2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
鈴木賢治氏(全1記事)
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鈴木賢治氏(以下、鈴木):みなさん、こんにちは。47PLANNINGの鈴木と申します。本日は私の人生の歩みと、覚悟を決めて一歩前に踏み出す大切さをお伝えしたいと思います。
私は、1982年に福島県いわき市で、製氷会社の4代目として誕生しました。自分もいつか家業を継ぐのが定めだと思いながらも、目標もなく漠然と生きてきました。親からは「社会勉強してこい」と(言われ)、なんとなく大学へ進学しました。
ただ、ここで転機が訪れます。東大生の彼女ができて、すぐにシンガポールに留学に行ってしまったので、彼女を追いかけて私もシンガポールに2ヶ月住みました。とても刺激的な国でした。ですが、何より刺激を受けたのが、そこで出会った留学生の目がキラキラしていたんです。
彼らは志と目的を持って生きていました。ただなんとなく生きてきた自分との違いに愕然とし、初めて人生について本気で考えるようになります。考えた結果、私は大学卒業後に公認会計士になろうと決め、3年間専門学校に通いました。
公認会計士の資格を取るはずだったのですが、こうなります。「25歳、鉄拳5DRで鉄拳王・黒。リングネーム:鈴木魔人」。みなさんは格闘ゲームの鉄拳はご存知でしょうか? 私は当時、最高段位である鉄拳王・黒に登りつめ、世界大会でベスト8になる戦いに明け暮れた日々を過ごしていました。こんな環境で戦っていたんです。
その結果、「26歳無職、特技:鉄拳」。そうです、やっちまったんです。今までの人生、まあ何とかなってきました。しかし、なんともならないことを初めて経験し、初めての挫折を経験しました。現実世界に戻ったんですね。
鈴木:途方に暮れて、新宿中央公園で友人と鳩に餌をやったりもしていました。最悪な結果に向き合い、一度自分のくだらないプライドを全部捨て、目の前にあった日雇いのティッシュ配りから取り組むことに決めました。
ただ1日を過ごすのではなく、圧倒的な成果を出す。そのことを自分に課して、がむしゃらに働きました。例えば、ティッシュ配りは100枚配ればいいところを1,000枚配る。家電量販店の仕事では、1日にテレビを30台売って600万円の売り上げを叩き出す。神奈川県でトップクラスの営業成績を出すことができました。
圧倒的な成果を出して評価されることが素直にうれしかったです。自信を1つずつ取り戻すことができました。結果としてイベント会社の役員になり、26歳で、お金と「取締役」という地位を手に入れることができました。
その後、周囲から社長就任を打診された時に私は迷います。ただお金を稼ぐ人生でいいのか、自分は人生で何をやりたいのか。横には東大を卒業し、日本を内側から良くしたいと志を持って財務省に就職した彼女。
志を持って生きている姿は、とてもキラキラして見えました。お金を稼ぐためだけなら、実家で親孝行しながら仕事をすればいい。自分の命を何に使いたいのか、自分の志は何なのかを自問自答しました。
鈴木:私は、日本が好きです。地域が好きです。地元が好きです。地域のいいものをたくさん売ることができれば、地域にお金が落ちる。そうすれば、地域が活性するのではないかと思いました。地域活性というテーマは、命を懸けても達成できないかもしれないぐらい壮大で難しいテーマでしたが、攻略しがいがあるテーマだとも思いました。
なんとなく生きてきた自分が、自分の生き方を決めました。2009年、27歳の時に、47都道府県を活性し日本の国力を上げる。それをテーマにした、株式会社47PLANNINGを創業します。鉄拳を卒業して約1年後のことでした。
最初の事業は、東京で福島県の食を広げるために郷土料理の専門店とキッチンカーを準備し、開業1ヶ月に迫ったところで東日本大震災が発生します。
こちらの画像は私の実家の画像です。津波で全壊、そして父親も流されました。幸いにして父親の命は助かりましたが、2万人近い方が亡くなりました。すぐにキッチンカーで現地に向かい、500食の炊き出しを行いました。地元のおっちゃん、おばちゃんたちが、涙を流して喜んでくれたんです。
「いいことをしたな」という満足感はありました。ただ、炊き出しをやるだけでは、復興につながらないんじゃないか。自己満足している場合ではない、地域経済を回さないと死んでしまう。そう思いました。
地元がピンチの時に何もできなければ、自分の存在価値はないんじゃないかとも思いました。地域活性会社の社長として、故郷の復興に取り組むことにしました。地域経済を回したい、でも働く場所がない。だったら自分で作ろうと、いわきの駅前に屋台村を作る。まさに炊き出しの帰り道、社員と立ち寄った日帰り銭湯でそう宣言しました。
鈴木:そこから立て続けに奇跡が起きました。奇跡その1。社員に宣言したその日帰り銭湯で知人に出会い、グロービス経営大学院の堀学長が主導する復興プロジェクト「KIBOWいわき」が開催されることを知り、たまたまそこに参加できることが決まりました。
会議に参加したんですが、発言の機会はなく、会議な終盤に差し掛かった時に司会の方が「この会場で何か言い残した方はいらっしゃいますか」と振ってくれたんです。私は「今だ!」と思って、本当に一握りの勇気を振り絞って、「はい!」と手を挙げました。
そして、私は「いわきの駅前に屋台村を作る。そして地域経済を回して復興する」、そう宣言させていただきました。すると会場が「うおー!」と盛り上がり、拍手をいただくことができました。会議の終了後、何十人もの名刺交換の列ができて、たくさんの方と知り合うことができたおかげで、このプロジェクトが前に進んだと思います。
奇跡その2。やろうと思っても場所がない、場所があっても億単位のお金がかかる。またしても壁にぶつかりました。そんな中でこの場所にたどり着き、ここは30店舗中23店舗が閉まっている昭和のスナック街でした。
「元飲食店だったここなら、条件が整うかもしれない」と思い、オーナーさんに交渉に行きました。すると奇跡的に、この30店舗の土地と建物すべてを1人のオーナーさんが持っていたんです。
企画を話して説明させていただいたところ、2つ返事でまとまりました。そうしてこの屋台村プロジェクトは、復興飲食店街の夜明け市場として、2011年の11月に2店舗からスタートしました。10年経った今、全室満室になり、年間10万人ものお客さんが来てくれるような場所になりました。
鈴木:飲食の経験のない自分が、たくさんの人の力を借りて復興の手助けができました。なぜこれをやり遂げることができたのか、2つのポイントがあったと思います。1つ目は前のめりなことです。やりたいことを言葉にして伝え続けること、そして動く。KIBOWプロジェクトで手を挙げた時が、そうだったと思います。
2つ目が巻き込み力です。当初、このプロジェクトは協議会形式で進めようと思っていましたが、みんなが自分の復興と復旧で手一杯。だったら自分がリスクを取ってやるしかないと、47PLANNINGとは別に300万円の借金を個人でして、地元にも会社を作りました。
リスクをとって前に進む人に対しては、みんなが助けてくれます。そして信用してくれて、巻き込まれてくれました。私が覚悟を決められたのは、「震災で亡くなった2万人の方たちに対して恥ずかしくない生き方をしたい」、そう強く思ったからです。
すべての経験が私の血肉となり、折れずに前のめりに生きて来れたからこそ、なんとか壁を乗り越えられたと思っています。現在私は、長野県の塩尻市奈良井宿という場所で、築200年の酒蔵を改装した宿「BYAKU Narai」を運営しています。
BYAKU Naraiは、100の体験で地域とまっすぐつながる宿というコンセプトのもと、宿をショールームに見立てて、地域の宝とお客さまをしっかり引き合わせる宿です。このプロジェクトは竹中工務店さまとの共同事業です。
鈴木:地域活性を志して、丸12年経ちました。元鉄拳王だった自分が、竹中工務店さまのような志を持った大企業と共同でビジネスをできるようになりました。私は今後も47都道府県を活性し、日本の国力を上げる。これを達成するために、前のめりに命を燃やしていきたいと思っています。
本日、ご視聴されているみなさまの中にも、素晴らしい思いやアイデアがあってもなかなか表に出せない方がいらっしゃると思います。ただ、それはとてももったいないことだと思います。その素晴らしい思いやアイデアは、誰かが賛同してくれて助けてくれます。
本日は奇跡が起きた話をしました。自分の志を定める際に横にいてくれた彼女は今、私の妻になっています。これも奇跡かもしれません。奇跡は待っていても起きません、覚悟を決めて動いた人に訪れるのだと思います。
我々世代で少しでもいい日本を作っていけるように、覚悟を決めて一歩前に踏み出して行きましょう。ご清聴ありがとうございました。
司会者:鈴木さん、ありがとうございました。非常に伝わる前のめりなプレゼンテーション、心に響くものがたくさんありました。鉄拳からの大躍進といいますか、まったく違った方向に行かれたということですが、質問が来ていますのでご紹介させてください。
司会者:「鈴木さんのお話の中で、『人を巻き込むためにリスクを取ること』というお話がありました。日々の業務の中で、お金以外の手段で覚悟を見せることはどういったことができるでしょうか?」というご質問です。覚悟の見せ方、ですかね。
鈴木:ありがとうございます。それはもう、とにかく動くことだと思います。お金がなければ行動で示すしかない。そう思って、まずは行動で(示そうと思って)ずっと動いてきました。
司会者:ただ、「こんなことはできないんじゃないか」「そんなの難しいよ」という声も、たくさんあったりすると思います。それに対する負けない力はどこから湧き上がってくるんでしょう?
鈴木:それはやはり、私の人生を懸けて「やりたい」と思っていることなので、できなければ、できる人と一緒にやる。そこも含めて、前に進むというかたちでなんとかやってきたんだと思います。
司会者:47都道府県は非常に広いですが、目標としては、これからまず先に何をされますか?
鈴木:まず、今は宿を運営させていただいていて。まさに47PLANNINGを体現する宿ができたと思っていますので、しっかりここを運営していくこと。それを全国に広げていけるようにがんばっていきたいなと思っています。
司会者:わかりました。そろそろお時間が来てしまいましたので、このセッションは終了とさせていただきます。鈴木社長ありがとうございました。大きな拍手をお送りください。
鈴木:ありがとうございました。
(会場拍手)
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