2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小川りかこ氏(以下、小川):みなさまこんにちは。お待たせいたしました。それでは12時になりましたので、01 Expert Pitch第13回を始めてまいります。
「シリコンバレー発! 世界のエキスパートが最新情報を日本語で解説」ということで、本日はDXをテーマに、「シリコンバレーから見たDX」「DXを推進する際の成功ポイント」「日米間のDXの違い」をお送りしてまいります。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
今回はCambridge Technology Partners Inc., Directorの加藤良太さんをエキスパートとしてお迎えしております。加藤さん、どうぞよろしくお願いいたします。
加藤良太氏(以下、加藤):よろしくお願いします。
小川:そして本イベントの主催者であります、Tomorrow Access, Founder & CEOの傍島さん。本日もよろしくお願いいたします。
傍島健友氏(以下、傍島):よろしくお願いします。
小川:そして私は本イベントのナビゲーターを務めてまいります、小川りかこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
傍島:お願いします。
小川:さっそくですが傍島さん、この01 Expert Pitchの狙いなどを少しお話しいただけますでしょうか。
傍島:はい。あらためまして、Tomorrow Accessの傍島と申します。よろしくお願いいたします。Tomorrow Accessという会社はシリコンバレーを拠点にしたコンサルティング会社になります。
今は主に日本とアメリカのクロスボーダーのビジネスのご支援をさせていただいています。
傍島:この01 Expert Pitchは昨年から始めて、ちょうど1周年になるのですが、今回は13回目です。
狙いとしては3つあります。1つ目は日本とアメリカの情報格差の解消。いろんな日本の企業さんとお会いしている中でもやっぱり「シリコンバレーとかグローバルの情報を教えてください」という言葉をたくさんいただくので、そういった声に対して迅速に情報をお届けしたい。そして、日本とアメリカの情報格差を埋めたいというのが1つ目の狙いです。
2つ目は正しい情報をお届けしたいということです。同じニュースなんですけれども、アメリカで伝わっているような温度感と日本に伝わっている温度感が若干違うなと感じることがあるんです。
なので、今回ご登壇いただいている加藤さんのようなエキスパートの方に、正確にその情報を解説していただいてお届けしたいというのが2つ目の理由です。
3つ目は日本語での解説ということで、英語の情報はたくさんあるので集めることも可能なのですが、やっぱり大変なので、きちんと日本語で解説していきたいという、この3つの狙いでこのウェビナーを運営しております。
日本ではすごくキーワードになって話題になっていると思うのですが、今日も「DX」に関して、シリコンバレー、アメリカの視点からどうなっているのかも含めて解説していただこうと思っていますので、非常に楽しみにしてまいりました。よろしくお願いいたします。
小川:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。本日のイベントではみなさまからのご質問を随時受け付けて進行を進めてまいります。参加者のみなさま、加藤さんにご質問のある場合はご質問をぜひお寄せください。随時、私のほうでも拾ってまいりたいと思います。
小川:それでは加藤さん、さっそく簡単に自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。
加藤:了解です。よろしくお願いします。「今日はシリコンバレーから見たDX」というテーマでお話をさせていただきます。目的としては「DX」というコンセプトをみなさんにうかがっていると、すごくボヤッとしているというか。10人に聞いたら10人が違う理解が返ってくるようなコンセプトなので、もう少しそこに取っ掛かりを付けて、DXに取り組む際の成功のポイントとかをお伝えできたらいいなと思っています。
流れとしては、自己紹介とシリコンバレーから見たDXという話をさせてもらって、日本の企業が押さえるべきポイントをお伝えするのと、最後に少し注目のスタートアップということで、シリコンバレーっぽい話ができたらなと思います。
ということで、さっそく自己紹介から入っていきます。加藤といいます。通称Ronですね。昔からこういう名前なんですけど。
小川:Ronさん。
加藤:経歴としては一番下にありますが、海外が長くて、33年間います。主にアメリカですがイギリスにも少し住んでいました。年齢がバレちゃいますけど、日本には10年しか住んでいません。
MBAを出たあと楽天(USA)で10年近く戦略や買収などをやっていたんですけど、そのあとに楽天を辞めて、本当のスタートアップというか、資金もまだ集めていないプレシードの、アーリーステージのスタートアップを友人何人かでやって、失敗しているという経緯があります(笑)。資金が止まりました。
小川:失敗してしまったんですね。
加藤:そうですね。でもスタートアップに失敗はつきものなんですよね。なので、これも1つの勲章です(笑)。
傍島:そうですよね。シリコンバレーでは勲章ですよね。失敗していないほうが怪しまれるぐらいです。
小川:なるほど。
加藤:とりあえず「人生一度はチャレンジしてみないと」というので、自動運転の小型の宅配ロボットを開発する会社を立ち上げました。私の知り合いでそういう技術者がいたので、その会社のビジネス側を全部見るということで、一緒に立ち上げた感じですね。
それを諦めたタイミングで、ケンブリッジ(・テクノロジー・パートナーズ)という、今のコンサルティングファームがアメリカ進出すると言うので、昔いたチームの中に12年ぶりに出戻って、今はアメリカの立ち上げやUSの責任者をやっている感じです。
簡単に会社の説明をさせてもらいますと、経営コンサルやITコンサルなのですが、一言でいうと「プロジェクト成功請負人」と言っていまして、業務改革だったりITを構築するところだったり、DX系のプロジェクトや、最近は新規事業の立ち上げもやっている会社です。
あとは会社としていわゆるDXの本を書いたりもしているんです。例えば営業の方が3万人いらっしゃる会社があるんですけど、彼らが持ち歩いてるタブレットを刷新する大型のプロジェクトをやったりしています。まさにDXでガラっと、みなさんの行動や活動を変えるような大きな取り組みをお手伝いしている会社です。
というところで、よければここから本題に入っちゃいますが、次にいってもいいですか?
小川:お願いいたします。
加藤:では「シリコンバレーから見たDX」という話なんですけど、よくある始め方で、とりあえずWikipediaを見てみました(笑)。誰でもやりますよね。DXってWikipediaの定義によるとこんな感じです。「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」という概念です。
ビジネス的には、企業がテクノロジーを利用して会社を根底から変化させる、そういう定義がDXです。ただ日本で言われているDXって、そもそもの言葉として定義されている抜本的なビジネス変革だけではなくて、わりと日々の業務のデジタルシフトというか。例えば経理の人が一部の請求書発行業務を、ITを使って自動化しましたとかも、DXじゃないですか。
日本はけっこう大きく捉えるんですよね。わりと粒度の細かいものから、会社を変えるという本当に大きな話まで、全部を含めてDXと呼んじゃっていますし、いったんそう捉えてもいいのかなと思っています。
傍島:でも、「DX」ってけっこう昔から言われているんですよ。先ほどのスライドで2004年ってありましたよね。日本ではここ数年のような気がしますが、こんなに前から言葉としてはあったんですね。
加藤:言葉としてはあったみたいですね。日本でもすごく言われるようになってきたのは2019年ぐらいですかね。
傍島:ここ2~3年ですもんね。
加藤:そうですね。特にコロナがあって一気に広がりました。
加藤:シリコンバレー的に言うとどうなんだというと、2つあります。1つは「DX」という言い方自体をあまりアメリカではしないんですね。
小川:そうなんですね。
傍島:誰も言ってないですよね(笑)。
加藤:そうですね(笑)。誰もと言ったら変ですけど、アメリカにいる大手企業のトラディショナルな人というか、昔ながらの人が「DX」という言葉をたまに言われますけど、シリコンバレーの人はほとんど言わないですよね。
小川:違う言葉があるということですか? それとも、その言葉自体がもう言われていないんですか?
加藤:シリコンバレー的に言うと、もうこの世界はすべて、デジタルをテコに世の中を変えていっているという話なので。
小川:もう当たり前なんですね。
加藤:もはや仕事そのものがDXになってきているんですよね。この間、どこかのLinkedInだかに広告があって、「DXのセミナーをやります」というので、どんな話をするんだろうと思って行ってみたら、デジタルトランスフォーメーションではなくてデジタルエクスペリエンスの略として使っていたりして。
傍島:(笑)。
加藤:もともと(DX)はスウェーデンの教授が作った言葉ですけど、言葉の使い方がもはや和製英語みたいな感じなのかなと思います。
加藤:先ほどご質問であったみたいに、シリコンバレー的にDXってどういうことなのかというと、結局はこっちの会社って、やっぱり業界を根底からひっくり返しているような会社が勝ち組なんですよね。
例えばホテルという昔からあるビジネスモデルを根底からひっくり返して、新しい価値を作り出したのがAirbnbだったり、タクシーというもう何百年もあるビジネスモデルをそもそも見直して、新しい価値を作ってきたのがUberだったり。
なので、先ほどのDXが「会社のあり方そのものやビジネスそのもの」という感じがしているので、シリコンバレー的に捉えるDXと、日本でいう大企業とかの業務を良くしていくというDXは違うものの感じがしますね。
傍島:「新しいものを取り入れたらDXだ」という感じの人もけっこう多いと思うんですけど、「抜本的に変える」というところがキーワードかなと思って聞いていました。
加藤:そうですね。こういった勝ち組の会社って共通していることがあって、それは何かというと、目指すべきビジョンが明らかであるということなんです。
これはあとで話をしますけど、抜本的な変革においてもそうですし、日々の業務のデジタルシフトにおいても、目指すべきビジョンがキーになってくるんです。なので、もう少し地に足をつけた話をする時もこのへんがキーワードになってきます。
加藤:いったんもう少しでかい話を続けます(笑)。このビジョンという話で、Amazonの話をさせていただきます。Amazonのビジョンはここに書いてあるとおり「earth's most customer-centric company」。「世界で、地球上で最もお客さまのことを中心に考える会社になる」というのがあって、この下にあるちょっとした図が、ジェフ・ベゾスが会社を立ち上げる時にちょちょいと書いたような、戦略メモなんです。
このカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)を生み出すものが何かというと、「低価格」と「品揃え」の2つなんですね。その2つを揃えると、お客さんの経験価値がどんどん上がってきます。お客さんのそういう価値が上がると、人がどんどん集まってくるんです。人が集まると、そこの人たちにモノを売りたい販売者も集まってくるんですね。
販売者が集まると当然、品揃えがさらに高まります。そこで生み出したお金を事業成長に投資して、コストを下げていくことによって、より低い価格でモノを提供しますというので、ループしていく。どんどん顧客価値を高めながら事業成長に投資をしながら、どんどんより良いサービスを提供して、より良い品揃えを提供する。こういうのがぐるぐる回るのがAmazonのビジョンなんですよね。
傍島:シンプルですよね。「うまい、安い、早い」じゃないんですけど、とにかく安く、早くデリバリーで届けて品揃えを増やすという。
加藤:そうですよね。でもこれって実はマネできないんですよ。例えば昔はウォルマートってAmazonの何倍もの大きさがあったんですね。でも株主が求めているものはその配当金や売上だけじゃなくて、利益を求めるんですね。利益を求めるということは何かというと、事業成長に全部を投資することができないんですよ。
なので、このAmazonの差別化という彼らの強みの源泉は、「株主の期待値」が違うんです。(Amazonの)株主が求めているのは、事業成長のみなんです。なので、すべてのお金を事業成長にどんどん投資していくことができる。
でも、古くからある会社というのは株主が配当金とか利益を求めちゃうので、同じことがマネできないんです。そういうビジョンがあって、それに向かって邁進しているからAmazonが強いという話なんです。
傍島:確かに。私、ジェフ・ベゾスが何年ぶりかに出てきたイベントに1回行ったことがあって、誰かが質問したんですね。「10年後何が起こるかとか、5年後何が起こるかを予想して、何するんですか?」と。
そうしたら「そんなの関係ねえ」と(笑)。「俺はとにかくお客さまに安く、1日でも1分でも速く商品を届けることしか考えてねえ」って、すごく自信持って言っていて。「カッコいい……」なんて思いましたけど(笑)。
小川:(笑)。確かに言い切れるところがすごいですよね。
傍島:迷わず言ってましたね。
加藤:とことんこのループを回すことしか考えてないんですよね。なので彼らのとる行動ってすごく合理的なんです。すべては「どうやったらお客さま価値をもっと最大化できるのか」っていうことと、「どうやったら事業成長をもっとできるのか」。このことばかり考えているので。
例えばWhole Foods Marketを買収しましたとか、Zapposを買収しましたとか、Amazon MusicをPrimeメンバーにあげますとかっていうのも、全部合理的な活動なんです。すべてがさっきのループを回すための活動になっている。
こういうのを見てると、もう1歩先も読める。ビジョンが明確なので、彼らはとことんそこをやってくしかないんですよね。なのでAmazon Goっていう、コンビニみたいな新しい店舗をアメリカに42店舗展開しているんです。
店に入って改札のようなところを通って、専用アプリを持っていろんなものをカゴに入れて、そのまま出ると、もうチェックアウト(会計)が済んじゃうというシステムですね。これも利便性の追求というか、顧客価値をどうやって高めるかばっか考えていると、こういう発想に行き着くんです。
加藤:先月ぐらいに、裏庭に荷物を届けてくれますっていうドローンの配達とかも発表してますけれど。私、自動運転のことを少しやったので……自動運転ってドローンでやるのか、それとも路上を走るロボットでやるのか、どっちのほうが合理的なんだという論争があったりするんです。
両方研究はしてると思うんですけど、空からやる合理的なシチュエーションを、今、実証実験してたりするんですね。すべてはループをぐるぐる回すためです。
あと先週、One Medicalという会社の大きな買収をしたんですね。
傍島:大きいニュースでしたね、これは。
加藤:39億ドル、5,000億円以上の買収をしたんですけど、医療分野なんですよね。プライマリーケアクリニックという、お医者さんのオフィスを180店舗展開している会社を買収したんですね。ここは年会費を払ってメンバーになるようなクリニックなんですけど。
アメリカの医療制度ってごちゃごちゃなので、自分の主治医に会ってもらうのってすごく時間かかったり、待たされたりとかするんですけど。ここは年会費を払っているとすんなり会ってくれたり、オンラインでいろいろ答えてくれたり、そういうことができるんです。
これをAmazonが買収をした理由が2つあって、たぶんですけど、Primeメンバーにそういうサービスを付加価値として提供してあげる。さっきの「顧客の価値を最大化するため」と、あとはAmazonってものすごいデカい会社なので、彼らが事業成長するためには、市場規模の大きい分野に入っていかないと成り立たないんですよね。
傍島:必要ですもんね。
加藤:医療業界は米国経済の20パーセントを占めるので、医療業界に入らないわけにはいかないんですよね。今の成長スピードを止めるわけにはいかないので、株主がそれを求めている。
なのでさっきのループを回すためには、デカい業界があったらどうしても入っていかないとストーリーが成り立たなくなってしまう。そういう宿命を背負ってるってことですね。
これが「1つのビジョンを具現化していって、それにとことんこだわり続けて革命していくとこうなります」というAmazonの姿です。
傍島:便利になりそうですよね。先ほどAmazon Goで決済がいらない、カゴに入れたらそのままお店出られる仕組みがありましたけれども、病院とかも、日本でも待ち時間がすごい長かったり、薬もらうのに大変だったりします。Amazon Goみたいに、待つとかお金を払うとかが当たり前のようになくなるんでしょうね。
加藤:そうですね、どんどん便利になります。One Medicalはすごく良いサービスを提供してるんですけど、スケールがそんなにないですし、やっぱり資本金が必要だったので、ちょうど利害が合って、買収に至った感じですね。
加藤:ついでにもう1つAmazonの話をしておくと、研究開発費、R&D(Research & Development)にいくら使ってるのかと思って調べてみたところ、5.9兆円の予算を使っているんですね。
小川:すごい額ですね(笑)。
傍島:桁が違いますよね(笑)。年間ですよね?
加藤:年間ですね。42billionなので、相当ですよね(笑)。なのでAmazonと勝負しようとすると、なかなかフェアな戦いはできないんですよね。
傍島:これ、当たり前ですけど利益から出していかなきゃいけないわけじゃないですか。先ほどの株主に還元するお金があったら、研究開発費を投入して、ドローンの配達だったり決済がなくなるコンビニだったり……5.9兆円って本当に国家予算ですよね(笑)。
加藤:5.9兆円あれば、そりゃあドローンの自動配達とか、そういうのにも数パーセント投資するだけで相当な技術の進化が望めるんです。それをいろんなところでやってるんですよね。
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