念ながら蓋然性がまったくなかったんですね。
僕はそのスタートアップにメンタリングさせていただいていましたが、アドバイスさせていただく中で、手触り感がそんなになかったのかなと思っています。そういった状況だと、やはり今のベンチャーキャピタルの市況においては、なかなかシードでも出しにくいんですね。
あとは、「No.2、No.3の優秀さ」ですね。やはりチームで見られます。1人目は優秀であっても、「どういう人を口説けているのか」というところですね。
まさに先ほどの「ピッチで2人目を口説けるストーリーテリング能力」なんですね。これは非常に大事だと思います。どうしても資金調達のためにプレゼンする機会が多いと思われがちですが、こう考えてみると「全体のステークホルダーに対して、どうメッセージを打ち出していくのか」が非常に大事だと思います。
シリーズAになってくると、いわゆる「成長戦略の解像度」や「体制」も気になってきます。さらにその先は、「組織」であったり、定量的なものが大事になります。
ちょっと前段の話もさせていただきましたが、僕はこれまで「IVS」「ICC」「B Dash」などで、これまで何百社のピッチ指導をしてきたんですね。また4年間アクセラレーターをやって、29社を輩出しました。
ピッチというのは、当然5分間など短い時間で伝えることが大事です。どれくらい仮説を構築して、手触り感のある感じで、実際に検証して回してきたか。磨き込んできたか。ある意味、ピッチとは氷山の一角なんだと思います。
田所:今日は資金調達の文脈でお話しする機会です。しかし、矛盾するようですが、実は資金調達なんかしないほうがいいんですね。それはあくまで手段であって、大事なことは当然他にあるんです。でも、「じゃあ資金調達はいつすんねん」って話ですよね。
少し哲学的な表現になりますが、資金調達のタイミングについて、僕はこう考えています。「スタートアップ側がお金を必要としていて、逆にお金側もスタートアップを必要としている時」だと。どういうことかというと、やはりきちんと資金用途が決まったタイミングだと思うんですよね。
初期においては、先ほど「運転資金」みたいな表現がありましたけれど、実際に人を集めてプロダクトを作る際にもバーンレートが発生するわけなんですね。そこに対して、ちゃんとやっていくと。一方で、その先は実際にチャンネルを構築したり、いわゆる競合も出てくるので、きちんと対処したりしていく。ある意味、こうした成長資金になってくると思います。
初期において、赤字を出した後に急成長することを「Jカーブを掘る」と表現します。そのJカーブを掘った後に、ぐっと成長するようなストーリーを描けるかどうか。これが非常に大事だと思います。
僕もピッチをしていましたし、ピッチをされていましたが、ピッチというものは非常に集中力を要するんですね。やはりスタートアップの本業とは、プロダクトを磨いていくことだと思います。これは当然顧客と対話をしながらですけれども。
ピッチを行うということは、言ってみれば毎回「好きな人に告白して、その回答を待つ」みたいなことなんですよ。そういった意味で、マインドシェアとしては、それでいっぱいになってしまうんですね。
先ほどのお話でもありましたが、投資家といっても人間なんですよね。対人間なので、当然関係を築いて、かつ説得・交渉すると。しかも、投資家のほうは『ドラクエ』を3回くらい攻略している感がある。言うなれば百戦錬磨の方も多いんですよね。
なので、そこに対してピッチをするということは非常に多くの労力を使う。だから、ある程度できあがってきたタイミングでピッチをするのが大事だと思います。
ただ、投資家も人間です。自分たちのプロダクトができあがったタイミングとか、まだまだアーリーな段階で、いわゆる「壁打ちしてください」みたいな感じで話すのも、一方で有効だったりします。
ということで、あらためてピッチの機会をスライドのようにフローチャートにまとめてみました。
最近ではTwitter「Spaces(スペース)」とか、いろいろイベントもありますよね。VC側が主宰するシード期に向けたイベントも増えていますので、参加してみて顔と名前を覚えてもらうなど、関係を構築することが大事だと思います。
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