CLOSE

けんすうさんに聞く「起業に役立つSNSやnoteのつづけ方」(全5記事)

「起業のためにSNSがんばります」は、がんばっても続かない けんすう氏が語る、情報発信できる人に共通する“マインド”

SNSやnote、ブログなどを通して誰でも情報発信ができる時代。いまや多くの起業家や経営者が、そういった場をビジネスにも活用しています。そこで本セッションでは、「起業に役立つSNSやnoteのつづけ方」をテーマに行われた、“けんすう”ことアル株式会社古川健介氏と、note株式会社徳力基彦氏による対談の模様をお届けします。本記事では、起業家である古川氏はふだんどのようなSNSを使っているのか、情報発信に向いている人と向いていない人の特徴について語られました。

起業に役立つ情報発信のつづけ方

徳力基彦氏(以下、徳力):よろしくお願いします。noteの徳力と申します。私は本業で「ビジネスに役立つnoteやSNSのつづけ方」というイベントをしているんですけど、Startup Hub Tokyoさんでも、「起業に役立つシリーズ」をやらせていただくことになりました。最初のゲストはけんすうさんということで、けんすうさん、軽く自己紹介お願いします。

古川健介氏(以下、古川):アル株式会社の古川と申します。インターネット上では「けんすう」という名前で呼ばれることが多いです。アルは、クリエーターのためのプラットフォームとか、メディアをやっている会社です。私もnoteやTwitterでよく情報発信をしているので、そのあたりをお話しできるといいかなと思ってまいりました。よろしくお願いします。

徳力:よろしくお願いします。その背景は何ですか? 

古川:さっきまで南国感あふれるZoomのデフォルトの背景でやっていたら、「めちゃくちゃ南国ですね」と言われたので、まずいのかなと思って。仕事っぽい背景みたいなので検索したら、これが出てきましたね。

徳力:これが仕事っぽい背景なんだ(笑)、人によって議論があると思いますが、いいですね。おしゃれですね。

古川:頭の良さそうな。

徳力:よろしくお願いします。

古川:よろしくお願いします。

徳力:けんすうさんは、最近リアルなイベントはやっていますか?

古川:リアルなイベントは、1年半くらい行っていないですよね。

徳力:やはりそうなりますよね。

古川:はい。オンラインばっかりですね。

徳力:ワクチンが普及して変わればいいなとは思っているんですけど。けんすうさんとは、オンラインでは遭遇しているから会ったつもりになっているんですけど、最後にお会いしたのはもう2年以上前ですよね。

古川:やはり人と会わなくなっちゃいましたね。

SNSを初めて使ったのは高校1年生の時

徳力:そうですね。今日はけんすうさんに、「起業に役立つSNSやnoteのつづけ方」ということでお話をお伺いしたいのですが。けんすうさんがSNSを初めて使ったのって、何年ですか(笑)。

古川:初めて使ったでいうと……。

徳力:「SNSとは?」みたいな話ありますからね。

古川:Orkut(オーカット)になるので、2003年とか2004年じゃないですかね。

徳力:そんなもんですよね。広い意味のSNSでいうと、きっと掲示板も入れたらもっと前になるんですよね。

古川:そうですね。インターネット上のコミュニティサイトみたいなのものも含めると、1990年代とかまで遡っちゃって、すごく昔の話になっちゃいますね。

徳力:けんすうさんが初めて使ったのって、大学生の時? 高校生の時?

古川:高校1年生だと思いますね。

徳力:すごい(笑)。僕がインターネットを初めて使ったのは、社会人になってからなんです。2世代違うんだな。

古川:(笑)。

徳力:そういう意味では「ネットコミュニケーションの先駆者」というと、ちょっと日本語が違うかもしれないですけど。長くインターネット上のコミュニケーションに携わってきているけんすうさんに、ご自身も起業家ですので、今日は起業に役立つ視点でお聞きしていきたいと思います。

多岐にわたるSNSごとの使い分け

徳力:まずは最初に、そもそも今どんなSNSを使われていますかとお聞きしておきたいんですけれども。

古川:そうですね。主に起業に関係するのだとTwitterとnoteと、あと自社サービスですけど「00:00 Studio(フォーゼロスタジオ)」という、作業中を配信するライブ配信サービスの3つが多いですね。

徳力:Instagramも発見したんですけど(笑)。Instagramはあまり使っていないですか。

古川:Instagramは鍵垢でやっていて、起業家と会うと「起業家の1枚だけのポートフォリオを撮る」というのをやっていて。

徳力:へえ。

古川:10年か20年くらい鍵垢でやったあとに公開すると、10年分20年分の起業家の、その時の写真が出ておもしろいなと思ったので、それで使っていますね。

徳力:それはそれでめちゃめちゃ気になるんですけど(笑)。今日のメインテーマじゃなさそうですね。鍵垢で実験して、みたいな話ですね。

古川:そうですね。

徳力:Facebookは、まあまあアクティブですかね。

古川:そうですね。Facebookは2つあって、友だち用に長文を書くネタ投稿みたいなものと、「アル開発室」という有料のオンラインコミュニティをやっていて。3,000人くらいいるんですけど、その人たちに向けて毎日3,000文字くらいの文章を投稿していますね。それはけっこうアクティブですね。

徳力:いわゆるオンラインサロン的な構造ですね。

古川:そうですね。

徳力:LinkedInも最近始めたんですね。

古川:ああ、そうですね。LinkedInとYOUTRUSTはたまに投稿しています。要は仕事のガチな投稿って、Twitterだと合わない気がしたので。

徳力:さっきの文脈でいうと、Instagramは比較的実験的な取り組みをしていて、Facebookは友だちとのコミュニケーション。LinkedInも、Twitterとは違うビジネス文脈の発信に使えるんじゃないかと、ちょっと実験し始めている感じですね。

古川:そうですね。やはりコンテキストが多いのは、LinkedInとYOUTRUSTですね。YOUTRUSTのほうが採用にガンガン効いているので、YOUTRUSTへの投稿はもうちょっと増やしてもいいかなと思っていますね。

クリエーターをいかにインターネット上で活動しやすくするか

徳力:なるほど。さっき「何を使ってますか?」と言うと、サラッとTwitterとnoteとご自身の開発しているサービスという話がありましたけど、基本的に新しいサービスはまず使ってみるんですね。

古川:そうですね。好きなのでけっこう使いますね。

徳力:ビジネスという意味だと、いわゆるクローズドなFacebookじゃなくて、拡散性のあるTwitterとか、オープンに引っかかるブログ的なnoteとかを使っているイメージですかね。

古川:そうですね。

徳力:一応、お仕事の話をしていただいたほうがいいかなと思うんですが。まず、さっきご紹介にあったアルの説明をしておいていただいてもいいですか。

古川:アルは、漫画のメディアみたいなものをやっていて。新しく読む漫画を探すとか、新連載とか新人作家さんがPRする場所があまりないので、そういった人を取り上げたりするメディアをやっていますね。

徳力:アルも事業としてやりながら、さっき使っているSNSとして紹介された「00:00 Studio」も事業として運営してるということですよね。

古川:「フォーゼロスタジオ」と読んで、作業中を配信するというやつですね。あとは最近だと「elu(エル)」という、イラストを1枚だけ、数量限定で売れるみたいなのとか。最近は、クリエーターさんをいかにインターネット上で活動しやすくするか、というサービスをよく作っていますね。これは先週公開したんですけれども、100万円近く売り上げている人もいるので。

徳力:マジですごいな(笑)。

古川:意外と売れるんだなという気はしていますね。

発信が苦手な人は、起業のためにSNSをしても続かない

徳力:けんすうさんは文字通りの起業家ですよね。こうやっていろんなサービスを並行してやっていくのが、本当にすごいなと思っているんですけど。やはり、起業の新しいサービスを多くの人に知ってもらうのに、SNSをずっと使い続けてきている感じですよね。

古川:よく言えばそうですし、逆にいうと僕、「起業のためにSNSがんばります。今はやっていません」という人には、あまりお勧めしていなくて。Twitterもnoteも、我慢して我慢して我慢して、それでも我慢できなかった文が投稿されている感じなんですよ。

徳力:(笑)。なるほどね。

古川:なので、めっちゃ我慢して1日30ツイートしちゃうとか、ブログだとせいぜい1~2週間に1本ですけど、毎日Facebookに3,000文字ぐらいの投稿をしていて。

我慢してそのくらいの投稿で抑えられる人はやったほうがいいと思うんですけど、普段やっていないという人は、たぶんけっこう大変な思いをすると思うので。「発信しなきゃ」というのは大変かもですね。

徳力:そっか。心の中からしゃべりたくて仕方がないという人は、その分の一部を出せばいいんだけど、「発信苦手です」という人が無理やり背伸びして発信するのは向いていないという話ですかね。

古川:そういう気はしていますね。がんばってやろうとする努力家の方はいらっしゃいますけど、見ているとやはり続かないんですよね。

徳力:そっちを努力するんだったら、そもそもの事業自体をがんばったほうがいいんじゃないかという。

古川:おっしゃるとおりですよね。

徳力:おもしろいですね。いきなり本質的な話に入っていきますけど、「起業に役立つ」というこのタイトルで今日申し込んだ人。僕らが今から起業にすごく役立つSNSの必勝ノウハウをパーッとしゃべるから、それをやれば自分の事業がめっちゃうまくいく……というイメージをしているんだったら、そうではないと、まず最初に注意点として申し上げておきたいですね。

古川:そうですね。逆にいうと、発信できなかったからといって、落ち込む必要はないと言いたくて。

徳力:そうですね。

情報発信のベースにあるのは「聞いて聞いて」というマインド

古川:今発信ができている人たちはけっこう......。

徳力:そこも、鶏と卵の順番ですよね。

古川:そうですね。やはり徳力さんも、ブログを書いたり発信したりが好きじゃないですか。

徳力:おしゃべりが好きなんですよね。自分の話を聞いてもらいたくて仕方がなくて。

古川:はいはい。

徳力:それが文字だったり、Clubhouseみたいな音声サービスだったり、YouTubeみたいな動画だったりするんでしょうけど。自分がやっていることを知ってもらいたいとか、「こんなことを思いついているから聞いて聞いて」みたいなものがベースにあるというのが最初ですよね。

起業家の方は、自分たちが始めた事業自体を多くの人に知ってもらいたいはずで、その思いが出る場所の1つとして、SNSが可能性として増えてきたぐらいのイメージでいいのかなと思っているんですけどね。

古川:そうですね。逆にいうと、SNSを流入元にしたいのであれば、発信以外にもやり方があるので、その辺も併せて考えるといいのかもしれないですね。

徳力:けんすうさんらしい。ちゃんと期待値をコントロールしようというのが、ありがたいです。

古川:(笑)。

「起業家になりたい」と思ったことはなかった

徳力:けんすうさんの昔話をお聞きしておきたいんですけど。インターネット上の情報発信を始めたのは高校1年生ですよね。なんで始めたんですか?

古川:インターネット出始めの、「インターネット老人会」みたいな話をすると。

今まで情報発信がマスメディアしかできなかったのに、高校生でも、アイデアとか考えたことを人に読んでもらえるという体験にけっこう感動して、めちゃくちゃおもしろいと思ったのがきっかけですね。

徳力:けんすうさん、その頃から自らサービスを運営されていましたからね。

古川:そうですね。当時ってSNSとか日記サービスもなかったので、自分でHPを作るしかなくて。交流したければ、自分で掲示板を設置するしかない時代だったので。なので、サービス作りっぽいことをやっていたのかなという感じですね。

徳力:けんすうさんの場合は、そういう意味では起業したくて起業をして情報発信したんじゃなくて、先に「ネットでコミュニケーションできるってすげぇ!」というところから入ったんですね。

古川:そうですね。僕は「起業家になりたい」と思ったことはたぶんなくて、高校生の時は、夢はサラリーマンと書いていたくらいでした。 

徳力:聞いている人からすると信じられないと思うんですけどね(笑)。

古川:起業に興味がなかったですし、やろうと思ったこともないですね。

「自分が初めて使ったSNSは何ですか?」

徳力:ちょっとアンケートを取っておきましょうか。視聴者の方がどういう年代の人が多いかわからないから、今の匿名掲示板的なものも含めて、「自分が初めて使ったSNSは何と答えますか?」と、みなさん書いてみていただいてもいいですか? 

今の文脈でいうと、掲示板もブログもSNSにあえて含んじゃう感じでお願いします。みなさんが本格的に使ってみたSNS、一番最初にはまったSNSは何ですか?

……あ、モバゲーね。投稿小説サイト。mixiが多いですね。

古川:mixi多いですよね。「ミルクカフェ」という人がいました。ありがとうございます。

徳力:掲示板の人がやはり多いな。

古川:BBS掲示板。ああ。

徳力:ブログ。いいな、「フォーラム@nifty」ね(笑)。

古川:ニフティの人、相当ですね。「さるさる日記」の人もいましたね。前略プロフィールとか、お絵かき掲示板も多いですね。

徳力:LINEの人もいますね。幅広い。ターゲットをどっちに絞るか、難しいな(笑)。

古川:「teacup.」の人がいますね。

徳力:ティーカップ(笑)。コロプラもSNSっちゃSNSですね。確かにおもしろいな。たぶんmixi掲示板ぐらいの世代の人たちは、「インターネットでコミュニケーションできるってすごい」と思えた人たちだと思うんですよね。

古川:はい。そうですね。

徳力:最近の若い人たちはそういうSNSがあるのが当然だから、すごさがよくわからないのかなと、勝手に想像しているんですけど。

古川:そうですね。たぶん我々の驚きは、逆に最近の人たちにとって「今日からインターネットで交流禁止です」と言われたらどう思うかの驚きに近いですね。

徳力:僕らは選択肢がなかったですからね(笑)。そうやって想像してほしいですね。「待ち合わせを、LINEでやりとりができなかったらどうしますか?」という話なんですよ。

古川:そうなんですよ。SNSがなかった時代にコロナとか起こっていたら、絶望的に孤独だったと思いますね。

徳力:1人暮らしでこの状態だったら、耐えられないと思いますね。

古川:耐えられないですよね。

顔と名前を出してSNSでつながることの衝撃

徳力:その話をしだすと、30分以上余裕でしゃべれるので、今日はこれぐらいにしますけど。けんすうさんが最初の頃、いわゆる匿名掲示板的な発信をしながら、だんだん今のSNS的な「自分はこの人です」というIDがわかる状態で発信するようになって、最初にすごいなと思った経験というと、何になるんですか。

当然、匿名掲示板で経験できたこともいろいろあったと思うんですけど。IDで自分の人間関係が蓄積されていくと、ちょっとすごいことの起こり方が変わってくるじゃないですか。

古川:はいはい。

徳力:ブログの黎明期とかSNSの黎明期とか、僕はそれで今があるタイプなので。原点となる体験というと、何を挙げますか?

古川:リリースしたばかりのGREEはけっこう衝撃的で。

徳力:はいはい。GREE、みんなわかるかな(笑)。GREEとmixiが戦ってた時代があるんですよね。

古川:戦っていた時代は、もうちょっとFacebookっぽかったんですけど。

徳力:GREEは本当に、当時Facebookっぽかったですよね。

古川:そうですよね。同じ世代の大学生が、顔写真と本名を出してネット上にいるというのが、わりと衝撃的で。

徳力:そっか。匿名掲示板に慣れていると余計に。

古川:そうですね。やはり2004年よりも前のインターネットって、あまり名前とか本名を出さない文化だった記憶があるんですね。

徳力:そうですね。

古川:わりと慶応大学の人とかが多かったんですけど、そこでつながったりして、いきなり横のつながりが広がったというインパクトが大きくて。僕も当時起業をして、確かライブドアにM&Aされたあとだったんですけど、起業仲間みたいな人は一切いなくて。

徳力:へえ!

古川:イケてる大学生とかのつながりも一切なかったけど、いきなり。

徳力:すでに起業売却までいっているのに、起業仲間いなかったってある意味信じられないですけど、すごいですね。GREEで友だちができたんですね。

古川:そうですね。学生起業家みたいな友だちができたり、はあちゅうというブログを毎日書いている女子大生がいて、顔写真をすごい出してブログを書いているみたいなインパクトがあったのもそのぐらいでした。

徳力:そうですね、ライブドアブログでした。

古川:そのへんはやはりインパクトが大きかったですね。

SNSの可能性を楽しんでもらう場所を作るのが好き

徳力:事前に共有してもらったこの記事が、その辺の集大成というか、象徴的な出来事になるのかな。

古川:「劇団ブサイコロジカル」という。2004年に、友人がGREEとかmixiとかブログを使って知らない人を集めて、劇団ができるんじゃないかというのをやって、僕も手伝っていたんですけど、わりと当時としてはめずらしいというか。今だと、なんでメディアに取り上げられているんだというくらい、別に普通だと思うんですけど。当時は、SNSを通じてやるのが珍しくて。

徳力:ネットでオーディションをして、みたいな話ですね。

古川:ポッドキャストとブログとかで情報を発信して、スポンサー枠を売って公演費にするとか、そういったことをやりましたね。

徳力:インターネットで劇団が作れてしまうということを証明した、1つの取り組みですよね。

古川:そうですね。YouTubeで動画を流したりとか。今話すとぜんぜんすごくないんですけど、大学生がSNSでつながるのが、当時は珍しかったんですよね。

徳力:2006年ですからね。

古川:そうですね。

徳力:けんすうさんは、そもそもアルにしても、さっきの「00:00 Studio」にしても、SNSを作っている側の人でもあるので。もともとの掲示板からしてそうですけど、ある意味その可能性を楽しんでいる人でもあり、みんなに楽しんでもらいたい側の人でもありますよね。

古川:そうですね。プラットフォームというか、そういう場所を作るのは好きですね。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 苦しい経営を乗り越え、Newsweek誌のグッドカンパニー50社に選出 AI通訳機「ポケトーク」が歩んできた道のりと成長戦略

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!