2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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堀雅彦氏(以下、堀):(「バリューデザイン・シンタックス」について、)まずはコンセプトデザインの話から入っていきます。
コンセプトという領域においては、これはすごくよくあるケースですが、目の前にむちゃくちゃ熱狂してくれるお客さんがいるので「これはもういけます」といって、ばーっと突っ走るパターンですね。
でも、意思決定になると、バンと弾かれます。「事業サイズがありますか」という問いが欠けたまま突っ走ってしまうからです。一方でマーケットの調査をしたら、「5~6割いけました、絶対これは刺さります」といって突っ走っていくと意思決定で落ちる。「本当なの? それ」というリアリティがないから落ちてしまうんですね。
なので、コンセプトという領域で作り上げないといけないのが、課題が絶対存在して絶対欲しがられているという直感的な確信と、一方で冷静に俯瞰して、サイズがありそうという確証。
この2つを行ったり来たりしながら、両立的なコンセプトを作っていきます。
「バリューデザイン・シンタックス」のフレームワークにおいても、言っていることは一緒です。どのお客さん、どの課題をどういう手法でどういう価値にするのかという4つのボックスをミクロ側とマクロ側で見て、それぞれを規定した結果を文章に落とします。
この中の顧客のエリア、課題と価値のエリア。この2つに対して、どういう考え方かをこの後お伝えします。まずはお客さんですね。ミクロのお客さんとマクロのお客さんの対比です。
例えばこの2人をセグメントという視座で見ると、まったく同じお客さんに見えます。さらにこの人たちに調査をかけたらめちゃくちゃいけましたという情報があった場合、それだけで判断するとなるとやっぱりどうしても懸念が出ます。
なぜかと言うと実際解像度を上げるとぜんぜん違う人たちでしたということが起こりがちだからです(左:チャールズ皇太子、右:オジー・オズボーン)。だからミクロでぐっとお客さんの解像度を上げていって、渇望しているお客さんを特定して、本当に実在する1人のお客さんに踏み込んでいくことが必要だと思います。
全体像としてはお客さんは3つの階層に分かれていると思います。
市場とセグメントとn1顧客。市場はコンセプトが見据えているお客さんの群です。属性は異なるので、アプローチの仕方は異なるんですけれども、同じような課題を抱えていて、狙いうるターゲット群ですね。
例えば家事代行領域でビジネスをするなら、忙しくて子どもともっと時間を使いたいと悩んでいるお客さん達という群がおそらく市場に当てはまると思います。
これがセグメントという言葉に落ちると、ぐっと解像度が1段上がります。見据えるお客さんの群がターゲットに変わってきます。家事代行のケースでは、忙しくて子どもと付き合えない群の中で、特に20代で首都圏共働きで子持ちという層はさらに熱量高く困っている。これがセグメントになっています。
確信と確証の話に戻すと、この市場とかセグメントが、サイズが見込めそうかどうかという確証を作っていく顧客です。一方で確信は、量ではなくて実在する1人の生活者。ここを規定する必要があります。
定量化はできないんですけれども、実際にインタビューを重ねていって生の声を聞いて、この人は絶対に困っているんだとか、この人は渇望しているという生の声を得ていることが、確信を作り上げることができる顧客の状態だと思います。
例えるなら、「マツヤマさん」みたいな状態ですね。名前が決まっていて、会話しましたというような状態です。なので一言に顧客と言ってもレベルがあって、n1顧客だけに向き合っているような特性の方は、どの群と向き合うのかという問いで視座を上に上げて確証を作っていく動きが必要です。
一方でマクロを見すぎていて、このセグメント、市場を狙っていきますと考えがちな人は、誰と向き合うのかという問いでぐぐぐっと下に視座を下げていってリアリティを作っていかないといけない。この行ったり来たりが顧客という領域で確信・確証を作っていく上で大事なところだと思います。
続いてミクロとマクロの課題価値なんですけれども、一言で課題価値と言っても同じようにレベルがあると思っています。ちょっと概念チックですが、抽象的か具体的か一般的か個別的かのそれぞれで課題のレベル感がぜんぜん違ってきます。
(スライドを示して)上の粒度はある種表層的な課題感で、下になると具体に入っていきます。右側に寄ると具体性があって、かつ個別的でリアリティがある。一方で左下は具体に入って一般性がある。こういったように課題価値には段階があります。確信・確証でいうと、このピンクと緑。ここの課題と価値を作り上げていく、ここを特定・言語化していくことがすごく大事です。
概念チックですのでちょっとケースで解説します。リカレント教育のような社会人教育のトレンドが今すごくホットで。学習したいと思っている社会人はめちゃめちゃ増えているんだけど実際消費を行なっている人はすごく少ないという状態、ここのギャップを何かビジネスにできないかと捉えた際の、例えばの課題のパターンですね。
さっきの4象限に当てはめると、上の層は学習したいけど始められないとか、個別に入ったとしても、MBAを取得したいけどやれない、動き出せないといういう状態です。
事業開発においては、学習自体が始められないという課題定義の状態だとあまり意味がなくて、なんで学習したいけど始められないのかという要因側に落としていかないといけない。お金がないからなのか、時間がないからなのか。あるいは何をやればいいのかわからないからなのか。下に深めていかないとソリューションが見えてこないので、抽象から具体に落としていかないといけません。
例えばこのケースでは、抽象から具体に落として実際に声を聞くと、経営に関わる立場になったので経営学を学びたい。なのでMBAを考えている。だけど時間と量をかけた結果どのくらい年収が上がるのかとかどのくらい実務に活かせるのかというイメージがわからない、だから動けないんですと。
これが個別的で、具体的なレベルの課題です。ただ、この課題だけだと、n1、個別性に寄りすぎているので、一般性を高める必要があります。例えば、MBAに閉じず新たな学習に取り組む必要性を感じるんだけど、学習し終わった後の姿が見えないから動けない、という状態が一般性が高い課題のイメージだと思います。
確信・確証っていう言葉に戻すと、この右下、リアリティがめちゃくちゃあって、具体的で個別的な領域に踏み込めています。これが確信を作っていけるような課題です。ただこれだとn1に寄りすぎていてサイズが作れないので、一般性を高めた左下の象限を目指していく。これが確証サイズと向き合っていける課題価値のイメージだと思います。ちょっと右側は割愛します。
その上で、探索の仕方にはいろんなパターンがあると思います。例えば実際に目の前のお客さんに触れて先に確信を作る。「あ、あの人、こういうことで困っていた」。めちゃくちゃリアルで、確かにこれはありそうだという確信を先に作ってから、その一般性を高めてマーケット調査で確証を作っていく。こういうやり方もあると思います。
一方でオープンデータ、マーケットデータから先にサイズを作っていく。サイズを作ってその上でn1顧客を探して、リアリティを持った確信に変えていく。こういったアプローチはどちらもあるかと思います。
こういったことがコンセプトデザインにおいて各ボックスを埋めていく上での考え方のイメージです。
ここでRent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)という、アメリカのビジネスのケースをお話します。直近だとファッション系のサブスクになっているんですけど、もともとはドレスのレンタルサービスでした。
Webの記事も含めて見ていくと、このケースの場合は、ミクロの領域は創業者の妹の原体験に基づいています。創業者の妹のベッキーという方が、結婚式に行くためのドレスが欲しいけど高くて手が届かないし、結婚式の写真はSNSに出回るので、同じものは着ていけないというモヤモヤを抱えていた。それをWebのドレスレンタルという手法で解決しました。
結果、結婚式に着ていける特別でおしゃれなドレスが安く手に入るということがミクロなコンセプトになりました。ただ、これだと一般性がなくてサイズが見込めないので、一般性を高めたマクロな課題を「10代20代でファッションに関心が高くてお金をかけたいがかけられない人たちのための、特別な日に着る1度きりの衣装が欲しい」と設定しました。
価値は結婚式じゃなくて特別な日、ハレの日にして、ここに対して特別な衣装で出掛けることができる状態。こういうミクロとマクロの両立がRent the Runwayというケースでいうと当てはまります。コンセプトデザインで磨き上げないといけないところは、こういったミクロとマクロの対比の両方を見ていける状態が必要だと思います。
まとめですね。実際の手法はこれまた別の機会に詳しくお話ができればと思うんですけれども、たぶんすごくシンプルだと思います。
ひたすらミクロでインタビューを繰り返して、リアリティ、確信を作る。一方で冷静に俯瞰になって、一般性を高めて、マクロな観点でのサイズを見ていく。ここの行ったり来たりをしていくことが、コンセプトデザインで確信・確証を作っていく上で大事なアプローチになります。
ここまでがコンセプトのお話でした。
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