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ポストコロナのスタートアップ投資(全4記事)

海外進出の前提は「他の国のことはわからない」 日本のVCがグローバル展開するための勘所

コロナパンデミックを受け、VCにおける投資戦略・オペレーションも「変化への対応」を迫られました。その中で変わったこと、変えなかったことは何か。また、今後どうなっていくのか。2020年、オンラインにて開催されたIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)内の本セッション「ポストコロナのスタートアップ投資」では、DCM Ventures 原健一郎氏、株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮慎一氏、グローバル・ブレイン株式会社 代表取締役社長 百合本安彦氏、YJキャピタル株式会社 代表取締役社長 堀新一郎氏、ANRI株式会社 代表パートナー 佐俣アンリ氏ら5名が、投資先の成長や変化について語りました。こちらのパートでは「日本人VCから見る海外投資の行末」などについて議論されています。

日本人VCから見る海外投資の行末

原健一郎氏(以下、原):堀さん、日本投資と海外投資のプロセスって変えたりするんですか? 

堀新一郎氏(以下、堀):はい。完全に変えていますね。日本はやっぱり細かなリファレンスが取れるので、自分たちでできますけど。海外に関しては正直わからないので。

「East Ventures」と「Sinarmas」と一緒に、東南アジアでグロースステージのファンドを今はやっていますけど、シードやアーリーにはいっさい行かないと決めていますね。シリーズB以降のみです。

ある程度トラクションが出ているビジネスで、これから成長資金が必要なスタートアップで、ユニコーンになっていきそうな会社のみにフォーカスして、東南アジアで投資をしていくと。やっぱり東南アジアでそういう投資をしてみてわかったのは、エコシステムをちゃんとしなきゃってことです。派閥じゃないですけど、国内だったらアンリさん、EastVenturesさんと仲良くさせてもらっていますけど、そこからパスをつないでもらって、YGキャピタルでしっかり出資していく。

東南アジアも同じようなスキームで、さらに先に関してはビジョン・ファンドだったりソフトバンクグループにつないでいくだったりとか、Temasekにつないでいくだったりとか。日本だったら日本郵政キャピタルなどにしっかりつないでくるみたいな。

各地域ごとにエコシステムを作ってその中にちゃんと入り込んで、将来的に事業シナジーがありそうな会社に関しては、Zホールディングスで資本業務提携まで持っていく。そういう網をしっかり張りたいなと考えて、今は動いていますけど。

東南アジアと日本は、その座組がしっかりできているんですけど、北米やヨーロッパとかアフリカとかブラジル、南米とかはまだぜんぜんできていないですね。

:でもそこはやる予定があるんですね。

:とりあえずアジアと日本だけで、いっぱいいっぱいじゃないですかね。

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):(笑)。

:北米は……(笑)。中国はソフトバンクさんにがんばってもらっているので。

佐俣:そのへんの各社の野望というか。YJキャピタル(の堀さん)はそんな感じだとして、グロービスさんは逆に“絶対日本マン”なんですか? 

高宮慎一氏(以下、高宮):基本的には“絶対日本マン”ですね。やっぱりどんなに「ワシらは日本でがんばっているファンドや!」と言ったところで、シリコンバレーで一番いいディール、Facebookのシードステージなんて来るはずないと思っていて。

そうなってくると、ローカルハイヤーをちゃんとして、現地のネットワークに入っていく人を採用する。そうするとけっこうUSのトップシェアVCが中国に出て行った時にけっこう苦労した、グローバルワンピポッドのキャリー配分問題をどうするのかとか、いろいろ組織チームイシューが出てきちゃうので。

やっぱり投資家にも起業家に対しても、わかりやすいバリュープロポジションって、日本で大きく成長するようなスタートアップを支援して、その結果リターンを生み出していく。ちゃんと何かあったらすぐ飛んでいって、週1でミーティングできるみたいなところは……。

ヨーロッパや東南アジアにもチャンスはある

佐俣:そういう意味では、逆に百合本さんってけっこうリージョン拡大志向だと思うんですけど。

百合本安彦氏(以下、百合本):そうですね。

佐俣:もう世界中。北極・南極まで行くという感じですか? 

百合本:そうですね。行きたいですね。

(一同笑)

高宮:南極ファンド(笑)。

佐俣:それが聞きたかった! 

百合本:北米は確かにDCM(ベンチャーズの原)さんにまかせるとして。我々が最初から行って本当に勝負できるかというと、そんなことはぜんぜんないと思うんですけど。

ところがヨーロッパとかイスラエルとか、東南アジアとかはチャンスがあると思っていて。そういう意味では、それぞれのリージョンで、入り方の色合いがだいぶ変わってきているんですけれども。ちょっとはっきりは言えないんですけれども、そういう戦略もちゃんと持っていて。

最終的にはグローバルトップTierになれるようなVCになりたいと思っているので。その登り方の戦略は、一応5年ぐらいにやろうかなと思っているところですね。

佐俣:いいですね、やっぱり。野望にあふれている。

高宮:VCのグローバル化って、けっこう悲願じゃないですか。絶対日本マンって「難しいからできない」って言ってるだけなんで。

一方でその難しさもけっこうわかりやすくて。さっきのローカル性が高い事業になりがちゆえに、ローカルごとにサイロ化して縦割りになって、インセンティブがけっこう難しいみたいになってきて。DCMとかってなんというか、テンションが余っちゃったみたいなところもあるじゃないですか。

:はい、はい。

高宮:そこをどう乗り越えて、本当の意味でグローバル化するのか。VCとして当然、投資先はグローバル化するので、投資先に合わせてグローバル展開支援力を僕らが持つべきだとは思うんですけど、そこをどう乗り切ったんですか? 

:たぶんグローバルに展開しているVCって2パターンあって。1つがSequoia型。もう各国に違うファンド、違うチーム。LP(リミテッド・パートナー:ファンドへの出資者)をみんなで集めましょうってモデルなんですよね。

だからフランチャイズ型がけっこうメジャーで。うちとLightspeedは1つのファンドで、すべての国にやるんですね。

そうするとみんな情報交換がされやすくなるので、メリットが高いんですけど。高宮さんがおっしゃったみたいに、チャレンジは中国のティーンエイジャー向けのアプリにアメリカの白人のおっさんがいちゃもんつけてくるみたいな(笑)。

佐俣:はい、はい。

「他の国のことはわからない」という大前提

:やっぱり僕らもDCMとして持っているのは「他の国のことはわからない」という前提があります。中国のすごい細かいことなんて絶対にわからない。極めてローカル性が高いので、グローバルでやりながら、それぞれの国をかなり尊重した意思決定をしています。

だからもう絶対、日本が中国のことを100パーセントNOとは言わないけど、論点として「気をつけろよ」みたいなのをひたすら言うという。

高宮:なんかもうVCみたいなプロフェッショナル・ファームって、意思決定とインセンティブがすべてじゃないですか。意思決定側がそれでクリアできるとして、インセンティブのフェアネスみたいなものはどう入ってくるんですか?

:これはですね、出しているリターンがもうすべてになるので。そのリターンによって次のファンドで、国ごとのアロケーションが各ファンドでだいぶ違うんですよ。なので「そのファンドでは元から決まった配分」という感じになると思うんですけど、その次のファンドとかで明確に変わってくると。

すべてのファンドで起こりえる“喧嘩”

高宮:なるほど。それは投資の原資も配分したポットが決まるし、成功報酬、キャリーの原資のポットもリージョンごとに最初から決まってくるんですか。

:そうですね。まさにそうで。

高宮:なるほど。

佐俣:なんかイケてる調子がいい国が「なんであんなお荷物な国とやんなきゃいけないんだよ」って普通に言いません? 

:あ、それは絶対あります。すべてのファンドで起こりえます。

佐俣:そういう喧嘩が聞きたい(笑)。

:例えばテーマが違う2つのアンリファンドがあるじゃないですか。

佐俣:あります。あります。

:この喧嘩もたぶん、いつか起きるわけですよね。

佐俣:うん。

:国ごとの僕らの喧嘩でいうと、パートナーとかにそういうことがあったりするし。

高宮:いろいろそういうことが(笑)。

:でも基本的にやっぱり、けっこうドラスティックに国ごとの割合は変わりますね。

高宮:それはやっぱりファンドレイズが細かく短くなんと言うか。高速回転で3年おきぐらいにちゃんと回せているから、細かく是正できるという。

佐俣:そうですね。

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