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清田氏講演 投資家攻略事例(全2記事)

「資金調達」のプレゼンに必要な3つの要素 投資家の関心に寄せた「ピッチの構成」とは

スタートアップ向けクラウド経営管理ソフト「FUNDOOR」を提供する株式会社FUNDINNOが主催するセミナー「資金調達 ピッチの極意」に、『起業の科学』の著者・田所雅之氏と、ユニコーンファームCSOの清田享平氏が登壇。本記事では、清田氏による「投資家攻略事例」の講演の内容をお届けします。スタートアップによる資金調達のプロセスや、VC・投資家へのアプローチ法などが語られました。

資金調達の理解度や具体的イメージを1%でも上げる

清田享平氏(以下、清田):今日のテーマは「資金調達とピッチの極意」です。私からは投資家の攻略方法、田所からは「ピッチの攻略」ということで、お話ししていければと思っております。

適宜ご説明していきますので、気になる点ですとか、その他ご質問等があればチャットに書き込んでいただければと思っております。よろしくお願いいたします。では、さっそく始めたいと思います。

(『スタートアップファイナンスにおける具体的な投資家攻略手法の理解』と書かれたスライドを指して)今日のゴールです。せっかくみなさんの貴重なお時間をいただきましたので、何かしら持ち帰っていただきたいなと思っています。

参加されているみなさんは、資金調達のご経験がある方・ない方、あるいは初めての方ですとか、いろいろ前提条件が違うと思います。

今回の目的として、私のパートは「スタートアップファイナンス」と幅広いですが「具体的な投資家攻略手法の理解」ということで、具体的にどのように資金調達を考えているか。今回でいうと、エクイティファイナンス、主に投資家から調達する前提でお話しをします。

ではどのようにアプローチして、どのように進めていけばよいのか。その時に気をつけるポイントは? 投資家をどうやって選ぶのか、といったところを、具体的な事例を踏まえてお話ししていければと思います。

私のパートが終わった上で、みなさんの資金調達に関する理解度及び具体的なイメージを1パーセントでも上げることができれば、本日私のゴールかなと思っています。そこを意識して聞いていただければと思っております。

清田氏の幅広い実務経験

あらためまして、簡単に自己紹介をします。ユニコーンファームCSOの清田と申します。私自身の簡単な経歴ですが、最初はイギリスにサッカー留学して、そのまま正規留学でUnivesrity of Essexという国立大学のビジネススクールを出て、 在学中に投資銀行と戦略コンサルティングで実務経験を積みました。

大学卒業後は、新卒でコンサルファームに入社して、そのあとにメルカリという会社にHR担当として入りまして、当時私がジョインしたのが、人数でいうと300〜400人くらいの上場前のフェーズでした。HR業務を中心に、国内外の採用や組織のグローバル化などを経験させてもらいました。

メルカリでの経験を通じて、もっと会社経営をしたいなと思い、家族の事情もあり、実家の飲食店経営に加えて、「Blabo」という共創マーケティングのスタートアップにジョインしました。取締役COOとして全体の経営戦略、ファイナンス、HR、オペレーション設計まで幅広くマネジメントしていました。

最終的にその会社を、CCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)に、M&A(Exit)する経験をしました。その後は、ケアテックスタートアップのウェルモというスタートアップにジョインしました。

ここでも資金調達、採用、組織戦略、グローバル化と幅広く経験させてもらいました。手前味噌ながら、ケアテック領域で、当時時価総額No.1というところまでバリューアップ含めた貢献ができたと思っています。

現在はユニコーンファームに参画し、弊社代表の田所とともに、スタートアップの経営アドバイザーに加えて、大企業の新規事業を支援しています。

(スライドを指して)ここに記載しているのが、海外のインターン経験含めて、私が実務を経験してきた企業です。戦略コンサルティング、投資銀行、スタートアップ等、本当に幅広く、普段ではできないような経験をさせていただきました。そのような実体験も踏まえて、皆様にそういったリアルなお話ができたらと思っています。

資金調達を目的とした「ピッチ」の経験

みなさまもファウンダーや経営メンバーに近い方が多いかと思います。私もBlabo時代に「500 KOBE ACCELERATOR」というアクセラレータープログラムに参加した経験がありまして、振り返ると、まさに今回のテーマである「資金調達」を目的としてピッチをしました。

当時、国内外の投資家に対して自社のプレゼンテーションをして、資金を集めることを自分自身も実体験としてやっていますので、一連のプロセスに加えて、資金調達期間中の大変さや辛さなどを具体的なストーリーも含めて理解しています。

(スライドを指して)「T-VENTURE PROGRAM」(CCCグループのベンチャー企業向けの協業・支援プログラム)に参加して、優秀賞を受賞して採択されました。結果、BlaboはM&AとういうかたちでのExitにはなりましたが、当時は「NEXTユニコーン(推計企業価値)ランキング」にも選ばれていました。

みなさまも知っているような会社ですと、プリファードネットワークス、お金のデザイン、ウェルスナビなど今では有名な企業もリストアップされていました。そういった会社に並んで、「Blabo」という会社がランキングに入ったのは、自分にとっては自信になりましたし、良い経験ができたと思います。

その後は、ウェルモというケアテック・スタートアップにジョインし、CSOという立場で資金調達を牽引してきました。

シリーズA、シリーズBとラウンドを重ねまして、当時で約15.7億円、現在はシリーズCも実施したみたいなので今は累計約41.2億円くらいです。

(スライドを指して)例えば左側のPartner Successさまでいうと、シードでは有名なCoral CapitalさまとALL STAR SAAS FUNDからそれぞれ5,000万円、合わせて1億円調達しています。資金調達開始にあたり、投資家アプローチからピッチ資料や数値計画のサポートまで経営陣と一緒に実行してきました。

スタートアップの成長に欠かせない資金調達

簡単に私のプロフィールをご理解いただいたところで、今日のテーマであるファイナンスの話に入っていきたいと思います。

(スライドを指して)まずは全体像ということで地図のイメージを持ってもらえるといいのですが、上からファイナンス、カスタマーサクセス、セールス、HR、ストラテジー、MVBと、その他いろいろな項目があります。ただ、ここにも記載しているように、ファイナンスはすごく大事な要素になります。

スタートアップを成長させていく上で欠かせない「血液」がないとそもそも生きていけないし、会社運営ができません。もちろん、お金以外にも大事なことはありますが、昨今のコロナ禍による資金調達難で、より資金繰りの重要性は高まっていると思います。

直近もいろいろなVCの方々とお話をする中で、VC側の調達環境も厳しいという話は聞いています。ですので、今回参加されている方はあらためてご自身の会社のファイナンス、より具体的にいうと、みなさんの現預金残高が、今日時点でいくら会社にあるのか、今後、会社としてどれくらいの期間生存できるのかをしっかりご認識されるのがすごく大事です。

「資金調達をする・しない」の決断

まずはマクロ環境からお話しできればと思います。

こちらはダイヤモンド・シグナルさんがデータを出していますが、コロナなどさまざまな経済要因もありますが、結果で見るとスタートアップの年間資金調達額は年々増えています。コロナで一見ピンチかと思いきや、実はけっこうチャンスだったりします。

今でも「調達環境は厳しい」と言われていますが、調達できている会社はできています。簡単とはいえませんが、現状を知った上で、「資金調達に向けて具体的にどういう準備とどういう心構えで、どう進めていけばより調達の可能性が高まるのか」を、このあとお話しできればと思っています。

(スライドを指して)ここは馬田(隆明)さんが出されている資料を引用しています。みなさんはこれから資金調達モードに入る、あるいは入る可能性があるという前提でお話ししますが、あらためて前職時代を振り返っても資金調達はすごく大変でした。

どう大変なのかは、ここに記載している通りですが、会社経営しつつ、雇用として従業員をしっかり守らないといけないので頭の中で考えることが多すぎて、いろいろな意味で生産性が落ちていきます。みなさんが日々やっている業務に加えて資金調達の準備をするので、やはり皆さんご自身の会社が資金調達をするか、しないかは大きな決断だと思います。

「資金調達は残酷」だということです。大前提として、「すべての会社からオファーをもらえることはない」ので、私が当時在籍していたメルカリもそうですが、シードから資金調達をしてきた中で、実際に見たり聞いたりしていると、その中で自社と相性が合うVCさんを選んでいくことが大切です。

資金調達のプロセス

具体的に、どのように資金調達プロセスが進んでいくのか。

(スライドを指して)英語ではありますが、わかりやすく説明されています。これは、Y Combinatorが出している資料を一部抜粋しています。

いきなり投資家に会ってピッチをすることもあれば、壁打ち的な意味でカジュアルに会って、情報交換しながら関係性を構築することもあります。どんな会社で、どんな方で、どんな事業をしているのかを話し、VCさんからはどういう会社に出資していて、最近注目している業界やトレンドなどを聞いたり。

そこから「実はいつから本格的に資金調達を考えていまして」と、具体的な投資の交渉をしていきます。まず投資家に興味を持ってもらうために、資金調達をしたいという想いを伝えることです。その後に、ピッチ面談で会社や事業、資金調達の必要性に加えて、調達希望額と時期、そして資金使途などを説明して、投資家に理解、納得してもらいます。

その上で、投資に値するかどうか、投資してもVC的なリターンの条件に見合うのか、仮に出資をした場合、調達資金を活用してしっかりと事業がグロースするのかなど、幅広い観点でリスク含めて精査して、「DD(デューデリジェンス)」という健康診断をします。そして最終的にOKであれば、「出資」というプロセスになります。

DDプロセスの中で、実際にVC自らが顧客にヒアリングすることもあれば、投資家の方が経営陣だけではなく社員の方にヒアリングするケースもあったりします。

こうして、VCは投資判断するために幅広い情報を網羅的に集めます。リスクマネーでもありますから、簡単に意思決定には至らないわけです。もちろん例外的にエンジェル投資で、社長の人間性でその場で出資が決まるケースもありますが、あくまでシードファイナンスとしてであって、資金調達フェーズが進んでくると話は変わります。

VC・投資家へのアプローチ法

次に「具体的にどうやって投資家にアプローチをするのか」という話です。みなさんもある程度イメージはあるかと思いますが、事例をご説明したいと思います。

VCは肩書や役職も異なる為、まずは自分がアプローチしたい、あるいはできそうな人は誰なのかを知ることです。一般的に「アソシエイト」といわれている若手「インベストメントマネージャー」、そして「パートナー」とあります。VCによっては、異なる名称だったりもします。

メリット・デメリットは記載してますが、アソシエイトのメリットでいうと、彼らもソーシング(投資先のリサーチやアプローチ)を積極的にしているので、もちろん気軽に会ってもらいやすいですよね。パートナーレベルになると、すごくお忙しい方々なのでなかなか会ってくれなかったり、若手にまずは会ってもらってピッチの感触次第で会うなど会うまでハードルがあります。

一方、パートナーのメリットは、、決裁権を持っている為、ピッチ次第ではその場で出資の意思決定ができる、という点があります。

具体的なアプローチ方法に関しては、(スライドに)網羅的に書きましたが、SNS(TwitterやFacebook)からのDM、問い合わせフォーム、あとはピッチイベントの参加などでアプローチはできます。

その中でも、個人的にはTwitterはメインチャネルな印象ですし、直接面識がない場合でもFacebookで丁寧にメッセージを送って相手から返事が返ってくるケースもあります。

具体的な文章とかは、まず「自分は誰なのか」「どんな会社(事業)をやっているのか」「なぜ今回調達をしたいのか」などを端的に説明して、返事を返してもいいかなと思ってもらうことが大事です。

すごく細かいTipsですが、「お会いさせていただけないでしょうか?」と言うよりは、「10分、15分でもよいので、1度お話しさせていただきたいです」と言ったほうが、60分は時間がとれなくても、10分や15分だったら話を聞いてくれる可能性があります。その場合はピッチもショートピッチを準備しないといけませんが、いい機会だと思います。

アプローチの仕方や文章の内容を含めた訴求によって、VCが会ってくれる可能性が変わりますので、いろいろと工夫しつつ直接アプローチされていくのがよいかと思います。また、友人が既に出資を受けている場合はその人経由で紹介してもらうのもありですね。

資金調達のプレゼンに必要な3つの要素

次に、「アプローチできました」「面談できます」という段階です。(スライドを指して)「誰に対する何のためのプレゼンテーションか」は明確ですよね。みなさんが投資家にプレゼンテーションして、資金調達することがゴールです。この手段として、ピッチ資料を活用します。だいたい1時間くらい、場合によっては45分や30分というケースもあります。自分の会社の魅力をしっかり伝えるのはまさに営業と一緒です。

「ピッチの構成はどうすればいいの?」という声があると思うので、重要なポイントを整理してみました。要素は、「実現したいこと」「実現する意義」「実現の可能性」ですね。

「実現したいこと」ですが、みなさんが解決したい課題を説明する。どんな社会課題、あるいは身の回りの課題を解決したいのか。それを解決するためのサービスやプロダクトが何かですね。

具体的なサービス概要、あとはビジネスモデル(マネタイズ方法)です。どういう顧客からお金をいただくのか。

(スライドでは)そのあとに既存代替品と書いていますが、実際に現時点で近いプレーヤーが存在しているのか。そして、TAM(タム)、SAM(サム)、SOM(ソム)などの市場規模。将来の展望は、今後みなさんの会社がどのように成長していくのかで、成長戦略ともいったりします。

これらを説明したあとに、なぜそれができるのか。経営陣はじめ、メンバー構成は「こんな人がいます」と説明する。「我々のチームがこのモデル、この社会課題にとってふさわしいです」と自信を持って伝えます。

さらに投資家を説得するために、「実際に、この課題に対して顧客ニーズがあって、既に使ってくれている、あるいは使ってくれそうな顧客がいる」という実績(トラクション)を説明できるかどうか。それが解釈ではなくて事実であることがすごく重要です。

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