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「VCはスタートアップをどう見極めるのか?」「転職先はどんな軸で選ぶべきか?」 トップキャピタリストとキャリアのプロが激論を交わす!(全4記事)

今のベンチャーが、かつてのように「ニッチ」を狙わないワケ 日本最大のVC代表が語る、スタートアップの歴史的な変化

転職サイト「ONE CAREER PLUS」の特集「スタートアップ 転職と報酬」で行われた特別対談に、過去1,000社以上のベンチャー企業を上場に導いた日本最大のベンチャーキャピタル・ジャフコ グループ株式会社の新社長に就任した三好啓介氏が登壇。『転職の思考法』著者で、ワンキャリア取締役の北野唯我氏を相手に、長い低迷期の中でビジネスパーソンの価値観にあらわれた変化や、投資を受けたスタートアップ側に見られる変化を語りました。

日本最大のベンチャーキャピタルの代表・三好啓介氏が登壇

北野唯我氏(以下、北野):みなさん、こんにちは。ワンキャリアの北野です。突然ですがみなさん、「スタートアップへの転職が一般化しつつある」、あるいは「スタートアップでは市場価値が上がりやすい」、そんなニュースを見たことはないでしょうか。

私自身スタートアップの経営陣として働いていますが、最近確かにスタートアップへの注目がぐんぐん上がっているなという肌感覚があります。そこで今回、スペシャルゲストをお招きしまして、スタートアップでのキャリアを考えている人、あるいはベンチャーってどうなのかなと思っている人にとって、必見のテーマをお送りしたいと思います。

今回はこの方にお越しいただいております。日本最大のベンチャーキャピタルであるジャフコグループで取締役、パートナーを務める三好啓介さんです。本日はよろしくお願いします。

三好啓介氏(以下、三好):よろしくお願いします。

北野:三好さん、我々からすると本当に大物に来ていただいたなという感じがしています。よろしくお願いします。

三好:よろしくお願いします。

北野:はい(笑)。視聴していただいている方は、三好さんをご存知ない方もいらっしゃるかもしれないので、まず最初に簡単に自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

三好:はい。このベンチャーキャピタルという仕事、旧社名は日本合同ファイナンスという名前で、そこに93年に新卒で入社しました。そこからこのVC(ベンチャーキャピタル)というキャピタリストの仕事をずっとやってきたという経歴です。

僕自身は、実は起業家になりたくて、就職する気がまったくない学生でした。ただ93年当時、バブルが弾けたタイミングですね。ご覧になられている方は知らないと思うんですけど、そういうタイミングで世の中が混沌としている時に、事業をやりたいなと思いながらそれがなかなか叶わない中で、最短でそれを実現できるルートはないだろうかと。

それが就職活動の動機で、たまたまこのベンチャーキャピタルに出会ったというのが経緯ですね。

北野:なるほど。そして4月1日付けでジャフコの取締役社長に就任予定ということであっていますでしょうか。(※イベントは3/26に開催されました)

三好:はい。あっています(笑)。

資本市場におけるVCの役割

北野:今の日本のベンチャーキャピタルというか投資業界の最先端にいらっしゃる方です。あらためて三好さんの投資先一覧がすごい。数々の企業が並んでいます。

あらためて見られて、三好さん的には感じることはありますか。

三好:比較的最近担当させていただいている投資先が、ここに挙がっている会社です。あらためて見ると、いろんなタイプのいわゆるスタートアップが出てきている。経営者の方も含めて、チームのメンバーの方もどんどん変化しているなと、すごく強く感じますね。

北野:もし可能であれば、例えば具体的に、企業の経営者はこういうタイプだったけど、(最近は)こういうタイプも出てきたとか、可能な範囲で聞いてもいいですか。

三好:例えばここに挙げていただいている中で言うと、LayerXという会社は社長が福島(良典)さんという方で、もともと東大の院を出られた後、グノシーという会社を始めた。(我々は)そこに投資をして、上場後に新たに次の事業を起こしたいという中でLayerXを起こし、また投資をしたという、シリアルアントレプレナーというタイプですね。

この中では、JSHという会社もシリアルアントレプレナーですね。あとは、いわゆる大学発ベンチャーで、大学の研究者が中心になってスタートをしている会社もありますし。けっこうさまざまですね。

北野:いろんなパターンが生まれてきているわけですよね。

三好:そうですね。

北野:ベンチャーキャピタルの役割について聞いてみたいんですが。ほぼすべての人が、いわゆる資本市場の中で働いていると思いますが、その中でVCがマーケットで果たす役割とは、どういうものだと三好さんはお考えですか。

三好:大きく言うと、産業の新陳代謝を促す役割の一部を担っていると思うんですね。

北野:新陳代謝。

三好:そうですね。小さく言うと、新しくチャレンジする起業家の方にお金を出資して、一緒に事業に関わらせてもらいながら、事業を成長させる手伝いをしていく。手伝いをしていくというと、ニュアンスはちょっと違うんですけど。実際はもう一緒にやっている感じです。そうやって事業を作っていく、そんな役割です。

北野:なるほど。ありがとうございます。おそらく三好さんは膨大なデータベースというか、知見をお持ちだと思うんです。それと、私の知見や経験を基に、今回はスタートアップでのキャリアと投資について激論をしていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

長い低迷期の中で、ビジネスパーソンの価値観にあらわれた変化

北野:ではさっそく本題に入りたいと思いますが、今回扱う2つのテーマをご紹介します。まず1つ目が、「スタートアップマーケット『今年は最高の時か試練の時か』」。2つ目が「スタートアップにおける『キャリア選択の新しい考具』」ですね。

さっそく1つ目のテーマ「スタートアップマーケット『今年は最高の時か試練の時か』」。私もものすごく興味があるテーマですが、今スタートアップを取り巻く環境で、どういうことが起きているのかを聞いていきたいと思います。

まず気になるデータがありますので、こちらを見ていきたいんですが。こちらはスタートアップの資金調達額の変遷です。スタートアップの資金調達額が増えているのが明確にわかると思います。

(出典:株式会社ユーザベース「2021年 Japan Startup Finance ~国内スタートアップ資金調達動向決定版~」)

2020年は、おそらくコロナによって減ったと思うんですけれども、マクロで見ると明らかに前年対比が伸びていることがわかると思います。ある人と話した時にこれまで日本には3回ベンチャーブームがあったという説があって、今回は第4次ベンチャーブームだという説があります。

その中でも今回4回目は本物というか、3回目までも本物だったんですけど、大きく変わるのではないかという説もあるんです。これを現在まさに最前線にいらっしゃる三好さんが、どう捉えているかをちょっと聞いてみたいんですけど。このデータと、あとさっきの第4次ベンチャーブームという説に対して、三好さんは率直にどう思われますか。

三好:ちょっとこのデータからずれてしまうかもしれませんけど。僕自身が思っているのは、さっき93年に入社したとお話しましたけど、VCで日本のスタートアップをずっと見てきたわけです。今までやってきて、日本がようやくここまで来たなという感覚があります。それは強く思っていますね。

北野:それはどこらへんで思われるんですか。

三好:一番大きいのは、人の価値観が決定的に変わったなと強烈に感じます。日本では、例えば終身雇用であったりとか、優秀とされる大学に行った方が優良とされる企業に入り、そこで積み重ねて成果を出していくことが、ある種ビジネスの成功モデルだったと思うんですね。

それがリーマンショックや長い間のいろんな低迷を見ていく中で変化した。ちょうど2012年から2013年ぐらいからですかね。いろんなタイプの起業家がその中で出現して、急成長していく人たちが出現してきた。

それを見た人たちやそこに関わった人たちが、「自分もやってみよう」「自分もそこに関わってみたい」と感じ、そこに入っていくことに対して、もう「何のリスクでもない」と思っている。そういうふうに人の価値観が変化したんですよね。これは非常に大きいです。

投資を受けたスタートアップ側に見られる変化

三好:僕も長い間投資をしてきましたが、昔で言えば非常にいい会社に出資をしても、いわゆる上場企業になるまで、投資した資金が使えないということが起きるんですよね。

北野:使えない。

三好:非常にいい会社であるがゆえに、利益を持ってきて、その利益を次に投資していく。その中で回ってしまって、投資した資金が使い切れない。

北野:あぁ、おもしろいですね。

三好:一番大きい要素は、人の採用です。昔は非常にいいベンチャーと言われた企業でも、人の採用にはなかなか苦労されてきた。それがこの何年かで価値観が変化してきて、会社が資金を持つと魅力あるいろんな方々がどんどん集まる。だからもっと加速できるわけですね。短期間でいろんなものを実現していくことが、日本でようやくできるようになった。これが一番大きい変化ですね。

北野:おもしろいですね。もう1つ、おもしろいデータがありまして。これは最近話題になった資料です。大手から新興、いわゆるスタートアップに転職する割合が7倍になったと。そして年収差がどんどん縮まっているというデータがあります。

かつ右下ですけれども、「年収1,000万円以上の求人比率は、スタートアップが上場企業を上回る」というデータすら出てきていて。この数字はおもしろいなと思ったんですね。昔で言うと、それこそスタートアップとかベンチャーはどちらかと言えば、忙しくて年収が低いという印象があった気がするんですけど。

三好さんはこういう情報とかデータを見て、どう感じられますか。

三好:トータルで見ると、スタートアップの年収は、上がっているのは間違いないと思います。ただ、トータルで、いわゆる上場されている企業を抜いているかというと、そこまではないと思います。

スタートアップの年収が上がった理由

三好:何が起きているかと言うと、さっきお話ししたみたいに、大企業は雇用の仕組みとか採用・教育の仕組み、報酬体系とか、ある程度確立したモデルがあるわけですね。それに対して、スタートアップは過去の仕組みなどがないので、自分たちでゼロから作るわけですね。

何にも縛られていないので、大企業ではこの報酬を払うのは難しいよねという方を、その報酬を払ってでも採用するとか、そういうポジションにするとか。そういったことがいろんな場面で起きていて、トータルとしてはどんどん(年収が)上がっています。これもスタートアップの歴史的な変化だと思います。

さっき成功モデルと申し上げましたけど、昔は日本のベンチャーやスタートアップが狙ったのは、いろんな産業構造がある中の隙間が中心だったわけです。ニッチビジネスとか言われたんですよね。その隙間をうまく捉えた会社、隙間が大きくなるのを捉えた会社が大きくなった。でも、今は隙間なんて誰も考えていないですよね。

ちょっと繰り返しになりますけど、全部を作り変えるようなスタートアップが出現していく中で、雇用のあり方とか採用のあり方とかいろんなものが、全部作り変えになっている。スタートアップがそれをいろんなかたちで作っている。そんな感じでしょうかね。

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